今回は、仙道B佳さん、じゅんじゅんさんをお招きして、インターネット誕生前のマニアのメディア=アニメ・特撮ファンジンの全盛期の話や、ファン活動の思い出を語っていただきました。ほかでは聞けない貴重な話は、まさに時代の証言。
インターネットや商業誌メディアしか知らない人は、興味津々で聞いて(読んで)ください。
なお、出席者は8人に上りましたが、同人誌経験者以外の人は、今回はギャラリー扱いです。発言が少ないのはそのためです(カットしました(笑))。
参加者
猫 腹巻猫。劇伴倶楽部の主。 仙 仙道B佳。アニソンサイトに出没する現役同人誌ライター。 じ じゅんじゅん。時代劇サイト Junjun's [JIDAIGEKI or SO] の主催者。 ギャラリー
R3 RYO-3。バッタもんコレクター(笑)。 mio mio。大杉久美子ホームページ主催者。 に にゃろんぱす。菊池俊輔ホームページの野望を持つ。 ア アキバ。京都から乱入。渡辺宙明サイト「Molpheous Point」の主催者。 た たぢり所長。松戸から乱入。東大和アニメソング研究所の主催者。
同人誌を始めた頃
猫 同人誌は、いつからやってるんですか? 仙 小学校5年のときに「ヤマト」のブームがあったんですよ。そのぐらいの頃から大学の文化祭に通うのが好きで。 ア 小学生でですか(笑)。 仙 親戚が結構大学行ってるから、「お兄ちゃんとこ行こうね」って母が連れていってくれて。行くと、学校(のサークル)で作った本があって、中は、オリジナル(マンガ)と、ヤマトのパロディとかがいっぱいなんですよ。いろんなアニメのパロディとか。大学の文化祭のアニメ研とか漫研って、その当時はだいたいアニメとマンガと一緒なんです。SFも。ウルフガイの本とかあって。そこら辺からですね。 猫 それって、「ヤマト」の最初の放送の頃ですか? 仙 いえ、映画になってブームになってからです。その頃、自分でノートにダイモスの絵とか描いて、みんなに回して読ませたりして。で、だんだん雑誌とかも創刊されるようになったんで、ほかにも同人誌があるんだ、ていうのを知って、中学でアニメとかマンガのクラブを作ろう!ってことになって、作ったんです。ちょうどその頃、「OUT」の頃、いちばんいい時期でした。私、長浜忠夫っ子だったんです。 (注:長浜忠夫=アニメーション監督。作品に「巨人の星」「侍ジャイアンツ」「ど根性ガエル」など。「超電磁ロボ コンバトラーV」「超電磁マシーン ボルテスV」「闘将ダイモス」の一連のロマン・ロボットアニメで70年代アニメファンの心をつかんだ。'80年没) に 「コンバトラーV」! 仙 ちょうどその辺です。で、長浜さんが亡くなられて、岩崎摂さんとか、浪花愛さんとかが追悼上映会するっていうんで、一緒に加わったんですよ。中学生だったんですけど、スタッフに加えてくださいって言って。そんなのをやったりして、だんだんコミケにも行くようになって。高校に入ってからは地道にどっかのサークル入って。 猫 地道に(笑)。 仙 カット描いたりして、現在に至るって感じですかね(笑)。 ア なんか今、さらっと話してはったけど。 に すごい濃い(笑)。 ア なんか、歴史の証人みたいな。 仙 でもずーっ流れを見てるから、なんか最近は、ちょっと…。 猫 ちょっと違うぞ。 仙 みたいな感じですかねえ。 じ どう違うんですか? 仙 今回の夏コミのカタログ見て、どうも「研究」っていうスペースがなくなったらしいんですよ。 ア あ、あの、批評・評論とかなくなりました? なくなってますよねえ! 仙 もうショックでしたね。それが一番の違いでしょうね。アニパロ、オリジナル、でなければ、資料本。その間の研究とか感想とかいう本がないんですよね、最近。なんか「え、同人誌ってそんなもの?」みたいな感じで。 