バーのマスター:
有吉 髪・テカテカのオールバック
口ひげ、白いシャツ、黒スラックス、黒靴
疲れたサラリーマン:
森脇 ピンクのYシャツ、黒ズボン
紺にオレンジのななめストライプのネクタイ、
黒靴、黒い背広の上着をウデに持っている
ステージ中央に横長の机(バーのカウンター)とイス1つ
<ナレーション>
「僕らも大好きです。猿岩石さーん」(デンジャラス・安田)
森:「あれっ、こんな近所に飲み屋さんあったんだ。・・・ん?
バーびしょびしょ?
<笑>(店の中に入る)・・・誰もいない、
・・・すいませーん」
有:「(口に食パンをくわえてバタバタ走ってくる)すいません、
遅刻しまして!ふえ〜っ、はあ はあ・・・(走ってきたので
息が荒くなっている)」
森:「ふつう朝だぜ、それ
<笑> 朝見る光景でしょう、それ、
今時いないし、食パンくわえてる人
<笑> マスター?」
有:「うん、マスター(シャツのすそをズボンに入れ身なりを整える)」
森:「(イスに座る)こんな所に店があったんだんね」
有:「なんにする?」
森:「じゃあ バーボン」
有:「バーボンね・・・バーボン?ダメですよ、バーボンでバカボン
とか期待しちゃ」
<笑>
森:「いや、してないですよ」
有:「昔ね、そんなダジャレバーやってて失敗しちゃったんだけどね」
<笑>
森:「別に(期待)してないから」
有:「なに、ロック?」
森:「あぁ、ロックで お願いします」
有:「(グラスに酒を入れ)はい、バ・カ・ボ・ン」
<笑>
森:「言っちゃったよ」
<笑>
有:「はぁー・・・なに、元気ないねー。なに、元気ないねー!」
森:「いや、サラリーマンの仕事やってると、いろいろあるから」
有:「あっそう、元気出しなさいよ」
森:「ふぅ・・・(疲れている様子)」
有:「どうしたの? 話聞くよ」
森:「オレが話すとグチになっちゃうから」
有:「グチを聞くのもグチグチよ。
<笑> グチを聞くのも仕事のうち
だから、言っちゃいなさい、なんでも(言って!言って!という
ジェスチャー)」
森:「なんか吐いているみたいだな・・・じゃあ あの・・・」
有:「いいよ、なんでも聞きますよ」
森:「うちの会社の事なんですけどねー、人間関係がいろいろ、
いざこざがあってね、大変で」
有:「あのー、結局モーニング娘と一緒なんだよね」
森:「・・・モーニング娘?・・・一番仲のいい同期がいろいろ変な
ふうになっちゃって」
有:「あーそう、 あのねー、結局モーニング娘と一緒なんだね、
わかる?」
森:「・・・モーニング娘?・・・上司ともいろいろあって」
有:「あっそう、あーそれって、あのーモーニング娘と」
森:「もういいよ!
<笑>全部モーニング娘とからめようとする!
オレの会社はモーニング娘じゃない!」
<笑>
有:「以前ね、モーニング娘にいた事があって、いざこざがあってね」
森:「ウソでしょ」(帰ろうと席を立つ)
有:「あっ、ちょっと、ちょっと、ちょっと、あっ、座って!」
森:「イッパイだけって」
有:「そんなねぇ、落ち込んだまま帰られたんじゃウチが悪いみたい
じゃない。
<笑>ウチの店来る人はみんなねぇ、元気出して
もらわなくちゃダメなの。みんな元気が出るテレバ」
森:「えっ?」
有:「ねっ、おごる!おごる!おごる!」
森:「じゃあ(再びイスに座る)」
有:「なに?バーボン?バカワイン?」
森:「ん?」
有:「バカワイン?」
森:「えっ?」
有:「赤ワイン?」
森:「じゃあ、バーボンで」
有:「バーボンで・・・(森のグラスに酒を注ぐ)はい、バ・カ・ボ・ン!
<笑> えー、お客さん、どこ国は?」
森:「広島です」
有:「広島、いいところだねー。あのねー、ボクもね昔、5年前ぐらい
かなー、行ったなー。あれだ、あのー、なんだ、原爆ドーム見て」
森:「あー」
有:「あそこの隣の、なんかー、原爆資料館見て」
森:「はい」
有:「あのー、あれだ、あのー、原爆跡地」
森:「原爆ばっかりじゃないか!もっといい所あるんだから」
<笑>
有:「あれ、あー、ふぇ〜・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 元気出た?」
<笑>
森:「出ない!なに今の間っ!
