埼玉県知事 上田清司様 2003年3月12日
産業廃棄物対策、及び条例(仮称)についての要望書
埼玉西部・土と水と空気を守る会
事務局代表 前田俊宣
貴下におかれましては埼玉県の環境行政にご尽力いただき、心よりお礼を申し上げます。
埼玉県では、東京に近く交通の便がよいこと等々の理由から、首都圏産廃が大量に流入してきており(首都圏産廃流入量は他県を圧倒して1位=資料参照)、埼玉で保管、中間処理された後、より以北の他県へ流れていく、という、首都圏産廃のルートが出来上がっている、と指摘されています。この結果、98年に産廃焼却による所沢ダイオキシン問題がおこり、焼却炉の集中立地による環境汚染が大きな社会問題となりました。その後、焼却炉の数はある程度減ったものの、ゴミの流入量は変わらず増加、ゴミ山が増加、さらに、破砕、圧縮等の中間処理が盛んに行われるようになり、その施設数、許可量も年々増大しています。(例えば、焼却は一番多かった頃、所沢周辺で総量で500t/日が許可されていましたが、現在、同じ地域で、破砕、圧縮等の許可は約8000t/日に及びます)しかし、それらの環境対策は全く不十分と言わざるを得ません。
このような状況を、漫然と放置していては、さらなる環境汚染を引き起こすことになります。現に、県内各所で、ごみ山問題や、増大する中間処理施設・保管施設の操業状態の劣悪さからの住民との紛争が起こっています。
これらの問題を解決していくために、市民参加によってこれまでの問題点を整理し、産業廃棄物条例を制定する等、従来の県行政ではできなかったような、抜本的な対策を講じていくことが求められます。
もともと産業廃棄物の当地域への流入量が異常に多いことが問題の原因になっていることは明らかであり、他にもゴミ山が多数形成され自然発火による火災や硫化水素の発生など、不適正処理や不法投棄による環境悪化の実態があります。
そこでこの産業廃棄物の異常な集中流入を改善し、埼玉県民を環境の悪化から守るため、以下のように産業廃棄物に関する流入規制と産廃税の導入、増え続ける破砕・圧縮施設。ゴミ保管施設に対する規制の強化を含めた産業廃棄物条例を制定するべく、県民参加での検討を要望いたします。
なおご回答は2004年 月 日までに下記連絡先へお願いいたします。
<記>
[1] 産業廃棄物の流入規制の実施・・・すでに事前協議制は導入されていますが形骸化した手続きであって、廃棄物の流入抑制には全く効果がないことが添付資料においても確認されています。岩手県も実質的に首都圏からの産廃を拒否する姿勢で流入規制を考えています。埼玉県もより効果的な流入規制を導入するべきと考えます。
[2] 産業廃棄物税の導入・・・すでに三重県、青森県、岩手県、熊本県、広島県、北九州市などで導入されています。環境を悪化させる原因となる廃棄物を持ち込む行為、および処理する行為に対してその処理量に応じた税をかけることは、処理能力を無視した無制限な流入に対して抑制効果があり、同時に適正処理へと誘導する効果も期待できます。またこれを法定外目的税として、環境保全、原状回復など産業廃棄物関連の環境政策の財源とすることで、環境税としての効果はさらに高まります。
[3] 破砕・圧縮等施設に対する規制強化
焼却処理の替わりに破砕・圧縮の許可をほぼ無制限に与えているのが現状ですが破砕によるアスベスト等を含んだ粉塵による公害や、プラスチックの圧縮による化学物質飛散、いわゆる杉並病の未然防止のためにも、ほとんど無規制であるこれらの施設に対する規制強化が必要です。屋根、囲いもないような施設や、粉塵防止措置について、「手散水すること」等で、許可される現状は異常な状態です。屋内施設に限ることなど、思いきった規制強化が必要です。
[4] ゴミ山を形成する積み替え保管施設の規制強化
埼玉県では、処理施設のみならず、積み替え保管施設の数も増加し続けています。これらが、ゴミ山となる例が多々あります。これらのゴミ山は飛散流出措置も満足に取られず、悪臭、粉塵の飛散、騒音等、様々な環境悪化をもたらします。積み替え保管施設に付いても、屋内施設に限る等、思いきった規制強化が必要です。
[5] 以上の対策を含めた産業廃棄物規制条例(仮称)の制定を目指し、県民参加の委員会を立ち上げ、検討を開始すること