猫 たしかに(笑)。 仙 サークルの申し込みでジャンルを書いてくださいっていうのがあるんですけれど、うちはよろずなんで、よろずって書くんですけど、よろずって書くのはやめてくださいって言われるんですよ。 じ ほんとによろずな人はどうすればいいんだって思いますよね。よろずサークルって結構いっぱいあるんですよ。 仙 なんでもやりたい方だから。昔はもっとおおらかだったのになあって。でも、あれだけ大きくなれば、管理も大変だから、まあ、逆の立場になればわからないでもないという。 ア いま批評本花盛りなのにねえ。商業誌では。 猫 「動画王」とかですか。 ア 「平山亨叢書」とか、「まんが秘宝」、「映画秘宝」とか、いうたら研究、批評書じゃないですか。商業誌はあんなに出てるのになあ。 た 「ガンダム伝説」とかあの辺ですよね。 猫 昔同人誌でやってたやつですよね。ああいうのこそ。 に 商業誌になっちゃったから。 ア てことなのかなあ。 猫 じゅんじゅんさんは。 じ 私は、同人誌買いに出かけたりはしない人なんです。書く方はマンガとか描いてたんですけど、全部元締めの人に郵便で送って、本も郵便で送ってもらってっていう感じで。あんまりコミケのにぎわいとかっていうところは知らない。 猫 投稿する方ですか。 じ もっぱら特撮関係っていうか、東映関係の。 に おうおうおう!(身を乗り出す) じ 特撮だけじゃないです。時代劇もあるし。 猫 そういう、東映系の同人誌なんですか? じ そういうわけじゃないんですけど、たまたまメジャーだったじゃないですか。結構レトロブームとかあって。 猫 いつ頃ですか。 じ '87〜'90年。そのくらいのときレトロブームってやつが来まして、怪獣本、特撮本、その他もろもろっていうのが、70年代くらいのを懐古して研究しようとか見ようとかいう風潮があったんですよね。 に その頃に講談社の大全集とか出始めたんですよね。 ア あとサンワイドコミックスの復刻のマンガとか。 猫 ぼくなんかにとっては、特撮ものの復刻ブームっていうのは70年代後半に最初にあったんですよ。朝日ソノラマのファンコレが出始めた頃。だから、テレマガの大全集なんかは2回目っていう感じでしたね。
じゅんじゅんさんが同人誌やってたのって、学生時代ですか。じ 大学の頃ですね。高校の頃っていうと、あんまり全国的にとはいかないんで、周りの人にほとんど手紙の延長みたいなものを書いて、「〜の番組に〜さんが出ていて、ここでこういうことをしていた」とか、「水たまりをばしゃばしゃはねて走っていた」とか、そういうことをバーッと書いて、「はい」って(渡す)感じで。で、隣でじーっと見て、読んでるかなと思って。笑ったりすると、なんかうれしいんです。 猫 それは同じクラスの人と? じ クラスは違ったんですけどねえ。SF研とかあるじゃないですか。私は入ってなかったんですけど。そういう友だちが多かったから。やっぱりその頃、「聖闘士星矢」とかはやっていて、そういう、分野は違うんだけど、なんとなく「そういう人たち」っていうのが固まりになって、机に来て、なんとかの絵を描くとか(笑)。「ここの眉毛がこうなってるんだよね」とか。同人誌を書くようになったのは、その延長ですね。 に 「暴れん坊将軍」とか書かれたりしてたんですか。 じ 「暴れん坊将軍」は書いてなかってけど。 に (ホームページで)お庭番特集やってましたよね。 じ お庭番の本、個人誌は出しましたけど(笑)。お庭番て、初代からずーっと名前を並べてみればわかるんですけど、初代・宮内洋、その次が荒木しげる、あと五代高之、若松俊秀。で、今度9部で、「シャンゼリオン」の東風平(千香)さんがお庭番やるんですよ。 た あ、そうなの? あれ、「暴れん坊将軍」てまだやるの? じ やるんですよ。('98年)10月から。800回やりたいって松平さんが言ってるみたいんなんで、あと3シリーズぐらいはやるでしょうね。 (以下、「シャンゼリオン」の話題で盛り上がるも、本題に関係ないのでカット) 同人誌からインターネットへ
