海のトリトン

劇伴解説 (1/3)

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※注:以下の記述は音楽的に正しくない場合があります。また、楽器の名前がまちがっている可能性もあります。これはおかしい、と思った方はご一報ください。


テーマアレンジ
「トリトン」にはテーマアレンジがほとんどない。もっともメジャーなものは、オカリナが主旋律を吹くアレンジ。それ以外には、第6話のみで使用されたギターメロのアレンジ曲がある。

・M-23 遥かなる旅は続く
オカリナの寂しげな音色で主題歌のメロディを奏でる曲。
主題歌のAパート16小節を奏したあと、ギターとベースのアドリブが16小節続くという驚きの構成。ジャズ出身の鈴木宏昌ならではのアレンジである。再び主題歌のメロディを最初から繰り返し、「ゴー!ゴー!トリト〜ン」以降のサビのメロディは含まれていない。
テーマメロ後半(「誰も見ない〜」の部分)では数原晋のトランペットとそれにかぶる杉本喜代志のギターのアドリブが実に印象的で、「旅立ちのテーマ」とでも名づけたいカッコいい曲だ。
第1話ラストなど、ラストシーンでの使用が多い。
テレビではフルサイズ流れたことはなく、このアドリブ部分でフェードアウトするか、アドリブ後のテーマメロディから使われるかどちらかのパターンだった。そのため、ファンは、主題歌アレンジには、フェードアウトするものとしっかり演奏が終わるものの2種類があるものと思い込んでいた。

・M-? Go!Go!トリトン・ギターアレンジ
主題歌(Go!Go!トリトン)のカラオケにギターでメロディを乗せたのも。第6話ラストで1回だけ使用された。このときは、前奏〜サビのメロディ(Go!Go!〜)〜後奏という編集になっているが、原曲はフルコーラスある可能性が高い。

サブテーマ・挿入歌アレンジ
本編使用劇伴には、南こうせつ作の「海のトリトン」「海のファンタジー」、松山祐士作の「ピピのうた」のアレンジ曲は一切ない。

しかし、劇中の現実音楽として、挿入歌のメロディが2度登場している。

ひとつは、第7話でピピがスキャットする「ピピのうた」のメロディ。「ルルル〜」というスキャットで歌われる。

もうひとつは、第11話でイル・カル・フィンがピピのために歌う「海のトリトン」。こちらは「海の底の〜」としっかり歌っている。歌うは、声優の大竹宏、肝付兼太、杉山佳寿子の3氏。「海のトリトン」本編を見直していて、この歌が流れてきたときはオドロいた。

「海のファンタジー」のメロディは劇中での使用はまったくない。

サブタイトル曲

・M-2 タイトル
アトランティスの古地図の絵をバックに演奏される、毎回のサブタイトル音楽。
ブラス(ペット+トロンボーン?)の渦巻くようなフレーズに始まって、ブラス〜ドラム、ブラス〜ドラムのかけあいのあと、最後にブラス+ハープ。10秒足らずの短い尺に荘厳なイメージとロマンの香りを込めた名タイトルバック。

プロローグ曲

・M-1 進め!トリトン
「トリトン」の物語は、第1話冒頭で、火山弾をよけながら海を進むトリトンとルカーたちの描写から始まる。本編が始まる前に、物語が進んだあとのハイライトを見せて視聴者の興味をひく手法で、斬新だった。その場面にかかった音楽。いわば、「トリトン」開幕の曲である。
トロンボーンのイントロのあと、ブラスとドラムスのアタックをはさんで、ストリングス+ブラスの軽快なマーチに変わる。ベースの低音が印象的。マーチ部分の旋律は、トリトンのメイン主題となるメロディ(「トリトンの主題」)。コーダではギター・杉本喜代志のすばらしいアドリブが聴ける。
M-1が割り当てられていることから、コルゲンさんはシナリオを読んでから(または本編を見てから)作曲したことがうかがえる。
第20話でもサブタイトル前のプロローグに使用されている。
「白ジャケ」版はコーダ部分がより派手に終わるようアレンジされている。

