【映画鑑賞録】「機動戦士ZガンダムT 星を継ぐもの」
「片意地張らず、楽しもう」
・以前の話で恐縮だが、「髑髏城の七人」という劇団新感線の演劇を観にいった。
7年ぶり2回目の再演という事だが、私自身としては初見。
元々評判の良い劇で、非常におもしろかった。
新感線らしさがあふれているし、キャラクターもストーリーもさすがの完成度。
ギャグもくだらなくて、楽しいし。
惜しむらくは、過去の二回を見ていないこと。
見ていれば、今回は何が違うとか、そういった楽しみがあっただろうに、と思う。
もっとも、予備知識なくても、存分に楽しめる劇で、大満足だったのだが。
・Zの感想を述べる文のはずなのに、こんな話から始めたのは理由がある。
すなわち、劇場版Zもそういう作品だったからである。
ガンダムらしさ、富野監督らしさがあふれ、登場人物と話も完成度は高い。
テレビシリーズの総集編らしく、駆け足の展開になったが、十分Zの大筋はわかる。
というより、毎週見ていたあの頃よりも、遥かに話がわかりやすい。
話は随分端折られているが、流れは同じだし、説明が増えた分だけ、わかりやすくなっている。
・冒頭の演劇と同じである。Zガンダムの20年ぶりの再演なのだ。
勿論、話の大筋は変わらない。だって、再演だから。
細部が変わる事はある。何故なら当時出来なかったことをするからである。
作り手であれば、誰でも自分の作品はいつでも手直ししたいものだと思う。
演劇を再演する理由も、そういう一面がある。過去の作品への再挑戦である。
演じている声優が一部違う?
再演なら、一部役者を入れ替えるのは、新しい刺激を入れるために必然とすら言える。
同じ役者なら、同窓会にしかならない危険性があるのだ。
・私の正直な感想は、初めて納得の行くZが見れたと思う。
当時の陰鬱な空気の漂う作品は消えうせ、大変楽しめて面白く感じた。
それは、カミーユという少年の描き方が、少しやわらかいからである。
昔のとげとげしさは少し薄れ、少年らしさがあり、共感しやすくなっていると思う。
ただし、物語の展開が早すぎるのは確かなので、そこは不親切かもしれないが……。
また、ファーストガンダムからの人物達の描写も増えて、そういう意味でのファーストとZの繋がりも描かれた。
アムロとシャアという伝説の人物に出会ったことに、ラストにカミーユが驚きと感銘を受けるのは、
ファーストという歴史を経過した世界ならば、当然の反応とすら言える。
・私から言えることは、Zガンダムを見ていない方なら、何も知らなくとも楽しめる作品だということ。
前述の通りに展開が急で、その分だけ情報量は多大なので、ついてゆくのは大変ではある。
世界観の把握ぐらいしているとわかりやすいかもしれない。
観たことのある方なら、事前にDVDでも観て、いかに変貌したかを驚いて欲しいと思う。
見終わった後の感触というか、後味が全然違う。
テレビで見たときの何ともいえない不快感すらある後味は、なくなっているから。
(あれがよかったという人には辛いか)
とにかく楽しめる作品だ。
そう身構えず、過大な期待も抱かず、偏見を捨て、観ていただければ、と思う。
オマケ<重箱の隅をつついてみる>
・今回のTは、第14話までの内容を凝縮したもの。よく95分にまとめたものだ。
この時間は監督の考え。長い映画は嫌いらしい。
ちなみに、同じ総集編映画のガンダム劇場版Vは141分、ターンAガンダム劇場版Uは、131分もあるのだが(確かに二時間越える映画って、長い気がしてしまうけど)。
次のU「恋人たち」は、第36話までらしい。
となると、「恋人たち」はフォウとの出会いと別れを描いた作品になるのではないか。
・端折られた部分。ウォン・リーが登場しない。確かにいらないかも。
アクシズ登場の伏線となる、シャアが旧部下との接触シーンもない。
伏線としては、前過ぎて忘れてしまう危険性もあるので、端折っても問題ないかもしれない。
・アッシマーの複眼センサーや、MA形態での乗り込み口は新解釈。
他にも、ガルバルディβのビームサーベル取り出し口も新設定。
本来はバックパックに取り出し口がある。
・ブレックス「提督」という新呼称登場。旧テレビシリーズでは、准将と階級で呼ばれていた。
なお、提督の声はガガガの大河長官役の石井康嗣に変更。
・グリプスの映像に、ジムクゥエルがいる。
・リックディアスは、何故かガルバルディのビームライフルを持っているシーンがあるが、
これは昔からあるシーン。シャアも月の戦闘で一回使っている。百式のとか持たないの?
・ティターンズの巡洋艦「アレキサンドリア」の艦長は、ガディ・ギンゼーという名前。
しかし、映画版では「アレキサンドリアキャプテン」という役名だった……(涙)。
名前を忘れられたのか?ちなみに声優は一緒。