猫 きょうは同人誌は持ってきてないんですか。 じ ダンボールの中に入ってて、出てこなかったんで、1冊だけ持ってきたんですけど。 (注:「赤頭巾快刀乱麻」の本。ここ 参照) じ これは私が最後に出したやつで、これ以来書いてない。 猫 ひとりで書いたんですか。 じ 全部ひとり。
一同 おおー。 じ これやったときにね、夏だったんですよ。この番組やったのが春から夏にかけてで、あと3回で終わるぞってときに書き始めて。マンガ描いてるときに、墨汁で書いてて、ふっと寝ちゃうじゃないですか(笑)。起きるとサビてるんですよ。あー、ペン先サビてるー(笑)。 仙 なんでだろう。どんなにふいてもサビますよね。 じ サビるんですよ。ふしぎに。 ア これは、お友だちとか一切なしの? じ 一切なしの完全個人誌。 仙 このあとには書いてないんですか。 じ 時間がとれなくなったんですね、結局。 猫 ああ、同人誌はね、めちゃめちゃ時間かかる。 じ 個人誌やるのに、ものすごい情熱と時間と必要で。だから、ずーっと書くのをやめてた。インターネットができて、自分の職業もキーパンチをする職業だったから、(キーボードが)速く打てるじゃないですか。手で書くよりも断然速いんですよ。 猫 そうそう。 じ 別に印刷屋に回す必要もないわ、金もかからないわ。これならできるじゃん、っていうので同じようなことを始めたのが、今のホームページで。 ア やっぱインターネットが同人誌の代替っていうの、ありますよね。 猫 ある。 ア 自分もあれですから、挫折じゃないですけど、作ろうと思っても、めんどくさいじゃないですか。原稿用紙がどうとか、印刷屋の手配とかで。いつ受け取るんやとか、印刷費の問題とか。それが、最初に3万円くらいポンと払っておけば、あとは1年間使い放題っていうのが。 仙 そう。掲示板見てて、ほんとにリアルタイムの同人誌だなあって思った。 ア 何が問題かていうと、没ネタでも載るんやな、あれは(笑)。 じ 商業誌とかだと、1ヶ月くらい待って載ってるかなって、そういう感じじゃないですか。ホームページはもう、すぐ載るわ、没ってわけにいかないから、なんでも載るわ、で。 仙 あとから、「やっぱりちょっと考えなしに書いてしまって、いかんかったな」とか、「でも、もう取り返しつかんしな」とか(笑)。ありますよ。 猫 いいことも悪いこともあるんですね。 ア ホームページやったら、こそっと消したりもできるしね。 猫 ああ、自分で作ってるんだったらね。 ア そう。 猫 ただ、同人誌って出す期間が3ヶ月とか半年とか空いているから、その間にじっくり編集して、ってことができるけど、インターネットでやってると、すごいペースが早いんですよ。手書きじゃないから文章を書き直すのとかは早いし、いいんだけど、更新のペースが早いのが疲れる。 じ どっか動いてないと、ていうところがありますね。(ホームぺージで)1週間に1回は更新されるから、ここは見なきゃってところには行くじゃないですか。しばらく更新してないと、そのままブックマークから外れたりする。 仙 でも、地方に住んでいると、同人誌やるのとても大変だったんですよ。原稿書いて、郵便局行って送って、それが本になってまた送られてきて。でも、インターネットだったら、すぐなんですよね。メールで送れるし。ホームページもすぐ見られるし。だから、ほんとにインターネットやってて、地方と東京との差がなくなったっていうか。それはすごく感じますね。 (次のページへ)
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