2003年1月22日、1998年12月に申請、4年間にわたって取り組んできた公害調停(公害調停の経緯はこちら)の最終期日を終えました。調停申請人は4054名を数え、この間、ダイオキシン規制の強化、集中立地した焼却炉の減少、破砕施設の増加等様々な変化がありました。
最終日当日は、新たに調停成立の5社(自社処分4社、処分業者1社)との調印を無事すませる事となりました。
これら焼却炉を許可してきた埼玉県は、
「環境改善への真摯な申請人の主張を重く受け止め、今後も県として環境対策に取り組む」とのこと。あの、最初の頃の「何いってんの?あなたたちは」みたいな態度からは大きく変わりました。しかし、やはりこちらからの調停案には応じられない、ということで、不成立。主旨は理解し、努力するが、約束は出来ない、ということでしょうか。県への要求事項は、1,謝罪、2,焼却施設許可回避、3,環境汚染調査、4,ごみ山撤去、5,ごみ山調査、6,産廃流入規制の6点でしたが、これら全てについて受け入れられないということでした。県に対する申請人からの調停案全文はこちらへ
各業者との調停条項は
1,焼却停止(1社のみ2006.3月までの期限付き停止の約束)、
2,資料開示、
3,施設立入、土壌調査、
4,調査結果への誠実な対応、
5,基準遵守と違反の場合の是正措置(業or操業続行2社のみ)。
の5項目。
今後、調停条項で約束させた、調査、基準遵守の監視等、取り組みは続きます。
結局、47社64炉あった焼却炉設置業者のうち、12社と調停成立、35社とは不調。これらを許可してきた埼玉県とも不調、という結果でした。
実質的には、47社64炉中、40社56炉が焼却をやめるという、大きな成果をあげることができました(焼却炉施設マップはこちら)。
しかし、焼却炉を廃止したが、今後も焼却以外の施設操業・廃棄物保管などを続ける処理業者らに対し、立入、土壌調査、基準遵守等の住民のチェックを求めてきましたが、これに応じたところは美山クリーン1社のみ。その他の大手廃棄物処理業者らは殆ど、応じることがなかったため、不調に終わるところが多くなりました。このことは、今後も、この地域に多数集中立地し環境負荷を与える施設設置業者らが、住民のチェックと改善への努力の要求を受け入れようとしなかったということであり、大きな課題を残すこととなりました。
残された課題
1,残された焼却続行業者は6社7炉。
操業続行の業者の中殆どは、バッチ炉の小型焼却炉。立ち上げ、立ち下げの際に発生する黒煙、周辺に撒き散らされる有害物質・悪臭。今後もこれらについて取り組みを続ける必要があります。
2,破砕・圧縮など焼却以外の処理施設の集中立地
焼却をやめても、破砕などの他の処理方法を行う施設は増大し、未だ当地域に集中立地している状態に変わりありません。破砕施設許可処理能力は、増え続け、なんと7000t/日に及びます。焼却の許可処理能力はピーク時で500t/日であったわけですが、破砕処理能力はその10倍以上!ととんでもない量です。これらの環境負荷については、調査もされていない状態です。焼却ではないのなら良いだろう、とばかりに、次々と許可する埼玉県、屋外で満足な粉塵・化学物質発生飛散防止措置もとられないままの操業を続ける業者。これらに対する新たな運動を続けていく必要があります。
3,押し寄せる首都圏産廃
依然として首都圏産廃の流入量は増え続けています。H11年度の首都圏産廃移動状況調査(環境省)によれば、中間処理目的で埼玉県に流入する首都圏産廃は368万t。2位の神奈川県147万tを大きく引き離しています。この大量の廃棄物が流入し、当地域で処理されることによって、数多くのごみ山、粉塵、悪臭、等様々な有害物質の発生による環境汚染を引き起こしているのです。
埼玉県は平成11年9月から、流入規制に代わり、事前協議制度を導入し、地域ごとに建設系廃棄物が県外から県内へ持ち込まれる際に、事前に届出をすることを指導しています。このデータによれば、所沢周辺地域への届出件数は県内他地域を圧倒し、その半数以上(H12年度3849件/6525件、H13年度3217件/5797件)。このデータから分かることは、最も多く産廃を受け入れる埼玉県のなかでも、大幅に偏って、当地域に廃棄物の流れが集中している!ということです。
4,残された土壌汚染
調停をすすめる中で、多数の焼却炉を見て回りました。それらの焼却炉の殆どは、満足な公害防止設備を持たなかったり、屋外で雨ざらし、灰の野積み、たくさんのごみ山を築き、汚水を垂れ流している業者もありました。その内の1社の隣地の調査を実施したところ、12000pgTEQ/gのダイオキシン類汚染も発覚しました。しかし、焼却炉直近の汚染調査を行ったのはこの1箇所のみです。埼玉県は焼却炉から離れた地点だけを調査して、「顕著な汚染は見られない」としていますが、全く、説得力がありません。土壌汚染対策法からも「産業廃棄物処理施設」は対象からはずれました。しかし、様々なゴミを扱う廃棄物処理からは様々な汚染物質が飛散流出する可能性があります。ずさんな処理を目の辺りにしてきただけに、残された土壌汚染の解明と原状回復措置が必要性を実感しています。今回の調停でも業者の殆どがこの汚染調査に同意しませんでした。また、調査をすることが可能である埼玉県も、汚染調査の実施について、取り組もうとしません。今後とも、土壌汚染の実態を解明するための自主調査などの取り組みを続けていこうと考えています。
5,ごみ山
ごみ山は危険である、と言い続けてきましたが、今尚、7箇所の大きなごみ山がこの地域に残されています。自然発火、崩落、様々な有害物質の飛散、流出。硫化水素の発生をデータと共に突きつけても、火災の事例が多発しても、対策をとろうとしない埼玉県や業者に対する粘り強い取り組みが必要です。
最後になりましたが、4年間という長きにわたり、本当に熱心にお付き合いいただきました弁護団をはじめ、参加いただいた申請人の皆様、ご関心をお寄せいただき協力・支援いただいた皆様に深く感謝しております。本当にありがとうございました。
4054人の申請人、一人一人の小さな力が集まることによって大きな力となるということを、この4年間、実感しました。また、事務局として、本当に勉強となった4年間となりました。
さらに、裁判、破砕等施設の増大、依然として残る環境汚染、押し寄せる首都圏産廃、ごみ山、等課題はまだまだ山積していますが、調停の経験を今後に生かしてゆきたいと思います。
どうか、今後ともよろしくお願いいたします。
さいたま西部・ダイオキシン公害調停をすすめる会
email : ekitaura@tk.airnet.ne.jp
公害調停をすすめる会
http://www3.airnet.ne.jp/dioxin/