【映画鑑賞録】「NANA」
「これほど原作を再現した映画は無い」
・今回とりあげる「NANA」は漫画の映画化であるが、原作を読んだ人間でも満足できる作品だった
といっても過言はないだろう。よく作ったと本当に思う。
原作は、矢沢あいの大ヒット漫画。単行本13巻で、2600万部売れているという。
矢沢さいといえば、下弦の月が実写映画化されており、「NANA」は2つめのケースとなる。
私は映画を鑑賞する前に原作の単行本13巻をすべて読んでみた。
噂では聞いていたが、これほどおもしろいとは思わなかった。
とはいえ、少女漫画ではあるので、感性の合わない方もいらっしゃるかもしれないけれど。
・物語はこうはじまる。
小松奈々と大崎ナナの二人の「NANA」が上京時に偶然出会い、そして偶然共同生活を始める。
奈々はナナからハチというニックネームをつけられ、劇中でも漫画の中でも、それが奈々の呼び名となる。
さて、ハチは彼氏を追いかけて、上京。一方、ナナはプロのミュージシャンへ目指して上京してきた。
ナナの恋人レンは、数年前にプロになることが決まったバンドに引き抜かれて上京していた。
物語は、ハチと彼氏の破局、ナナの仲間達の上京、そしてナナとレンの再会までが描かれる。
単行本としては、1巻から5巻までの内容で構成されている。
6巻以降、レンのバンド「トラップネスト」のメンバーも絡み、物語は複雑な展開を見える事になる。
原作と映画の物語をどこで締めるのか、この辺りのバランスはいい。
きちっとまとまっていて、混迷を迎える6巻以降の展開を続編でどうまとめるのか、ちょっと心配になってしまうほど。
・ここで原作にちょっと触れたい。原作では、1年も満たない時間の中にありえないほど様々な事件が起こる。原作未読の方のためにも、詳細は避けるがおそらくこれほど激動の一年を送る人間はそうそういないだろう。現代を舞台として、リアルな描写が多いだけに、ドラマティックすぎる物語展開と言える。
しかし、それがあまり意識しないような構成になっているのは、登場人物の描写が大変リアルだから。
彼らは様々起こる事件に、悩み悲しみ喜ぶ。その姿をきちんと描いているが故に、支持されるのかと思う。
映画ではハチとナナの二人に多く描写をさくが故、そのほかの人物までは、原作のような詳細な描写は削られている。ただ、重要なポイントを外していないのでそこまで気にはならないが、一応原作を読んでおいたほうがわかりやすいと思う。
・原作と映画との関係だが、驚くほど原作の雰囲気を再現しようと努力している。
主役二人が一緒に住む部屋。そのまま。他にも登場人物の服装も同じくよく再現した、と思うほど。
ナナは、ヴィヴィアン・ウェストウッドを好んで着るのだが、役を演じた中島美嘉も愛用してるらしく、
非常に着慣れていて、違和感を感じない。
登場人物の髪形等も似せている。ちょっと、コスプレ気味ではあるが、劇中では作品に入っていくので違和感はない。とはいえ、ファンには、あの役者は似合っていないとか、細かく言えば不満はあるとは思う。
個人的には十分ではないか、と思う。私だって、勿論あの役者はどうだろう、のような類に不満はある。
しかし、小道具まで含めて、作品世界を映画に再現することに挑み、漫画がそのまま実写になったような世界を送り出してくれたスタッフの努力は、きちんと評価すべきだと思う。
この映画は、もし「NANA」ファンならオススメできるし、ファンではなくとも、見ても面白いと思う。
そして、観終わった後、原作を無性に読みたくなるのではないか、と思う。
では。
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