『コーヒーガム』
作詞・作曲:すみよしたけし
by ざっくばらんす

 実際に顔を合わせていた期間はごく短かかったが、この人とも長いつきあいになった。上京してきて、コンピュータのエンジニアとしてサラリーマン生活を始めたと聞いたときは、大丈夫なのだろうかとひそかに思った。といってもエンジニアとしての腕を疑ったわけではない。

 「音楽やらないで生きていけるのかな」
 高校時代、友達に誘われて一度住吉家に遊びに行ったことがある。ドラムセットが鎮座していた。洋楽のレコードを聴かせてもらった。静かに楽しんでいたら、どうしたというのか突然彼が怒り出して、テーブルの上のミカンを思い切り壁に投げつけた。果汁が飛び散った。何が原因だったのか今も知らない。一緒にいた友達と彼との間に何かやりとりがあったのかもしれない。
 そんな彼の暴発を私は「アーティスト気質」と受け取った。なんとも都合のよい解釈をしてあげたものだが、それで別に驚くこともなく機嫌よくおいとました記憶がある。

 彼の会社勤めはどのくらい続いたのだったか。しばらくすると、荷物運びなどのバイトをしながらライブハウスで歌う姿を見ることができるようになった。ホッとした。ものごとが収まるべきところに収まったと感じた。
 もしかしたらミカン飛び散る光景を思い出したのかもしれない。職場のコンピュータをある日思い切り蹴散らす彼の姿を想像していた。ほとばしるアーティスト気質、押さえきれるものではないだろう。何よりも私は彼が音楽を続けてくれることに期待していたと思う。

 音信不通の時期があったが、久しぶりにライブ案内が送られてきてうれしかった。昔よりも生き生きして見えた彼の元気さの根拠、それはやりたいことを貫いている自信ではないか。自分に正直に生きる人を見ると人は癒される。思うままに突き進むこと、その難しさをかみしめるほどに、人はすみよしの唄を聴きたくなるだろう。

His SITE Zac Ballan's

(2000.7.19)



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