埼玉県知事 上田清司様
2004.3.12

ゴミ山撤去へ向けての施策についての要望書
(産廃規制条例要望書はこちら)

 埼玉西部 土と水と空気をまもる会
前田俊宣
 埼玉県が平成14年に行った調査によれば、埼玉県内全体では3000m3以上のゴミ山が69箇所にあると発表されています。現在、当会の活動地域である埼玉県所沢周辺地域では、そのうち7箇所の大きなごみ山が残されています。ここで、「ゴミ山」とされているものは、屋外に多種多様なゴミが山積みとなっているもので、有害物質の飛散、流出対策は全く取られていないものです。これらのゴミ山は自然発火、崩落、悪臭物質や有害物質発生、飛散流出等、様々な危険があり、早急な撤去対策及び環境汚染防止措置が必要です。平成14年4月には、所沢市南永井にあった産業廃棄物保管許可施設「新明」が積み上げたゴミ山が大規模な火災を起こし、隣接工場が全焼する、という被害が発生、さらに、久喜市の住宅地に放置されたゴミ山に苦情が殺到し、マスコミに取り上げられる、という事態になったのを契機として、埼玉県は、ゴミ山撤去を重点施策としてかかげることになった経緯があります。県議会においても、ゴミ山を放置してきた県の責任を土屋前県知事自らが認め、今後はその対策に務める旨を発言し、ゴミ山撤去のための平成15年度予算として6億を計上しています。この対策に専従するゴミ山撤去担当部署も設けられました。
 さらに、国でも、青森岩手県境の大規模不法投棄事件をきっかけとして、不法投棄対策がとられることとなり、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法が、平成15年6月に制定され、ゴミ山除去へ向けての対策が促されています。
 ところが、その後、ゴミ山撤去対策が進むもの、との県民の期待は大きく裏切られ、上記の「新明」と久喜市のゴミ山は撤去されたものの、その他のゴミ山撤去対策は、2年近くを経た現在も全く県民の目に見える形で進んでいる様子はありません。また、ゴミ山撤去計画等も作られておらず、どのような形で今後撤去対策が進んでいくかの方針も伝えられてきません。 
 例えば、これまで、私達は、20m高さに積み上げられた三芳町に放置されている「長島総業」のゴミ山について、硫化水素及び、蓄熱温度等の危険性データを調査し、その対策と撤去を要望してきましたが、なんら目に見える対策は進んでいないのが実情です。
 埼玉県にゴミ山が多い第一の要因は、ゴミの流入が多いこと、屋外保管施設の許可数が多いことが挙げられます。長島総業や、新明のように、埼玉県が許可した施設が、ゴミ山を積み上げていく事例が後を絶ちません。さらに、県民の苦情に対処しきれず、業者に対しては、効果のない「口頭指導」を繰り返し、問題を深刻化させていくという、これまでの埼玉県廃棄物指導体制の欠陥が大きな問題点として指摘できます。
 今後、ゴミ山撤去をすすめ、再発防止策をとるためには、これまでの問題点を明らかにし、ゴミ山を積み上げてきた責任(排出者、実施者、行政)を客観的に明らかにすることが必要だと考えます。
 国の基本方針でも、撤去の前提として、このような、再発防止策の策定と、第3者による問題点検証をとることを求めています。(資料「基本方針」添付)
以上により、早急なゴミ山撤去対策及び再発防止策を取るために、以下を要望いたします。


1、 第三者専門家及び市民によるゴミ山問題を検証する委員会を立ち上げ、これまでの政策の問題点を明らかにし、また、ゴミの排出者、投棄の実施者、県行政の責任を明らかにし、再発防止策及び早急なゴミ山撤去計画、を策定していくこと

2、 特に問題となっているゴミ山の組成、有害物質調査、及び周辺環境影響調査を市民参加の形で実施し、その結果及び今後の対策等については、公聴会等を実施することにより、周辺住民へ公開していくこと

以上

以下資料

特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法
(平成十五年六月十八日法律第九十八号)

