【今回の選曲の趣旨】今回はズバリ、『愛と友情の越部信義!』
前回のような、いわゆるDJ風にカッコよさげな曲への視線を一切捨て去り、その真逆を突こうと思いました。Soundtrack Pubのフトコロの深さを自ら示そうと、ついに童謡まで持ち込んだ捨て身の選曲です(笑)
越部信義氏。いわゆるアニメソングの中では、大ヒット作やアクション系を手掛けていないので、どうしてもマイナー視されがちですが、我々の心の深層に、最も深く厚く浸透しているのは、実は、この人の音楽なのではないかとさえ、私は思っています。
NHK「おかあさんといっしょ」のメイン作曲家を40年以上に渡って務め、「サザエさん」の劇伴を担当している。
・・・これだけでも、その偉大な影響力がわかります。
「おかあさんといっしょ」で生まれ、今では完全に童謡のスタンダードとなっている「おもちゃのチャチャチャ」に象徴されるように、越部氏は、本来、大人の娯楽のための音楽である「ダンス音楽」を、子どものために音楽に翻案することを考えたそうで、その後も時代を経るに従って、ロック、歌謡曲などを、また、80年代にはコロムビアの「デジタル・トリップ」シリーズで、既存のアニメ・特撮音楽のシンセサイザー・アレンジに挑戦するなど、様々な最新の音楽を絶妙なセンスで自作に採り入れて来ました。
残念なことに、劇伴として書かれた音楽は、今だかつて、ほとんど音盤化されていないという、劇伴作品不遇の作曲家の筆頭でもあります。
....というわけで、今回は越部信義氏と、慈愛と友情の大切さを諭すかのような彼の音楽へのリスペクトを込めて、越部氏の作品を30分間にまとめてみました。
【選曲リスト】○『さすらいのロボット』(TV「ジェッターマルス」挿入歌、1977)
○みなしごハッチ(TV「みなしごハッチ」OP、1970)
- 作詞:伊藤アキラ 作曲:越部信義 編曲:越部信義 歌:佐々木功
・前コーナー「佐々木功ソングブック」からツナぎ、佐々木功氏が歌った越部曲。「ジェッターマルス」に登場する、さすらいの正義ロボ「アディオス」(イメージ的には、ほぼ"スナフキン")のテーマ。
コロムビアのLPに「真っ赤なスカーフ ささきいさお アニメロマンの世界」というのがありまして、このLP、当時当然のはずの「主題歌の収録」に全くこだわらず、どマイナーな挿入歌だろうとなんだろうと、「ささきいさおの "歌"が生きている楽曲」が優先して選ばれているという、今思えば実に渋い、かつ画期的な視点によって選曲されたアニメソングLPでした。
<収録曲の例>
・「さがしにいかないか」(ギンガイザーED)
・「スワニーよ」(キャシャーン挿入歌)
・「息子よ」(ダンガードA挿入歌)
・「たたかいのバラード」(ガイキング挿入歌)
この『さすらいのロボット』も、その中の1曲でした。このLPを小学生時代に愛聴していたRYO-3にとって、実に忘れがたい曲なんです、これ。私にとっての「ささきいさお像」は、この曲の歌詞とメロディがそれを象徴していると言っても、決して過言ではないのです(笑)........個人的な話で恐縮ですが。
○おもちゃのチャチャチャ(TV「おかあさんといっしょ」、1960頃?)
- 作詞:丘灯至夫、作曲:越部信義、編曲:越部信義、歌:嶋崎由理
・越部信義のポップセンスが炸裂する、その第一段ともいえるのが、この「みなしごハッチ」。すさまじくファンクなリズムに、ハスキー娘のパンチな歌を乗せるこのセンス、明らかに、(弘田美枝子・夏木マリ・平山みき)+(筒美京平・馬飼野康二・川口真)系の歌謡曲のテイストを意識してるとしか思えない(笑) しかも1970年の時点で、このアレンジセンス。やはり越部信義は並みじゃない〜!
○ちかてつ(TV「おかあさんといっしょ」、1960年代後半?)
