6月28日の放送である女優が発した軽はずみな一言。
ここからすべてが始まった。
アカデミー賞女優が初めてのヒッチハイク。
トラックの荷台でヤギ3頭と相乗り・さらに大粒の雨とヒョウ。
そして初めての野宿。
所持金ゼロ・2日間飲まず食わず・トルコ風呂でのアルバイト。
果たして猿岩石に逢うことができるのか!?
森脇みどりさん「室井さん約束守ってもらえるんですね」
「米入っちゃってるからね」
というその中身とは?
などなど救援物資の総重量20kg。
「お父さん、お母さん」
「届けますのでご安心ください」
と、ここでスタッフから「マネージャーなし」を言い渡され、
あげく持ち金全額没収されてしまいました。
そして用意されたのが「旅費決定ダーツ・ゲーム」。
投げるのは1投のみで、\500から\1,000,000まで
矢のあたったところの金額が旅費となります。
\1,000,000の札束を見てがぜんやる気の室井さん。やる気とは裏腹の腰の引けた
フォームから放たれた矢は、奇跡的にも的に刺さりました。
「ダメだ、5000円だ!」
のし袋を早速開けてお札を取り出すと、
「何だこれ、上げ底じゃん」
折った紙を中に入れて、袋に厚みを持たせていたのです。
しかしこの紙があとで役に立つことになるとは、この時点では誰も知りませんでした。
そしてスタッフから手渡された猿岩石追跡アイテムは…
猿岩石はイランからトルコの首都・アンカラに入ったとの情報を受け、
アカデミー賞女優もアンカラへ向けて、旅立ちました。
全財産\5,000を両替してすさまじい額面(約3,850,000トルコリラ?)に驚いたあと、
アンカラ市内へのバスはもう終わってしまって、もうタクシーしかないと聞かされました。
今日はホテルに泊まろうとした室井さんは、そこらの人たちに尋ねました。
「すごく安いホテル知ってる?」
「すごく もう ぜんぜん お金 アイ ハブ ノーマネー」
なにやらいかがわしそうなホテル街、ウルス(ULUS)地区に到着すると、
「メーター切ってちょうだい!」
「カットメーター、プリーズ!」
このタクシー代に早くも\2,000を使い、残り\3,000。
ホテルを値切りながら歩き回り、3軒目で決定しました。
宿泊料は1件目の700,000トルコリラ(約\900)から400,000トルコリラ(約\520)に。
これで現在の所持金は約\2,500になりました。
「お金ないからさ」
「ボク、ガムあげるよ」
チップはガム1枚です。
寝るまでの間、ホテル周辺を捜索しました。
「こりゃ大変だよね、捜すのね」
「まいったなー」
「あ〜つかれた」
この日は収穫ゼロ。
最初に目に留まったのはパン屋のクロワッサン?でした。
20万トルコリラ(約\40)でそれを、マイルドセブン?1箱でジュースを手に入れました。
公園に行く道すがら聞き込みをしましたが、手がかりなし。
その公園に行く道を警官に尋ねました。
警官A「チョクザ!」(すごく遠い)
警官B「チョクザ、チョクザ!」(すごく遠い、すごく遠い)
そこでパトカーに乗せていってくれるよう頼みましたが、
警官C「タクシーに乗りな」
警官A「ここを真っ直ぐ行って、右に曲がって、そのまま行って」
歩いていくために道を教えてもらうと、
「ケチ!」(当然日本語)
ウルス(ULUS)からCEMRE PARKLまでは約8kmの道のり。2時間かかって到着しました。
ここで早速聞き込み&捜索開始。しかし、手応えはありません。
「いないよなー」
ここで、公園をあとにしながら、何か思いついたようです。
「インターネットでさー」
「アンカラに来てるかどうか、ちょっと捜した方がいいんじゃないかな」
「インターネットカフェとかあるのかな?」
「無いよなー」
そこで捜索ポイントを変更し、インターネットに接続できる
パソコンショップや日本の企業などを捜すことになりました。
やはり見あたらないので、交番で質問です。
「Is there パソコンショップ here?」
警官A「ここのショッピングセンターだったらあるよね」
「タクシーで行けるよ」
「ノー、ノー」
警官A「歩いて?」
警官B「歩いて行けないわよ」
警官A「まさか歩いていかないよね」
警官B「すごく遠いわよ」
「遠いんでしょ?チョクザってのが遠いって事だけはわかったんだ」
約12kmの道のりをかれこれ4時間かかって、へとへとになりながらも
ショッピングセンター内のパソコンショップに到着。
「私の友達を捜してるんですが」
「インターネットサービスを見せて下さい」
すると、
居合わせた女性客「私でよければ何か…」
「インターネットをやりたいんですが…」
女性客「日本人ですか?」(ここまで英語)
「それでは日本語で」(いきなり日本語)
何と!この女性は日本語ができるのです!
