<ミュージックファイルシリーズ>200タイトル突破記念企画

バップ・高島幹雄氏 ロング・インタビュー

(2000/4/22)

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 バップのミュージックファイルシリーズ200枚突破を記念して、高島幹雄氏にロング・インタビューを敢行しました。氏の音楽的ルーツからアルバイト時代の話、ミュージックファイルシリーズ誕生まで。興味深い話をたっぷりうかがっています。
 続けて、高島氏本人によるミュージックファイルシリーズ全巻レビューというとんでもない企画も構想中。やるのか?ほんとに(笑)。

ゲスト
高島幹雄。ご存知、バップ・ミュージックファイルシリーズの生みの親、プロデューサー。
聞き手
腹巻猫。劇伴倶楽部の主。
にゃろんぱす。菊池俊輔ホームページの総裁。
ゆずのきB佳。おたくな主婦。東大和アニソン研究所にて「てれびまんがの詩」を連載中。
烈神我尊。メールマガジン「空想音楽堂かわら版」副編集長。最近はライヴ活動もしている。
★ほか、RYO-3、junjun、Ray!、mio、あかね(敬称略)


CDボックス『円谷プロダクション・アーリーデイズ・クロニクル』 &
単独盤『アンヌのテーマー冬木透・ウルトラウンジ・フィーチャリングYURIKO』
企画コンセプトについて

今度、円谷プロさんのCD-BOX「円谷プロダクション・アーリーデイズ・クロニクル」をやらせていただくんですけれど、その特典用にアンヌ隊員の写真をポートレイトにして、全部にサインして頂こうとと思っているんです。<アタリ>の人だけに(サインが)ついているんじゃなくて、全員分にやって頂きます。
何枚ぐらいプレスするんですか?
予約の数次第ですね。
収録されるのは初期の作品なんですか。
初期のですね。1980年代に入ってしまうと、モロにコロムビアさんなどのレコードメーカーも原盤権がある作品が多くなって、たくさんは借りられなかもしれないですし、『ウルトラマン80』なんて(コロムビアから)放映当時にテーマ音楽集などのアルバムが出てましたから。『ザ・ウルトラマン』とかもね。
<ミュージックファイルシリーズ>で過去に出したものが中心でしょうか?
出したものプラスアルファ。今、ぼくが選曲やっているんですよ。まさに今、連夜の自宅作業でやってるんですけど、どこまで入るか…。とりあえず、ウチで出したものは基本的に収録して、プラス、『ダイゴロウ対ゴリアス』などのBGM。主題歌は、コロムビアさんから借りて入れなくてもいいかなと思って。
そうですね。
子門真人のコンピ盤(コロムビアの桃盤)にフルサイズが入っているし。後は、僕の考えの中ではギリギリ『恐竜探検隊ボーンフリー』とか、『恐竜大戦争アイゼンボーグ』とか、あの辺まで入ればいいと思っているんですけれど。今選曲やってて、結構(収録許容時間)めいっぱいだな、っていうところです。ほんとは DISC5までを、旧作に加えて廃盤になった『ムーンスパイラル』と、昨年作った『ウルトラセブン1999最終章』……いわゆる<平成セブン>のサントラ盤に入れてない曲を収録しようと思って……『宇宙船』の広告などでもそうなっているんですけど、ちょっと、『ムーンスパイラル』と<平成セブン>に関しては、DISC6まで来ちゃうかなという感じです。(収録作品が)20数作品あって、1作品平均15分いかないんですよね。何回もこの手のサントラ盤を買っていらっしゃる方には目新しいものは、ないかもしれませんけれど、何かひと工夫できればと……。

