Slayer
四天王のうちで最も攻撃的なバンド。その歴史は意外に長い。
SHOW NO MERCY 1. Evil has no boundaries Tom Araya(vo,b) |
このバンドもThrashMetalの黎明期から存在しているが、Metallica同様にその登場はインパクトが大きかった。この1stアルバムからして徹底的に危険な内容を盛り込んだアルバム。日本人からは滑稽に見えるかもしれないが、ジャケットからもその内容が伺える。Slayerには結成当初からギターが2人居り、リフとリードという役割分担をするのではなく2人ともリフを弾き、2人ともリードをとる。どちらがリードをとるかは曲によって異なる。2人とも演奏技術は高い。またこのバンドにはThrashMetalというジャンルにおいて屈指のdrummer、Dave Lombardo(dr)が居る。この1stアルバムではまだ2バスではないが、後にすぐ2バスを使うようになる。スネア、タムタム、バスドラ等、どれをとっても当時としては驚異のdrummingをしている。
当時、ThrashMetal勢としてはMetallica、Anthrax、Megadethと並びSlayerを含めて四天王等というような図式があった。これがいわゆる第一世代ということになる。もちろんもっと早くからこうした活動をしていたバンドもあったのだが、浮上を果たしたバンドとしては今挙げた4バンドが最初ということになる。中でもSlayerは最も危険な薫りを放っていた。日本ではMetallica、Anthrax、Megadethと比べるとSlayerが雑誌等のメディアで紹介されることがまだ少なく、まだ見ぬ大物としてとらえられていた。メンバは当初から4人でギターも2人だった。このギターの1人であるKerry King(g)は初期のMegadethでもヘルプとしてギターをプレイしていた。Slayerはどちらかというとストレートに速さ、攻撃性をぶつけてくる曲作りをしており、特に3rdアルバムまではリリース毎に速さや危険性を増していった。Slayerが世に初めて送り出したのはAggressive perfectorという曲で、これは当時頻繁にリリースされていたcompilationアルバムに収録された。このAggressive perfectorの時点から既にSlayerらしいスピーディな展開を信条とする曲作りであった。この曲がきっかけとなりアルバム・ディールに至る。1stではまだsound productionが良いとは言えないが、それでもこの当時リフやリードでこれだけやらかしているバンドはなかなか居なかったはずだ。リズム・パートはドラム、ベース共に当然速く、2人のリードもまた速い。しかしThrashMetalらしく展開というモノも曲毎にきっりちとあり、なかなかよい出来だ。
1、4、6、8、10は速い曲。他にも速いと思える曲はあるのだが、特に顕著なのはこの5曲だろう。1はアルバムのオープニングを飾る曲で、のっけからいきなりリフが速い。イントロのギターの入り方はなかなか往年のThrashMetalらしさを感じさせる。この曲はシングルにも収録された。2は今でもライブで選曲される人気曲。この曲もイントロでのギターの入り方が1同様にSlayer得意のパターンとなっている。リフの速さは別段大したことはないのだが、それでもやはりリードでは速い。どちらかというとリードよりもリフの方が聴いていて面白い。3もいまだにライブで選曲される人気曲。やはり例によってSlayerお得意のパターンでギターが入る。この曲も2同様にSlayerを代表する人気曲だが速さ的には大したことはない。リードは割と速い。4はそこそこの速さの曲。あまり話題になることのなかった曲だが、意外にスピーディに進む。5はinstrumentalであるMetalstormからそのままFace the slayerになだれ込む。Metalstormはinstrumentalといってもそれほどの長さのある内容ではなく、すぐにFace the slayerに移ってしまう。Face the slayerも別段速い曲ではない。この曲に限らずだが、1stアルバムに収録の速くない曲は何れもHeavyMetal然としており、普通のHeavyMetalバンドの曲としては聴ける。6は速い曲で、これもライブで必ず選曲されていた人気曲。シンプルではあるものの、プレイするには割と面倒なリフをかなりの速さで刻み込んでくる。冒頭の少々長めなイントロ部からメインへと繋がる部分は非常に聴いていてカッコイイ。リードもかなり弾きまくっている。7はアルバム中で最も目立たない曲の1つ。速さとしてはそこそこ。特にこれといって特筆するような所は見あたらない。8は冒頭のギターが印象的なちょっと面白い曲。速さは結構ある方でリードもなかなか速いが、やはりリフに耳が行く。この曲はシングルにも収録されている。9もまた取り上げられることの殆どなかった目立たない曲。技術的にはSlayerにしてはごく普通なレベルで取り立てて書くようなところがない。10はイントロのDaveによるドラムが強烈な曲。ドラムが一通り吠えてからリフが絡んでくる。リフはなかなか速い。またこの曲ではベースを兼ねるTom Araya(vo,b)がまだまだ英語が今のように達者でなかったせいか、発音がかなりたどたどしい。
HELL AWAITS 1. Hell awaits Tom Araya(vo,b) |
1stアルバムが聴くモノにかなりのインパクトを与えただけに次のアルバムが非常に気になるところであったが、Slayerの2ndは前作のカラーとはうってかわって大作主義で貫かれたアルバムとなった。しかしそこはさすがにSlayer、大作主義を持ち込んだとはいっても過激な速さを誇るリフやリードといった部分は相変わらずで、むしろ1stの頃よりもプレイも安定している上に更に速くなった。この2ndアルバムからもSlayerの代表曲を世に送り出した。収録されている曲目数が少なくなってしまっているが、若干長めの曲がいくつかあるためでヴォルテージは全く衰えていないので心配無用。それでもリリース当初はまだレコードしかなかったためA面B面と分かれていたのだが、A面はわずか3曲であった。アルバムジャケットは1stにも増して更に危険だ。扱っている詩の内容もまた然りでかなり徹底的。
攻撃性は1stに比べて更に磨きがかかっている。また曲の速さにおける進歩が大きいあまりTom Araya(vo,b)のvocalが曲の速さに追いつくのが難しく、もたってしまうという所にまで来てしまった。とにかく曲が速いにも関わらず詩での単語数が1stよりも多くなっているため、かなりのハイ・ペースでvocalが突き進む。sound productionは別段良くはないが、それでも1stに比べるとマシになっただろうか。内容が内容ということもあり、なかなかプレイさせてもらえるクラブ等がなかったという。Slayerのアンダーグラウンドの帝王という勲章に磨きがかかったということだ。
