二匹のネズミと、二人の小人。迷宮の中のどこかには、しあわせに暮らすためのチーズが隠されている。長い試行錯誤の結果、ステーションCで、美味しいチーズを大量に発見した。手に入れた幸福はいつまでも保証されたかに見えた。しかしある朝、チーズはそこになくなっていた。―――「チーズはどこへ消えた?」
二匹と二人にとって「チーズ」は、生きる糧であり、喜び。安心と満ち足りた日々をくれるもの。それぞれにとって「大切なもの」。誰もがそれを享受して生きる権利がある。だが、美味しいチーズも古くなる。いつかはなくなってしまうのだ。そしたら新しいチーズを探しに、新しい場所を求めて行かなくてはならない。そう、出て行けば良いだけなんだ、きっとまた見つかるチーズのために。どんなふうに?? それがこの物語のテーマ。
しがみつきたいものは何? 過去の素晴らしいチーズの思い出は、しあわせに生きる権利の証明かもしれない。どんなにかありがたかったことだろう。でもいまは、感謝と、失ったちょっぴりの痛みを胸に抱えて、また歩き出すしかない。勇気を出して、変化に乗って、再び迎え入れてくれるチーズの宝庫、ステーションNにたどり着けるように。
いつだって変わってゆく、見えない明日は恐いけど、しあわせになっていいんだから!
(2001.2.16)
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