音符

イタリック体、フォントの色が違う部分は、歌詞等からの引用です。


CYLINDER
(92.3.25)WPCL-637


アルバムのテーマは『官能に浸り孤独を紛らす人』。

ジョイサウンド(カラオケ音源)を設置しているカラオケ店では、このアルバムの中から3曲歌えます。ちなみに「Cylinder」、「Sister」、「月食(Eclipse of the moon)」。
でもハッキリ言って、素人が歌うには難しすぎる曲ばかり。相当な歌唱力と表現力がないと、とくに「月食」なんてとても無理。そりゃ、歌うだけなら誰でもできますけども。選曲した人は、どういう基準で選んだのか?

内容とは関係ありませんが、このアルバムのレコーディング中にいろいろと霊現象が起こっていたとか・・・。貴族氏の著書に書いてありました。(『池田貴族の TVで話せなかった超怖い話』/竹書房文庫)




「All Love Is Not Forever」
作詞:池田貴族 作曲:前崎史郎

哀しすぎ。
歌詞はすべて英語なのですが、私なりに訳して要約させてもらうと、

すべてを君に捧げてきた
でも 愛は永遠じゃなくて・・・
去りゆく君をいまも愛してる
君なしでは 生きられない
といった感じでしょうか。ちょっと意訳もはいってますが。こういうロマンチックな曲を書かせるならこの人! っていう前崎氏の作曲(編曲も)。非常に美しく、切ない作品です。人生の不条理は承知の上であえて、愛だけが永遠だよと思いたくなる。


「Cylinder」
作詞:池田貴族 作曲:愛川弘樹

めくるめくCYLINDER WORLDのはじまり。息つくことを許してもらえぬ、すごい世界なのです。

かっこいい歌。音楽を言い表す語彙に乏しくて歯がゆいのですが、うなるサウンドとでもいうのか(貧しい言葉(T_T) )、

激しいオイルにまみれながら
狂った歯車巻き込まれ
メカニックな響きと官能的な色調が、" She is a Cylinder... " というサビの部分でぶつかり、炎ほとばしるといった様相。あぁ、言葉じゃ表現できないっ!!
貴族氏のヴォーカルなのですが、このアルバムくらいから特にハスキーさが増し加わって、「ジュリーを越えたな」と私は思った。


「Sister」
作詞:池田貴族 作曲:中 博端

初めは、明るい曲調と官能的な詞を表面通りに受け取って、やってくれるなぁと思いました。が、ちょっと待て。「明るいremoteには何かある。」
注意深く聴き返すときに、さわやかさ?の裏返しの孤独感のようなものが見えてくる気がしました。だって、求めているのは救いの女神。
「夢を叶えてあげる 明かりを消せばすぐに」
誘われるまま今日も 明かりを消してすぐに

このアルバムを貫くテーマに「官能」があり、ある友人は歌詞を読んで、マイケル・ダグラスのようだと言っていました。確かに、1、2枚目とアルバムを聴いていって、この3枚目で、え〜突然どうしたんだろうって思う世界がそこにはあった。これらはあくまでも「作品」ですから、作り手の現状を直接的に見る気はないですが、当然伝えたいメッセージがその中に込められているはずだと思いました。それはやはり「苦悩」だろうと。官能にひたる人の中に見える孤独は、ひとりでいる孤独よりも深いものの気がした。

『Sister』というタイトルのニュアンスは、すごく内容とマッチしてるナと思います。



「Fairy」
作詞:池田貴族 作曲:愛川弘樹

忘れたつもりのかつての恋人が夢に顕れて、別れの苦い思い出もよみがえる。
「Fairy」という呼びかけは絶妙だと思います。もう手の届かない、Fairy。
すれちがう時が許せなくて
背を向けた 君を責めたけれど
伝えたい 今でも愛してる
いまさらと わかってはいるけれど・・・
詞もサウンドも良いのですが、なんと言っても良いのがヴォーカル! 前に、HOLY NOIZのアルバムの話を友人としていたときに、貴族氏の歌い方は「え段」がすごいくるよねってことで意見の一致をみました。上記のサビ部は「え段の魅力」これでもかって感じでたまりません! 歌詞引用が多くて申し訳ありませんが、
いつまでも 君のそばにいたい
いつまでも 君にさわっていたい
いつまでも 君を愛していたい
いまさらと わかってはいるけれど・・・
というラストの「想い」に、癒されるものがある。私の中の別格ソングその3。


「My Pleasure」
作詞:池田貴族 作曲:前崎史郎

この曲はとっても好きでー、ただ、秘め事の世界なので言葉でどうこうは言いたくないという。感想書きをさぼるんではないですが、内緒かナ・・・。
あー、色っぽいぞ!! 曲が似ているという意味ではなく、歌の持つ意味合いも違うのですが、PRINCEの『DO ME, BABY』に近いインパクトが。


