海のトリトン

劇伴解説 (3/3)

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※注:以下の記述は音楽的に正しくない場合があります。また、楽器の名前がまちがっている可能性もあります。これはおかしい、と思った方はご一報ください。


情感描写
トリトンの心理描写曲は悲しみや不安を描写するシリアスなものが多い。

・M-16 ヘプタポーダ
ハープのアルペジオをバックに、バイオリン・ソロが奏でる悲哀曲。ビブラートのきいたバイオリンが切ないメロディを弾く〜モチーフ2小節め頭の短いトリルが印象的。
第20話・太陽にあこがれたヘプタポーダが、太陽の下では生きられないと気づく哀しみのシーンで流れた。ファンには「ヘプタポーダのテーマ」と呼ばれている。第18話・青銅の巨人タロスの最期や第9話・女吸血鬼カーミラの最期など、哀しい運命に弄ばれたキャラクターたちの描写に使用されている。

・M-17 困惑
導入部は、弦の突き放すような響きに、ピアノと木琴の「ちゃららん」という合いの手が入って不安感を演出〜続いてピアノの3連譜の繰り返しで、迷い・ためらい・困惑を描写〜フルートの物憂げなメロディが重なり、ゆれる思いを表現する。全篇で使われた代表的な心理描写曲。
第1話・自分の出生の秘密を聞かされたトリトンの困惑や、第4話・怪獣から流れる血を見てトリトンが戦いを拒否するシーンなどに使用。第15話では仲間を求めて泣く恐竜のバックに使用された。

・M-36 悲愴
弦のアンサンブルだけで演奏される悲哀曲。むせぶような弦のメロディの合間にコントラバスのピチカートが入る。同じ悲しみの曲でもM-16にはロマンチックな雰囲気があるが、M-36は不幸のどんぞこに突き落とされたようなイメージ。
第5話・ピピを逃がすために死ぬプロテウス、第15話・ポリペイモスに殺される恐竜の場面に使用されている。

・M-37 哀愁
主題歌メロの冒頭部を引用したさびげなメロディが、オカリナで奏される。テレビでは口笛のように聞える。8小節のシンプルで短い旋律だが、一度聴いたら忘れられない名曲。トリトンを代表する曲のひとつ。
第2話・トリトンを思い出す一平じいさん、第3話・メドンの死を悲しむトリトン、第21話・ヘプタポーダを葬るトリトンなど、数々の名場面に使用されている。

情感・情景描写
作曲メニューが不明のため、情景描写曲と情感描写曲を曲想だけから分類するのは難しいので、一緒に扱うことにする。

・M-32 穏やかな海
ピアノとベースのイントロ〜アルトフルートのあたたかな音色が奏でる平和曲。後半、情感描写風のヒューマンなタッチになる。
平和描写にも使用されたが、仲たがいしていた者たちの心が通うシーンの使用が印象的。
第7話・オリハルコンの剣をトリトンに渡すピピや、第12話・イルカ島に帰ってきたトリトン、第21話・トリトンがヘプタポーダを旅に誘う場面などに使用。

・M-38 北の海
冬のイメージの曲。
クラリネットのストイックな音色に、ピアノとパーカッションが「ピロロン」という玻璃の音のようなの合いの手を入れる〜8回の反復進行で1コーラス終り〜再び最初に戻る。M-28のバリエーションのようにも聞える。
第4話・第5話の北極海の描写に使用。物語終盤、トリトン一行が再び北極海をおとずれたときにも再度この曲が流れた。

・M-102 放浪
ピアノのリズムから入る3拍子の平和曲。ピアノのイントロ8小節〜ソプラノサックスのメロディ(バックにブラス)〜トロンボーン〜ふたたびソプラノサックス。
2分を超える長い曲のため、「テーマ音楽集」ではフェード・アウトして収録。

・M-105 海
リズムを刻むピアノのイントロのあと、フリューゲルホルンのあたたかなメロディ〜後半オーボエがメロを引き継ぐ。太陽の下の穏やかな時間・・・というイメージのほっとする曲。
バート・バカラック風。

・M-107 楽しい遊び
アップテンポの陽気な曲。元気一杯のブラスのメロディ〜後半サックスが引き継ぎ〜コーダではギターのアドリブも。
うきうきした気分が押さえられず飛び跳ねる仲間たち・・・といったイメージだが、本編使用は確認できなかった。

