座談会:「海のトリトン」の音楽を語る

「トリトン」は70年代アニメ劇伴のルーツ!?

[トリトン特集TOP] [1] [2] [3] [4] [5] [6]

「海のトリトン テーマ音楽集」を聴きながら(3)

M-38 北の海
これってソプラノサックスですか?
R3 ソプラノサックスかクラリネットだと思う。クラリネットの人いないですよね。
※ライナーではクラリネット。しかし、クラリネット奏者の表記もない。(- -;)(猫)
サックスの人って誰なんですか?
R3 書いてない。
サックスっていうのも誰がやってるかわかるもんですか?
このメンバーの中の誰かがやっているとか?
R3 サックス演奏しそうな人はいないけどなあ。
12曲め(M-31 行く手に立ちはだかるものは)でサックス誰って聞こうと思ったんですよ。サックスの人が書いてないから。
R3 レコード会社の都合でクレジットされない人もいるかもしれない。
名前出さないでお願いしますっていう。
なんで? 嫌なの?
R3 契約上、他のレコード会社の仕事してはいけないのに、バイトでやっているとか。
そういうのあるんだ。
R3 「ちょっと来てよ」っていうので呼ばれてやっていたり。「ちょっと助けてよ○○ちゃん」とか(笑)。たぶん、村岡健っていう人だと思う。ヒノテル・クインテットも、フリーダム・ユニティもこの人なんで、たぶんこの人じゃないのかな。
じゃあ、どっかで聴いた人なのかもしれない。
R3 村岡健だとしたら、「大野ルパン」とか「キャプテンフューチャー」と同じ人ですよ。
あ、なるほど。
だからなんとなく「ルパン」に似ている感じなのか。

M-37 哀愁
これも最多出場曲のひとつ。
どんなシーンでかかってましたっけ。
しょっちゅうかかっていた(笑)。思い出のシーンとか。
これ何の楽器ですか?
オカリナ。
わからなかった。ちっちゃい頃、口笛だと思っていた。
そうそう。口笛だと思っていた。オカリナに聞こえないんですよ。

M-21 そしてまた少年は旅立つ
ラストシーンなんかによくかかってましたよね。
これが最終回のラストの曲だから。
「トリトン」ってナレーションがない作品だったじゃないですか。
ナレーションありましたよ。
ええ、じゃあ、こういう曲の印象しか残ってないです。トリトンがモノローグでセリフを言って、こういう曲がかかってそれで終わりっていう印象があるんですよ。トリトンが自分で自分に言い聞かせるように言うのが、ナレーションみたいな感じだった。
確かに説明的なナレーションはあまりなくて、妙にセリフが多い、富野アニメだから(笑)。
私、最終回って、ちっちゃい頃は理解できなかった、難しくて。
あれはやっぱり子どもにはわからないですね。

歌を聴きながら

「海のトリトン」(Go!Go!トリトン)
歌はかっこよかったですね、曲だけ聞いてもカッコいいんですよ。歌詞もいいしね。
これは曲先で作ったそうなんですよ。詞はあとでつけた。
この曲嫌いって人はいないでしょう。
いないでしょうね。「アニメージュ」で最初にアニメソングのベスト10を選んだときに1位になった。
この感じって、なんかアニメソング・ファンに共通に訴えるものがあるのかもしれないですね。
「アニメソングっていったら、こういうイメージ」っていうのが全部入っている。この曲をデモで聞かせに行ったときに、はじめてでちょっと自信がなかったんで、すぎやまこういちに助言を受けたって「アニメージュ」に書いてました。
ああ、書いてましたね。すぎやまこういちが、ヒットメーカーだったので相談しに行ったって。
だから、アニソンの影にすぎやまこういちあり(笑)。
いろんなところに名前出てくるものなあ。
曲自体は変えてないらしいんだけど。
編成とかは参考にしたんですかねえ。
したのかもしれないよね。
ここで、こうきたらどう? とか(笑)。

「ピピのうた」
RYO-3さん、「ピピのうた」の聴き所はどの辺ですか。
R3 いやー、ヴォーカルのメロからのはずし具合でしょう。メロっぽいんだけどセリフっぽいって歌い方って難しいんだよ。
「新オバケのQ太郎」みたい。
R3 そう。声優の人が得意なんですよ、こういう歌は。
歌うのも難しいよね。完全に、昔のテレビまんがのイメージですよね。「ハゼドン」とか(笑)。
「ハゼドンだよーっ」みたいな。
この歌とか、須藤リカの「海のトリトン」とか、絶対に「ハゼドン」のイメージじゃないかと思う。
ああ、そうかも。
間違ってるよね。「海のハゼドン」とか。
ハゼドンも一応サンライズの仲間だから。
R3 「〜死んじゃう」はないだろう(笑)。どういう歌詞なんだ。
ほんとにこれだけ聴くと、ピピのキャラクターって別もんですよね。
作詞って誰?
丘灯至夫。
「みなしごハッチ」の。
これって広川あけみが歌ってますか?
そう。広川あけみってもともと歌手なんですよ。
あ、そうなんですか。
声優はむしろ、アルバイトなんじゃないかな。レコード出しているし。