あっ、これはすごく複雑な構造の企画なんで、ゆっくり言わせてください。

実は今回のCDボックス企画とは別モノという考えで、冬木透先生に新録のアルバムを作ってもらおうと思ったんですよ。パナソニックから出た『ウルトラセブン』のテレビシリーズ版のDVDの特典映像に冬木先生のインタビューがあって、その中で先生がピアノを弾いてらっしゃる映像があるんですね。「ウルトラセブンの歌」とか、BGMを。そういう演奏のものをちゃんとCDで聴きたいなあと思って。なんかしっとりと聴けて、ラウンジミュージックというか、こうやってお茶飲みながら聴いていてもいいような、リラックスして聴けるような企画盤を作ろうと。(過去に出た盤で)「ウルトラマンジャズ」とか「ウルトラマンシンフォニー」とかありましたよね。そういうのを、作曲者ご本人に編曲していただいて。しかも主題歌をなぞるだけじゃなくて、ちゃんと耳になじんだBGMやワンダバなどの代表的なBGMをちょっとしっとり系でピアノだけで弾くとか、弦楽四重奏でやるとか、フルートが入ったりとか。『ウルトラセブン』の「Sieste」(ピアノソロによるBGM)っていう曲みたいなのは、いい感じに気持ちよくなって眠気を誘ってくれてもいいし、お茶飲みながらBGMにしてもいいし……。そんな話を、ウチの会社の後輩で、マニアじゃないんだけれどウルトラの音楽が好きっていう人に話したら、「そういうアレンジの音楽をバックに、休みの日に本とか読んでいたらいいですね」「やっぱり、そうだよね」っていう話になって……。ただ、そのアルバムを単に作りましょうっていうだけでは、具体的な会社の商品企画としてすぐには成立できないんですね。製作費も録音代もかかるし、どれだけ制作費をかけて何枚売れば利益が出るの?ってことになるんですね。やっぱり僕らも会社で働いているわけだから、そういうところも問われてしまうわけです。赤字は出したくないと……。ほんとはレコード会社は7割赤字でいいんですけどね、本当は(笑)。3割のビッグヒットがあれば……。
相殺してしまうんですか。
そう。でも現実的にはなかなか厳しい。だからサントラやコンピレーション盤などの企画商品は確実に利益を出していかないと……。そういうことがあるので、シリーズのスタート当初から販促担当の方からも、一枚をポツ〜ンと出していくんじゃなくて、何枚か(続けて)パ〜ッと出してくださいって言われたんですね。最近だと、特にショップの仕入れ担当の方も認知して頂いているようで、「今月はミュージックファイルは無いの?」と尋ねられるらしいです。「もっとコイものを、こんなものまで出すのかっていうものまでやって欲しい」とか……。
『クレクレタコラ』とか(笑)。
そういう要望もあるんでやってこられているんです。これが社内外で「(ミュージックファイルシリーズは)売れないからやめましょうよ」っていうことになれば、それで終わってしまう話なんだし……。そんなわけで、冬木透の新録盤を作ったとして、どうやったら利益が出せるのかなってことも、僕は今回のCD-BOXとは全然別のところで考えていたんですよ。実は<円谷プロBGMコレクション>の<ウルトラシリーズ>以外の作品が、写真をジャケットに使える契約期間の関係で、全部廃盤にせざるを得ないってことになったんです。CDの中味である音楽の契約期間の方は自動延長なんですけれど。それでこの話は昨年秋にあったんですけど「今までウチで出していたものは、2000年か2001年になんらかの形で再発はさせてください」というお話を権利社としたんです。今年はCDボックスがあるので、2001年にやるかもしれませんけれど……未定です。
廃盤といっても、全くなくなるわけじゃないんですね。
全てがそうですとは断言出来無いですが、無くなるだけとは限らないですね。今回は「その前に、CDボックスを発売させてもらえませんか」という話をしたんです。でも、CDボックスをやるにしても、(過去に出た商品を)全部買っていただ いている方には申し訳ない内容になったりするわけですよね。同じような商品をとっかえひっかえして出したりしても……。何か新しい要素を考えなければダメだなあと思っている時に、「あ、新録を入れればいいのか」と思い付いた(笑)。ただ新録音をしても、別のアレンジャーが編曲してBGMを再現というのも目新しくないので「どうしようかなあ」と思っているうちに、さっきの冬木先生の新録音の企画を CDボックスと併用することちゃおうかと思ったんですよ。加えて『ウルトラセブン』のアンヌ隊員役だったひし美ゆり子さんにナレーターをお願いししようと……。収録する全作品ではないですが、作品と作品の間にポイントとなる話を冬木先生の新録音楽をバックに、サウンド・ナビゲーターのひし美さんのナレーションで語られる……という趣向にしたんです。今のいわゆる<平成ウルトラマン>って親子で楽しんでいるってところもありますよね。子供たちや、それより少し年上の 10代でマニアの入り口にいる人達って、そこから入ってきてる。そんな人たちに、近年になっていきなり<平成ウルトラマン>が出来たんじゃないんだよと、30数年前に多くの先人の方々の努力や苦労の結集と積み重ねがあって最初の『ウルトラマン』は出来たんだよ、みたいなところから再認識出来たらいいかなと思って……。DISC-1は『ウルトラQ』のメインタイトルから始まるんですけれど、その前に冬木先生の小編成の音楽が聞こえてきて、ひし美さんの声で例えば「特撮の神様と呼ばれた円谷英二の名のもとに、当時若手の金城哲夫さんや上原正三さん、成田亨さん、佐々木明さん、中野稔さん、高野宏一さんらが集まって、試行錯誤の末にスタートしたのが『ウルトラQ』です」みたいなナレーションがあって、"ギ〜、ドッシャン"(メインタイトルの音)って来るのが、ドキュメンタリーみたいで面白いかなと。聴くドキュメンタリー。