・M-108 海の散歩
ピアノが前面にフィーチャーされた軽快なジャズナンバー。はずむメロディをピアノで演奏したあと〜中間部ではサックスのアドリブ〜ふたたびピアノ。
おそらくピアノはコルゲンさん本人。ジャズピアニストとしてのコルゲンさんの本領発揮の1曲である。バックのラテン・パーカッションもノっている。
ピピの初登場シーンや、仲間と遊ぶピピの描写に使用され、M-27のメロディよりもより「ピピのテーマ」という印象が強い。「ピピと仲間たち」とでも呼ぶべき曲。
この曲も長い曲のため、「テーマ音楽集」ではフェード・アウトして収録。

・M-? 木もれ陽
ベース+キーボードをバックに、ギターがけだるいメロディを奏でる。南の島の午後・・・という印象の平和曲。
7話でイルカ島にピピの家を作るトリトンや、15話で恐竜のからだに手を触れるトリトンの描写などに使用。
「テーマ音楽集」には収録されておらず、「白ジャケ」のみ収録。

・M-? 愉快な仲間
珍しいコミカル曲。低音の金管(トロンボーン?)にワウ・ギターとピアノ。「ぶんちゃちゃ・ぶんちゃちゃ」というコミカルなフレーズの反復進行。第10話でけんかをするトリトンとピピを見守るイル・カル・フィンの描写に使用。

こうしてみると、情景・情景描写曲の100番台の曲は、「南国パラダイス」という雰囲気の曲が多い。先のアクション曲もそうだが、100番台は、劇伴としての使いやすさよりも曲自体の独立性を重視して作曲・演奏したように思える。

ブリッジ
「トリトン」では、ブリッジ曲の使用頻度は比較的高い。長い曲を切って使うよりも使い勝手がよかったからだろうか。
以下では、「テーマ音楽集」収録曲を紹介する。

・M-22 夜が明けて
フルートによる、さわやかな情景描写曲。

・M-45 進撃
ブラスによる短いファンファーレ曲。「タッタカター↑」という感じ。

・M-48 テンション!
早いテンポでたたみかけるようなサスペンス曲。最後にブラスの音が「ぶーわうわうわうわう〜」とくずれて終り。

・M-54 不気味に
ブラスが短いフレーズを畳み込むように繰り返すサスペンス曲。第23話・化石の森の光景の描写に使用。

・M-55 それから場面は変わって
使用頻度の多い場面転換曲。短い曲ながら、ピアノ(ダン!)〜ホルン(ぷぁーぷぁぷぁーぷぁー→)〜フルート(ひゃららららら〜↓)〜ハープ(ボロロン)と展開する密度の高い曲。

・M-57 平和、穏やかに・・・
フルートとピアノが奏でる「トリトンの主題」のスローテンポのアレンジ。静かな決意や希望を描写する曲。

・M-59 前進
ブラスによる力強いファンファーレ曲。M-45よりテンポは遅い。

・M-60 眉をきして・・・
ブラスによる「トリトンの主題」のアレンジ。敵に向っていく場面などに使用。

・M-62 静かに余韻を受けて
これも使用頻度の高い曲。フルートの涼しげな音色〜コーダにハープが重なる。平和描写曲。

・M-63 時は流れて・・・
フルートとピアノの下降するフレーズが場面転換を表現する曲。

Extra曲
Extra曲とは、各エピソードや追加キャラクターに合わせて録音される番外の曲のこと。

・M-? ホラ貝の音
トリトンの父母のかたみであるホラ貝を吹いたときの音色で、本編中に幾度か登場。ホルンの音が使われている。「ブロロ〜〜↑」という感じ。
音楽というより効果音の一種だが、BGM録音の際にあらかじめメニューに入っていたそうである。

・M-? 七つの渦
第2話・大海亀メドンのもとをおとずれるときにトリトンたちが通る、海中の七つの大渦巻きの音で、ハープの「ボロロン、ボロン、ボロロン〜」という音で表現されている。
この音も効果音の一種だが、やはりBGM録音時にメニューに入っていた(初期話数だったためであろう)。

・M-? カーミラの呼び声
第9話「ゆうれい船のなぞ」に登場した女吸血鬼カーミラが、犠牲者を呼び寄せるために歌う歌。催眠効果がある。
無調で歌われるあやしげなスキャットで、歌詞なし。たぶん、譜面もなく歌手がアドリブで歌ったのでは?
本特集の座談会の席で、このスキャットは伊集加代子さんではないか、という話題が出たが、参加者全員で聴いてみた結果、「違うらしい」ということに落ち着いた。


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