所沢周辺焼却施設の現状

 所沢周辺焼却施設の届出記録によれば、その数は64炉に及ぶ。その大半が、97年廃棄物処理法改正以前には許可対象外であった5t/日未満の小型焼却炉(51/64炉)である。これは、特にくぬぎ山で明らかなように、埼玉県が、野焼き業者などに対し未規制の焼却炉を建てるよう指導した経緯なども影響していると考えられる。

 埼玉県では、97年廃棄物処理法改正後、特に98年12月の構造・維持管理基準強化にょり、焼却施設の廃止・休止が進み、所沢周辺の環境は以前よりかなり改善されたかのように喧伝している節があるが、日々煙にみまわれる周辺住民が見る状況は依然深刻であると言わざるを得ない。
 埼玉県に届けられている焼却施設に関するデータや、住民がいくつかの施設の維持管理記録の閲覧に行った記録から、現状の実態と問題点を整理して報告する。

1,焼却施設の廃止と休止の状況と、許可処理能力の推移について

 所沢周辺焼却炉64炉について、これまでに県に報告されたところによれば、廃炉16炉、休止炉10炉、工事中1炉、操業は37炉。但し、休止炉の内、住民が聞き取った範囲で、廃炉の意向を明確に示しているのは3炉。後の7炉は不明。

 さらに、県が把握する当地域周辺の届け出処理能力から、焼却量がどの程度変化したかを見ると、約8割が未だ操業していることがわかる。これは、廃炉とした大半が小型焼却炉であるため。

 90年代に急増してきた当地域周辺の届け出処理能力による焼却量は、97年には64炉407t./dayに達し、98年以降もほとんど減っていない。届け出処理能力で言えば、一日当たり407t/dayのうち、97〜99年にかけて16炉35t/dayが廃炉となったが、新設の炉が98年に新たに許可され、20t/dayが増加した(山一商事40→60t/day着工中)ため、実質減った量は15t/dayにすぎない。
以上のように、当地域の焼却炉密集状況は、未だ深刻な状況であり、さらに、ここ10年で急増してきた焼却による周辺環境への被害は甚大なものである。

2,焼却施設の操業実態について
1998年12月より、構造、維持管理基準が強化された。また、99年4月には廃棄物の保管基準も強化された。しかし、最近、くぬぎ山では朝方、すっぽりと煙に覆われる、という状況が再び見られる。規制強化と裏腹に、夜間の焼却、蓋を開けたままでの焼却、燃焼途中での廃棄物投入、煙突から飛灰が飛ぶ、黒煙、塩素臭、などの操業状況がみられ、また、ごみの山積み状態は全く改善されていない。

1) 完全燃焼と温度管理
 所沢周辺焼却炉は、全てバッチ式であり、一日8時間操業などの間欠運転をしている。連続投入設備を有する施設は1社(2炉)。撹拌設備のついている炉はなく、構造上「完全燃焼」が不可能であり、また、立ち上げ立ち下げ、停止時において、多量のダイオキシン発生の懸念される炉である。
県では、このような炉で「完全燃焼」状態にさせるために、一日一回の適量投入。助燃バーナーによる速やかな助燃。完全燃焼するまで炉の蓋を開けない。800度以下になったらこまめに助燃する。最後は助燃バーナーによって速やかに燃やしきる。などを指導するとしている。しかし、施設数の多いことから全く「指導」「監視」が行き届いていない。また、撹拌設備がついていないことは致命的で、炉内のもの全てが完全燃焼できないことは明らかで、焼却灰には燃え残りが多く見られる。(熱しゃく減量10%以下、という維持管理基準に適合していないとみられるが、県がこの違反を「指導」した形跡はない)

* 1温度記録から見た操業の実態
 住民が、今回の法改正で新たに認められることとなった、施設の維持管理記録の閲覧に行き、温度記録紙を見せてもらった範囲でも、燃焼途中で蓋を開け、一日何回も投入する、燃やしきりが行われていない、操業時間が守られていない、などの操業実態が見られた。温度記録計を途中で切っている業者さえあった。規制強化から半年以上。県の「指導」はどうなっているのか。



一日2〜3回投入していると見られる温度記録。800度以上の定常状態など存在しない事がわかる。右下の記録では、温度が800度になった時点で、記録紙の電源を切っているという。

燃焼途中で蓋を開け、廃棄物を投入。飛灰が飛んでいた。維持管理基準に違反している。

*2焼却灰の状況(未燃物が多い)
 未燃物が多く、完全燃焼しているとは思えない。保管の状況でもこれまで見た全ての施設で屋根のないところで雨ざらしに野積みされており、周辺への飛散、流出が危惧される。

*3黒煙、塩素臭

立ち上げ時や、燃焼途中での蓋を開けての廃棄物投入時、停止時の夜、朝方など、住民は黒煙が上がるのを目にする。煙突から飛灰が飛ぶ、といった状況さえある。

この炉では、98年8月、塩化水素6100ppm(基準700ppm)を記録していた。自主測定であったため、県からは何も指導されていないという。住民が訪れた際も、塩素臭がたちこめていた。

*4 夜間操業


住民や行政の目の届かない夜、操業する。翌朝、周辺は煙でもやがかかる。届け出操業時間は全く守られていない。

レポート2へつづく