海のトリトン

劇伴解説 (2/3)

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※注:以下の記述は音楽的に正しくない場合があります。また、楽器の名前がまちがっている可能性もあります。これはおかしい、と思った方はご一報ください。


サスペンステーマ
「トリトン」のサスペンス曲は、弦やブラスが主体のスリル・不安描写系のものと、ベース、ギター、ドラムス主体のセッションで演奏されるジャズタッチのものに分かれる。が、後者は使用場面が少なく、「テーマ音楽集」にも収録されていない。以下は、前者のスリル曲系を中心に紹介。

・M-3 急を受けて迫る危機!
この曲と次のM-7はブリッジに分類されているが、M-No.が若いことから、第1話のシナリオに基づいて作曲された曲かと推定される。
ブラスのアタック「ダダダッ!」のあと、上昇する弦と木琴の音階が危機感をあおる〜ブラスの短いフレーズを4回繰り返して〜コーダ「じゃーん」。
わずか14秒の曲ながら、急展開して危機に陥るシーンなどに多用された重要劇伴のひとつ。
第1話、猪ノ首岬から飛び込むトリトンの場面に使用。

・M-7 忍び寄る魔の手
静かに刻むリズムに、フルートの「ひゃらららら〜↑」というサスペンスタッチのフレーズが入ってくる。ふたたびリズムのあと同じフレーズをもう1回奏して〜ドラムの「だだだっ・だだだっ」というアタック〜下降するフルートのフレーズでコーダ。
緊迫した場面で、急に状況が変わる展開のイメージ。
第1話・トリトンを探す一平じいさんや、トリトンに警告するルカーなどの場面に使用。

・M-24 迫り来る敵
緊迫したブラスの導入部〜ベース+ピアノのリズムが24小節続く〜ブラスの全音符のフレーズが入って、「じゃーん」と終わり。
迫り来る敵を描写するような曲で、メインになるのベースとピアノのリズムの刻みが焦燥感をあおる効果を出している。
第3話で、大渦巻を乗り切るメドンのバックに使用されていた。

・M-? 不安な心
弦が不協和音を鳴らす不安曲。テンポはゆっくり。弦のアンサンブルだけで展開する。
使用場面は、第1話・猪ノ首岬から飛び込もうとするトリトン、第5話・北の海の幻の島、第21話・ゲルペス連隊対トリトン、第25話・ゴルセノスの砂地獄、最終話・ホラ貝がポセイドン族の秘密を語るシーンなど。

・M-? 緊迫
低音の弦が不安な音を刻む〜高音の弦がからみ、低音と高音がかけあう展開〜最後に砕けたように音が散って終り。
使用頻度の高い不安曲で、「テーマ音楽集」に収録されていないのが不思議。
使用例は、第1話・生い立ちを知ってうちを飛び出すトリトン、第2話・かたみのホラ貝を投げ捨てるトリトン、第8話・トリトンが「悪魔の子」と呼ばれる場面、第15話・波にもまれるトリトンとピピ、第20話・ヘプタポーダがピピとフィンを人質にしている場面など。

以上のほかに、第3話・ドリテアとの戦いで使われたギターとドラムスのセッション曲や、第15話などで使用された、緊迫感のあるリズムにサックスのアダルトなアドリブがからむ曲などがある。

アクションテーマ
トリトンのアクションテーマは、その後のヒーロー番組のアクションテーマによく使われるブラスロックのスタイル。曲の構成やサウンド的も、のちのアクション番組劇伴によく似たパターンがすでに登場している。

・M-20 襲撃
地鳴りのようなドラムとチューバをバックに咆哮のようなブラスが入ってくる〜上昇するストリングスが不安感を高める〜ドラムが小刻みなリズムを刻む中、木琴のトレモロとトランペットの緊迫感あふれるかけあいが展開。この部分、「ヤマト」劇伴の「敵宇宙船の出撃」という曲(「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」の「出撃」)に似ている。挿入されるエレキギターのアドリブも秀逸。
短い曲ながら、本格的な映画音楽を聴くような充実の1曲。
ポセイドンの幹部の手先である怪獣の登場シーンでは、毎回のように使用されていた。特に第1話の怪獣サラマンドラの襲撃シーンが印象的で、この曲もM-1と並んで、シナリオに基づいて書いたのではないかと思われる。

・M-101 闘い
東映ヒーローものならバイクの追跡シーンにかかるような疾走感あふれる曲。「ヤマト」の「探索機発進」(「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」の「挑戦」)という曲にも似ている。
ドラム、ベース、ハモンドオルガン、ワウギターをバックに、ブラス(ペット+トロンボーン?)が歯切れのよいメロディを奏でる。合いの手のドラムが入って〜ふたたびブラス。典型的なブラスロックの曲。
トリトンがルカーに乗って怪獣を追撃するシーンや、緊迫感あふれる殺陣のシーンなどに使用。第14話・対ポリペイモス戦のBGMとして使用されている。

