イタリック体、フォントの色が違う部分は、歌詞等からの引用です。


TRUE COLOURS
(91.6.25)WPCL-263


remoteが、そのトレードカラーでもあった深紅の衣装をいつ脱いでしまったのか、リアルで見てない私にはわかりませんが、おそらくはこの2ndアルバムを発表した頃から色調を変えて行ったのではないかと思います。ジャケットは濃紺を基調としたデザインで、メンバーの衣装も黒っぽい。曲も、10曲中7曲がマイナーコードを基調としており、1stアルバムとはちょうど逆。とにかく、華やかな感じのする前作とはカラーが違っています。

ホコ天の頃からの深紅な印象を強く持つファンには、はじめはとまどいを覚えた人もいるのではないでしょうか。しかしこのアルバムの持つカラーこそがremoteの、もっと言えば、バンドを率い全作品の作詞も担当していた貴族氏の、本来のカラーに近いのかもしれないと思ったりします。
アルバムタイトルの『TRUE COLOURS』(真のカラー)もそういう意味ではないかと。




「RUSH HOUR」
作詞:池田貴族 作曲:天草史郎前崎

文字通りラッシュ・アワー。 朝の通勤タイム。"あの"不快感や苦痛がリアルに表現されている。わかる。にも関わらずこんなにも、幻想的な世界になっちゃうのだなという感じです。リアルなのに生々しくはない、というのがremoteの特徴ではないかと思っているのですが。おしゃれな感じはいかにも前崎さんの曲っぽいです。ロマンチック。

1枚目の『remote ancestors』が、一緒にわいわい歌ったりBGMにしてテンションあげてくれたりするようなCDであるのに対し、この『TRUE COLOURS』(←英国式表記)は、夜、部屋で一人でじっくり聴きたいようなそんなCDです。運転中は絶対聴かない、聴き入ってしまってキケンだから。



「TRAFFIC JAM」
作詞:池田貴族 作曲:愛川弘樹

TRAFFIC JAM、つまり交通渋滞ですけど、もちろん暗喩。
流れる時は ぼくを置き去り
不安 孤独 裏切り Traffic Jam

暗喩事項をいちいちこれはこうでと解釈するのは、国語の時間みたいであれですが。おそらくは『RUSH HOUR』に続いてこの曲も、貴族氏がプログラマーやSEとして活躍していた頃に感じたのであろう、「自分はこれでいいのか?」的迷いが色濃く出ている作品だと思います。
そして同系統としては3曲目の『24』もそうで、remoteの作曲担当である3人が、同じようなテーマをそれぞれ表現するのを味わえる、という楽しみもあります。



「24」
作詞:池田貴族 作曲:中 博端

「24時間戦えますか ビジネスマ〜ン・・・」という勇ましくもユニークなCMソングがありました。バブル経済終わるか終わらないかの頃だったか。当時の世相ではあまり違和感なく聴けたくらい、みんなバリバリ張り切ってたのでしょうが、現実は楽しいもんじゃなかったよとremoteのこの歌が教えてくれる。

仕事するをモチーフに、人生の苦悩を語るシリーズ三部作最後の曲は、もう働きまくり! なにしろ "24(トゥウェンティ・フォー)worker"ですから。忙しすぎー。曲調は重いにも関わらず軽やかなノリなので、時間に追われて焦りまくってるようなときに「24,24,24・・・」と呪文のようにつぶやくと、さぁがんばるかという気持ちになれるのです。

"安らぎと愛する瞬間(とき)を もう 諦めたわけじゃないけど " というフレーズに実感こもってそう・・・。ハマってしまう曲で、好き。



「EVERYBODY」
作詞:池田貴族 作曲:中 博端

初めて耳にしたremoteの曲がこれでした。
'97年秋のワイドショーで、貴族氏の会見の模様が放送されたときに、途中バックでこの歌が流れていました。ストレートに耳に入ってくる明るいメロディが印象的でした。
" そんなに あわてて 何年先を見てるの? " 私の言うところの『メッセージソング系』の歌ですが、そのメッセージも優しげな雰囲気。
半年後にアルバムの中でこの曲を聴いたとき、「みつけた!」ってうれしかった。

ここの歌い方が好き、っていう箇所がけっこうあります。" ま・よ・な・か・す・ぎ "(真夜中過ぎ)のとこ とか。 " そんなに あわてて 何年・・ " とか。 " これで本当に良かったのか "のとこなんかも。初めて聴いた歌だから、私にとっては無条件にこれがremoteだし、素直な気持ちで聴いて歌える曲。



「TOO GOOD FOR ME」
作詞:池田貴族 作曲:中 博端

HIRO氏の作曲三連作。これはー、ちょっと私の苦手系。歌詞が。これを言われてしまうとなぁ。" 君は僕じゃだめさ "。

でも私の友人は好きだと言ってました。「独りが好きな 寂しがり屋だわ あなた」 というセリフがいいのだそうです。気配を察して自分から別れを切り出した女性の、最後の言葉。非常に鋭いところを突いているのではと言ってました。かっこいいと思うけどつらい。これでもかーって、メロディも切ないし。

