劇伴倶楽部座談会 第3弾

私たちの 生きた 時間

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人には見せたくない過去もある

最近の風潮としては、感想はあんまり言わないのが暗黙の了解みたい。感想とか批評とかしないで、楽しくアニパロしようよ、みたいな。そういう雰囲気なんですよ。、
そういうのありますよね。なんか論じていると、そんなこと言わないで、もうちょっと楽しく見られませんか、とか。
「別にこれが好きな人は好きだし、あれが好きな人は好きだし、個人の趣味だからいいじゃない」みたいな風で。
昔はすごい論争したりしたよね。
だから、インターネットの掲示板に通ってて、久々に論争を見た(笑)。
ありますね。論争。
長浜忠夫さんの追悼会で、追悼本出すのに、ちょうど「ベルばら」で監督を下ろされた頃で、これを追悼本に入れるか入れないかで、ものすごいもめたんですよ。スタッフみんな集まったときに。
そのときに、すごい、怖かったですよ。私は中学生だったんですけど。ものすごい言い合いしてて。泣いちゃったりとかして。でも今思うと、私たちの世代って、大人の人たちから、そういうことはしないって、無関心の世代とかって言われてたから、「どこが?」って思ってたんですよ。今の世代の方が、よっぽど無関心ていうか。
今はとにかくあんまり関係を持たないっていう。
互いに干渉しないようにしようっていう風潮なんで、「いや、あの頃は」みたいな、ちょっと年寄りじみたことを思うんですけど(笑)。
ぼくが高校生の頃に「PUFF」に参加して、高校生なんだけど、もう自分でいっぱしの人になったような気になって、評論みたいなこと書いたりしてたんです。すると、反論されたりするじゃないですか。そうすると、若いからカチンときて、ガガガーッてまた反論書いて、するとまたガガガーッて反論書かれるのね。でも、相手はすごい大人なんだ、当時のぼくにしてみれば。やっぱり大学生とか社会人だった人だから。だから、相手は「しょうがないなあ」とか思ってたと思うんだけどね。ぼくはちょうど、そういう思春期で、思い込みの強い頃だから。
その頃書いてた文章の文体、恥ずかしくないですか(笑)。なんて、一生懸命大人っぽい文を書こうとしていたのって。
そうそう。背伸びしているし、もう、書いてること自体が、自分で一生懸命考えて書いてるつもりなんだけど、たぶん今読んだら、いろんなところから取ってきた意見なんだろうと思う。
なんか「しゃらくさい」と言いますかね。
友だちから電話かかってきたときに、「あのときもらったXXを持ってる」とか言われると、さぁ〜っと(笑)。
燃やしてくれ〜。
抹殺したいって思うよね。
「あれ、おもしろいから、大事にとってるんだよね」って言われて。もう、いい、いい、って(笑)。
私、昔描いたアニパロ抹殺したいですね(笑)。恥ずかしいですよー。
昔書いたものってのは、なぜか恥ずかしい。
まあ、ふつうの人だったら、「昔の男」「昔の女」みたいなものかもしれないんだけど。昔好きだったアニメとか、昔好きだった役者とかっていうのはね、昔の恋みたいなものはもう封印したいところあるじゃないですか。夫には見せたくないとか(笑)。
でも、そういうのとは、ちょっと違ったものがあるよね。
青春の残滓っていうか、恥っていうか。
森繁久弥が、「自分の昔の作品が排泄物のようだ」って言っていたっていうのを聞いて、なるほどなあ、って思います。
ほんとに、「殺すに刃物はいらぬ」っていう感じですよね(笑)。「ほらほらー」とかってやられたら、「お願いしますー」とかね。
描いてるのを見られるのもいやなんですよ。
そう。マンガ描いてるときは、横から見てほしくない。
今でも描いてる途中とか見られたら、「途中は見るなー」。
子どもは平気なんですけど、主人がいるときは、絶対描けないですね。
「なんで隠すの」って言われるんだけど。
それは、マンガ描いてる人はみんなそう。描きあがるまでは見せたくない。
できたものはいいけど、描いてる途中は見ないで。そういうのは同じなんです。
(主人が)出張行ってるあいだに描くんですよ(笑)。いないすきに。隠れて、こそこそと。
夫と会社も同じなんですよ。だから、いつも朝一緒に会社に行って、一緒に戻ってくるんです。一緒にいないときっていうのがないんで、向こうがコンピュータなんかに熱中しているときを見計らって、なんか書いてる。こっちをうかがいに来たら、やめる。
今は、もっぱらインターネットに移ったから。パソコンで書いてる方が、まだ恥ずかしくないかもしれない。
パソコンで書いてるのって、全然違う感じがする。まあ、ぼくが大人になったからかもしれないけど。
最近開き直って書いてますねえ。
昔なんて、手書きで書くじゃないですか。こうやって紙に向かって書くから、なんか魂がこもってるみたい(笑)。
そうですよね。