(目的)
第一条  この法律は、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等を計画的かつ着実に推進するため、環境大臣が策定する基本方針等について定めるとともに、都道府県等が実施する特定支障除去等事業に関する特別の措置を講じ、もって国民の健康の保護及び生活環境の保全を図ることを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において「特定産業廃棄物」とは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律 (昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃棄物処理法」という。)第二条第四項 に規定する産業廃棄物であって、廃棄物の処理及び清掃に関する法律 の一部を改正する法律(平成九年法律第八十五号)の施行(同法 附則第一条第一号 の規定による施行をいう。)前に廃棄物処理法第十二条第一項 に規定する産業廃棄物処理基準又は廃棄物処理法第十二条の二第一項 に規定する特別管理産業廃棄物処理基準に適合しない処分が行われたものをいう。
2  この法律において「支障の除去等」とは、特定産業廃棄物に起因する生活環境の保全上の支障の除去又は発生の防止をいう。
3  この法律において「支障除去等事業」とは、都道府県又は保健所を設置する市(以下「都道府県等」という。)が行う廃棄物処理法第十九条の八第一項 の規定による支障の除去等の措置に係る事業をいう。
4  この法律において「特定支障除去等事業」とは、支障除去等事業のうち、第四条に規定する実施計画に基づいて行われるものをいう。

(基本方針)
第三条  環境大臣は、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等を平成二十四年度までの間に計画的かつ着実に推進するための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2  基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一  特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の推進に関する基本的な方向
二  特定支障除去等事業その他の特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の内容に関する事項
三  その他特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の推進に際し配慮すべき重要事項

3  環境大臣は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
4  環境大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5  前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。

(実施計画)
第四条  都道府県等は、基本方針に即して、当該都道府県等の区域(都道府県にあっては、当該都道府県の区域内にある保健所を設置する市の区域を除く。以下同じ。)内における特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の実施に関する計画(以下「実施計画」という。)を定めることができる。
2  実施計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一  当該都道府県等の区域内において特定産業廃棄物に起因する支障の除去等を講ずる必要があると認められる事案
二  前号に掲げる事案に係る特定産業廃棄物の処理の方法その他の支障除去等事業の内容に関する事項
三  第一号に掲げる事案について、特定産業廃棄物の処分を行った者等(廃棄物処理法第十九条の五第一項 に規定する処分者等及び廃棄物処理法第十九条の六第一項 に規定する排出事業者等をいう。以下同じ。)に対し都道府県等が講じた措置及び講じようとする措置の内容
四  その他特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の実施に際し配慮すべき重要事項

3  都道府県等は、実施計画を定めるに当たっては、特定産業廃棄物の処分を行った者等の責任を明確化するよう配慮しなければならない。
4  都道府県等は、実施計画を定めようとするときは、あらかじめ、環境基本法 (平成五年法律第九十一号)第四十三条 又は第四十四条 の規定により置かれる審議会その他の合議制の機関及び関係市町村の意見を聴くとともに、環境大臣に協議し、その同意を得なければならない。
5  環境大臣は、前項の同意をしようとするときは、総務大臣に協議しなければならない。
6  都道府県等は、実施計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
7  第三項から前項までの規定は、実施計画の変更について準用する。

(国庫補助等)
第五条  国は、廃棄物処理法第十三条の十二 に規定する適正処理推進センターが、廃棄物処理法第十三条の十三第五号 に掲げる業務であって特定支障除去等事業に係るものを行う場合においては、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、当該業務に係る廃棄物処理法第十三条の十五第一項 に規定する基金に充てる資金を補助することができる。
2  国は、前項に規定するもののほか、都道府県等が特定支障除去等事業を実施しようとするときは、当該特定支障除去等事業が円滑に実施されるように必要な助言、指導その他の援助の実施に努めるものとする。

(起債の特例)
第六条  特定支障除去等事業につき都道府県等が必要とする経費については、地方財政法 (昭和二十三年法律第百九号)第五条 各号に規定する経費に該当しないものについても、地方債をもってその財源とすることができる。

   附 則

(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(この法律の失効)
2 この法律は、平成二十五年三月三十一日限り、その効力を失う。

産廃特措法基本方針(概要)