1、4、5、7が速い曲。1はfade inでイントロに呪文か何かのような不気味な声が入ってくる。少しの間それが続いた後にやっとリフが刻まれる。はじめゆっくりで展開を持って速くなるという、このイントロからメインに入るまでのリフがかなり良い。曲のメインでは当然の如く全編通して速い。ペースを落とす箇所なし。ドラム、ベース、2本のギター、vocalと全てが速い。このオープニングを飾る曲からして既にTomのvocalが追いつかなくなっている。2は速さは特に目立たないが、これもSlayerを代表する人気曲。この曲ではverseよりもその後のrepeatするパートの方がTomの口数が多い。3はこのアルバム中では長い曲で、前半はゆっくり淡々と進むが後半速くなる。この曲もライブでは選曲されることが多かった。4も代表曲では決してないが速い曲で、リフは最初からとばす。Slayerとしては珍しく、この曲では一部Tomのベースが聴けるパートがある。5はこのアルバムの、そしてSlayerの代表曲で初期セットリストでは必ずプレイされていた曲である。この曲でのギターは壮絶の一言に尽きる。特にリフは最初から最後まで洪水のようだ。こういう曲はタイミングが狂うと聴けたモノではないのだが、Slayerの4人のメンバは見事にキッチリとプレイしきっている。6もSlayerの曲としては珍しくTomのベースが聴ける曲。スロー・ペースだが、内容を考えるとこの曲の場合はその方が相応しいだろう。これがアルバム中で最も複雑な曲。もちろん一部速いパートもあるが、やはりいくつも組み合わされたリフやムードを楽しむべき曲だろう。7は唐突に始まって唐突に終わる曲。速い曲で、Tomのvocalもかなりスピーディに言葉を放つ。この曲はメイン・パートが終了すると、1のイントロのように長めのスローパートでfade outで締めくくる。ループして1へとまた繋がっていく内容なのかもしれない。
REIGN IN BLOOD 1. Angel of death Tom Araya(vo,b) |
Slayerの歴史を語る上で絶対に外すことが出来ないのがこの3rdアルバムだ。Slayerの攻撃性の進化は、ThrashMetalの範疇ではこの3rdアルバムで一度究極に達してしまう。1st、2ndとリリース毎に激しさを増してきたが、この3rdでも全編通してその姿勢が貫かれており一切妥協がない。10曲収録されているが全部で30分に満たないというSlayerが生み出した傑作。10年に1度の名盤。ライブでもこのアルバムから選ばれる曲は数多い。まずアルバムジャケットからしてかなり危ない。かなり細かく描き込まれているのでおそらく画像からは判らないと思うが、相当に危険な描写があり倒錯的だ。また詩の内容もジャケットに負けておらず、徹底的に強烈な内容だ。当時のdistributionを行うことになっていたレーベルから「詩の内容が倫理的に問題が多すぎる」とのことで蹴られている。そのため一時期はアルバムのリリース自体が危ぶまれたが、最終的にdistributionはGeffinが行うこととなり、アルバムは無事にリリースされた。尚、SlayerはこのアルバムからDefJamというリック・ルービンが率いていたメジャー・レーベルからのリリースとなる。
このアルバムに収録の曲全てに言えるが、とにかく速い。10曲中10曲ともにだ。また1曲中で使われているリフも多く、これを幾重にも積み重ねて曲を構成している。何かで誰かが「構築美」という言葉を用いていたが、正にそれがよく当てはまる。Kerry King(g)とJeff Hanneman(g)というSlayerが擁する2人のギターも、難しいリフやリードを難なくこなす。ギターの洪水だ。またDave Lombardo(dr)のdrummingも相変わらず壮絶だ。パワフルで複雑で且つ機械のように正確なショットはここでもいかんなく発揮されている。更にTom Araya(vo,g)のvocalも前作からかなり洗練され、以前のようなもたりはなくなりマシンガンのように早口で言葉を畳み掛けてくる。また詩の方だが、曲名のクレジットを見ると判る通りどれも危険なモノばかりだ。horrorや猟奇的なfictionが好きだというKerryの嗜好が如実に表れた内容だ。「死の天使」、「バラバラ」、「死体恐怖症」、「生贄の祭壇」、「犯罪的狂気」、「疫病」、「検死解剖」、「血の雨」と、曲のタイトルを挙げただけでもその詩世界の想像が付くだろう。
どの曲が速い、という世界ではなく全ての曲が速い。1はSlayerの代表曲で、正しくThrashMetalをも代表する曲だ。ThrashMetalが好きな人でこの曲を良いと思わない人は居るまい。最初からリフが疾走し、最後はKerryとJeffの2人のギターが交互に暴れまくる。ライブでは必ずプレイされる。有名なアウシュビッツ強制収容所の内容だ。人体実験を行ったとされるメンゲルについて触れている。2は聴き始めは普通の曲かと思わせるが、やはりすぐに速いリフが始まり、結局そのスピードのまま最後まで突き進む。速いパートばかりの曲のためフル・パートをプレイしても時間が短い。詩は猟奇的な内容だ。3も徹底的に速い曲。曲の出始めからいきなり複雑なリフを高速に弾く。当然リードも速い。Daveのショットも速くて正確だ。この曲も速いパートばかりのため時間がわずかしかない。フル・パートで2分程だろうか。詩の方は2以上に猟奇的だ。危険な言葉が次々と繰り出される。Tomのvocalも息つく暇もないほどに畳み掛ける。4も人気曲でライブではよく選曲される。イントロのギターがカッコイイ。例によってこの曲も速い。特に中間部ではドラム、ベース、2本のギターが一直線に突き進む。曲の終わり辺りからペースを落とし、リフで次の5に曲を繋ぐ。詩の方は悪魔崇拝の内容だ。5は4からそのままリフで繋いでいて、はじめは普通だがこの曲でもやはり怒濤のリフの洪水に突入する。相変わらずひたすらに速い。またリズム、リフのスピードに合わせてTomが高速に言葉を切り込んでくる。この曲もライブではよくプレイされる。6はDaveのドラムのみでスタートし、その後からギターが入ってくる。はじめはオーソドックスなリフでスロー・ペースだが、Tomのvocalが入って少し経つとここでもやはり高速なリフが始まる。この曲は割と緩急自在に構成された内容で、スローなパートと速いパートがはっきりと分かれている。精神の病んだ人間が主人公。7もはじめはまぁまぁの速さのリフから始まるが、Slayerお得意の2本のギターを使い分けた曲の転調部分があってお約束のリフの洪水に突入。やはりこの曲も速い。リードは他の曲に比べると幾分抑え気味と言えるだろうか。しかしそれでも速いことには変わりはない。8はDaveのドラムが最も前に出た曲で、スピーディではあるが他の曲と比べるとリフの速さは抑え気味。9もライブではよくプレイされていた曲で、前半はスローで進むが後半は一転して例のリフの洪水となる。後半の速いパートへのつなぎ方も良い。ライブではこのつなぎ部分をギターで引っ張って、一気に後半の速いパートに突入する。Tomのvocalも後半は言葉で隙間を埋め尽くすかのように速い。10もこのアルバムを代表する曲で、前の9が終わるとそのまま続けて雷と雨の効果音となり10が始まる。この曲も一言で言って速い。イントロのリフは普通にリズミカルなリフを刻むだけだが、それが終わると集中豪雨とも爆撃とも表現のつかない凄まじいリフが始まる。リフも多く使われている。途中、中間部で少しの間ゆっくりリズム主体でギターが絡むところがあり、それが終わると後はラスト・スパート。ドラム、ベース、ギターがはじけたように一斉に速くなる。正に暴れるだけ暴れて曲が終わる。