<笑>時間が解決するっみたいな。
しないから」
<笑>
有:「いいじゃない、広島ねー」
森:「なんか今、広島の話出たけど、最近本当疲れてきちゃったから
さぁ、国へ帰ろうかなって思って」
有:「ねっ、みんなそう言うの。もー仕事疲れた、東京から帰りたい。
国に帰りたい、みんなそう言う。ダメ、そう言っちゃ。あのねぇ、
東京で仕事したくても、まだここにいたいなぁと思ってもね、もう
国に帰らなきゃいけないオレみたいな人間もいるからさぁ」
森:「えっ、この店閉めちゃうんですか?マスター」
有:「パスポート切れちゃって」
<笑>
森:「なに人? 本当に?えっ?えっ?この真っ、このなに、日本人
ぽいって、えっ?」
有:「あー、そう言われても、あれなんだけど、カンチガイ。あのー、
外人っていっても、アメリカ人!みたいな、そういうんじゃなくて
ハーフ。」
森:「あー、ハーフねー」
有:「あのー、母方のほうがスェーデン」
森:「スェーデンかぁー」
有:「で、父方がフランス」
<笑>
森:「ヨーロピアンじゃない!えっ!なんかモロ、モロっていうか、
えーっ!アジア!」
<笑>
有:「そう言ってくれるとね、うれしいのね、こっちもね。あのね、
子どもの時から、もうずっとね、言われてたのよ、
『目〜が 青〜い!』とかね」
森:「青いか?」
<笑>
有:「『ハ〜ナ 高〜い!』」
森:「低いよ」
<笑>
有:「『髪 黒〜い!』
森:「それは黒いよな・・・
<笑>へぇー」
有:「ねぇ、元気出た?」
森:「出ないっすよ」
有:「パン(手をたたく)、パ、パン、パン、パン、パ、パ、パン、パン、
パン、パ、パ、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、
パン、パン、パンッ そうだっ!」
森:「長いよっ!」
<笑>
有:「ゲーム!」
森:「や、いいよ(イヤそうに)」
有:「ゲーム!」
森:「いいですよ!(イヤそうに)」
有:「ウチのお客さんみんなゲーム好き。あっそうだ、飲み屋のゲーム
だから知っているかもしれないけど、タバコのやつ、知ってる?
知らない?知らない?やる?やってみて、だまされたと思って。
ここに置くでしょ、タバコをね(机の上にマルボロを立てて置く)、
よく見て」
森:「はい」
有:「よく見て(タバコを指す)『キィッ!』(変な声を上げる)」
<笑>
森:「(声に驚きマスターの顔を見る)」
有:「見る!(タバコを指す)」
森:「キィーとか言うから」
<笑>
有:「ぜったい(タバコを)見る!それがルール。『キィッ!』
<笑>
(変な声を上げる)」
森:「(声に驚きマスターの顔を見てしまう)」
有:「見る!(タバコを)見なきゃ始まらないから」
<笑>
森:「今なんか言うから・・・(タバコをじーっと見る)」
有:「これ(変な声)に気を取られないでね。いい?見て」
森:「はい」
有:「ワン(パンっと手をたたく)」
森:「(マスターの手を見てしまう)」
有:「見る!(タバコを)」
森:「はい」
有:「ワン(パンっ)、ツー(パンっ)、スリー(パンっ)、
(サッとタバコをつかみ取る) おそーいっ!」
<笑>
森:「いや、おそいって、取る気ないでしょだって。これ、
競うんでしょ?言ってよ、早く!」
有:「みんな言うの」
森:「みんな言うって、そう、みんながあってる」
<笑>
有:「言っといてくれ!とかみんな言うの。ぜったい言うの」
森:「もう一回やろう、取るから」
有:「ほら、熱くなってきた。みんなそう。みんなそうやって
熱くなってくるんだから」
森:「早くいこう」
<笑>
有:「(タバコを机の上に置く)『クエッ』『キィッ』(変な声を上げる)」
<笑>
森:「もう(そっち)見ませんから」
<笑>
有:「はい、いい?よく見た?はい、ワン(パンっ)、ツー(パンっ)、
スリー(パンっ)」
森:「(必死でタバコをつかみ取る)」
有:「クックックックッ・・・(笑いながら眺めている) 早い!!」
森:「競えよっ!
<笑> 早いとかじゃなくて、競ってよ!
腹立ってきた、どんどん」
有:「はい、(森のグラスにバーボンを注ぐ)おごる!おごる!
もういっぱい!もういっぱい!」
森:「いいよ、あるから、まだ(バーボンがあふれている)いいよ、
あるから、いいって! もうこぼれてるから、 もう!