・M-103 ゴルセノス
エレキギターのうねうねするフレーズが32小節繰り返されるオドロキの曲。ベース+ギターで始まり〜途中からドラム〜さらにハモンドオルガンが重なる。16小節ぐらいまでは「長いなあ」と思って聴いているが、24小節を超えると快感になる。うねうねギター32小節のあと、中間部はドラム+ベースをバックに、ギターとオルガンのアドリブ〜ふたたび頭に戻って、うねうね32小節をもう1回演奏して終わり。
文章で書くとなんじゃこれは、だが、曲を聴くとかっこよいのだ。劇中ではポセイドンの襲撃シーンや、トリトンとの戦闘シーンに使用。こんな曲で戦うなんて、かっこよすぎ。
第25話の対ゴルセノス戦で分身術に苦戦するシーンに使用。

・M-104 突撃
原始の記憶を呼び覚ますようなドラムの導入部が4小節〜ブラス(ペット+トロンボーン?)の荒々しい叫びが入ってくる。中間部にサックスのアドリブが思う存分吠えたあと、ふたたびブラスの叫びに戻ってもう1コーラス。コーダはイントロと同じドラムのリズムのあと「ダダッダ!」と終わり。
トリトン劇伴中でももっともワイルドな曲。怪獣たちとの戦いや、激しいつばぜりあいのシーンなどに使用。
第1話・ルカーを追うトリトン、第19話・対タロス戦など。

・M-109 ブルーダ
アクション曲というより、ミディアムテンポのブラス・ジャズ。
ベースのソロに始まり、ドラム・ギターが重なるロックンロール風イントロ〜合いの手風ブラスが「ぶぁぶぁっ↑」と入ってくる〜アドリブっぽいサックスが、続いてギターが、ブラスとかけあいを展開。
23話・対ブルーダ戦、25話・対ゴルセノス戦の戦闘曲。

・M-? 挑戦
ギター+ベースの軽快なイントロが4小節〜ブラスの歯切れのよいフレーズが歌いだす〜フルートのアドリブ。
22話・対アーモン戦、23話・対ブルーダ戦の戦闘場面で使用。M-109とテイストが似ているので、M-No.も近接しているのではないか?
「テーマ音楽集」には収録されておらず、「白ジャケ」にのみ収録。

・M-? 銀ザメ
ブラスとギターがかけあいを展開する曲で、第8話、第11話で銀ザメとの戦いに使用された。

アクション曲は100番台の曲がほとんどである。100番以前は、ブリッジ曲が続いて、いったん60番台で切れているので、100番台は劇伴メニュー補完のため、あとで追加で作曲したのではないかと想像される(ただし、劇伴自体は追加録音されていないので、録音の合間に追加したのではないだろうか?)。

これ以外に、第11話などで使われたハモンドオルガンとワウ・ギターのセッション曲、ブラスとピアノのセッション曲、ベースと弦のセッション曲などが存在するが、いずれも使用頻度は低い。

スペクタクルテーマ
火山の爆発や大軍の進撃シーンなどに使用された派手な曲をこう名づけた。
「ヤマト」のようなSFものや「ウルトラシリーズ」に代表される特撮怪獣ものでは、この種の曲が多く書かれるが、「トリトン」はファンタジーなので数は少ない。が、いずれも印象的な名曲である。

・M-21 そしてまた少年は旅立つ
最終回ラストに使われた、壮大なイメージの曲。
トランペットの雄大なメロディ〜弦と木管の「ちゃららららら↑らららららら↓」と上昇・下降するフレーズが受ける〜2回繰り返しのあと〜ブラス群がヒロイックな中間部を演奏〜もう1度トランペットのメロディを2回。行進曲のような力強いリズムがバック。主題メロの間に打楽器+ブラスの合いの手を入れて高揚感をあおるのは、のちの「スターウォーズ」などでも聞かれる手法。史劇の音楽のような格調と悲壮感に満ちた曲だが、マカロニウエスタンを思わせるかっこよさもある。
元々ジャズ・プレーヤーでありながら、こうしたクラシカルな曲まで書いてしまうコルゲンさんの引き出しの広さに驚かされる。

・M-33 勇壮
トリトン率いるイルカ軍団の進撃や、ポセイドン軍団の進撃など、決意を込めた進軍シーンに多用された。
ブラスの高らかなファンファーレのあと、ベースとドラムが刻むリズムが4小節〜トランペットの悲壮感のあるメロディが入る〜メロディ後半はチューバなどが低音で勇ましいテーマを演奏。この間、ベースとドラムのリズムはずっと続いたまま。コーダはふたたびファンファーレになり、管、弦、打楽器の全合奏で「ダダダンッ!」と終わり。
1曲だけでたっぷりお腹がいっぱいになるようなドラマティックな曲である。
M-21とM-33は印象が似ているが(どちらもマカロニウエスタンぽい)、M-21の方がスローテンポで重厚、M-33の方はアップテンポでよりカッコよさが追求されている。


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