SOUTH OF HEAVEN 1. South of heaven Tom Araya(vo,b) |
4thアルバムとなるSlayerの問題作。前作が極限までaggressionの限りを尽くした内容だっただけに、リリース当初このアルバムの評価が割れた。前作とは明らかに曲作りの方向性が異なっている。本作ではheavyさに比重が置かれている。速い曲が全くなくなってしまったわけではないとはいえ、それまでの剛球一直線というSlayerカラーは一気に影を潜めてしまった。また詩の内容も随分と変わり、現実世界をテーマとして扱う曲が増えた。またこれは、3rdまで殆どcomposeに携わってこなかったTom Araya(vo,g)によるところが大きい。1stから3rdまででTomがcomposeに携わった曲は2ndの3曲目、At dawn they sleepのみだ。しかし本作ではクレジットにTomの名前がかなり増えている。Tomの詩の視点は現実世界に向いており、horrorや猟奇的な創作世界を好むKerry King(g)とは丁度対照的だ。本作での詩はメッセージ性が強い。尚、このアルバムではJudas PriestのDissident aggressorをカバーしている。
以前からのSlayerファンは本作に対して少なからず落胆があったと思う。逆にこのアルバムからSlayerを聴くようになったファンも多く居るという。やはり前作と比較して聴いてしまうためold thrasherにはSlayerにしては物足りなさを感じてしまうのだろう。リフで聴かせるという点では何も変わっていないが、特にKerryのリードが気になる。どれも同じに聞こえてしまうのだ。Jeff Hanneman(g)のdrive感は相変わらずで良い。Dave Lombardo(dr)のスネアもよく聞こえる。やはり彼のdrummingは凄い。Tomのvocalスタイルは随分と変わったように思う。それまでの攻撃的なvocalではなく淡々と語るような感じだ。良い曲は良いと思うが、やはり物足りない。sound productionは悪くはないが、個人的には前作の方がSlayerサウンドとしては向いていると思う。ドラムのサウンドは特にスネアが良い。正確なショットであることが殊更強調されて聞こえる。しかしその分ギターのサウンドが物足りない。
6と8だけが辛うじて速い曲。1は新しいファンの人気曲でライブではよくプレイされる。イントロでのギターは印象的だが、終始ゆっくりとしたペースで進む。2は割とスピーディな曲。ただDaveのスネアがギターの音より勝っているため、速いはずのリフもパッとしない。詩は中絶のことを唱っているようだ。3は後半かなりスピーディに展開するも、前半はかなりスロー・ペース。ただ曲のムードは良い。リード・パートも割と弾いている方だと言えるだろうか。この曲もライブでは割とプレイされるようだ。4はSlayerとしては異色の軽快に聞こえてしまう曲。verse部分はSlayerらしからぬ明るささえも感じさせる。Tomのvocalによるところが大きいだろう。途中ギター・リードにさしかかるとリズム、リフ共に速くなるが速いパートはその部分だけだ。5も人気曲のようでライブでよくプレイされる。この曲も別段速く進行するパートはない。ギターのハモリが印象的だが、基本的に特筆するような点はない。6はこのアルバム中で唯一スピーディな曲。特別に良い曲とは感じないが、せめてこういった曲が多かったならばアルバム評価ももう少し変わっていたかもしれない。また、この曲もverse部が終わりリード・パート前半までは速いが、その後は急速にペースを落としそのまま尻切れトンボで終わってしまう。7も速いパートはなく、どちらかというとvocal主体の曲と言えるだろうか。Tomのvocalが前面に出ており言葉数もかなり多い。これも人気の高い曲のようで、ライブでよくプレイされる。テーマはevangelistだろうか。8も本作では数少ない速い曲。リフは良いが、やはりKerryのリードがマンネリなのが気になってしまう。6と違いこの曲は最初から最後まで速いペースでプレイされる。9はJudas Priestのカバー曲。それほど悪いとは思わないが、取り立てて良い出来とも思えない。10もやはりDaveのスネアがよく聞こえるだけにギター・サウンドが物足りない。アルバム中で最もスローな曲。
SEASONS IN THE ABYSS 1. War ensemble Tom Araya(vo,b) |
5thとなるアルバム。基本的に前作の延長線上にあると考えて良いと思うが、old thrasherでも前作に比べて楽しめる内容ではないかと思う。また前作から新しくファンになった人にも充分アピールするであろう内容だ。前作リリースからちょっと間が空いていることもあって期待していたファンも多かったことだろう。このアルバムでは前作よりも幾分ファスト・ナンバーが増えている。このアルバムで前作から増えたファンが完全に固定ファンとして根付いたように思う。このアルバムリリース後には、四天王のなかでまだ見ぬ大物として残っていたSlayerの初来日公演も実現した。初来日公演でSlayerは重厚で迫力、貫禄のあるライブ・パフォーマンスを披露した。本作でも前作同様にTom Araya(vo,b)が詩の面でかなり貢献している。現実世界をテーマにした内容なのも相変わらず。もちろん従来通りの創作fictionがなくなったわけではない。
前作、前々作はリック・ルービン率いるDefJamからのリリースであったが、本作からはそのリック・ルービンがDefJamをやめて新たに起こしたレーベルであるDef Americanのリリースとなる。リック・ルービンのSlayerに対する思い入れが強いのは有名な話だ。しかし曲作りはかなりの長期間を経てやっと完成に至ったようで、難産のアルバムだったといえるかもしれない。3曲作るためにかかった期間が実に9ヶ月というスパンだ。その分、本作に収録の曲は速さ、激しさを度外視すればどれも良い出来でハズレはない。曲作りの遅れはKerry King(g)だけがフェニックスに在住だったため他のメンバとの連絡が疎になってしまったことにも一因があるかもしれない。