「地獄にホトケ」
「知ってます?地獄にホトケ」
「あ…あはは…」(照れ笑い)
彼女、なかなか日本語は達者なようです。発音も違和感ありません。
彼女の通訳で、インターネットへの接続を頼んでもらいますが、
店員「ここでは無理です」
ところが、彼女のご主人は日本人で、ホテルに泊まっているのだそうです。
インターネットの件について電話で聞いてくれました。
女性「日本の女の人が困ってるんだけど」
「そっちに連れてっていい?」
返事はOK!
「よかったー」
「涙でてきた」
彼女のご主人は、くさび形文字の研究者。学会のためトルコのホテルに
滞在しているというわけです。すぐにホームページを見せてもらいました。
女性「何か飲みますか?」
もう泣きながら喜びっぱなしの室井さん、
「何でもいいです、水でも何でも」
すると、コーラを勧められて、
「いいんですかコーラなんて!」
目をまんまるに、なおかつウルウルさせながらダイエットコーク350mlをがぶがぶと飲んで、
「うぁーッ!」
「おいしい!」
そうこうするうちに、ホームページにもつながったようです。
「2人の現在いる場所…」
「トルコ」
「アンカラからアンタルヤへ移動中だって」
「アンカラにいないよ!」
「海がみたいと地中海に向かう」
爆笑する室井さん。
アンカラには一泊もせずにアンタルヤへ向かっていたのでした。
「あと2000円位しか無いのに」
そこで、長距離トラックをヒッチハイクすることにしました。
ご主人に「アンタルヤに行きたい」「お金がない」というメモを書いてもらい、
トラックターミナルへと向かいました。
しかし、人々はバス乗り場を紹介してくれるばかり。バスでは\2,000もかかります。
めげずにあたっていくと、乗せてくれそうなトラックがありました。
お兄ちゃん「この娘、お金ないんだって」
おっちゃん「かわいそうだから乗せてやるか」
お兄ちゃん「ちょっと位、お金だせよ」
そこで室井さん、朝食での物々交換を思い出して再びたばこの箱を出しましたが、
それといっしょにお札も1枚持って行かれてしまいました。
ところがそのトラックには先客がいたのです。
「何だこれといっしょかよ、ハハハハ」
先客は3匹のヤギさん。笑い泣きしながら人々に手を振って、アンカラを出発です。
アンカラから南西に約400km進んだアンタルヤ目指して、荷台の上での長旅が始まりました。
「会えたらいいなー」
と、その時、
「あ、おしっこだ!」
「あ、おしっこだおしっこ!」
「あーおしっこ。おしっこは怖かったんだ」
「おしっこあー。おしっこがまんして。おしっこしてる。困るんだよー」
ヤギさんです。言っても聞くはずがありません。
今度はハーモニカを取り出し、揺れる荷台の上で「上を向いて歩こう」を
吹き始めました。
やがて空がかき曇り、突然大粒の雨と雹が室井さんを襲い始めました。
「あいたたたた…」
「わー寒い」
「いてーっ」
「これヒョウだぜあ」
するとヤギも、
「鼻出しちゃったよ」
「寒いんだよ」
「イテーよイテー、イテー」
しばらくすると、
「わー凄いね また日が差してきた」
「また凄い日が差してきちゃった」
その時、今度は車がスローダウン。
「おかしいこの車」
「調子悪いんだこの車」
「大丈夫かなー」
車はどうにか持ち直し、走り続けてくれました。
急激に冷えてきました。
「これトレーナー着てるだけなのよ」
「トレーナーだから、首のところに穴があいてるの」
着てるんじゃありません。はいてるんです、トレーナーを。
車に乗って4時間、日が傾き始めた頃には、疲れて寝ていました。
すると、また車がスローダウン。今度は、
「止まった」
完全に止まってしまいました。
「どうした?」
「エンストか?」