やっぱウェブやるのと本でやるのと違うんかなあ。
だいぶ違う。
意義的には?
意義的には一緒なんだけどね。ただ、書くものが、同人誌の方が自由に書けるっていう気はする。同人誌だから限られた人が読むんだからいいやっていうんで、辛口の批評とか書けるでしょ。
そういう人が読むだろうっていうのがある。
でも、残りますよ、本は。
残るけど、まあ、昔のことだから(笑)。
(ホームページだと)なんか、自分が公的人格になったような気分じゃないですか。どこまで偏ったことを書いていいのやら。
全然興味のない人まで見に来たりするから、うかつなことを書いてると、しゃれにならなくなる。しゃれと思ってくれない。
mio 本文の主旨と関係ないところで、つっかかられたり。
変なところでいちゃもんつけられるからね。ぼくもパソコン通信歴が10年もあるんですけど、そういうのをいやっていうほど、自分もまきこまれたり、見たり聞いたりしてるんで、ものすごい慎重に書いてますよ。
ただ、同人誌でもそういうのはあったけど、ちゃんと討論して、意見を交換しあったっていう感じですよね。
通信だとね、そういう土俵にすら上がって来ないやつがいるんですよね。名前も素性も隠して、お前ばかっていうようなこと書いて、さっと逃げちゃうやつとかね。そういうのまで、相手にしていられないから。
そう、それがあるんだよなあ。
何言っても、熱くなったまま冷めないとか。
もう、何を言ってもムダって状態になりやすいからね。
だから、ちょっと言い方悪いですけど、掲示板とか見に行って、ちょっとこの人来てもらいたくないもんだから、そこに私のホームページのURLは書かないとか(笑)。というようなことも多少あります。
拒めないからね、掲示板だと。
来たらしようがないですけど。

お楽しみはこれから、なのだ

もうマンガは描かないんですか?
まとまった時間がないと描けないじゃないですか。枠線引きから始めて。
マンガは時間かかるものねー。
イラスト1枚くらいだったら描けるけど。
私も4ページとか短編ばっかりでしたね。
だから、ずーっとひとりになれる時間、部屋っていうのが必要なんです。
そうそう。ひとりになれる部屋。ひとりになれる時間。日曜日とかにやろうと思っても、お昼ご飯作らなきゃいけないじゃないですか。その辺がずるいと思うんですよ。
その昼ご飯が問題なんですよ。
車いじろうと思って、たとえば、日曜の朝から夜までやろうと思っても、お昼ご飯作らないといけないから、手汚せないじゃないですか。午後からやってもたいして時間とれないから、結局まとまった時間がとれなくなる。もしこれが主人だったら、朝から晩までやってもずーっと文句言われないのに。
ほんとにそう。買い物とか頼んでも、頼りにならないから、結局自分で買ってこないと、てことになっちゃうんですよ。だから12時が近くなったら、一旦中断されるんですよ。夕方4時とか5時とかになったら、「あ、中断」っていう感じなんですよ。
これは中断しないように、お昼ご飯終わったら、お米といじゃおう。晩ご飯の用意も先にしちゃおうって。
ペン立てに、ペンも絵筆もさしてあるんですけど、使わないまま。

それじゃ、今後の豊富などを。
やっとビデオキャプチャーが使えるようになったんで、アニソン本出します。でも、資料本じゃなくて、自分が録りためたのを、感想書くだけ。ただし、全部手書きなんで。
いいですね。やっぱり手書きです。
ほんとに昔ながらで。地道にコツコツとやっていきますんで。今後もよろしくお願いします。
私は本を出す気はないです(笑)。
ホームページで。
そうですね。あと、うちのダンナがCGをやっているんで、何年先になるかわからないですけど、ダンナが作ったアニメーションに私が音をつけるとか、そういうことができれば、というのが当初からの夢で。
すごい。夫婦でできるっていいですよねえ。
私は今度、所長さんに(東ア研の)分室を分けてもらうことになったんで、ホームページ作ります。
あ、楽しみにしてます。
もともと子どものことしか書けないんで。
それは面白いかもしれない。
子どものこと書いてあるホームページってほんと、面白いんですよ。
素の状態でアニソン見れるっていうのが、すごい実験材料ですからね(笑)。面白いですよ、反応が。
子どもさんが10年くらいあとに、何を思うかですよね。お母さんこんなこと思ってたのか、とか。
なんかに書いてあったんですけど、今この年で書いた書き込みは一生残るもんであって、20年くらいたって、自分の子どもにそれを見られたときのことを考えた方がいいよって。
そういえばそうだなあ。
自分の子どもに同人誌見られたら。
あないなもん書いとって、自分の子どもに見られたら。
あれって、残るの?やっぱり。
NIFTYとかやったら過去ログとして残ってるでしょう。
個人が運営してるホームページのやつは。
それは個人が残しておけば残る。
じゃあ同じじゃないですか。
結局、同人誌でもネットでも恥ずかしいことは残ると。そういう結論ですかね(笑)。

('98/8/9収録)


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