「(I’ve always been)Alone」
作詞:池田貴族 作曲:中 博端

アルバムを初めて聴いたときに、まず一番印象に残ったのがこの曲でした。2ndの『TOO GOOD FOR ME (>>>)』と、いかにも同じ人だよナァーという感じがして。
かなり勝手言ってるわりに孤独には耐えられないらしいこの人物。「独りが好きな 寂しがり屋だわ」というTOO GOOD・・での名セリフがよみがえってきます。

でも、一番好きなのは、

傷つくことにいつも
怯えていたけれど
傷つけることに気付かずに・・・・
の箇所。『Misery Gigolo (>>>)』 にも通ずるものを感じ、う〜ん、と思いつつ結局この手に弱いかも。


「Top Secret」
作詞:池田貴族 作曲:中 博端

かっこよさはピカイチ。「リモート・ベスト」セレクトテープを自分で作ったときに、迷わずこの曲をオープニングに持ってきました。ヴォーカルが渋い。

HIRO氏の曲というと、例えば『Never Be!』や『NO!』のような明るいナンバーが印象強いですが、この曲や『Misery Gigolo』などのマイナー調の曲にも、捨てがたい魅力が発揮されてると思います。私の中では、しみる別格ソングの愛川氏、文句なし傑作の前崎氏、捨てがたき佳曲のHIRO氏というのがあって、これなんかも絶対に外せないお気に入りの1曲です。



「Cylinder II」
作詞:池田貴族 作曲:前崎史郎

重厚な古典的ハードロックといった様相。前の曲からの連続で、渋くかっこよい。
" 誰が悪いわけじゃない 体が勝手に〜 "からサビにかかるあたり(ジャン!ジャン!)の盛り上がりは興奮のピーク、アルバム中のヤマ場かも。

欲望のおもむくままに、今夜も街をさまよう「女」。何となく、新約聖書の中の「姦通の女」の話を思い出します。姦通の現場を捕らえられてきた女。この女をどう裁くつもりかとの追求に対するイエスの言葉は、「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まずこの女に石を投げなさい」でした。言葉じりをとらえてイエスを訴える口実にしようと、悪意をもって集まっていた人々も、一人また一人と立ち去りやがて誰もいなくなりました。「あの人たちはどこにいるのか。誰もあなたを罪に定めなかったのか?」「主よ、だれも」
・・・横道に逸れました。この曲とはモチーフも違うのですが、女を見つめる視点にどこか共通するものを感じてしまうのです。



「Powder」
作詞:池田貴族 作曲:中 博端

安らぎを得たのだなと思いつつ、どこかはかなさを感じてしまうのは、"'cause I like you..." 好きという気持ちがうつろいやすいものだから?
独りぼっちで 闇にいたぼくに
光をくれたのは
Ah きみの白い肌
すがりついた肌の白さは、この世の色を越えて暖かいのかも。まぶしい光の中に受けいれてくれるのかも。包まれるようなこの安らぎが、いつまでも続きますよう・・・。


「Vibration」
作詞:池田貴族 作曲:愛川弘樹

解釈が難しいです。意味深なのか、「まんま」なのか。
好きなとき、いつでも 女神になれるさ
テレビモニターの中でも入れる
というあたりがポイントなのかナと思います。詞は煩悩? でもさっぱりしてる。 いろいろ意味づけもできそうなのですが、あまり比喩的に解釈しすぎると、開き直り加減の心地よさが台無しになると思います。ここはストレートにいっちゃうべきなのでしょう。
こういうメロディがくるくると動く歌は好きです。


「月食(Eclipse of the moon)」
作詞:池田貴族 作曲:愛川弘樹

月食のときの月の満ち欠けというのは、神秘的であり、どこか不気味でさえあります。普段ならひと月かかる変化が目の前で起こっていく、時間の感覚を狂わされるようなところもあるからでしょうか。

詞も曲にも、どこか不安にさせられる月食のイメージが表現されています。"こんな夜には 誰かと重なり合えば 怯える影を 消し去れたかも " というフレーズは秀逸だと思います。

"幕が下りるように " 光を失っていく月に、このアルバムの作成中に既に解散も考えていたという、remoteの姿を重ね合わせたりもしていたのでしょうか?
しかしながら、一番上にも書いたように、カラオケに入っていたって素人には歌えないよ! という歌唱力を最後に見せつけるこの皮肉? イヤになるほどremoteです。




remote ancestors
TRUE COLOURS
Singles(3 numbers)


Return