と、車は無理矢理走り出しました。
「ダメダメ」
「黒煙吐いてる」
排気ガスは真っ黒です。車はもう動かなくなってしまいました。
「どうしてこーなるのかな」
おっちゃんとお兄ちゃんの修理にも関わらず、車はまだ直らないようです。
お兄ちゃん「アンタたち、他の車を捜してくれないか?」
おっちゃん「許してくれ、悪いな」
アンタルヤまであと150km、ここからまたヒッチハイク開始です。
「上げ底で紙入ってたんだよ」
「ほら、こんなでっかい紙」
「やったじゃん」
「これに書けばいい」
この紙に口紅でメッセージを書いていると、1台の車が止まりました。
男性「こんにちは、どうしたの?」
「アンタルヤ!」
「この通りを向こうへ行くんだよ」
「おっちゃん、乗せてくれないんだったら話しかけんなよ」(日本語)
そう言ってメッセージの続きを書こうとする室井さんに、
男性「手伝ってあげるよ」
「優しいんだよな、こういうところは異常に」
男性「お茶でも飲むかい」
「どうしてそんなにやさしいの」
男性は室井さんを車に乗せました。
男性「もう日が沈んで危ないから…、泊まった方がいいよ」
車はとある家の前に止まり、出てきたもう一人の人に
男性「この娘が困ってるんだ」
「この人たちどっか泊めてあげてくれないか」
知り合いの男性「じゃあ、ちょっとついてきて」
トルコ語の会話が理解できないままやってきたのはアフィヨン村。
「どういうことなのかな?」
「ここに泊めてもらえるのかな」
お母さん「いらっしゃい」
あれよあれよという間に、一つの部屋に通されました。やはり泊まれるようです。
「(この部屋)かわいいでしょ」
部屋に正座し、しきりに礼を言う室井さんに、おばさんはキス。
「はずかしい、はずかしい」
お母さん「友達、友達」
「夕食食べるでしょ」
「悪いなー」
「ハーモニカ吹くしかないかな」
夕食までの間村を散歩していると、珍しい日本人に子供たちが集まってきました。
そこで早速、先ほど練習したハーモニカで「上を向いて歩こう」を披露しました。
不協和音の連続の演奏でしたが、子供たちは盛り上がり、お礼に歌のプレゼント。
「なんか照れちゃうな」
そして夕食。なにやらぶつぶつつぶやきながら、満足そうに食べる室井さん。
さらに、お母さんからプレゼント(何ていうんですか?スカーフみたいなアレは)
までいただいて、感謝しきりで夜は更けていきました。
「親切だよねー」
「アンタルヤにいればいいけどね」
アフィヨンから150km、ようやくとアンタルヤに到着しました。
乗せてくれた男性と別れの挨拶のキス。
「ヒゲ、痛かった今…」
男性「英語話せますか?」
「この通りを100m行くと、日本人とトルコ人の家族が住んでるよ」
「私、お金ないの」
しかし、この強引な男性にとりあえずついていくことに。
着いた先は日本語観光相談所"MiHRi"でした。
案内の女性「マリーナの方は行かれました?」
有力な情報を手に、2km歩いてマリーナの捜索を開始しました。
「いないのかな」
ここはトルコでも指折りのリゾート地で、とても1人で捜せる広さではありません。
遙か彼方まで続くビーチを前に、
「あー苦しい」
それでも捜索を3時間続け、
「あーおなかすいたよー」
吸い込まれるようにレストランに入っていきました。
そこでは今までの反動からか注文しまくりでした。
幸せな時間の始まりです。まずはビールをごくっとやって、
「ぅあーッ!」
サラダをつまんで
「おいしい!おいしい!」
「やー良かったわ、いいとこ来て」
その後も食う、食う。
「死ぬほどおなかいっぱいになっちゃったな」
さらに食後のコーヒーまで注文し、総額約2,000,000トルコリラ(約\1,400?)!