1、6、9が速い曲。1はこのアルバムを代表するスピーディな曲。当然ながら人気曲でライブで必ずと言っていいほどプレイされる。のっけから速いリフが切り込んでくる。またこの曲でもDave Lombardo(dr)の切れは抜群だ。Slayerの残した名曲といってよい。2はスローに進む曲。リフは重いが、どちらかというと淡々とプレイされているような感じを受ける。リードは2人ともかなり抑え目のプレイだ。Kerryお得意の創作ではなくTomのペンによる詩だが、内容は結構強烈だ。3はスローというわけではないがやはりSlayerとしてはおとなしい曲。ミドル・テンポだろうか。verse部が終わると一転してリズム、リフが速くなる。リード・パートはもちろん速いことは速いが、それよりもむしろギターのdrive感を強く感じさせるプレイだ。この曲も人気曲だ。4も3同様に落ち着いたペースの曲。ギターよりも曲中で頻繁に出てくるDaveの手数の多いショットに耳がいく。終始一貫してスローにリフを刻み、リードも抑えられている。5もこのアルバムを代表する人気曲。スローな曲だが、イントロの不気味なギターの絡みが印象的だ。気味の悪さを感じさせる作りは、この曲のテーマを考えれば成功していると思う。エンディングでは子供が冷たく呟く声が入ってきて不気味さが殊更に強調される。6は速い曲。最初からリズム、リフともに飛ばす。この曲でもDaveのdrummingが相変わらず凄まじい。リードはエンディングにあるが、このエンディングではテンポを落とす。7もこのアルバムでは多い、ゆっくりとしたペースでプレイされる曲。この曲ではTomのvocalに一部だがエフェクトを施している。verse部で時折絡んでくるギターがあるが、Slayerとしては珍しいタイプの作りかもしれない。リードはムードを強調したプレイ。8はそれほどスローという程ではなく、リフは割と激しく刻まれる。この曲でも7同様にTomのvocalにエフェクトが施されており、7よりも聴いていてはっきりと判る。しかし残念ながらあまり印象に残る曲ではない。9は速い曲。最初から激しいリフが始まる。中間部で少しスロー・パートがあるが、リードを絡めてまた一斉に速くなるところはSlayerがやると非常にカッコイイ。10は5と同様にスローな曲。これも人気曲でライブではよくプレイされる。前々作と共通のモチーフの曲だ。不気味さもあるが淡々としたvocalとなっていて、どちらかというとムードがあるという表現の方がいいだろうか。中間部での2人のリードを聴いてもそれが判る。またこの曲ではエンディングが非常に良い。
DECADE OF AGGRESSION Disc 1 Disc 2 Tom Araya(vo,b) |
5thアルバムSeasons in The Abyssの後にリリースされたSlayer初のライブ・アルバム。ディスク2枚組でSlayerの迫力あるライブを堪能できる非常に良いライブ盤だ。初期の曲から最新作の曲までを一通り網羅しており、ベスト盤としても聴けるだろう。sound productionは申し分なく、また内容のvolume、aggressionとどれをとっても満足のいく出来だ。アルバムで速かった曲はライブでは更に速く、圧巻の一言に尽きる。スローな曲でもヴォルテージを落とすことなくプレイされる。Package Tourとして有名なClash of The TitansにheadlinerとしてSlayerは参加しているが、本作のDisc 2にその時のテイクが含まれている。一方Disc 1の方はアメリカでのツアー中の音源を収録したモノだ。
Disc 1のThe antichrist、Disc 2のDie by the sword、Black magicは1stアルバムShow no mercyの曲。Disc 1のHell awaitsは2ndアルバムHell Awaitsの曲。Disc 1のRaining blood、Altar of sacrifice、Jesus saves、Angel of death、Disc 2のPostmortemは3rdアルバムReign in Bloodの曲。Disc 1のSouth of heaven、Mandatory suicideは4thアルバムSouth of Heavenの曲。Disc 1のWar ensemble、Dead skin mask、Seasons in the abyss、Disc 2のHallowed point、Blood red、Born of fire、Spirit in black、Expendable youthは5thアルバムSeasons in The Abyssの曲。なお、Disc 2のCaptor of sin、Chemical warfareは1stと2ndの間にリリースされたミニアルバムHaunting The Chapelに収録の曲。新旧を織り交ぜての曲目だ。ここに2ndのKill againとNecrophiliacもあればベスト盤としても完璧と言えるだろう。このライブ盤ではDave Lombardo(dr)がドラムとしてプレイしているが、残念ながら脱退してしまう。何度かSlayerに復帰したり脱退していたりしていたようだが、結局彼はSlayerから居なくなった。ジャケットにメンバが写っているのでここまでのSlayerのラインナップを紹介しておこう。左からDave、Kerry King(g)、Jeff Hanneman(g)、Tom Araya(vo,b)だ。
DIVINE INTERVENTION 1. Killing fields Tom Araya(vo,b) |
ライブ・アルバムを含めると7作目にあたるアルバム。studio takeとしては6thとなる。今までSlayerのdrummerの座に収まっていたDave Lombardo(dr)が脱退したため、後任がなかなか定まらずライブ・アルバムから実に3年も経過している。結局後任には元ForbiddenのPaul Bostaph(dr)が収まった。またこれだけのブランクが空くこととなった背景にはSlayerの所属レーベルにも原因がある。Def AmericanからAmericanへと名称変更が行われたSlayerの所属レーベルだが、裁判沙汰に巻き込まれdistributionがなかなか決まらなかった。ドラムだが、やはり複雑なパターンを高速に決める前任のDaveと比べるとPaulのdrummingは残念ながらそれにはまだ及んでいないようだ。しかし確かに速さは充分に兼ね備えている。技を磨けば今後にも期待は出来るであろうか。
