劇伴倶楽部座談会 第5弾

映像音楽サイトことはじめ

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音楽を解説する難しさ

石川進って知ってます? 「オバQ」とかの。
あ〜、「パーマン2号はウキャキャのキャ」の。
あの人の地元が実は岡崎で、駅前に石川進音楽院っていうのがあったんです。ぼくの友だちのお母さんて人がカラオケがむちゃくちゃ好きな人で、そこによく行って、歌唱指導受けていた。で、オリジナル曲が歌いたいと言い出して、「ミウラさん作曲しとるなら、なんか書いて」と。「ムチャいうなぁ」と思いながら、「で、どんなんですか」と聞いたら、「市川昭介さんみたいな」。
おー、「ハクション大魔王」の。
まあ、演歌の大御所なんですけど。で、どんな歌があるの、まあ見せてとか言って見せてもらった。歌詞が並んでて、コード進行が、Am,Dm,E、はいはい、こうすると演歌になるのかと。「でも、詞がなければ歌は作れません。ぼくは詞は書きません」て言ったら、次に会ったときに、「詞、はい」って、3番まで書いてあるの渡されて(笑)。一応、詞になっている。しゃあない、じゃあやるかって作曲した。できあがって、メロオケ聞かせたら、「ちょっと違うね、これ」「なんで?」
最後がA音で終わるんだけど、そのコードがド演歌のAマイナーじゃなくて、Aメジャーだったの。だから、さわやかに終わる。「アタックNo.1」みたいに。それを石川進音楽院の音大出の姉ちゃんとかが譜面見て、「演歌だから最後Aマイナーだよ」とかマジな顔で言うの。「おまえ、なに言っとんや。このかっこよさがわからんのか」。音大出た姉ちゃんに堂々と言ったはいいけど、なんでメジャーなのって言われたときに、なんでやー?
知らんでー。おかしいなあと。いまでも実はよくわからない。教科書とか探すとね書いてあるんですよ。Aメジャーのコードはこういう風ですとか。でもね、それも実ははっきり書いてないんです。サブドミナントの音ですとか、トニックですとかしか書いてない。だから、自分なりに解釈してやるしかないんですけど。
あのね、楽典読んでてもね、楽典いうほどでもないんですけど、トニック、ドミナント、サブドミナントとかあって、コードがこうこうこうなら、どうでしょう、気持ちよく終わるでしょうとかあって、。紙の上じゃわからへん、いうの(笑)。自分はそういうのがわからへんから読んでんのに。
あれ、難しいよね、音楽の勉強するっていうのは。
音楽のこと書くのも難しいんですよ。ミウラさんなんか、コード進行が書けるから、すごいうらやましいと思うんですけど。
でもね、読んでる人は実はほとんどわからんかもしれん(笑)。雰囲気だけで。
ぼくら読んでても、何書いてるのかわからんときあるんですわ。
すいませんね(笑)。
でもね、それらしく見えるじゃないですか。
音楽のホームページやってて、音楽をどう表現したらいいのか、ぼくやアキバさんは悩んでるんですよ。
あれを思い付いたのは、メロディをそのまま書くと、やっぱり著作権とかにひっかかるじゃないですか。コード進行なら、ええだろうと。だけど、全曲書いたらさすがにまずいから、4小節ぐらいなら大丈夫だろうと。その辺でやってるんですね。で、コード進行っていうのは、字ですごく表しやすい。それと、最終目的として、みなさんが感動してたのは、こういうコード進行なんだよ、っていうところを、実は一番訴えたい。だから、ぱっと読んでわかってもらえなくてもいいです。気持ちがわかってもらえたら。これが本音です。だから今のところ何書いてるかよくわからないってところは、ごめんなさいってことですね。
