パソコン・MIDI・インターネット
ミ アキバさんに聞きたかったんですけど、ホームページでMIDIのデータをアップしてるでしょう。あの辺の苦労話とか、どうやってやり始めたとか。特に知りたいのは、楽譜をもとに作ってるのか、その辺。 ア あ、そうですよ。ぼく、はじめてパソコン買ってもらったのが小学校4年生のときなんですよ。その頃「ゲームセンターあらし」にはまってて、ゲームが好きで「パックマン」とか「ゼビウス」とかずっとやってたから、パソコンがあれば、ゲームが自分で作れるんやいうて、弟とふたりのお小遣いとお年玉と誕生日プレゼントいっさいなしという契約で、買ってもろうたんです。思えば、その頃めっちゃきつかったですねえ。それまで超合金とか毎年買うてもろうてたのが、一気にとだえてしまうわけですから(笑)。 ミ そのパソコンはなんですか? ア PC6001。出て、ちょっとしてからですね。 ミ 何年頃? ア 1982,3年ですわ。 ミ まだ88とかが有名じゃない頃ですね。 ア まだ出てないですね、たぶん。8001とマーク2が出たくらいかなあ。それで、何やってたかというと、BASICを覚えるとか、ゲームを買ってきたやつをテープでピーガーてやるとか。あとは「マイコンBASICマガジン」とか「Oh!PC」とか買ってきては、載ってるプログラムを打ち込むとか。 ミ 「Oh!PC」ってパソコン雑誌ですよね。 ア それやってたのが小学校6年生くらいまでかな、ゲームやったりBASIC覚えたり。マシン語になって、挫折したんですわ。わけわからんようになって。それからほったからしやったんですけど、中学校のときに、「ポートピア連続殺人事件」と「オホーツクに消ゆ!!」をまとめて買うてもろうたんですよ。 ミ アドベンチャーゲームですね。推理ミステリーの。 ア そうですそうです。 ミ ぼくもやりました(笑)。 ア あ、やりましたでしょう。それがすっごい面白くて、またしょうもないテキストアドベンチャーとか作ったりし始めたんです。ゲームがすごい好きで、ゲームの音もすごい好きやったんです。で、PC6001って、はじめてPSG音源が乗った機種なんですよ。今までビープ単音だったのが、はじめてドミソの和音が出せたっていう。それで、「オールアバウトナムコ」っていうムックにナムコのゲームミュージックの楽譜が全部載ってたんです。 ミ それは歌メロが載ってただけじゃなくて、ベースとかドラムも載ってるの? ア 一応メロディ、ベース、あとドラムがXで書いてあるようなもんで。それを打ち込み始めたんです。PC6000の頃は和音3つしか出なくて。 ミ 一度に3つしか音が出ない。 ア しかもなめたことに、ド(4分音符)・ド(4分音符)とやるとドー(2分音符)になるんですよ。 ミ あ、切れ目がない。 ア 切れ目がなくなるんですよ。最初のPSGて。だから、むりやりコマギレにして、32分休符を入れたりしても、違和感出てくるとか。そんな苦労もあったんですけど。 ミ そうすると、すごい長くなっちゃいますね。 ア いや、結局4分になるように計算して入れるんですよ。そんなんを、テープ1本になるくらいやってたのかなあ。でも、もともとはアーケードゲームやから、4音とか5音とか平気で出てくるわけですよ。楽譜見たらね。だから、その中でも3音だけでできるやつを探してきて、やってた。 ミ それが何年頃ですか。 ア 1985年頃ですかねえ。でも、ある日、まちがってセーブしちゃって、データ全部消えちゃったんでやめてしまったんですわ。で、ずっと時は上って、大学4年のとき、1994年に、通信がやりたくて、人づてにPC9801のVMを譲ってもらったんですよ。もう当時486全盛だというのに。 ミ あの、クロック周波数が10メガヘルツと12メガヘルツと切り替えれたやつでしょう。