【映画鑑賞録】「スターウォーズ エピソードV シスの復讐」
「すべてはこの瞬間のために紡がれた」
・私事になるが、子供の頃リアルタイムに見たのは第3作「エピソード6 ジェダイの帰還」だった。
(当時はジェダイの復讐という邦題。2004年旧3部作のDVD発売に伴い改題。元々英語では帰還。)
何がなんだかわからなかったのが正直な感想。
しかし、今この作品を見た子供達も同じ感想を抱いているかもしれない。
そして、私のように何年か経ってから見て、スターウォーズへ傾倒してゆくかもしれない。
・今作はスターウォーズ第6作目にして、話としては第3話というやや複雑な位置づけにある。
旧3部作(エピソードW〜Y)の成功を受けての新シリーズであるから、しょうがないというもの。
実はこの新3部作は、評判はよくなかった。
エピソードTは、意地悪な言い方をすれば、エピソードWからYの焼き直しであるし、
Uは冗長的なラブストーリーにダラダラと見させられた。
エピソードTのジャージャービンクスの不評は、よく知られている。
シリーズの事も何も知っていそうもない評論家からは、「話がわかっている映画を作ってどうするのか?」
等と言われたりもした。
しかし、そのファンの怒りと嘆きと悲しみと期待は、この作品で救われる。
最高傑作の呼び声もあっておかしくない最終作、それがエピソードVである。
エピソードVとは、善人であり優秀なジェダイだったアナキン・スカイウォーカーが、
悪の権化ダース・ヴェイダーへと変貌する物語。
そして、全エピソードを繋げ、Vを見たら、WからYを見たくなるのは必至だと思う。
・映画自体の話に移っていこう。
今作は、140分。しかし、長く感じないほどにスピーディーに物語が流れてゆく。
映像の情報量は半端ではない。正直一回では把握できないので、二回以上の鑑賞をお奨めする。
もはや、本物とCGの区別がまったくつかない映像だが、その美しさに圧倒されてしまうことは間違いない。
冒頭の宇宙での戦闘は、本当に何が起こっているのかわかりにくいので、DVD発売後には、
私も何度も見て、映像の全体を確認したいと思う。
日本語字幕を追うと、映像全体を把握しきれないので、ある意味で日本語吹き替え版鑑賞も一つの手と思われる。
・物語の構成は、それほど難しいものではない。
ジェダイへの不信感とさらなる力への追求に迷うアナキンと、
ダークサイドへと誘う最高議長パルパティーン。
そして、現状に不安を感じながらも弟子を信ずるオビワン・ケノービ。この三人さえ抑えておけば問題ない。
映画の主だったシーンは戦闘シーンであり、しかもライトセーバーによる切り合いがかなりの割合を占める。
歴代シリーズでも、これほど多いものはないだろう。まさに、総決算と言えるほど。
クライマックスは、伝説のアナキンとオビワンによる「火山の決闘」だが、もう一つの「光と闇の頂上決戦」も必見。両方の決戦が交互に入る構成でとまどうが、バランスよくまとめられてはいる。
・俳優陣では、パルパティーン役のイアン・マクダーミドの一人舞台。
とにかく巧妙なセリフ回しと演技は、作品中最大級のインパクトを持っている。
さらに銀河帝国建国宣言と、二回のバトルシーンまであるので、おいしい所の過半は持っていっている。
是非、ご覧になる際は、ダークサイドに誘うパルパティーンの巧妙さに注目していただきたいところ。
・この作品は悲劇であり、最後は悲しい終わりと希望の誕生を描いて終了する。
力を求めすぎて、報いを受けたアナキンは、黒い甲冑のような生命維持装置なしには生きられなくなり、
そして愛した人を亡くしてしまうからだ。そして、自分の知らないところで自分の子供が生まれる。
愛すべき子供の生まれる瞬間すら知ることが出来なかったのだ。
(最も生命維持装置をつけてくれないと、私たちのよく知るダースヴェイダーじゃなくなってしまうけれど)
そして、ラストシーンを見ると、続きが気になってしまう。
エピソードVから見た方は幸せである。続きはDVDで発売されているので、是非見てほしい。
ラストの絶望がやがて、ハッピーエンドへと繋がっていくことを知ることが出来るはずだ。
・個人的には、スターウォーズの二つの3部作をこう位置づけている。
「神話の旧3部作。歴史の新3部作」
ヒーローによる痛快な冒険と過酷な運命を描き、いわば神話のような普遍性のある物語が旧3部作。
旧3部作と違い、結果は知っていても過去の詳細やここまでにいたる過程を知る歴史を学ぶかのような新3部作。
神話であるから旧3部作は鮮やかであり、歴史であるから新3部作はすべて知らないうちはわかりにくい。
新3部作は、すべてを知った今でこそ、どの作品もきちんと見ることが出来うる。
歴史の流れすべてを、きちっと把握すれば、エピソードTの意味もわかってくるという構成になるのである。
その意味では、神話のヒーロー達と戦うことになった皇帝は、悲惨な最後もなんとなくわかる。
歴史の世界では凄い人物であったが、神話の世界にはかなわなかったということであろう。
しかし、こう書けるのも、全6作見終わった後だからである。
エピソードVは、単体でも悲劇として成立しながらも、
残り5作を有機的に繋げる事に成功したという大きな仕事を成し遂げた傑作である。
VのDVD発売後、是非6作一日でまとめてみる機会を持ってみたい。
その時、おそらく今まで感じたことの無い、さらなる興奮が味わえるような、そんな予感がする。
そして、そう感じさせてくれるのも、スターウォーズという映画の偉大さ故だろう。
オマケ<恒例の突っ込みコーナー>
・前作でクローン戦争が始まった!と思ったら、今作ではもうすぐ終わりそうである。
間に何があったの……?
(間に何があったのかは、アニメで語られる予定。すでに短編では存在している)
・オビワンがブラスター使うシーンで、英語では「なんて野蛮なものを」という趣旨のセリフを言うが、
字幕版と吹き替え版では、「こんなもの」的なセリフになっている。
あのセリフは、エピソードWに繋がるものだから、直訳してもいいくらい。
(オビワンは、エピソードWでライトセーバーを「ブラスターと違い文明的な武器」、と評した)
・C3−POが金色に!あれ、お前両足とも金色なんですけど…。
(旧3部作では、片足銀色。ルーカスによれば、VとWの間の二十年で事故って変わったらしい)
・全身やけどの人を、甲冑のような生命維持装置をつける手術って有効なのか、よくわからない。
るろうに剣心の志々雄真実も、銀河帝国で手術受ければ、ああなったのだろうか?
もっとも、あれをしないとダースヴェイダーにならない……。
ちなみに、手術後身長が伸びていた。機械を組み込んだ体を支えるには、足の延長が必要だったのだろうか。
・なお、ダースヴェイダーの仮面をつけると声も、いつもの声に変化。
日本語吹き替え版では、大平透氏でした(旧3部作DVD版も一緒)。
・エピソードUでは、あんなに強かったドゥークー伯爵。
Vでは、ただのかませ犬状態……。
・同じく前作で一定の存在感のあった分離主義者だが、今回はその他大勢扱い。
その最後も悲惨そのもの……。
・パルパティーンと皇帝陛下の容姿が変化するが、共通点は割れている「アゴ」である。
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