劇伴倶楽部座談会 第2弾

音符から世界が聞こえる

〜アニメ・特撮音楽に影響を与えた世界の音楽たち〜

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クラシックの海へ

R3 クラシックは、唯一追っかけてないジャンルなんですよ。やはりクラシックというと「惑星」ですか。
組曲「惑星」から「火星」(ホルスト)
「惑星」は基本ですね。そのまま劇伴に使われたりしているし。この「火星」の打楽器のリズムは冬木透がお得意とするリズムなんです。
「ウルトラセブン」からM12(冬木透)
これは「ウルトラセブン」のウルトラホーク発進シーンの曲。でも、これはパクリっていうより、こういう手法ですね。
R3 マカロニと同じで、様式化してますよね。「ボレロ」をちょっと崩した感じですかね。
ラヴェルもちょっと入ってますね。この発展したのが、「ザ・ウルトラマン」の劇伴に出てきます。
「交響詩 ザ・ウルトラマン」から「第4楽章 栄光への戦い」(冬木透)
緊迫感をあおるリズムで、アニメ音楽にもよく使われてますし、最近では矢野立美の「ウルトラマンダイナ」にも同じリズムが使われてます。
R3 ワンダバっていうのは、どこから来たんですか。
「ウルトラセブン」に「ULTRA SEVEN」っていう英語の歌があるんですけど、「ワン・ツー・スリー・フォー」っていう歌い出しの頭の「ワン」が映像にすごくフィットしたんで、「帰ってきたウルトラマン」でワンダバダバっていうコーラスを使ったんだそうです。
組曲「惑星」から「木星」(ホルスト)
R3この「木星」も有名ですね。「惑星」っていうとこの曲ですね。
こういう表題音楽みたいなのが、映画音楽にも影響を与えてます。
あと、やっぱりワーグナーの影響は大きいですね。ああいうハッタリのきいた音楽が。
R3 敵側の威圧感とか。
「地獄の黙示録」の「ワルキューレの騎行」はそういう使い方ですね。
冬木透の「ウルトラセブン」にも影響が大きいですよ。
歌劇「タンホイザー」序曲(ワーグナー)
こういうホルンと弦の音は、冬木透が好んで使う音ですね。
「ウルトラセブン」は、こういう楽劇の音楽がかなり影響を与えています。
「セブン」劇伴のクラシックで攻めたっていうのは、当時の映像音楽では画期的なことでしたね。それまでは宮内國郎のジャズっぽいのとか、効果音的な使い方が主流だったんですけど、ああおいう純粋に音楽として完結したのっていうのは、それまでなかったんですね。
R3 当時のほかの番組でもないですよね。
歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲(ワーグナー)
これなんか「ウルトラセブン」っぽいですよね。
ロマン派から近代にかけてだと、ワーグナー、ラヴェル、それにホルストですね。その辺が、劇伴への影響が大きいです。あとはムソルグスキーも「はげ山の一夜」をディズニーがアニメにしたくらいだから。
R3 映像喚起型ですね。
もともとクラシックの作曲家っていうのは舞台音楽もやってるし、最近の作曲家では、サン・サーンスやプロコフィエフなどが映画のための音楽を書いているんですよ。

個人的に気になっているのが、ペンデレツキとかの現代音楽なんですよ。ペンデレツキは「エクソシスト」の音楽に使われたし、「2001年宇宙の旅」ではリゲッティが使われてます。不協和音とか12音階を使って不安な感じを出すっていう現代音楽の手法が、映画音楽のサスペンス曲に流用されてるんですよ。
「The Entombment of Christ」(ペンデレツキ)
「ウルトラセブン」のサスペンス曲なんかが、こういう感じですよね。
こういう前衛音楽でいうと、ジェリー・ゴールドスミスの「猿の惑星」がやっぱり12音階を使った無調の音楽です。
同じ映画音楽でもジョン・ウィリアムスや、最近だとジェームズ・ホーナー、アラン・シルベストリなんかは、割と正統なポピュラーの音楽ですけど。
R3 「タイタニック」は正統でしたね。
ジェリー・ゴールドスミスは、けっこう現代音楽を研究してるんです。オーメンなんかも前衛的だし。映画音楽でサスペンス曲とかアクション曲っていうと、ジェリー・ゴールドスミス・タッチっていうのがあるんですけど、普通のポピュラー音楽の系統じゃないですよね。ルーツはバーナード・ハーマンかな。
現在は、映画音楽の作曲家が、前衛的な音楽をポピュラーとして書いているっていうところがあるんですね。純粋芸術で実験した手法を商業作品に使うっていうのは、ほかの芸術ジャンルでも同じですけど。こういう純音楽の方から映像音楽に流用したっていうのは多いんです。