「どうしてそんなに高いの?」
「エビだよ」
「あーショックだ!」
そして残金約\600。
「そんなに贅沢したっけ」
「エビが贅沢だったんだー」
店を出てからも、
「食べなきゃよかった、あんなにいっぱい」
後悔しながらの昼寝です。
目が覚めた室井さん、一つ決心したようです。
「やっぱ働かなきゃダメだこれ」
先ほどの観光案内所に戻り、
トルコ語で仕事探しのメッセージを書いてもらいました。
室井さんの思いついた仕事とは、トルコ風呂。
店のおっちゃんにメッセージを突きつけ、
「読んで」
おっちゃん「男しか働けないんだ」
「女はダメ」
10分、15分。ねばり強い交渉の末、
おっちゃん「わかった」
おつとめ決定!うれしさいっぱいでおっちゃんに抱きつく室井さん。
しかし仕事用に着替えている最中には、
「良かったのか悪かったのかわかんないけど」
こうしてトルコ風呂マッサージ嬢が誕生しました。
そして、生まれて初めてのトルコ風呂を見せてもらうと、
「オー」
「ハマム(トルコ風呂)」
「オー」
「オー」
仕事をマスターすべく、レッスンスタート。お客は全て男性です。
仕事は、まあ、韓国式アカスリみたいなもんです。ただ湯気の中でやるというだけで。
「気持ちいい?ナイス?」
余裕を見せていたのもつかの間、予想以上の重労働に汗だくになってきました。
疲れとは裏腹にいつしか客は増え、順番待ちまで出る始末。それでも仕事は続きます。
ここでようやく一休み。
「すいてたんだよ最初」
「どんどん増えちゃって」
「もう7人くらい洗ったよね」
ボスのおっちゃんに水を1杯もらい、仕事再開。
次の休み時間、今度は外で涼む室井さんに、
おっちゃんはタオルでバサバサ扇いでくれていました。
「そんなにしてくれなくたっていいんだよ」
うっとうしそうです。
「それより手伝ってよ」
「どうして私だけにすんだよ」
この忙しさにはわけがあったのです。それは店の入り口に張られた1枚の紙でした。
"日本人女性がマッサージサービス中"
これを見て、また団体さんが入店しました。
「あー来ちゃった!」
「ガッカリ」
泣き笑いです。
「5人入ってった!」
「また1人で洗うんでしょ」
「おっちゃんさぼるんだもん」
もう女優の影はみじんも感じられなくなった室井さんの懸命の労働は5時間続き、
22人の男を洗ってようやく終了しました。
「疲れた」
「もしかしたら頭の血管切れてるかもしれない」
ここでうれしいことに、おっちゃんが夕食を持って登場しました。
「やさしいじゃん!」
「パパ」
夕食を目の当たりにして、
「ホーッ」
おっちゃんに最初の一口を食べさせてもらって、
「おいしい!」
食事のあとは、
おっちゃん「これは、アンタの給料だ」
1,000,000トルコリラでした。
「嬉しい」
さらに、
「チップ!チップ!チップ!」
「こんなに置いてった、お客さん」
「チップだよ、濡れてるもん金が」
「ありがとうサンキュー」
これが相当な額でした。結局給料とチップ合わせて1,900,000トルコリラ(約\2,500)!