ぼくも大学のときにね、ちょうどやってた。 ア そこで、パソコンに再びドはまりしたんですわ。 ミ その頃の通信ていうと、Nifty? ア いや草の根ばっかし。Niftyはありましたけど。 猫 アキバさんくらいの世代が、元祖パソコン少年ですかね。 ア いや、ぼくらは元祖じゃなくて、第2次くらいじゃないですか? ゲームパソコン世代かなあ。ぼくらの頃がちょうどMSXとかやってたやつらじゃないですかねえ。 ミ '94年ていうと、すでにWidows3.1が出てたときですよねえ。 ア もう来年にはWindows95が出るぞって言ってたときですからねえ。で、もともとゲームミュージックとかを、家で鳴らしたいなあ、自分で打ち込んでやりたいなあ、というのがあったから、また昔見てた同じ本を取り出してきて、楽譜を打ちこもうと思ってMIDI音源を買ったわけですわ。 ミ そのMIDI音源が? ア TG300、ヤマハです。友だちが買って、もういらんからいうて譲ってもらったんで、それでたまたまTGだったんですわ。当時はぼく、音楽教室みたいなとこに就職してたんですよ。そこでDTM教室やってた。それで、レコンポーザーを入手しまして。 ミ レコンポーザーってソフト、ですよね。 ア そうです。作曲ソフトっていうか、入力ソフトですよね。そんな感じで、ポツポツ打ち始めた。まだインターネットっていうのがはやり始める前、草の根ネットとか地元の知り合いのネットとかにアップしてたんですよね。もう自己満足。感想なんかも2,3通しか来なかったし。 猫 それが何年くらいですか。 ア それが'94年から'95年くらいですね。 ミ インターネット・カンブリア爆発前夜。 ア そうそう。だから、アップしてるデータっていうのは、ほとんどインターネットやる前に作ってたやつなんです。 ミ ぼくの場合は、'84年頃にMSXパソコンでMIDI音源、シンセサイザーを、コントロールするっていうのをやってたんです。その頃のMSXの実力だと、タイミングが遅れちゃうんですね。16分音符とかたくさん入れると、曲のテンポが遅くなるんです。 猫 DTMっていうのは、いつぐらいからやってたんですか。 ミ 1980年から81年頃ですね。楽器の方から入ってるから、その頃はコンピュータは知らない。手で弾くんですね。だから、DTMじゃないですね。で、MSXが出て、MSXパソコンはMIDIのデータをコントロールできる、画面が出てくるよって聞いて、これならできるな、と思って、それでようやくDTMですわね。ところがそれは、とても音楽に使えるしろものではない、というのがいじってみて、やっとわかった。それ以来、こんなのあかんわいと、しばらくはMIDIシーケンサーの方に走ってたんですね。それはパソコンじゃないんです。MIDIのデータをコントロールするだけの。で、1991,2年くらいまでは、それですね。だから80年代後半から90年代前半にかけては、パソコンをこっちにおいて、もうパソコンなんかいらんぜ、こんなんで音楽できんぜ、って感じですね。で、90年代前半からやっとMACで、今度はいいな、と。 ア あ、ミウラさん、MAC使いなんですか? ミ MAC使いというほど使ってない。 ア おうちはMAC? ミ MACのClassic IIか。一体型のちっちゃいの。 猫 DTMをやるためにコンピュータを始めたんですか? ミ そうですね。 猫 ほうー。 ミ だからメインは音楽。その辺がアキバさんと対照的なところでしょう。 ア ぼくら、ゲーム小僧やったから。 猫 みんな違うんですね、それぞれ。ぼくは同人誌やってたから、その延長でっていうんで。発表媒体が紙じゃなくって、ネットになっただけ、っていう感じだし。 ア そうそう、だから、ぼくも宙明先生の同人誌とか作りたいなあ、とか思うけども、そんなんまず、人探すの大変。ひとりじゃ書けんし。同人誌じゃなくて、ひとりでぽつぽつやってたらいいや、とか思うて。 サイト立ち上げの頃
