検証! 中二美夫は正しかったのか!?
山田に対して、5打席連続敬遠をかまして敗れ去った江川学院・中二美夫。私情を挟んで敗れてしまう事など許されない筈の一発勝負のトーナメントだと言うのに、明訓応援団からは勿論、ファンからも叩かれまくった悲運の男・中だが、果たして、山田敬遠策は本当に賢明な選択だったのか? それを他の明訓戦から検証してみよう! 尚、敬遠する事による、その後の打順をズレを考慮すると、状況が変わり過ぎて、推測の比率が高くなるので、これについては無視し、山田の打席を迎える時は常に史実と同様の状況であるものとし、次打者の結果も基本的には史実と変わらないものとする。
1年夏 対白新
明 訓 000000403 7
白 新 401010000 6
【山田の打撃内容】
7回表:二死満塁→ランニングホーマー
9回表:二死二、三塁→四球
捕手として守りから途中出場した山田の初打席は7回。殿馬のリズム打法が岩鬼の失言により、不知火にバレ、タイミングを狂わされた山田だったが、グリップエンドで捉えた打球はレフト線を襲い、レフトのグラブをえぐる強烈なスピンがかかっていた事が幸いし、走者一掃の満塁ランニングホーマーに。流石に、6点差リードの満塁の場面で敬遠をするなど、恥さらし以外の何物でもないが、ここで敬遠すると、当然、押し出しで1点が入る。次打者はこの頃はただのザコでしかなかった山岡だが、山田がすんなり敬遠されていれば、岩鬼が失言する事もなく、リズム打法がバレずに連打が続いたかもしれない。しかし、リズム打法は所詮、タイミングを合わせるだけの手段であり、肝心なのは不知火の速球を捉える動態視力があるかどうか。関谷が三振している事で分かる通り、リズム打法は絶対的なものではなく(アニメでは関谷はリズム感が悪いから、と弁明されていたが)、そう考えると、山岡もリズム打法ですんなりタイムリーを放つと言うのは、楽観的な考えであり、ここはあえて凡退と仮定し、山田の敬遠効果により、この回は1点止まり。そうなると9回表は5点差で迎える事になる。二死二、三塁の場面で山田と勝負して、たとえ一発を浴びても、2点差。あとが下位である事を考えると、最早、明訓の勝利の可能性はゼロに近い。実際には2点差でこの場面を迎え、東郷学園中−鷹丘中戦で山田を敬遠した小林をあれ程、非難しまくった不知火が、正々堂々と勝負するどころか、正々堂々と敬遠すらせず、一見勝負に見える敬遠と言うセコい真似をやらかしている。しかし、勝利を最優先した場合、後続を考えても、この策は至極、当然だ。代打・岩鬼の悪球打ちなど、この頃は誰も知らないのだし…(そもそも、殿馬が本盗を仕掛けたからと言って、ストライクを投げていれば三振の場面で、わざわざウエストする必要すら無かったのだが…)。ともあれ、この試合、山田を敬遠しまくっていれば、十中八九、白新が勝利していたと言っていいだろう。中二美夫は正しかった!
1年夏 対東海
明 訓 100000000 1
東 海 000000000 0
岩鬼のプレイボールホームランで先制した値千金の1点を里中がパーフェクトピッチングで守り抜いたこの試合。山田は全打席勝負して貰っていた様だが、勝敗には全く絡まず、この試合の焦点は「打者・山田」ではなく、「捕手・山田」だった。と言う事で、検証の必要はないだろう。
1年夏 対通天閣
明 訓 0000001002 3
通天閣 0000000010 1
【山田の打撃内容】
2回表:一死走者なし→凡退
5回表:一死走者なし→凡退
7回表:二死一、二塁→ライト前タイムリー
10回表:無死一塁→ライト前ヒット
6回までパーフェクトを演じていた坂田は当然ながら、(内容は不明だが)1,2打席と山田を抑えている。しかし、7回、土井垣を敬遠しておきながら、山田と勝負してしまうと言う愚行を犯し、痛恨の先制タイムリーを浴びてしまった。次打者が吉良戦以外ノーヒットの石毛である事を考えれば、満塁にしてでも連続敬遠するのが賢明だった。土井垣を敬遠した段階で最早、プライドを気にする必要もない。ここで敬遠しておけば、0−0で迎えた9回、坂田の通天閣打球(この頃は「打法」ではなく「打球」だった)によるランニングホーマーで通天閣がサヨナラ勝ちしていた事だろう。尚、10回に関して言えば、この場面でのシングルヒットも敬遠も結果的には大差ない。土井垣が三塁へ進もうが、二塁止まりだろうが、北,里中の連打で2点は入っていた筈だからだ。やはり、7回の勝負が無謀だった。あそこで山田を敬遠していれば、十中八九、通天閣が勝利していたと言っていいだろう。中二美夫は正しかった!
1年夏 対土佐丸
土佐丸 0000000301 4
明 訓 2000010002× 5
【山田の打撃内容】
1回裏:二死一、三塁→右中間二塁打
4回裏:無死走者なし→三振
7回裏:二死走者なし→凡退
10回裏:一死一塁→ホームラン
この試合、打順の巡りが明らかにおかしいのだが、その辺のポカはとりあえず、この検証では無意味なのでなかった事にする。そもそも、この試合は初回から犬飼小次郎が本性を見せていれば、すんなり土佐丸が勝っていたと考えておかしくないのだが…。さて、まず第1打席、例によって、次打者が吉良戦以外ノーヒットの石毛なので、敬遠していれば、0点で済んだ。4,7回の内容を見るに、本性を見せていれば、ここでまともに勝負しても0点に抑えられたのかもしれないが、とりあえず、敬遠策を選んでも有効に働いたのは間違いない。この2点がなければ、里中潰しの為にわざわざ1点をくれてやったにしても、8回の犬飼兄弟アベックアーチで逆転し、逃げ切っていた事だろう。また、10回もわざわざ山田と勝負する理由は全くなかった。一死一、二塁のピンチを迎えても、吉良戦以外ノーヒットの石毛は安全パイであり、その次もこれまたノーヒットの沢田とあっては、逆転サヨナラどころか同点に追い付く術すら見つからない。この試合、山田を敬遠しまくっていれば、十中八九、土佐丸が勝利していたと言っていいだろう。中二美夫は正しかった!
1年夏 対いわき東
明 訓 000000002 2
いわき東 000000010 1
【山田の打撃内容】
2回表:一死走者なし→ショートゴロ
5回裏:一死走者なし→ピッチャーフライ
7回裏:無死走者なし→センターフライ
この試合も東海戦同様、「打者・山田」ではなく「捕手・山田」が焦点となった内容だった。打者としては3タコ。第3打席ではフォーク狙いと思わせて、ストレートを誘い、バットを折られながらも、バックスクリーン手前まで運んだが逆風に押されて失速し、足利のジャンピングキャッチに抑えられている。この試合、明訓は僅かに3安打しか出ておらず(初回の岩鬼の幻のホームランは記録上、二塁打になる)、うち2本がたまたま9回に続いたと言うのが幸運。山田は完璧に封じられた為、敬遠の必要性はなかったが、仮に敬遠しまくっていたとしても、トータル3安打では大局に影響を及ぼす事もないとあって、検証は無意味だろう。結局、この大会、明訓は初出場初優勝の偉業を達成するが、不知火が山田を敬遠してさえいれば、県予選1回戦敗退だったのだ。逆に、全国制覇を果たしたのは白新だったのかもしれない。