すっかり打ち解けたおっちゃんは毛布と枕を用意してくれて、今日はここに泊まりです。
男性「ビーチの放送を使えばいいよ」
「こっち来て!」
「このスピーカー使って…」
ビーチの放送を使って呼びかけてくれるらしいのです。
放送係の男性「サル ガン セキ」
「二人の日本人を捜しています。御存知の方はご連絡ください」
「サル ガン セキ」
「二人の日本人を捜しています。御存知の方はご連絡ください」
今度は室井さんも呼びかけさせてもらいました。
「あのー、日本から来た室井滋です。猿岩石の二人、今捜してます。
あのー、もしここにいたら、ここなんか、あのー、迷子の人が、あのー、
来るところみたいで、ここに来て下さい。猿岩石の二人、猿岩石の二人、
よろしくお願いします。サンキュー」
これがアンタルヤのビーチにとどろいた、おそらく最初の日本語です。
1時間後、猿岩石の目撃者が現れたということで、早速会いに行きました。
目撃者の男性「3人だったよ。リュックサックを背負って、1人はこんなビデオを持って」
「3,4日前、この辺を歩いていたよ」
もうここにはいないようです。それでも二人がいたという岩場へ。
「この人たちを見ませんでしたか?」
少年A「あそこでカニなんかを食べていたよ」
「あの岩場にいたよ…」
少年B「2日前ここにいたけど…今はいないよ」
「フジツボも食べてたよ」
「ここで何か食べてたんだ」
焼いてました。食ってました。
「ショックだなーどこ行ったかなーこの人達捜してるんだけど」
少年たちもそこから先は知らないようです。
「いやーいたんだなーどこ行ったかなー」
「苦しいね」
猿岩石はもう街を出てしまったと考え、聞き込みを国道沿いに移しました。
あちこち聞いて回り、ビーチ用品の露天で聞き込みをしたときのこと。
「エクスキューズミー」
「ノー?」
いつものように立ち去りかけたその時、店のお兄ちゃんは思いだしたように、
店のお兄ちゃん「ボドルム!ボドルム!」
「ボードロンって何?」
店のお兄ちゃん「ボドルム 行ったよ」
すると、店の客のお兄ちゃんも何か言いたげなそぶり。
「知ってるの?」
「どこ?どこ?」
客のお兄ちゃんA「3人にて1人カメラ持ってた」
「この通りを向こうへ行ったよ」
客のお兄ちゃんB「自動車!自動車!」
「とにかくボートラムってとこに向かったんだ」
ボドルムです!BODRUM!
ここでボドルムへ向けてヒッチハイクをしていました。
「ここにいたんじゃん」
「イヤーもう」
「お金無いんだよ私」
猿岩石を追ってボドルムに向かう室井さんは、
またまたあの案内所の店にお世話になることにしました。
ボドルムへのヒッチハイク用のメッセージを書いてもらい、さらに頼れる情報も。
店の女性「ボドルムに、日本人でペンションやってる方がいるから…」
「エミコペンション」
さあ、ボドルムめざし、ヒッチハイクスタート!
そして、1台のトラックが止まりました。
ドライバー「この車はボドルムへは行かないよ」
「行かないんだったら止まんなよ」
気を取り直して50分後、今度は赤い大型トラックが路肩に入って来て、通過。
「なんだよ、こうやって入って来なくたっていいじゃんかよー」
それでも運転席の方に話しかけに行くと、ドライバーはすでにいなく、
背後から話しかけてきました。
ドライバー「ボドルム?」
「ボドルム、ボドルム」
彼は荷台を開けてくれました。そこで目に飛び込んできたものは、
「オー イス付き、イス付き」
このトラックは引っ越しを終え、ボドルムへ帰るところでした。
それで荷台にはソファーやクッションがあったというわけです。
「前のヤギのこと思ったら涙出てきた」
ようやくアンタルヤをあとにし、猿岩石を追跡中。と思ったら雨が落ちてきました。
「えっ又きたよどうすんだよほらようー」
「でもねえ、ちょっと待てばすぐやむよ」
前回よりは格段にたくましくなっています。
でも、この試練となると話は別。
「腹へったなー」
「腹へったなー」
「腹へったねー」
空腹に耐え、トレーナーを頭までかぶり、その上に帽子を掛けて寝ていた室井さん。
ところがトラックがここにさしかかると、
「マーケットだ!!」
やおら起きあがったその形相は、まさに鬼気迫るものがありました。
そこをむなしく通過していくトラック。恨めしそうにマーケットをにらむ室井さん。
「あーうまそうだー」
「腹へったー、あ、いいニオイ」
「あー焼いてるよ」
「あっ とうもろこし焼いてる」
「とうもろこし食おうよ」
「とうもろこし食わねぇ?」
空腹に耐えながら6時間、エーゲ海に面した街 ボドルムに到着しました。
「エミコペンション あった」
オーナーのエミコさんに荷物を置かせてもらい、人通りの多そうなところを聞いて、
深夜の聞き込みが始まりました。
若者でいっぱいの繁華街で手がかりを得られないままでいたとき、
男性「マリーナで見たよ」
猿岩石はマリーナに!? ダッシュ!!