猫 ミウラさんがインターネットはじめたのは、いつぐらい? ミ えーとね、'97年の1月。 猫 割と最近ですね。1年ちょっとですか。 ア ぼくは'96年の9月の末くらいから、もうすぐ丸2年。 猫 アキバさんのホームページはいつから? ア '96年の10月です。やり始めたきっかけっていうのは、連れが、おれもそろそろインターネットやるわって、夏頃に言ってたんですよ。もうその頃は第1次ブーム的な、プロバイダも林立してきて、でもまだアクセスポイントは全国にない、みたいな頃ですわ。じゃ、おれもやろかな、いう感じになって。で、そいつは絵を描くやつやったから、CG描いて載せるっていう目的があった。ああ、そうか、自分もホームページやるやったら、なんか目的がないとなーと思って。あ、渡辺宙明やろう。絶対マイナーや、誰も作ってへん、と。 ミ マイナーって(笑)。 ア でも、絶対マイナーやと思う。世間一般から見てね。いや、おたく界一般から見てもマイナーやと思う。アニメ音楽とかアニソン全般について書いてるところはあっても、作曲家ひとりに絞って、なんてとこは絶対ないわ、と思うて。 ミ 調査とかしたでしょ。 ア いや、全然してないですよ(笑)。あ、したのはしました。でも、アニソンのサイト自体、あの頃はまだ4つもなかったですよ。で、やろうかな、ということで、最初は、CDとレコード全部のライナーひっくり返してきて、何年にこれやって、映画はこれやって、っていうのをリストにしただけ。それで、Niftyにこんなホームページ作りましたって書いたら、「渡辺宙明全記録」っていう同人誌が送られてきたんです。それ見たら、全然知らん、何これ、ていうようなのまで載ってて、めちゃくちゃな量があって、それを打ち込むだけでも大変やった。それで現在に至ると。 ミ 時系列にいうと、'96年10月宙明sワールド、'97年1月私のホームページ。それから自分とこばっかだと飽きてきて、もう1個なんかやったれと。そしたら、すばらしい渡辺宙明ホームページというのを見つけまして(笑)。 猫 ああ、アキバさんのを見つけたんで。 ミ メール出したんですよね。これはすばらしいものを拝見しました。宮川先生、XX先生、それぞれあるようですが、これほどまとまった規模のはほかにないようです。で、ぼくはどっちかというと岳夫さんの方が好きです。そんな失礼なことは書いてないよ(笑)。岳夫さんのホームページっていうのはあるでしょうか、って挨拶出したら、まだないようです、って返ってきて。それではちょっと準備をしようかと思いますってメール出した。 ア そう、できる前に。 ミ できる前っていうか、準備始めるまだ前。そんなことをやっていいんかな、と。で、'97年7月に渡辺岳夫ホームページを一応アップロードしたんです。 ア (宙明sワールドは)今は解説とかレビューなんかはぜんぜんやってないんですけど、こっそりと作品リストだけは増えてってるんですよ。 ミ こそこそっとね。What's Newとかわざわざ書かずに。 ア もうええわ、思いながら。だって、もう書くことないもん。What's Newなんて。あと、今「マジンガー」をクリックしたら(サブウィンドウで)「マジンガー」のリストが出るようになってるんですけど、あれを作るのが大変なんですよ。あれをやろうと思ったら。曲名も全部書かないといけないから、BGM集なんか、気ぃ狂いそうになるくらいしんどいんですよ。 ミ 打ち込むのが。 ア めんどくさくて。でもやり始めてもうたからなあ、と思うて。 ミ ぼくはそれやらなくてよかった(笑)。 ア あれもCD単位で載っけて、どれだけ入ってるのかっていうのがわかるように。その辺もサービス精神のつもりでやってるんですけど。 