【映画鑑賞録】「SHINOBI」
・今作「SHINOBI」は山田風太郎の小説「甲賀忍法帖」の映画化。
甲賀と伊賀の忍が、将軍家後継者を決めるべく、10人対10人で死闘を繰り広げるという原作だが、
映画の尺の関係で、5対5に減らされている。
しかし、全員だしたら収拾つかなくなることは必至で、その辺は英断といえるだろう。
(というより、原作の一部分がごっそり削除されている、と言ったほうがいい)
物語は、互いが伊賀と甲賀とは知らず出会い愛し合ってしまった甲賀弦之助と朧のロミオとジュリエットの
ごとき決して結ばれぬ悲恋を中核に描かれる。
(ちなみに、原作にも甲賀ロミオと伊賀ジュリエットというタイトルの章がある)
・映像は非常に素晴らしい。ロケ地もいいし、CGとワイヤーによるアクションシーンは凄い。
アクションシーンは、いかにも昨今の中国などのアクション映画の影響を感じるのだが、
それに匹敵する映像を日本でも作れるのだと感じられる。
各忍者達の技はすでに魔法とか、そういったレベルになっているが、その辺りもCGで再現。
朧の技はすでに技という領域を超えているが、その「奇想天外」ぶりをよく表現されている。
(これが使えたら、人類最強だと思う)
・しかし、この映画何故か鑑賞後に物足りなさが残ってしまう。
なんだろう、と映画館を出た後いろいろと考えていたのだが、こういうことではないかと思う。
「で、この映画何がしたかったの?」
映画館に入るとき、SHINOBIのポスターを見ると、主演のオダギリジョーと仲間由紀恵が
大写しにされている。せつない恋人達の物語を連想される作りだ。パンフレットも同じ表紙。
予告編もエンディングテーマの浜崎あゆみの曲が流れる。切ない曲だ。
でも、映画自体は「まったくそんな映画じゃない」のである。
忍者同士のアクションや、太平の世になりなまじ力を持ちすぎるが故に疎まれる忍者の悲哀が
先に来てしまい、恋愛要素は序盤と後半しか実際には強調されない。
しかし、悲恋を演ずる二人は、出会ってから一気に時が経ち、いきなり恋人同士になっている。
二人がどう時を重ねて、思いあうようになったのかまるで描かれないから、悲恋を強調されても
見ている我々は困惑してしまうのだ。
勿論手法として、役者の表情やしぐさ等の演出でその辺りを補う事も可能ではあると思うのだが、
監督がそうした手法が苦手なのか、役者に問題があるのか、あまり伝わらない。
要は恋愛要素がメインの映画ではないし、それどころか物語り全体から浮きかねない。
後ラストも原作どおりにはないのも特徴。非常にありえない展開を迎えるので、それにも力が抜けてしまう。
・今作は、「甲賀忍法帖」ではなく「SHINOBI」というタイトルにして、しかも英語込みのテロップ
が出るところから、海外へのマーケットを大変意識していると思う。
だが、肝心な本編がどこか様々な要素が融合せず、浮いた存在にしか見えないのが残念に思う。
アクションシーン等は大変楽しめたのではあるが……。
恋愛映画等と誤解されず、純粋に和製アクション映画としてなら楽しめるので、海外製アクション映画だけ
では飽きられているなら、鑑賞されてもいいと思う。
では。
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