予告編音楽

・M-? 予告編
M-1,M-14で使われている「トリトンの主題」をストレートに演奏した曲。編成は、ブラスと弦。M-1の編集曲かもしれないが、確認できない。

マーチ
「トリトン」の劇伴を特徴づける音楽のひとつがマーチ。BGM集のタイトルを見ても、「イルカのマーチ」「進撃のマーチ」など、マーチのつくタイトルが目に付く。M-No.ではマーチ曲が続いているわけではないので、「マーチ」という劇伴メニューで発注があったわけではないようである。

・M-5A 進撃のマーチ
2拍子の力強いマーチ。ブラスバンド風のメジャーコードの行進曲〜「タッタタタター↑」と上昇感のあるフレーズを反復進行する短いトリオが8小節〜ふたたびブラスバンド風テーマに戻る。
明るい曲想のため、トリトンや仲間たちが力強く進撃するシーンに使用されている。

・M-14 勇気のマーチ
木琴が隠し味の2拍子のマーチ。これもブラスバンド風だが、M-5Aよりややアップテンポで勇壮な感じ。トリオはなく、トランペット+トロンボーンのメロディが2コーラス続く。リズムがチューバのため、「ブン・チャッ・ブン・チャッ」という感じ。
メロディは、M-1でも使用された「トリトンの主題」。第1話では、トリトンがはじめてトリトン族の衣装を身につけて戦いにおもむくシーンに使用された。

・M-29 イルカのマーチ
2拍子のマーチ。導入部はドラムソロだけで8小節〜主旋律はトランペット〜トリオで木琴が入り、軽快な感じになる〜ふたたびテーマに戻り、トランペットに木琴が重なる。
トリトンたちを助ける旅イルカたちのテーマで、通称「イルカのマーチ」と呼ばれている。劇中使用回数は少ない。
「白ジャケ」版では、テーマが終ったあと最初のドラムソロに戻り、もう1コーラスたっぷり演奏される。

海のテーマ・アトランティスのテーマ
「これぞトリトン」と感じる曲に、海・アトランティスを描写したと思われる一連の曲がある。ナレーションバックによく使われたムーディな曲や、透明感あふれる音色が涼しげなメロディを奏でる曲などである。
いずれも、ホルンや木管、ハープ、木琴などのやさしい音色の楽器がメインになっている。
情景描写・情感描写曲として使われることもあるが、やはり、アトランティスの回想シーンや、トリトンの父母の描写などに使われたのが印象的。

・M-5 追憶
低音のフルート(?)が奏でるムーディなボサノバ。バックのシンバルとピアノが印象的。やや感傷的なメロディをフルートが演奏したあと、メロディ後半をミュートトランペットが引き継ぐ〜ふたたびフルートに戻って2コーラスたっぷり聴かせてくれる。
第1話・トリトンを見つけたときのことを語る一平じいさんのシーンはじめ、回想場面やアトランティスを描写する曲として幾度も登場。トリトン劇伴の代表的な名曲のひとつ。
「太陽にほえろ!(1972.07〜)」の「行動のテーマ」という曲とよく似ているが、たぶん偶然だろう(放映開始は「トリトン」の方が先)。
同じM-No.を持つM-5Aはマーチ曲なのだが、メロディや曲想に共通点はない。番号の記載間違いか?

・M-6 海に眠るアトランティス
フルート+ハープの導入部に続き、木琴のアルペジオをバックにホルンのゆったりした旋律が奏でられる。ハープのきらめくようなグリッサンドが重なって荘厳な感じ〜フルートがやや寂しげにメロディを引き継ぐ。海に眠る大陸を描写する神秘性と重厚さをあわせもった名曲。バックの木琴・ハープ・ピアノで、波のきらめきや海中のゆらめく情景、あぶくなどのイメージを表現した。
タイトル通り、アトランティスの伝説を語るナレーションバックとして、本編1クールめでは毎回のように使用された。ホラ貝を通して、亡き父母がトリトンに語りかける場面にも使用されている。まさにアトランティスのテーマ。