内容のメインとなる旧作の楽曲に関しては、自分がお客さんだったらどういう内容がいいかと考えて……まず主題歌はフルコーラスを入れることにしました。単独盤のBGM集には主題歌をテレビサイズで入れてるんですよ。それは、テレビで聴いているのと同じ質感を求めて収録しているわけです。けれどユーザーの方からは「フルコーラスは入ってないんですか」っていう問い合わせも意外と多いんですよね。「ちゃんとフルコーラス聴きたいんです」って。そういう人がいるんだったら、今回のBOXにはフルコーラスを入れてあげようと。それから、70年代後半から80年代の作品はコロムビアさん原盤のものがすごく多いので、主題歌借りるのも一苦労するだろうし、BGMもコロムビアさんの資本が入って録っているものがありますから、そういうものは入れられない。で、どこかで割り切るしかないだろうと。それで、タイトルを「円谷プロダクション・アーリーデイズ・クロニクル」にしたんです。<アーリー>っていう言葉のは、アーティストもののベスト盤で昔よくあったんですよ。レベッカとか、サザンオールスターズとか。レベッカのアルバムタイトルが『アーリー・レベッカ』だったの。そういうものがアーチストものであるのなら、こういうサントラものでもアーリーってついているものがあってもいいんじゃないかと。
過去に音盤化されてない曲も入るんですか?
若干入りますよ。『ウルトラセブン』(テレビシリーズ)『ファイヤーマン』とか。ただ、今回のアルバムっていうのは、聞いてて流れが気持ちいい内容にしたいと思ったんですよね。
最初から終わりまで聞くっていう。
そういうことを前提にやってみようと。だから、あんまり同じメロディが重なるのは避けたい(菊池節のテーマ・ヴァリエション、メロくずしなどは例外)。『ウルトラセブン』もまだ未収録曲があるんですけれど、それはティンパニのソロなんで、本編の中に入れてしまうと流れが崩れてしまうから、DISC-6に入れるんですよ。DISC-6には未発表曲をまとめるんで、同じようなものがあってもいいわけです。欲しい人は喜んでくれたらいいんですけど……。
そこはコレクター向けなんですか。
そうですね。あと、冬木先生に「"アンヌのテーマ"ってなかったですよね」っていう話をしていて、今と違ってキャラクターそれぞれにテーマをつけるような時代でもなかったし、じゃあ、それをひとつ作っていただけませんかってお願いしたら、「それはぜひ、作りたいね。ひし美さんの声が乗るといいなあ」って先生がおっしゃったですよ。まだ、正式にひし美さんへお願いする前だったと思うんですけどね。それで、冬木先生の新録アルバムにも1トラック「アンヌのテーマ」という曲を収録して、ひし美さんにポエムを読んでいただきます。で、BOXの方のオマケ盤というかDISC-6には、逆にその曲のナレーションなしバージョンを入れようというアイデアもありますが、どうなるか……。
それは、BOX用に冬木先生の新録した曲だけが、別のCDで出るということなんですね。
元々の考え方は、冬木先生の小編成で室内楽風アレンジによる新録アルバムを作ることだったんです。で、そこで出来た楽曲を番組に選曲するのと同じ考え方で CDボックスの方に使う、という発想なんです。
なるほど。それはいい企画ですね。
だから、新録音部分は、あくまで冬木透の作品集を作るということで、先生にはお願いしています。そのアルバムにはビデオオリジナル新作『ウルトラセブン』で録った「Sieste 99」とか、「フルートとピアノのための協奏曲 99」、「ディ ヴェルティメント 99」ももう1回入れます。いい曲はどんどん聴いて頂ける、紹介できる機会を増やしたいんですよ。そういう企画アルバムの方が、サントラのコアユーザーよりももっと広い人が聴いてくれるかなと思って。サントラっていうと届かない人がいるんですよ。悲しいことに。
<ミュージックファイルシリーズ>でも、コンピレーション盤を何枚か出してますよね。それはやはり一般リスナー向けっていうことを意識されたんですか。
僕は、あんまり一般リスナー向けって意識してないですよ。少し広げたいと思ったのは、今回の冬木先生のアルバムが初めてかもしれない。マニア以外の一般の人のことはいいんですよ(笑)。買うのはマニアなんだから。絶対、マニアの人から突っ込まれない作り方をしないといけないなと思っています。マニア向けに深く作っておくと、一般的な方が買っても、ブックレットなどによって新しい発見があればいいと思ってます。僕もレコード店に行ってお客さんになってしまえば、サントラ・マニアのはしくれですから、CDを手にとって見るわけですよ。ケースの上からブックレットの厚みを見て、紙1枚くらいのペラペラのしか見えなかったら、あ、また今度買えばいいや、と見送ったり……(笑)。買ったからってその日の(ブックレットを)じっくり読むってわけじゃないんですけれどね。そんな時間無いって……(笑)

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