「海のトリトン」「海のファンタジー」
なんでかぐや姫なんだろう。
R3 これ西崎チョイスじゃないですかねえ。
そうなのかなあ。
R3 あの人はだって、当時はやっている人を絶対呼んでこようとするじゃないですか。
かぐや姫って当時はやっていたの? もっとあとじゃないですか? フォークのブームってもっとあとじゃないかと思うけど。
※南こうせつとかぐや姫の「神田川」は1973年。南こうせつは当時まだ無名で、タイトルにも"南高節"とクレジットされている。その後、'73年「夢の中へ」(井上陽水)「ひこうき雲」(荒井由美)、'74年「精霊流し」(グレープ)、などでフォーク・ニューミュージックのブームが到来する。(猫)
R3 あれ、そうですか。脚本とか全然読んでないで曲を書いたんですかね。
読んでないでしょう。
R3 めちゃくちゃですよね(笑)。
オーケストラ〜、なんて話じゃないんですよね。
R3 海のマンガ。子どものマンガっていうだけで作っちゃった感じ。
でも、須藤リカは歌はへたじゃない、うまいですよね。これだけ聴くといい歌なんだけど。
「トリトン」から全然独立して聴けば、別に悪い曲じゃないと思うんですよ。こういうモチーフで作品がひとつ作れると思うんですよ。「ハゼドン」みたいに(笑)。
ぼくは「トリトン」が始まったときに兄貴と一緒に見ていたんだけど、いきなりこれなのね(笑)。実写で須藤リカが歌っている絵で(笑)。なんだこれは、バカにしてると思って。
「海のトリトン」を見ようと思って見るとね。
でも、「海のトリトン」って知らないじゃない。手塚マンガの中でも全然有名じゃなかったから。「海のトリトン」とかいうのが始まるっていうんで、「ハゼドン」みたいな番組だと思って見ていたんだろうね、きっと。
始まるっていうときには、こういう感じのアニメかなっていうのって思っていたんですか?
うーん、どう思ったかっていうのは覚えてないんだけれど、単に新番組だっていうんで見ていたんだろうし。
中身の言葉も難しかったんですよ。オリハルコンとか、アトランティス大陸とか。
ミノフスキー粒子みたいなもんですか(笑)。
富野アニメですねえ(笑)。
第4話でトリトンが怪獣殺して血が流れるのを見て、戦うのは嫌だって走り出すシーンがあるんだけれども、すごいシリアスだよね。そういう展開のアニメって今までなかったから。
なんか、自分が戦いをする理由がわからないような。
だから、ヒーローものじゃないじゃない。ちょうどこの頃のアニメって、「デビルマン」とか「ガッチャマン」とか、まあ「トリトン」より後なんだけど、結局ヒーローものなのね。ロボットものが全盛になる前は、そういうヒーローものをアニメでやろうとしていたんで。そういうつもりで見ていたのかも知れないんだけれど。ぼくは小さかったらわからなかったんだけれど、兄貴がハマって、その頃はアニメ雑誌とかないから、「SFマガジン」に「トリトン」はいいっていう投書が載って、そこからファンクラブができたんですよ。
テレビまんがっていうんじゃなかったんですね。
しかもトリトンって、人間の仲間がひとりもいないんですよ。
それもすごいなあ。で、延々海の中の話なわけですね。
で、ピピとどうしても仲がよくなれなくて、「おれたち2人っきりの生き残りなんだぜ」ってトリトンの方が歩み寄ろうとするんだけれども、お互い子どもでけんかしちゃうっていう。で、ルカーが一生懸命フォローするんだけれども。
全然「ピピのうた」とは違う。
違う。ピピはね、もう超ワガママ、お嬢さまなの。
R3 見ててムカつくよ(笑)。
ああ、富野女キャラのムカつくパターン(笑)。
※実は後半ピピは素直になっていくのだが、前半のイメージが強烈らしい(笑)。(猫)
しかも「トリトン」って続きものじゃない。大河ドラマで1話完結じゃない。それも今までになかった。
R3 毎週どれい獣が来たりしないんですね(笑)。
ずっと見てないとわからなくなっちゃう。それであの歌だったからね。
さすがにこれは違うだろうと。
いきなりあれで始まるのはねえ。「宇宙猿人ゴリ」の比じゃないよね(笑)。あれは一応ポリシーがあってあの歌なんだけど。
※「宇宙猿人ゴリ」は悪役の名前がタイトルの異色特撮番組。当初は悪役ゴリを歌った「宇宙猿人ゴリ」がOPで、正義の味方を歌った「スペクトルマン・ゴー・ゴー」がEDだったが、途中で入れ替わる。(猫)

70年代アニメ劇伴は「トリトン」から始まった(?)

じゃあ、まとめとしては、「トリトン」劇伴は?
R3 やっぱりそれ以降のアニメ劇伴をサウンド的に決定づけたのが「トリトン」なんじゃないですかねえ。それがコルゲンさんの人脈で集められたミュージシャンによるところが大きいと。
そこから何かが始まった、と。
それから10年くらい続くんですね。
R3 作曲家だけじゃなくて、演奏家にも注目しないといけませんよ、と(笑)。
なるほどねー。
実は「トリトン」のBGMは、東海林修が編曲したシンセサイザーのアレンジ版しかCDになってないんですよ。今日はあえて語らなかったけれど(笑)。
一度もCDになってないんですか。
なってない。だから、オリジナルの音楽集をCD化してほしいですよね。
R3 中古屋にはたまに出ますよね。
最近ちょくちょく見ますね。でも、10年くらい前にはほとんど出てなかったんですよ。
CD化の前兆ですかね。
ねずみが沈没する船から逃げるみたいに(笑)。

('99/3/21収録)

[トリトン特集TOP] [1] [2] [3] [4] [5] [6]

Copyright (c) haramaki-neko 1998-2014