対象としては、渡辺岳夫を知らん人に知ってもらいたいっていうのと、知ってる人により深く知ってもらいたいっていうのと、どっちが大きいんですか。
一番大きいのは、知ってて、その人にすごく影響を与えていたんだけど、そのことを自分で気づいてない人。
曲は知ってるけど、名前は知らんっていうパターン?
それもあるけど。
むしろ、ミウラさん自身みたいな人を想定してるわけでしょ。ちょっと作曲もやるんだけど、実は渡辺岳夫に影響を受けていた。
そうそうそう。
自分なんか文章でも、カッチョエエとかね、そんな言葉しか出てこないんですよねえ、もう。
もともと(言葉で表現するのが)無理なんだろうけど(笑)。
そう。今も、なんで更新が止まってるかっていうと、一通り書いて、言葉が出尽くしてるんです。だから、カッコ悪いんですよ。同じようなこと何回も何回も書くの。
しかも同じ作曲家だから。
そうそう。同じようなことしか書けない。かといって、この曲はあれとそっくりっていうのを書きすぎるのもどうかなと。ぜんぜん書かへんのも問題やと思うんやけど。
CDの解説書のライナーなんかと一緒で、どうやって解説するか。
商売で書いてる人は辛いですよね。これとそっくりとか。
すごい遠まわしに書いてある。どことなく「シャイダー」を髣髴させるような、とか。同じって言えや、はっきり(笑)。
その辺は、売り物のライナーを書いてる人は辛いですね。
聴きたくない曲でも解説書かなあかんわけでしょ。全曲集なんかやったら。
大変ですね。ぼくなんかも掲示板なんかで、XXXXXのライナー、誰が書いとんじゃ、とかやってるけど、ほんとはえらい大変なことだぜ、と。その辺も書いといてください。
やっぱりXXXXXは信用ならんのかな。○○さんなんか、あの辺は信じてもええかもしれんけどなあ。
情報は選ばないとね。
○○○の書いたのはねえ、ダメ。
どの辺がだめなんですか。
なんか、音楽知らねえじゃん。楽器の名前が違うぞ、おめえ。この楽器、それじゃねえぞ、とか。
それは確かに。
今と昔、読み比べたらわかるんですけど、昔はあの人も、カッコいいとか、そういうようなことしか書いてないんですよ。最近はコードや楽器のこととか書き出して、勉強しはったんやなと思ってたんですけど。付け焼き刃なんですね、やっぱり。
宿命だよなー。
でも、○○さんもねえ、その辺は悩んだと思うで。どうやってライナー書いたらええやろうて。
やっぱり音楽的にも踏み込まないとって。ああいう解説やってる人は、もともと音楽やってる人じゃないから。映像が好きとかね。
東宝怪獣行進曲の諸岡さんがやってたのは、すごい的確やと思うて読みましたけど。あの人作曲家でしょう。「ガイバー(OVA2作目)」の。
ほんとはそれが理想なんだな。音楽やってる人が書いてくれるっていうのが。
でも、それって同業者批判とか。
そう、かえってそうなってしまうところもある。まあ、もともとああいうBGMコレクションとかの構成・解説をはじめた人は、映像のファンだった人だから。池田憲章とか。
浅井さんが次くらいになるのかな。
最近の解説で、いちばん、これアホか、て思ったのは、XXXの「XXX」。むちゃくちゃ書いてある。このおっさん、なんも知らん。
いや、言われてる方もきついやろうなあ。ぼくなんかもホームページでCDの紹介するときなんかも、はらはらものだもの。絶対まちがったこと書いてるやろな、と思いながら書いてる。
自分も、吉田正和さんていう、「キカイダー」と「スケバン刑事」のCD作った人からつっこみ入ったもん。ずっと「プリティキャスト」の歌は「ハカイダー」のイメージソングや思うてたら、実は違ってて。
ぼく自身が書いてることも、かなりヒヤヒヤもんで書いてますんで。
みんなヒヤヒヤしながら書いてると思う。