Seasons in The Abyssから更に速い攻撃的な曲が増えており、新ラインナップでのお披露目ともなることも考えてなかなかの出来だ。このアルバムでの曲の作りが全体的に以前と比べて変化してきている。ThrashMetalからは若干離れてHardcore或いはパンク寄りになっているような気がする。曲に展開というモノがきっちりあるのでその点で確かにThrashなのだが、以前と比べるとよりストレートな曲調になっており、またsound productionも含めるとややThrashから離れてきている。2人のギター・ワークが激しいのは従来通り。また4th、5thとスタイルが変化していたTom Araya(vo,b)のvocalだが、このアルバムでは再び攻撃的なそれになっている。
2、4、6、7、10が速い曲。1はやはり冒頭にあるPaulのドラムが印象的な曲。ドラムから入るというのはPaulのアイデアによるモノらしい。前半はミドル・テンポだが、後半からは少しペースをあげる。ミドル・テンポというには速いがファスト・ナンバーという程ではない。イントロからverse部に入るまでの間に様々なリフを組み合わせている。2は速い曲。若干1stの頃を思い起こさせるギターで始まる曲。すぐさまメイン・パートに入り高速なリフがたたみかけてくる。特に詩のrepeatするパートでのリフはテンションが高い。3はミドル・テンポの曲。スローではないがこのアルバム中ではゆっくり目な曲。メイン・パートやrepeat部はあまりSlayerらしからぬ曲調だ。このアルバム中で最も印象の少ない目立たない曲。4はこのアルバム中でおそらく最も速い曲。冒頭から速いリフを刻みメイン・パートもずっとそれをキープする。途中展開としてbridgeパートでペースを落とす箇所があるが、その後またすぐに速くなりリードに入る。またこのスロー・パートからリードを絡めて速くなる部分はSlayerならでは格好良さがある。エンディングも速いリズムとリフをキープして終わる。5はアルバム・タイトルにもなっている曲。速くはないがスローという程でもない。人気曲のようでライブではよく選曲されるようだ。エンディングでギターが入ってくる部分があるがなかなかムードがある。6も速い曲。いきなりvocalが入ってきて始まる。冒頭のvocalにはエフェクトを施してある。所々細々とした展開を見せながら疾走する曲。リードでのギターも速くて良い。7は前半ゆっくりと進むがverseが過ぎるとエンディングまで速くなる。後半のリフは3rdアルバムの頃のリフの洪水を思い起こさせる。リードも速く、drive感がある。この辺はJeff Hanneman(g)の得意とする所だ。8はシングル・カットもされた曲で、イントロはスピーディだがメイン・パートはミドルか或いはスローと言ってもいい曲。この曲でもTomのvocalにエフェクトがかかっている。エンディング近くにリード・パートがあり、そこから一転してまた速くなる。ギターはかなり弾いている方だ。9は猟奇的な殺人事件をモチーフにしたスローな曲。重厚で分厚い音のギターで始まり、扱っている詩の内容には良くあったムードのある曲だ。後半でTomが口にする詩の内容はかなり強烈でインパクトがある。10は速い曲で、やはりbridgeとしてペースを落とす箇所があるがそれでも最後まで速いペースでプレイされる曲。中間部ではなかなか印象的なギターのハモリが聴ける。Kerry King(g)のリードもなかなか速い。
DIABOLUS IN MUSICA 1. Bitter peace Tom Araya(vo,b) |
前作リリース後にカバー・アルバムUndisputed Attitudeのリリースを挟んでリリースされたのが本作。間にカバー・アルバムのリリースを挟んでいるとはいえ、Divine Interventionからは実に4年振りとなる。カバー・アルバムのリリース後にまたもドラムの脱退劇が起こってしまい、Paul Bostaph(dr)がバンドを去ってしまう。後任としてTestamentに居たJohn Dette(dr)が加入するもバンドにしっくり馴染まないとの理由で彼はすぐに脱退、その後Gene Hoglan(dr)も加入させたようだが彼もすぐに脱退。そして本作のレコーディングに入る前に結局またPaulがバンドに復帰している。クレジットにも彼の名前がしっかりと入っている。temporaryではなくpermanentなメンバとしてだ。
全体的に低いチューニングでプレイされるギターとなっておりギターのsound productionに迫力がある。Divine Interventionよりも速い曲は減ってしまった。Divine Interventionもそうだったが、従来のThrashMetalの枠組みからは遠ざかっている。aggressionはいまだあるものの、今までのSlayerにはないカラーで塗り込められたアルバムとなっている。Tom Araya(vo,b)のヴォーカル・スタイルもやはりそれまでのモノとは違っている。エフェクトを要所で使っているせいもあると思うが、リズミカルであることを念頭においているようだ。またドラムのサウンドも悪くない。Paulは重いショットを正確に叩いている。タイトと表現するのが良いだろうか。ドラム、ベースというリズム側が全面に出ているアルバムと言えるかもしれない。
1、5、10が速い曲。1は冒頭で鋭いギターが切り込んでくる、このアルバム中では速い曲でdrive感が抜群だ。メイン・パートでは疾走感もちゃんとある。アルバムのオープニングを飾るには悪くない曲だ。2はSlayerとしては珍しくTomのベースが楽しめる曲。Jeff Hanneman(g)のペンによる曲だ。リフもかつてのSlayerにはなかったモノだ。テンポとしてはミドルくらいだろうか。サウンドの迫力のおかげで激しさが強調される。3もミドル・テンポの曲で、1や2同様に従来のSlayerにはなかったタイプのギターが聴ける。groove感があるという表現がよいだろうか。リフにしてもリードにしてもそれが伺える。4はイントロのベースが印象的な曲。このベースのフレーズにギターが被さってくる。Tomのヴォーカル・ラインもこれに沿っており耳に残りやすい。一部ギターを効果音のように使っている所があって面白いが、Slayerのカラーからは思いもよらないモノだ。5は前半は普通のテンポなのだが、後半突如として速くなる。Paulのドラムは聴いていてなかなかに圧巻だ。6はギターよりもドラム、ベースといったリズム主体で進む曲。やはりこの曲もgroove感が強調された作りになっている。リフで一部明らかにSlayerカラーとかけ離れた部分がある。Jeffが得意とするようなギターが聴けるがやはり違和感は拭えない。7はイントロのacousticとrepeat部のTomのヴォーカル・ラインが印象的なミドル・テンポの曲だ。