泣くに泣けない悲恋というのは反則です。モヤモヤっとする。間違いなく、remote中 1,2を争う「苦い歌」だと思いますが、ドラムの響きが妙に好きだったりします・・。



「HOLY VOICE」
作詞:池田貴族 作曲:天草史郎前崎

毎夜夢の中で、神の声を聞くのです。自由を求めているのなら、私にすがってごらん(ちょっとニュアンス違うかな・・)。
" 願いは叶う 信ずる者 "
私も幾度となくこのフレーズをかみしめました。

とことんおしゃれでかっこよく、『HOLY VOICE』というタイトルにふさわしい気高さを感じさせる作品。しかも、この曲だけでは完結しておらず、次の曲へと伏線があるから、

誰かに伝えなきゃ
夢の続き Holy Voice
導かれるままに Fly away
のあたりによく注目して、「聴くがよい!」って感じ。貴族氏と伊藤浩樹氏とのユニット「HOLY NOIZ」のアルバム『無我』の世界に通ずるものがあると言えば、ご存知の方には雰囲気伝わるのではと思います。


「OPEN THE WINDOW」
作詞:池田貴族 作曲:天草史郎前崎

夢から醒めると、苦悩に満ちた現実がそこにはありました。
確かに飛べた 夢の中でも
気がつくと 翼が消えた
前の曲との見事な対比! ここらへん、アルバムの中でも聴かせどころだと思います。貴族氏にとって、思い入れのある曲はたくさんあると思いますけど、もしこの歌が最もお気に入りと言われたら、そうだろうと深く納得できるものがあります。私の解釈では、remoteの池田貴族はこの曲に集約されている、と言って過言ではないと思う。もちろん私にとっても好きな曲はたくさんありますが、震えるほど感動したという意味では、この歌にかなうものはありません。 " そこにいるなら 手を差し伸べて! " というラストは、心の底まで揺さぶられそうな悲痛な叫びです。
名曲中の名曲。


「TOSCA」
作詞:池田貴族 作曲:愛川弘樹

初期の頃の作品に『サロメ』という曲があって、ライブ等で聴いたことのある方たちの話では、手にもったロウソクの火をフッと吹き消すパフォーマンスがあったりという、かっこいい歌なのだそうです。私はサビの15秒くらいしか知らないのですが、CDには収録されていないその作品、イメージ的にこの『TOSCA』の中に昇華されていそうです。
悪魔が迫る 取引きだ トスカ
(ひとり)の命と おまえの肉体(ひととき)
引き換えるだけでいい
ドラマチックな物語仕立ての世界が新鮮な感じのナンバーです。remoteを越えたところの貴族氏っぽいイメージはありますが。サビの部分のメロディーとかかっこいいです。


「DESPAIR」
作詞:池田貴族 作曲:愛川弘樹

「絶望」。
『OPEN THE WINDOW』と聴き比べると興味深いものがある。OPEN〜が、苦悩の内を漂って沈んでゆくイメージならば、この『DESPAIR』では思い切り壁にぶつかっている感じです。
サウンドはむしろ力強いほどなのですが、伝わってくるのはやはり焦燥や絶望感というもの。" だけど気がつくと 自分の夢でさえ 語ることが怖くなっていた " という現実。
Despair Oh! 力を貸してくれ 今すぐに
Despair もうひとりじゃ進めない前に
そんな絶望の中で、ためらわず、力強く助けを求めるところに、人間の深さというか真実を見る思いがするのです。


「GOOD MORNING」
作詞:池田貴族 作曲:愛川弘樹

絶望は、夜明け前の最も深い闇の色だったのでしょうか。まぶしい朝の光が差すと、何気ない日常の光景に目をとめるゆとりすら生まれてくるようです。
間違えた 道は引き返すだけ
そんなこと 今ごろ気づくなんて
このフレーズで自殺を思いとどまったというファンの方から手紙が来たそうです。そしてこれは、思うようにならない状況に苛立っていた貴族氏が、逃避とも言えるような当時の生活から抜け出すきっかけともなったフレーズでもあったそうです。私が素敵だと思うのは上の箇所に続く、
Good Morning
誰かに会いたい・・・
のところ。誰かに会いたいという言葉に希望を感じました。サビの部分のメロディやコード進行というか、きれいで心にしみます。
さわやかな朝を迎えても、それは昨日までと同じ一日の始まりでもあると暗示させる終わり方が、いかにもremoteっぽくもあるのですが、たどりついた境地は新しい歩みの第一歩であると思いたいです。



remote ancestors
CYLINDER
Singles(3 numbers)


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