こぼれてるから!」
有:「ストップって言わなきゃ やめないよ」
森:「ストップ!ストップ!ストップ!ストップ!ストップって言って
んじゃない!言ってるじゃない!びしょびしょだよ、もう・・・
あ〜ぁ も〜 変な店来ちゃったなー、あ〜ぁ も〜 余計
疲れてくるよ〜、あ〜ぁ・・・」
有:「(裏から小さなエレキギターを持ってくる)」
森:「マスター音楽やるんですか?」
有:「(ギターをかまえる)コン・コン・コン・コン(ギターを叩く)
<< 元 気 出 っ せ ぇ ー>>(歌う)」
<笑>
森:「(ギターは)関係ナイじゃないですか」
<笑>
有:「本当はね、いつもそうなんだけど、ウチのお客さんさ、オレが
こうやってギターを持ってくるとね、あぁマスター、オレ、
ギター弾けるんですよ、で、そこからセッションが始まるのよ」
森:「だったら聞いてみればいいでしょ(後ろを振り返り客が自分
しかいないことに気づく)」
有:「弾けないの?」
森:「弾けないよ」
有:「なぁんだー、はい、元気出して。昔ちょっとやっていたことが
あってね。歌をね。・・・名前は?今頃聞いてナンだけど」
森:「モリワキ」
有:「えっ? モ リ ・・・?」
森:「モ リ ワ キ」
有:「・・・ワ キィッ
<笑>・・・よしっ!はい、元気出してっ!
<< 夢がモ・リ・ワ・キ 夢がモ・リ・ワ・キ <笑>
今夜も 夢〜が〜 モ リ ワ キ 〜 モ・リ・ワ・キ >>
(首を振りながらノリノリで熱唱)
<笑>
森:「なんなんだよ!『夢がモリモリ』のパクリだろっ!
<笑>
『モリワキ〜』うわぁ、なに今の。ムカついた、すごい
<笑>
言葉じゃないじゃん。パクってるんじゃん。なんなんだよ」
有:「歌じゃないよ、今のは」
森:「歌うたうって言ったじゃない」
有:「歌ってないです。だってオレはね、あのー、ぜんぜん聞いてね
『夢は?』『夢は?モリ』って言っているのに、ぜんぜん・・・
『夢は?モリワキ』って聞いているのに、答えないで、
無視して言わないんだから。夢は?」
森:「ないさ、もう、そんなの」
有:「いやー、昔はあったでしょう」
森:「ちっちゃい頃はあったけど」
有:「恥ずかしがっちゃったの?夢って言いうのはね、叶えるために
あるもの。叶えるために」
森:「バカにするから」
有:「しない。オレはしない」
森:「え?」
有:「オレは、ちなみに小学校の頃はサイ。
<笑>サイ(おでこに
ゲンコツをあててサイのつのにしている)」
森:「えっ?」
有:「サイになりたかったの。 ねぇー、なぁに?」
森:「アイドル・・・アイドルになりたかったの」
有:「はあ?」
森:「思いっきりバカにしてるじゃない」
有:「これで?(森の顔を指す)マジ?これ?
<笑>これでアイドルに
なりたかったの?トシちゃんとかマッチとか?これでぇ?えっ、
えっ、なにこの顔、なんて言うんだっけ?言葉忘れちゃったけど
言葉・・・あの・・・ブ・ サ・ イ ・・・ ・・・クっ! すごいねー、
これで?」
森:「なんかオレ、すごくバカにされてるみたい!ぜんぜん元気出て
こない。ムカつく話ばっかりだよ。帰る!(席を立つ)」
有:「いや、待って。(肩をつかんで席に着かせる)カミさんはいるの?
カミさんは?」
森:「いないよ」
有:「子どもは?」
<笑>
森:「いないよ」
有:「彼女は?」
森:「いないですよ」
有:「やっぱり。それはなぁ、キツイな」
森:「あんたはカミさんいるのかよ?」
有:「それはいますよー」
森:「本当ー?」
有:「カミさんは、ちょっと、この辺じゃあねぇ、高円寺小町って呼ばれ
てる」
<笑>
森:「本当に?子は?」
有:「子は、だって、カミさんはきれいで(※よく聞き取れませんでした)
・・・だって子供さぁ、こんなに(森の顔を指す)ブサイクだったら、
オレだったら自信ない。本当にねぇ、親すごいと思うよ。ここまで
我慢して育てた事が。すごいよ。だってさぁ、子供かわいいって
できないよ、これ。子供もブサイクなら、親だってブサイクなんだろう」
森:「親を言うなよ。(机の上のパンをマスターに投げつける)自分が
ブサイクで、親がブサイクって言われたら(キレる)」
有:「あー、なぁにやってんだよー、コーノヤーロー!(カウンターから出て
きて二人取っ組み合いになる)」 ガタン ゴトン ガタン ゴトン・・・
森:「イタタタタタタタ・・・」
有:「(突き飛ばされて床に倒れる。起きあがりカウンターの中へ戻って
いく)・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 森脇さん、元気出たんじゃない?」
森:「 ・・・ 本当だ」
<笑>
((舞台暗くなり、森脇にスポットライトがあたる))
<ナレーション・有>「彼はこの後、夢であったアイドルとなるので
ありました。しかし、そのお話は、また別の
機会で」
森:「(アイドルのようにアゴの前でガッツポーズ)えへっ 」
<笑>