周りの人に聞きながら、どうにかマリーナに到着。すると、
男性A「ヘイ」
「昨日この辺にいたよ」
男性B「ここに来たよ。昨日来た、昨日」
「このボートに」
「昨日?」
二人は、この船で働いていたらしいのです。
「長くいたの?」
男性B「一晩ボートで寝て、朝になって出て行ったよ」
この船で働き、一泊していたのです。
男性B「イスタンブールかヤロバに行っちゃった」
「行っちゃったかなー」
そこでヒッチハイクでヤロバに先回りすることに。
宿泊代を払って残金約\30となり、書いてもらったメッセージボードを手に
ヒッチハイク開始です。
朝食をとっている男性たちのところに行き、国道はどこかを聞き出すと、
「一個ちょーだい」
1日ぶりの食事である一房のブドウを食べながらのヒッチハイク。
しかし、遠くのヤロバまで行く車はなかなか現れません。
ヒッチハイク開始から1時間した頃、1台の車が止まり、ドライバーが話しかけてきました。
ドライバー「英語話せるか?!」
「私、新聞記者ですが、面白いので写真を1枚撮らせて下さい」
「お金くんないかな〜少し…」
なんだかんだいいながら、カメラにポーズを取る室井さん。
新聞記者「年齢は?」
「うーん…、20歳!」
新聞記者「仕事は何?学生?」
「はい、学生です!」
余裕で取材を楽しんでいた室井さんでしたが、実はこの記者、
トルコ最大の新聞社GAZE TE EGEの記者だったのです。
翌日の新聞には、1面にカラー写真付きで掲載されていました。
お金を全部無くした結局車には乗せてもらえず、ヒッチハイク続行。
大学生シガル ムロイ(20歳)は
友人2人に会いたいとヒッチハイク中
「なんだよなんだよもう」
泣きが入ってきました。
今度の車はやっと止まってくれた、と思いきや後ろのトラックにあおられて止まれず、通過。
そしてようやく、本当に止まって、乗せてくれる人が現れました。もう大喜びです。
「トラックじゃない 嬉しい」
「エアコン付いてる エアコンだよー」
幸運にもエアコンつきの車で、一気にヤロバへ進むことができました。
「ハァー寒い」
当然もう閉まっているフェリー乗り場で、明日の便の時間を確認します。
イスタンブール行きのフェリーの始発は朝6:30でした。
現在2:00。始発までの間、猿岩石が野宿していないか捜索です。
「いないかな」
疲れた体で広い公園を歩き回りながら、彼らに呼びかけます。
「おーい」
「猿岩石」
何度も呼びかけても、返事はありませんでした。
「まだ来てないのかなー」
マルマラ海の向こう側に、イスタンブールの夜景が見えていました。
そして室井さんは、猿岩石が来ると信じて、
フェリー乗り場で夜通し待つことに決めたのでした。
体育座りをし、前にメッセージボードを掲げ、
好奇の目にさらされながら夜が更けていきました。
何時間待ったでしょうか、室井さん、一旦立ち上がったかと思ったら、
ゴミ捨て場からイスを持ってきて、また待ち続けました。
おばさん「女の子なのにかわいそうに」
町の人は寄っては来るのですが、情報をくれる人はいません。
そこへ男の声が。
男性「見たよ」
荷物も置いたまま、彼のあとについていきます。
男性「この人達ボドルムから来たらしいよ」
連れられていった場所はフェリーの観光案内所。
女性「ボドルムからわざわざ友達を探しに来たの」
「見つかるといいわねぇ」
何の手がかりも得られませんでした。
「見てないんだったら来んなよ本当にもう」
すでに疲れといらだちは頂点に達しようとしています。
そして元の場所に戻り、それを紛らわすかのようにハーモニカを吹き始めました。
いつしか日は高く昇っていました。
「会いたいよもう」
強い日差しをさけるため、木陰に入ってなおも待ちます。
疲れがピークに達した頃、4人の少年達が彼女を遠巻きにして立っていました。
やがて1人の少年が話しかけてきました。
少年「見たよ、あっちで!」
懸命に立ち上がり、少年に連れられて海の方へ歩いていくと、
「あー、いたー!!」
「猿岩石ー!!」
追跡6日目にして、猿岩石発見!