・M-8A 思慕
ストリングスの不安なトリルにフルートの寂しげなメロディとハープが重なる。青い光が照らす海中を表現する、静かで透明感あふれる曲。
「思慕」というタイトルになっているが、アトランティスの回想シーンでも使用された。第1話・トリトンが海中ではじめてルカーと出会うシーン、第2話・大海亀メドンの登場シーンで使用されている。

以上3曲はM-No.が近接しているので、ほぼ同一のシーケンスを念頭において作曲されたと思われる。

・M-28 遥かなる海の彼方に
オーボエが奏でる哀愁に満ちたメロディのあと、ハープのきらめくようなグリッサンドが合いの手に入る。オーボエ〜ハープ、オーボエ〜ハープの繰り返しのあと、フルートがやさしく包み込むようなメロディを吹いて〜ふたたび最初のオーボエのメロディに戻る。
アトランティスの情景描写のみならず、トリトンがやるせない思いに沈んでいる場面やピピやルカーと気持ちが通じ合う場面などの情感描写にも多用された。第2話ラスト・トリトンを呼ぶ父母の声や、第11話・ピピをさとすトリトンのシーンなどで使用。
主旋律の展開はM-6に似ており、一種のバリエーションに聞こえなくもない。M-6の方がゆったりしたテンポで重厚、M-28の方がテンポが早くより叙情的。
「トリトン」といえば、このM-28か、M-5、またはM-37が思い浮かぶ。最多使用楽曲のひとつ。

・M-31 行く手にたちはだかるものは
M-5のアレンジ曲。トリトン劇伴では、このように同じ旋律の別アレンジ曲は珍しい。
M-5よりアップテンポになり、ジャズスタイルの演奏。M-5では、メロはフルート〜ミュートトランペットに引き継がれたが、この曲ではミュートトランペット〜サックスに引き継がれ、より大人っぽい音色になっている。クラブで演奏してもなじみそうな曲。
第16話・レハールの幻影と対決するトリトンや、第23話・不死の魚ラカンとの出会いのシーンなどで使用。

キャラクターテーマ
トリトン劇伴にはキャラクターテーマがほとんどない。
「ポセイドンのテーマ」「ピピのテーマ」が数えられるくらいである。
バイオリンによる「ヘプタポーダ」のテーマは、ヘプタポーダの回の使用が印象的なためそう呼ばれているが、いわゆるEXTRA曲ではない。

・M-11 ポセイドン
ポセイドンやポセイドン一族の幹部たちの登場シーンに必ず流れた曲。
ブラスと弦の重厚な音で不安な旋律を演奏〜中間部にドラムの連打+弦の不協和音〜またブラスと弦の重厚な響き。のちのヒーローもの劇伴の悪のテーマの典型がすでに聴かれる。
中間部ではドラムとともに木琴が使われている。こうした印象的な音色の楽器を隠し味のように入れていくことで、劇伴の統一感を出している。

・M-27 可愛いピピ
ピッコロが明るくはずむフレーズを奏でるアップテンポのワルツ。合いの手のパーカッションは、水滴がぴちゃんとはねるさま? メロディを2回奏したあと、中間部はクラリネットのやさしい旋律〜ピッコロのフレーズに戻る。
2枚のLPでは、いずれもピピのテーマとして収録されているが、作曲時にピピのキャラクターを想定していたかどうかは不明。(前半のピピはこういうキャラクターではないが)
この曲自体は本編中では未使用だが、同じメロディを使った短いブリッジ曲がピピの登場場面に使用されている。フルートメロのものと木琴メロのものの2種類で、いずれも音盤未収録。

実は、このM-27以外にもうひとつピピのテーマとおぼしき曲がある。

・M-? おてんばピピ
トロンボーン+ブラスのイントロ〜木琴が演奏するコミカルなメロディが続く。しっかりしたメロディがついているが、主題歌・挿入歌のメロではない。歌のカラオケのようにも聞えるので、ひょっとしたらコルゲンさん作曲の「ピピのうた」があったのかも?
使用されたのは、第6話・ピピを連れ戻しに行くトリトンの場面と、第7話・ヤシの木を引き抜くトリトンとイルカたちの場面の2回だけ。


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