伊福部昭、そして冨田勲

いまはあんまりクラシックっぽい音楽ってないですね。特撮にしても。
R3 予算もないし。
OVAの「ジャイアントロボ(1992-98)」(天道正道)の音楽がいいらしいですね。
あれは、ワルシャワで録ったやつですね。
R3 1巻ずつ、毎回録音しているそうで。
「疾風アイアンリーガー」の音楽を書いた和田薫って人が伊福部昭の弟子なんですけど、やっぱりクラシックっぽいです。
R3 「ゴジラ」の新しい方は伊福部昭ですか。
'84年の「ゴジラ」が小六禮次郎で「VSビオランテ」がすぎやまこういち。それからあとは伊福部昭が復活してます。「VSスペースゴジラ」だけは服部隆之が書いてるんですけど、やっぱりちょっと違うって感じでしたね。
R3 伊福部先生は、やはりクラシックですか。
伊福部先生はクラシックというより、伊福部昭っていうジャンルですね(笑)。
R3 冨田勲のクラシックっぽい音楽は「マイティジャック」あたりからですか。その前に「ジャングル大帝」があるか。
「ジャングル大帝」や「リボンの騎士」は、毎回音楽をつけてるんで、むしろミュージカルとか、ディズニーなんかの外国のアニメっぽい音楽なんです。
R3 これ持ってきたんですよ「交響詩ジャングル大帝」。謎の手塚治虫サイン入りのやつ。
おお。「贈呈 手塚治虫」って書いてある。
R3 これはCDになってないですよね。
一度CDになってるんです。とっくに廃盤ですけど。
R3 なってるんですか。
「子どものための交響詩 ジャングル大帝」(冨田勲)
冨田勲って不思議ですよね。何がルーツかわからない。
R3 慶応の美術史科卒ですよ。でもこのレコードでは、ちゃんとしたシンフォニーを書いているんですよね。
これは、日本で最初に出た劇伴のシンフォニーのレコードなんです。
R3 このレコードは、1曲目が楽器の音色の紹介で、2曲めからすごい盛り上がりで始まるんです。
この金管の音が、いかにも冨田勲の音ですね。
R3 このサイン、にせものっぽいですよね。
(「まんだらけ」のカタログに載ってるサインと比べてみる)
うーん。
似てないですね(笑)。
R3 サインとして書いた字じゃないですよね。手塚プロの人が書いたのかな? <まんだらけ>へ持っていくしかないかな。
「なんでも鑑定団」に出しましょう。
R3 やだなあ、島田伸助に、「君ィ、こんなん3千円やで!、定価定価!」とか言われちゃったら。..............あ、でもそしたらその代わりに、石坂浩二に「ウルトラQ」のレコードにサインしてもらお(笑)。
('98/7/5収録)

対談を終えて

RYO-3さん、重い荷物を持ってきていただき、ありがとうございました。
実は、収録した話はもっとあったのですが、紙数の都合と改めて取り上げたい内容などもあって、約1時間分をカットしました。ほんとはもっとあったのだよー。
RYO-3さんのバッグから出てくる音楽は、ほんとに歌謡曲から洋楽まで「なんでもあり」。当日かけていた曲までお聴かせできないのが、ほんとに残念。
最後の方は、飲み食いしながらの雑談モードに突入してしまい、なんのまとめもありません。今回取り上げられなかった話題は、またの機会にということで。
腹巻猫

腹巻猫さん、今回はこんな機会を与えていただいて、本当にありがとうございました。また、こんな長大なもの、書き起こしていただいて、本当にお疲れさまでした。
いやぁ、こうして文字になると、ずいぶんいい加減なこと言ってるなぁ.......おれ(汗)。わたしの言ってることの多くは、さして根拠のないハッタリや、勝手な思いこみです(笑)。一介の音楽好きのツブヤきですので、自分の知ってるモノの範囲でしか話せてませ〜ん。どうかご容赦を。
もちろん、異論・反論は大歓迎です。どうかいろいろご指摘・ご教示ください。
わたしは「劇伴倶楽部」へは、このような分不相応なシッタカブリでなく、「へぇ、なるほどぉ〜」と、うなずいて勉強するために来ているようなもんですので.........。

RYO-3


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