泣き崩れながら、森脇と、有吉と、抱擁する室井さん。
森脇「約束守ってくれたんですね」
木陰で一息つき、ついに救援物資を渡すときが来ました。
森脇には両親からの護国神社のお守りなどを、
有吉には弟からのアントニオ猪木の写真などを。
そして両親からの手紙を。
少し遅くなったけど、お誕生日おめでとう。プレゼントのない誕生日は
今まで一度もなかったので、少し寂しい気がします。でもすごい体験が
プレゼントされて、苦しいけれど弘行にとって忘れることのできない
22才の年になりそうね。オリンピックも100回記念の年ですごく盛り上がっていたけど、有吉家では
弘行のヒッチハイクの旅がオリンピックなので、まだまだ続きます。
ロンドンへ金メダル目指してがんばってね。人間は食べることと寝ることが大切だけど、寝ることはお金が無くても
できることだから時間があれば寝るように。病気とけがには注意して、
元気で二人で仲良く、一日でも早くロンドンへゴールできるよう祈っています。それからお母さんのお願い聞いてくれますか?髪の色は金・銀
どれでもいいけれど、もみあげとヒゲはそって欲しいわ。
お母さん
お母さん達は、想像もつかない本当に大変なチャレンジ。でも、和成なら
必ずロンドンまでゴールインするでしょう。つらいときは、広島時代を
思い出してがんばれ。9才の時の不明熱、髄膜炎、40日の入院生活。
中学時代は勉強よりも野球クラブ、県大会に行きましたね。お父さん、お母さん、みゆき、友人、誰も何もしてあげられないけど、
毎日、応援を送っています。これからも、厳しく、つらい旅が続くでしょうが、
体に十分気をつけて、がんばってください。
お母さんより
「ご飯にしよう」
先ほどまで疲れ切っていたはずですが、近くの喫茶店に駆け込んで
携帯用のガスコンロ2つを借りてきました。
「なんか食べた今日?」
猿岩石「何にも食べてないです」
「一緒だね」
そこで室井さんが取り出したのは、
森脇「おたふくソースだ!」
「梅干しも食べる?」
猿岩石「あー!」
この旅の最中、猿岩石の二人は22才の誕生日を迎えていました。
有吉は5月31日、トラックの荷台の上で。
森脇は8月1日、砂漠で歩きながら。
そこで室井さんは、広島風お好み焼きの上にろうそくを立て、
バースデーケーキに仕立てました。そして苦楽をともにしたハーモニカで
誕生日の歌を吹き、小さなパーティの始まりです。
早速お好み焼きを食べる猿岩石。
有吉「あーおいしい」
森脇「うまい」
室井さんも食べて、満足そうです。
「私が喜んでどうするのよね」
森脇の妹みゆきさんの手作りの人形や、友人達が二人に書いた
寄せ書きのノートなど大切な品々を渡したあと、いよいよ出発です。
猿岩石は、イスタンブールに行く船をヒッチハイクするために、
このヤロバの港に来ていたのでした。
有吉「イスタンブールまで行きたいのですが」
そばにいたおじさん「ダメ」
今度は船に乗っている男性に、
有吉「イスタンブール」
男性「ブンカプールしか行かないよ」
すると室井さんが船に乗り移り、男性になにやら握らせると、
ヒッチハイク成立。
「頑張ってね」
港を出ていく船に手を振る室井さん。
トルコ総移動距離 | 約2,300km |
---|---|
徒歩での移動距離 | 約70km |
出会ったトルコ人の数 | 約1,200人 |
アルバイト収入 | 1,800,000トルコリラ(\2,340) |
体を洗った男性の数 | 22人 |
2人の笑顔に出会う旅は、こうして無事に幕を閉じました。
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