イントロでのリフの入り方もムードがあって良い。8はPaulの手数の多いドラムが聴ける曲だ。リードは確かに速いパートがあるが、ユニゾンでプレイしている部分はSlayerがやるにしては中途半端な感がある。この曲は日本版のみのボーナス・トラックとなっている。9もゆっくりと進む曲。途中でSlayerらしからぬギターのハモリがある。また後半にリフでも同様にSlayerらしからぬパートがある。リズムと重さに比重がおかれた曲で、良いことは良いのだが何とも判断に迷う曲だ。10は始めゆっくり進むが途中からすぐに速くなる。リズム、リフ、リード共にSlayerらしく速いが、展開らしい展開がないために通常のThrashとはちょっとひと味違う。11はドラム、ベース、リフ、リード共にあまり聴くべき部分の多くない印象の薄い曲。後半に一瞬ギターと聞き間違える程のエフェクトのかかったvocalが入っている。12はリードでギターがかなり弾いている方だが、これもあまりSlayerらしくない。ミドル・テンポでリズムに激しさがあり、途中で幾度となくブレイクを挟む。またこの曲はアルバム中で最も長い曲だ。クレジットではボーナス・トラックとなっている。13は割と速めのパートがあるのでミドル・テンポとは言えないが、ファスト・ナンバーという程でもない。リード・パートでは幾分ムードを感じさせるが、その直後にいきなり速くなりその後またペースが落ちるというリズムの起伏が激しい曲。
HAUNTING THE CHAPEL 1. Chemical warfare Tom Araya(vo,b) |
1stアルバムShow No Mercyと2ndアルバムHell Awaitsの間にリリースされた3曲入りミニアルバム。デビュー曲であるAggressive perfectorと1stアルバムをリリースしただけのバンドがミニアルバムをリリースすること自体が特異なことだが、それだけデビュー当時から商業的魅力の多いバンドだったということだろう。このミニアルバムに収録の曲はファンの間で非常に人気が高く、またSlayerのメンバ自信も気に入っていることもあって10年以上経過した今でもライブでよくプレイされる。中でも1のChemical warfareは当時世界一速い曲等と言われた、非常に人気高い曲だ。もちろん時代が変わった今となっては別段驚くほど速いとは感じないが、発表当初は正に世界一と言われるに相応しい内容だった。残念ながらsound productionはイマイチだが、内容が充実しているので持っていて損はない。なお、オリジナルとなるアナログ盤では3曲入りだったが、CDでの再発時にデビュー曲であるAggressive perfectorが追加収録された。上のジャケットはその再発されたCDのモノだ。
1は今でもライブで必ずと言っていいほどプレイされるSlayerの代表作。イントロの緊張感のあるギター、疾走するリズム、幾重にも組み合わされたリフ、速くて正確なドラム、たたみかけるvocalとSlayerの魅力を存分に堪能できる曲だ。速い曲であることも特徴だが、リフも特筆すべき特徴の1つだ。とにかく種類が多い。verseによってリフが異なるのもそのためだ。今にして思えばこれは結構他に類を見ない試みだったと言えるだろう。2も人気曲でミドル・テンポの曲だ。いきなりリードから曲が始まるという、これもまたSlayerの実験的要素のある曲。後半のリードでは弾きまくっているという表現が相応しい。リズムもリフも別段速くはないが、リードでは掻きむしるように弾いている。3もミドル・テンポの曲で、前半はリズム、リフ共に普通に進むがverse部を過ぎると展開を迎え一気に速くなり疾走感が増す。その後リード・パートに入り、ここでかなり長いギター・プレイがある。4は今や幻とも言えるSlayerのデビュー曲だ。当時はLAメタルの全盛期で華やかさを売り物にするバンドが多かった中にあって、そういったバンドと同じ土地でSlayerはこの曲を世に送り出した。聴いていて明らかに未熟と言える箇所が随所に見られ、特にTom Araya(vo,b)のvocalでそれが顕著だ。それでもリード・ギターの速さは当時としては破格だ。
LIVE UNDEAD 1. Black magic Tom Araya(vo,b) |
ミニアルバムHaunting The Chapelと2ndアルバムHell Awaitsの間にリリースされたミニライブ・アルバム。当時はアンダーグラウンドの帝王として君臨しており、HeavyMetalを聴く人間からも敬遠される音楽形態だったSlayerのライブ音源が聴けるとして当時はファンの間で話題になった。3のCaptor of sinと8のChemical warfareは前にリリースされたミニアルバムHaunting The Chapelに収録の曲で、このChemical warfareだけはstudio takeだ。Aggressive perfectorはSlayerのデビュー曲。それ以外は全て1stアルバムShow No Mercyに収録されていた曲のライブ音源。オリジナルのアナログ盤にはEvil has no boundaries、Show no mercy、Chemical warfareは収録されておらず、CDでの再発時に追加された。このミニライブ・アルバムは当初、国によって様々な収録曲のバリエーションがありマニア泣かせの作品だった。やはりそれほどにレーベルにとってSlayerは商業的魅力のあるバンドだったのだろう。この頃のSlayerはまだ1stアルバムの頃の黒魔術や悪魔崇拝といった世界に傾倒していた。Kerry King(g)がライブで必ず装着していた剣山とも言えるような危険なリスト・バンド、Jeff Hanneman(g)の逆十字等々、この頃のSlayerのライブ・ショットで必ず見かけていたモノだ。sound productionはあまり良くなく、臨場感に欠ける。しかしライブでのプレイ内容は激しい。
1は1stアルバム収録の曲の中でも特に人気の高い曲だ。速いリフにリードを完璧にアルバム通りに再現している。当初からの演奏技術の高さを裏付ける出来だ。2も1st収録曲の中で人気の高かった曲。速さこそないものの、激しいリフが刻まれ後半のリード・パートではかなり弾いている。3もSlayerのClassicの1つ。このライブ音源の前にリリースされたミニアルバムHaunting The Chapelに収録の曲。この曲でも掻きむしるように速いリードをアルバム通り完璧に再現している。4も初期の名曲だ。細かいギター・ワークをKerry、Jeffの2人のギターが難なくこなす。5は1stのオープニングを飾っていた曲。疾走感のある直線的でシンプルな速いリフが特徴だ。このライブ音源でもその魅力を余すことなく再現している。むしろアルバムよりも若干速めにプレイしている。6はDave Lombardo(dr)のドラムで幕を開ける曲。この曲もアルバムでは速い曲だったが、このライブ音源では更に速くプレイしている。Daveのドラムはここでも凄い。7はcompilation album用に制作されたSlayerのデビュー曲。ライブ・テイクではオリジナルよりもかなりのハイ・ペースでプレイされる。出来としてはオリジナルのテイクよりもタイトにまとまっていて遙かに良い。リードの細かさ、速さは申し分ない。8はミニアルバムHaunting The Chapelに収録のstudio takeそのままなので割愛。