猫 そういう、どういうコンテンツにするかっていうんで、最初は悩むんですね。 ミ あと、最初悩むのは、まだいいんだけど、やり始めてからというのが。 ア そう。路線変更みたいなんが。だから、あのウィンドウつけたのも途中からやったから、やめときゃよかったと思うて。「レイナ」とか「イクサー1」の頃はまだよかった。1トラック1曲やから。「マジンガー」になると、1トラックに6曲も何曲も入ってるし、しかも、ブリッジA,B,Cとか、こんなの書いてて意味があるんやろかとか思ってるんですけど。 ミ やらんでよかった(笑)。 ア でもね、やると逆に解説がしやすくなるんですよ。何曲めのブリッジのEとか、参照しながら見てもらえるから。 猫 資料的には意味がある。 ア 持ってる人対象ではなくなるから。 猫 これから集めようとする人には、参考になる。 ア そう。今Excelでね、宙明のMナンバー集みたいなの作ろうかな、と思うてるんですけど、宇宙刑事と戦隊で、今止まってるなあ。 猫 やり始めたら大変だねえ。 ア Excelやったら、Mナンバーでソートしたりできるから、便利なのはすごい便利なんですけどね。 猫 ミウラさんの場合は。 ミ ぼくはその辺は、先に不完全でもアップしちゃえって感じでやってました。そしたら、junjunさんなんかが、親切にも時代劇はこんなんがあります、こんなんがあります、っていっぱい送ってくれて。でもありがたいですよね、涙出るほど。ああ、ありがとうございます。で、知ってしまったらしようがないんで、自分で調べて。 ア 自分もあのとき、ミウラさんにメールぼんぼん送ってたような気がするわ。「ベルフィーとリルベット」とか「森のトントたち」とか。 ミ 初期の何ヶ月間かに爆発的にどんどん来て、それをまとめるだけで精一杯だった。その頃が一番大変で、面白かったっていうか。一段落すると、じゃあ、もっと真剣に行くかってことで、内容がだんだん変わってきたんです。もう、ここから先は開き直って、自分の勉強でええ。全部わかってもらえんでもええ(笑)。ただ、反響がないんで、ほんというと、ちょっと心配。 猫 ないんですか? ミ Dm7てなんですか、とかその辺の反響。そういう素朴なことが掲示板にぽこっと書かれると、返って安心するんだけど。そういうのは全然ないから。みんな、どのくらいわかってるのかな、と。 ア でも、Dm7てなんですって、コードネームですとしか言えないですよね。 ミ だから、心配になってきて。一応最初は悩んだ。こんなこと書いて読んでる人に合うのかなと、でも自分にとってすごくためになったから、もう、これはいいんだと。本売ってるわけじゃないし。ただでアップしてるんだから。ただ、一応読み物として読みやすいように、それだけにならないように配慮はしてます。その辺はサービス精神で、たとえば10行くらいあったら、そんな話は後半の半分にするとか。その辺は、今でも悩んでる。これ読んだ人は素直に、「なんやお前」って言ってきてくれたらありがたいです。一番うれしいのは、それ見て、楽典の本買ってきて、キーボード弾いて、あ、これがDm7かとか、Amとはこうで、メジャーだと、Cが#かとか。そんなメール来たら、ぼくはうれしいですよ。天国です。 ア 自分の場合は、「イクサー1」のCD買ってみました、とか。そういうのが来てくれたら、うれしいかな。あれは宙明作品の販促ページのつもりで作ってますから。買ってくれよっていう。 ミ 印税入っちゃう。 ア 印税はええけど、買ってくれたら次が出るんですよ。売れるということになったら、企画が通しやすくなる。新しいのが出る。いままで聴けなかったのが聴けるようになる。情けは人のためならずです(笑)。 (次のページへ)
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