- 作詞:野坂昭如、補作詞:吉岡治、作曲:越部信義、編曲:越部信義、歌:真理ヨシコ
・1959年に開始される、NHK「おかあさんといっしょ」の最初のヒット曲であり、現在、完全に童謡のスタンダードとなった説明不要の名曲。真理ヨシコは、「おかあさんといっしょ」の栄えある"初代"の歌のおねえさん(現在は18代目)。
越部氏は、ダンス音楽を子どもの歌に導入することを考え、社交ダンスのラテンステップの一つである、"チャチャチャ"をモチーフにしたという。現在の感覚では信じられない話だが、当時は、大人の男女のダンス音楽である "チャチャチャ"を、子どもの歌に採り入れることに対して批判があったとか。やはり越部信義は挑戦者なのだ。
蛇足ですが、作詞者にもご注目(笑)
○マッハGoGoGo(TV 「マッハGoGoGo」OP、1967)
- 作詞:名村宏、作曲:越部信義、編曲:越部信義、歌:片桐和子
・ダンス音楽導入の試みの第二段階。ついには、不良の音楽=ロックンロールをも童謡化してしまう。いいぞ!。歌詞でさんざん「ゴーゴーゴー」と言っているように、この当時ロックで踊ると言えば、それはもう"ゴーゴー"。アングラなゴーゴーバーで若者が乱痴気騒ぎしてる(漫画版「デビルマン」みたいな (笑))。時勢を横目に、幼児番組でも「地下地下ゴーゴーゴー!」とは、なんと大胆な! 本当なら"チャチャチャ"の10倍はイカガワしいもののはず(笑) やはり越部信義はカッコいい・・・
私は幼稚園当時、この曲が大好きで、聴くと無性にダンスした暴れ出したくなったのをよく覚えてい ます(笑)
そして、この「ちかてつ」と、ほぼ同じ動機で作られたのではないかと思われるのが、これ↓
○ドラえもんルンバ(TV「ドラえもん(旧)」ED、1973)
- 作詞:吉田龍夫、補作詞:伊藤アキラ 作曲:越部信義 編曲:越部信義
- 歌:ボーカル・ショップ
・「ちかてつ」で試みたツイスト風のリズムが、ここで見事に開花。「脱マーチ」を見事に成功させた、この名アニソンの誕生につながったのでは........と勝手 に憶測。
現在CDで聞ける、高橋元太郎&東京マイスタージンガー版ではなく、ちゃんと本物のボーカル・ショップ版をかけました。
越部氏は、「ちかてつ」や「マッハGoGoGo」のような、ツイスト風のリズムの曲を、その後もいくつか作っていて(言わば、これが「越部節」になるんだろうか)
例えばこれ......↓
○ジムボタン危機一髪(TV「ジムボタン」挿入歌、1974)
- 作詞:横山陽一 作曲:越部信義 編曲:越部信義 うた:内藤はるみ
・待たしてもダンスミュージック「ルンバ」への挑戦。しかし、本物の「ルンバ」とは随分違っていて、実際はツイスト風リズムのラテン的解釈・・・のような感じ。
○ヤンヤンムウくん(TV「おかあさんといっしょ」、1970年代前 半?)
- 作詞:松岡清治 作曲:越部信義 編曲:越部信義
- うた:堀江美都子、こおろぎ'73
・同じくツイスト風リズム、やはりこれが「越部節」かも。「ジムボタン」挿入歌は、未CD化曲がまだ3曲(いずれも、こおろぎ'73の歌唱曲)もある。実にもったいない。
以下、「おかあさんといっしょ」歴代テーマ4連打。
○ゴロンタ音頭(TV「おかあさんといっしょ」、1970年代前半?)
- 作詞:高見映 作曲:越部信義 編曲:越部信義
- うた:真理ヨシコ、ムウ、こおろぎ'73
○ブンブンタイム(TV「おかあさんといっしょ」、1970年代後半?)
- 作詞:山元護久 作曲:越部信義 編曲:越部信義
- うた:水木一郎、斎藤伸子、東京放送時道合唱団、大塚周夫
○にこにこぷん(TV「おかあさんといっしょ」、1970年代後半?)
- 作詞:舟崎克彦、作曲:越部信義 編曲:越部信義
- うた:小原乃梨子、コロムビアゆりかご会
○けろっこデメタン(TV「けろっこデメタン」OP、1973)
- 作詞:井出隆夫、作曲:越部信義 編曲:越部信義
- うた:肝付兼太、よこざわけい子、中尾隆聖
・・・・・・・誰もが、どれかの世代には引っかかるはず。
○ポッコちゃんが好き(TV「ジムボタン」挿入歌、1974)
- 作詞:丘灯至夫 作曲:越部信義 編曲:越部信義 うた:堀江美都子
○デジタルトリップ「聖戦士ダンバイン・シンセサイザーファンタジー」より
- 作詞:保富康午 作曲:越部信義 編曲:越部信義 うた:堀江美都子
・堀江美都子による歌謡曲テイストあふれる2曲。「中3トリオ」時代の歌謡曲全盛期のサウンド。特に、ブラスとストリングスのアレンジに、いかんともし難い教習を感じる30代は多いのでは(笑)
- 「オーラロード」、「ダンバインとぶ」
- 作曲:坪能克裕、綱倉一也 編曲・シンセサイザー演奏:越部信義、小久保隆
・80年代前半にコロムビアから量産された、アニメ主題歌&劇伴のシンセサイザーアレンジ曲集「デジタルトリップ」シリーズ。そのいくつかのアレンジを越部氏が担当していたというのは、今さらながら驚きです。
【コメント】
越部氏の足跡と魅力を30分に詰め込んだつもりですが、いかがでしたでしょうか。
しかし、そういう趣旨とはいえ、さすがにクラブで童謡をかけるのは、はずかしかったです(^-^;
あと、だれも「あんからもんからフライパン」で、ジャンケンしてくれなかったのが、ちょっと悲しかったです(笑) < 普通しないだろ
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