LIVE INTRUSION 1. Witching hour Tom Araya(vo,b) |
カバー・アルバムUndisputed Attitudeに初回特典として付いてきたミニライブ盤。アルバムDivine Intervention発表に伴うツアーの模様を収録したビデオでLive Intrusionというモノがあるが、このミニライブ盤はそれと同名のCD。2のDivine Interventionと3のDittoheadはアルバムDivine Intervention収録曲のライブ・テイクだが、1のWitching hourはVENOMの曲のカバー。当然これもライブ・テイク。このツアーでSlayerはサポート・アクトとしてMachine Headを帯同させていたが、1のWitching hourではこのMachine Headのメンバが飛び入りでパフォーマンスに参加している。Slayerは以前にもフルレンスでのライブ盤Decade of Aggressionをリリースしており、それはDave Lombardo(dr)在籍時のモノであったが、ドラムがPaul Bospath(dr)によるモノであるという点がこのアルバムの存在価値だろう。Paulのdrummingをライブで聴くことが出来るのはこのミニライブ盤が初ということになる。
1はVENOMがオリジナルで別段速い曲ではないのだが、さすがに本家よりもSlayerの方がプレイはウマイ。サポート・アクトのMachine Headのメンバが飛び入りでこの曲のプレイに参加している。2はアルバムDivine Intervention収録のタイトル・トラックのライブ・テイク。Tom Araya(vo,b)のvocalは気迫がこもってはいるもののちょっと辛そうだ。ギター・プレイの方は特に問題はない。特に曲の最後に入るムーディなギターはライブで聴いても良い。3もアルバムDivine Intervention収録の超高速ナンバーのライブ・テイク。最初からいきなりリフが飛ばす。アルバムでも充分に速かったがライブでは更にそれを上回る速さだ。Tomのマシンガンのようなvocalも凄まじい。タイミングもきっちり合っているのでタイト且つaggressiveで非常に良い。
SERENITY IN MURDER 1. At dawn they sleep Tom Araya(vo,b) |
ライブ・テイクにSlayerメンバのメッセージを収録したミニアルバム。アルバムDivine Intervention収録のSerenity in Murderに4曲のライブ・テイクを追加し、更にSlayerメンバの、特にTom Araya(vo,b)を中心にファンへのメッセージを含めたミニアルバム。1〜4がライブ・テイクで1のAt dawn they sleepは2ndアルバムHell Awaits、2のDead skin maskは5thアルバムSeasons in The Abyss、3のDivine interventionと4のDittoheadはアルバムDivine Interventionに収録の曲。5のSerenity in murderはアルバムDivine Interventionでのスタジオ・テイクをそのまま収録したモノだ。ライブ・テイクのsound productionはかなり良く、速いリフであってもはっきりと刻みを聞き取ることが出来る。
1は2ndアルバムHell Awaitsに収録のSlayerとしては長めの曲。verse部が終わるまではずっとミドル・テンポでプレイされるが、後半ペースあげて速くなる。あまり速さのない曲なのでアルバムでのプレイに忠実で、正確に曲を再現している。2は5thアルバムSeasons in The Abyssからの曲。スロー・テンポで印象的なギターが特徴の不気味な曲。この曲でもアルバムでのプレイを忠実に再現している。Slayerの得意なパターンの曲だが、ライブにおいてもそのムードが損なわれておらず良い。3はアルバムDivine Interventionからの曲。ミドル・テンポのナンバーで独特なムードのある曲。特にギターのリードが印象的。4もアルバムDivine Interventionからの曲で、こちらは3とは打って変わって非常に速い曲。リフはいきなり最初から飛ばす。Tom Araya(vo,b)のvocalも3rdアルバムReign in Bloodの頃を彷彿とさせる激しさだ。展開部で若干ペースを落とすものの終始スピーディに展開する。スタジオ・テイクでもかなり速かったが、このライブ・テイクは更に上を行く。5のSerenity in murderはアルバムDivine Intervention収録のモノそのままなので割愛。6はSlayerメンバによる日本のファンへのメッセージ。
UNDISPUTED ATTITUDE 1. Disintegration/Free money Tom Araya(vo,b) |
アルバムDivine Interventionの後にリリースされたSlayerメンバ選曲によるパンク・カバー集。パンクからの選曲なのでどの曲もコンパクトでストレートなモノだが非常に良い作品だ。特にアルバム前半に収録の曲は圧巻。立て続けに激しい曲がプレイされている。このアルバム中で4のCan't stand you、5のDdamm、16のGeminiがSlayerによる新曲。当時のブームの影響もあったかもしれないがこの手のジャンルの楽曲であれば、さすがにSlayerがやると他のバンドとは貫禄が違う。sound productionは荒々しさを感じさせる作りとなっており、またTom Araya(vo,b)のvocalもかなりキレている。この辺り、パンクをプレイするということをちゃんと判っているようだ。このアルバムでドラムを叩いているのはPaul Bostaph(dr)だが、残念なことに彼はこのアルバムの収録後にバンドを脱退してしまう。後任としてJohn Dette(dr)やGene Hoglan(dr)が居た時期があったが、結局のところまたPaulがバンドに正式に復帰した。