映像と音楽を切り離して語れるか?

実は、渡辺岳夫ホームページの作品解説は、作品そのものについては、わざとあんまり書かないようにしているんです。
ぼく、それを一辺、どっかでみんなで話したいと思うんですけどね。映画音楽の作品と音楽を切り離して語るっちゅうのは、どないやいうとこを。自分は、それ派なんですよ、どっちかっちゅうと。切り離してもええんちゃうのん、と。「グレートマジンガー」の音楽、すっごいカッコええと思うて、好きですけど、ぜんぜん観たことないに等しいんですよ。そういうところで、やっぱり違うと思うんですよ。「グレート」が好きで、その音楽を聴いてる人いうのと、単純に音楽が好きで聴いてる人と。「グレート」が好きで聴いてる人ちゅうたら、作品が好きやから、ついでで聴いてる、という風なところがあるじゃないですか。別に宙明やからというこだわりじゃなくて。自分は「グレート」とか関係なしに、別に「ジーグ」で使われたにしてもカッコええから好きやと思うてるんです。いうてみたら宙明の、作曲のファンですよね。そういうところはどうなんだろう。モリコーネいうても、全部観てるわけじゃないでしょう。
観てない。ぜんぜん観てない(笑)。
やっぱ音楽はええと思うわけじゃないですか。聴いたとき、頭に画像が浮かばなあかんのか、と。
なべたけの方に作品内容をあんまり丁寧に書かないのは、ひとつは、内容のことをあんまり書いちゃうと、音楽の方がかすんじゃう。音楽について書きたいから、そっちはあくまで中心なんだよっていうことをやりたいんですよ。別にわざわざ切り離しているわけじゃないんですよ。だって、内容を何も書かなかったら、見た人にあまりにも不親切っていうか。
そうそう、そうなんですよ。だって、自分んとこに、放映データぜんぜんないんですよ、実は。やっぱり、そういうニーズもあるのかなあ、と思ったりもするんですよね。
で、実は、あれは仕方なく書いている。
要するに、あってもなくてもええけど、ないと困るから、程度でしょう。
いわゆるサービス精神で。
いうたら、自分は曲が好きやから、だいたい何年に作られたかだけわかったらよくって、何月から何月まで放映されたっていうのは関係ない。何月何日に録音された、何年に作曲されて何年に録音された、そういうのがわかればいいだけやから。別に放送が1年でも3年でも関係ない。追加した音楽がいつ作られたか、それだけで十分やと思うんですよ。
もうひとつの理由は、それぞれの作品について書きたい人、語りたい人はほかにたぶんいるから、それへの配慮っていうか、遠慮っていうか。だって、共有の財産じゃないですか、映像作品って。みんなのものだから。ぼくはとりあえず音楽のことを書くけど、たとえば「新選組血風録」について大々的に取り上げたい人もたぶんいるだろうから、そういう人はまかしたぜ、ていう感じですね。
作品論を書きたい人は勝手に書いてくれ、自分は作品論はどうでもええねん、いう感じやから。かといって、音楽論はどうや、っていうと、知識がないから、こらまた困ったもんだ(笑)。
映像音楽っていうのは、確かに映像があってっていうところがあって、それも映画音楽とTVの音楽とはまたちょっと違うんですよね。
映画はフィルムスコアリングいうのがあったけど。
上映しながら合わせて録音するっていう。
テレビは基本的に溜め録りなわけやから。たぶんね、「アルベガス」にしても「レザリオン」にしても、発注メニューっていうのは一緒やと思うんですよ。そんなに変わらへんやろう。たぶん「マジンガー」の頃から変わってへんやろなあ。
でも聴けるっていうところもあるし。
だから、戦闘BGMだけでこう進化してきた、みたいなことができると思う。
とはいえ、じゃあ、映像がなくて音楽だけでも、ていうとそれもまた違うっていうところがあるから。
あ、違います? ぼくはそれOKですけどね。
人によって違うけど、映像込みで音楽と相乗効果で感動したっていう人もいるから。あとは、作曲家がこういう効果を、最初から映像を想定して書いたっていうケースもあるし。
曲単位で変わってきますからね、その辺がまた。
作品によっても違うし。
テレビものでも、たとえば第1話だけは絵が先にあってとか。
そう、絵に合わせて録ってるっていうのもある。あと、曲をつけるのも作曲家自身がつけてる場合もあるし。アニメはほとんど選曲家がつけてるんだけど、「ウルトラセブン」なんかは冬木透が自分でつけてるから、そういう作曲家の意図でこう使われたっていうところも必要になってくる。
その辺の話は難しいですね。立場をはっきりしてるのはアキバさんだけで。
難しい。あとは、映像を離れて音楽だけで見る人に説明しようとしたら、説明できない。
ああ、それはあそこでかかってた曲やん、ていうたらいいんすけど。でも、ぼく「グレート」の曲とか人に説明するときに、なんも言えないですよ。2枚目の何曲目に入ってるやつやとか、そんな風にしか言われへん。逆に未収録音源になると、わかんなくなってくるんですよね。あのときのあのシーンの曲が入ってない、とかいうのがわからない。
だから、アルバムになってるんだったら、そのアルバムで独立した作品みたいな扱いにすることもできるんですね。
ぼくは、レコードとかCDとか音盤になったやつしか聴いてへんわけやから。
もうアルバムとして聴いてる。
だから、たまに作品を観てると、やっぱりこの曲入ってへん、なんでこの曲入ってへんのや、とか思いますもん。「イナズマンF」のデスパーシティの曲が入ってないな、とか。
映像のファンから入ってきた人は、音楽としては別にどうってことないんだけれども、すごい印象に残った音楽、ていうのもあるよね。単なるドラムの連打だけなんだけれど、印象に残ってる、とか。
あー、「ウルトラマンレオ」で円盤生物が攻めてくるときの曲。それだけ3コーラスもやる。あの曲聴いて、めちゃ退屈してたもん。これ、いつ終わるのかなあ、と。どっかでメロディ入るのかなあと思って聴いてたら、最後まで入らんかった(笑)。
CDになったとき、ちょっと困った曲ですね。

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