特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の推進に関する基本的な方向
 ・平成9年廃棄物処理法改正法の施行前に不適正処分が行われた産業廃棄物(=特定産業廃棄物)に起因して生活環境の保全上支障が生じ、又は生じるおそれが大きい全ての事案について、今後十年の期間内に計画的かつ着実に問題の解決に取り組むこと。
 ・都道府県等は、特定産業廃棄物の実態を把握するための調査に努め、支障の除去等を行う必要があると判断した事案については廃棄物処理法に基づく措置命令を発出すること。これらの手続によってもなお支障の除去等が完了しない場合には、産廃特措法に基づく実施計画を策定し、特定支障除去等事業を実施すること。
 ・不適正処分の行為者及び産業廃棄物の処分に至るまでの間にその適正な処理の実施を確保する注意義務に違反した者等に対して、廃棄物処理法に基づく措置命令を発出して支障の除去等の措置を行わせること。
二 特定支障除去等事業その他の特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の内容に関する事項
○支障の除去等を行う必要がある事案に関する事項
 ・都道府県等が自ら支障の除去等を行う必要がある事案について、都道府県等は実施計画を定めること。この場合、生活環境の保全上の支障の内容及び生活環境の保全上達成すべき目標について明らかにすること。
○特定支障除去等事業の実施に関する事項
 ・支障の除去等については、措置命令の対象の範囲内で行うこと。
 ・特定産業廃棄物の種類及び量を明らかにすること。また、特別管理産業廃棄物又はこれに相当する性状を有する廃棄物(=有害産業廃棄物)の種類及び量についても明らかにすること。
 ・支障の除去等の実施にあたって、当該特定産業廃棄物の種類、性状、地域の状況及び地理的条件に応じて、支障の除去等に係る効率、事業期間、事業に要する費用等の面から最も合理的に支障の除去等を実施することができる方法によること。
 ・特定支障除去等事業に要する費用及び不適正処分の行為者等から確実に徴収されることが予定される金額について、あらかじめ明らかにすること。
 ・国から適正処理推進センターを通じて行う出えんについて、有害産業廃棄物の処理に要する費用については1/2、有害産業廃棄物以外の処理に要する費用については1/3の出えんを行うこと。また、生活環境の保全上必要な施設整備等の費用については、有害産業廃棄物の量と有害産業廃棄物以外の産業廃棄物の量の比率により出えん額を算定すること。
 ・起債の算定基礎となる地方負担額について、当該特定支障除去等事業に要する費用から、国からの出えん額及び不適正処分の行為者等から確実に徴収されることが予定される金額を減じた額とすること。
○特定産業廃棄物の処分を行った者等に対して行う措置
 ・特定支障除去等事業を実施する事案について、都道府県等が特定産業廃棄物を確認した時期、地域住民からの情報提供の時期、廃棄物処理法に基づき行った報告徴収・立入検査・措置命令等の状況、現在に至るまでの期間に行うべきであった措置及び今後行おうとする措置の内容並びに当該措置の実施体制等について第三者である学識経験者等を交えて検証し、その結果を明らかにすること。なお、これらの検証を行った結果判明した組織上又は個人の責任及び当該責任に関して講じられた措置等について明らかにすること。
 ・特定支障除去等事業を行う場合であっても、引き続き、措置命令、特定支障除去等事業に要する費用の徴収を不適正処分の行為者等に対して行っていくこと。
 ・今後の不適正処分の再発防止に向けた具体的な対策を明らかにすること。
三その他特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の推進に際し配慮すべき重要事項
 ・事業の実施にあたって生活環境への影響が生じないよう、具体的な環境の保全のための措置を講ずるよう配慮すること。また、周辺の生活環境のモニタリングを計画的に行い、公表すること。
 ・不適正処分の行為者や排出事業者の責任追及について、これらの者が所在する都道府県等と特定産業廃棄物が存在する都道府県等とが共同して行うこと。
 ・国は、都道府県等における実施計画の策定状況及び事業実施状況について把握・公表するとともに、特定支障除去等事業が都道府県等において円滑に実施されるよう、必要な助言、指導その他の援助の実施に努めること。
 ・実施計画の策定段階において、事業の内容、処理方法、周辺の環境対策等について関係市町村や住民に対する十分な説明と意見聴取を行うほか、事業の実施段階においても、事業の進捗状況、処理等に関する情報を積極的に公開すること。
 ・特定支障除去等事業を行うべき区域、支障の除去等の方法、特定支障除去等事業に要する費用