1のDisintegration/Free moneyはSFを活動拠点とするVerbal Abuseの曲。のっけからいきなり押しまくる曲。スピード、迫力、イントロのつかみといい、アルバムのオープニングを飾るには相応しい曲と言える。2曲ともリフの速さも良い。2のVerbal abuse/Leechesも1同様Verbal Abuseの曲。1と同じく非常に速くaggressiveにプレイされる。特にLeechesの方はTom Araya(vo,b)のvocalの凄まじさも手伝って圧巻だ。3のAbolish government/Superficial loveはLAパンクの代表格、T.S.O.L.の曲。速さはないがシンプルなギターで判りやすい曲。4のCan't stand youはJeff Hanneman(g)が80年代中期にやっていたサイド・プロジェクト用に書いた曲をアレンジしたモノ。唐突に痙攣を起こすような高速なリフとTomのキレたvocalで始まり圧倒される曲。いったんペース・ダウンするものの最後にまたスパートをかける。5のDdammも4と全く同様の経緯で出来た曲。いかにもパンク要素の強い、突然速くなったりゆっくりになったりする起伏の激しい曲。速いパートは短いがなかなかの迫力だ。6のGuilty of being whiteはハードコア・バンドでD.C.を活動拠点としていたMinor Threatの曲。かなりリズムがスピーディに展開し、ギターももちろんだがドラムの激しさもかなりのモノだ。7のI hate youも1、2と同じVerbal Abuseの曲。普通のテンポでプレイされる曲で、全てシンプルなリフでプレイされパンクに馴染みのない人でも聴ける曲。8のFiller/I don't want to hear itは6と同じMinor Threatの曲。リズム、リフが滑るように速くプレイされる曲。Tomのvocalにも迫力がある。9のSpiritual lawは80年代の初期からLAで活動していたD.I.の曲。速さはまぁまぁだが、最初から最後まで血管を切らんとするかのようなTomの気迫のこもったvocalが聴ける曲。殆ど絶叫に近い。10のSick boyはUKのバーミンガム出身で、有名な老舗バンドであるG.B.H.の曲。シンプルなリフで軽快な印象を与える、ノリが重要な曲。11のMr.freezeも紆余曲折を経ながらも活動を続ける老舗バンドDr.Knowからの曲。前半は小気味よいリフが印象的だが、後半は一転してスピーディなリフに変わる。途中に若干のスローパートを挟みながらも最後まで緊張感のある速さをキープしている。12のViolent pacificationもテキサスで活動していた有名な老舗バンドD.R.I.の曲。嵐のような非常に速いリズム、リフで始まり絶叫とも言えるTomのvocalが被さっているが、後半は一転してリズム主体のスロー・パートになる。13のMemories of tomorrowはold thrasherにも馴染みの深いSuicidal Tendenciesの曲。リフは非常にシンプルだがリズムのテンポが非常によく軽快な印象を与える。曲自体は速いと言える。14のRichard hung himselfは9と同じD.I.の曲。どちらかと言えばgroove感に重きがおかれており、ややテンポがスロー気味ということもありダーク・ムードが支配する曲。15のI'm gonna be your godも有名なパンク・ロックの代表格Stoogesの曲。これもリズム主体とはいえheavyな曲で、groove感の増すプレイがなされている。やはりダーク・ムードが漂う。16はSlayerのメンバによる新曲。従来のSlayerカラーの1つであったダークさとは異なったダーク・ムード漂う曲。Tomのvocalにはエフェクトが使われている。
STAIN OF MIND + 4 LIVE TRACKS 1. Stain of mind Tom Araya(vo,b) |
アルバムDiabolus in Musicaに収録のStain of mindに、ライブ・テイク4曲を追加した日本のみの企画モノ。ライブ・テイクはLAのパレス・シアターで5月下旬に収録のモノ。2と3は3rdアルバムReign in Blood、4は4thアルバムSouth of Heaven、5は1stアルバムと2ndアルバムの間にリリースされたミニアルバムHaunting The Chapelに収録されていた曲のライブ・テイク。sound productionは悪くない。以前リリースされたライブ・アルバムでのそれが非常に良かっただけに比較するとちょっと劣るかもしれないが、それでも決して悪い出来ではない。少なくともギターのサウンドに関しては満足できるかと思う。またライブ・テイクとして選曲されているモノが何れもSlayerの人気曲ばかりで、old thrasherにとっても非常にありがたい内容となっている。昔のSlayerを知らないファンは絶対に持っていて損のない内容だ。
1のStain of mindはアルバムDiabolus in Musicaに収録のモノそのままなので割愛。2は3rdアルバムReign in Bloodの最後に収録されていた曲でライブでは必ずプレイされる人気曲。曲は印象的なギターのハモリで始まり、イントロはリズミカルなリフをキープするがそれを過ぎると突然たたみかけるような激しいリフに変わる。ライブでもアルバム通り正確に再現されており、速さも申し分ない。Slayerのプレイはやはり完璧だ。3も3rdアルバムからの曲でSlayerの代表曲。この曲も必ずライブでプレイされる。いきなり鋭いリフから始まり、最後には2本交互のリード・パートに至るというSlayerが生んだ名曲。この曲もそつなくこなしており、ライブならではの迫力や速さも備わっていて非常に良い。聴き所である曲の最後の部分でもリード・パートは当然速く、リフは激しく、リズムは突っ走るという文句なしの出来だ。4は4thアルバムSouth of Heavenからの選曲で、これは全く速い曲ではないのだが新しいファンの間では人気のある曲。随所に挟まれるギターのハモリが印象的な曲だ。ギター・サウンドの良さがこのような通常テンポの曲では明らかになる。リフの刻みがハッキリと判るクリアなギター・サウンドでシャープさも損なわれておらず非常に良い。5は1stアルバムと2ndアルバムの間にリリースされたミニアルバムHaunting The Chapel収録の曲で、発表から10年以上たった今でもライブでプレイされるというSlayerのもう1つの名曲。緊張感のあるリフで始まり、最初から最後までテンションを落とすことなくその速さをキープしたまま突き進む。ギター・サウンドも非常にクリアで、これだけの高速なリフを弾いているにも関わらずハッキリと刻みを聞き取ることが出来るのは驚異的だ。曲はスタジオ・テイクよりも更に速く、特に最後までキープされるリフの速さは圧巻だ。