レギュラー三人が、倉庫のような部屋で、棚に収められた大量のビデ オテープを眺めている。 大 竹:「(唐突に)まあ、ね」 東 野:「(板尾:(笑))なにが、「まあ、ね」なんですか(笑)」 大 竹:「いやいや。宝の山かゴミの山かという問題ですよ、だから」 東 野:「ここは、いったいどこですか?」 大 竹:「ここはですね(東野:「はい」)、えー、よみうりテレビの ですね、映像資料室」 字 幕:“よみうりテレビ第1映像資料保存室” 大 竹:「ここにはですね(東野:「はい」)、今までよみうりテレビ が録ったですね、6万本以上のビデオが(東野:「はい」)、 収められている。ま、全部じゃありませんけどもね」 東 野:「すごいですよね。(ある棚を指差して)この辺、もう、『や すきよのスター爆笑Q&A』の欄なんですけど」 板 尾:「(棚からビデオテープを取り出しながら)ね、整理しましょ か」 大 竹:「(東野:「いやいや、もうしてるんですよ!」、スタッフ: (笑))整理してある、してあるんだよ。(東野:「余計や やこしなるから」)もうしてあるから、(取り出したビデオ テープを)入れとけ! 今日はですね、この秘蔵VTRを使って ですね(東野・板尾:「はい」)、面白いことをやろうとい うことになってる訳ですよ」 東 野:「その「面白いこと」を聞きたいんですけど」 大 竹:「その「面白いこと」は、(カメラの方を向いて)題して…」よみうりテレビ秘蔵
大きなメインのモニタ画面を中央に、小さなモニタ画面が大量に並ん だスタジオ。 番組タイトル“BLT”。 企画タイトル“よみうりテレビ/秘蔵映像/大公開スペシャル”。 観客の拍手と音楽が流れる中、レギュラー三人が登場。 東 野:「どうも、こんばんは。よろしくお願いしますー」 大 竹:「まー、ね。(周囲を見回して)もう、すごいセットですね」 東 野:「はいはいはい。テレビテレビ、テレビばっかりですね」 大 竹:「さ! 今日はですね(東野・板尾:「はい」)、えー、“よ みうりテレビ 秘蔵映像 大公開スペシャル”」 板 尾:「(東野:「はい」)すごいタイトルですねえ」 大 竹:「えーとですね、よみうりテレビというのはですね(東野: 「はい」)、開局が昭和33年ですから(東野:「はいはいは い」)。この中に色んなVTRがたくさん、もう、倉庫に眠っ てる訳です(東野:「ふむ」)。その中でですね、色んな、 今日は、面白いものを見ていただこうという趣向になってる」 東 野:「(板尾:「ほー」)なるほどー。一見、豪華そうですけど、 金のかかってない番組ですねー」 大 竹:(爆笑)(観客:(笑)(以下、【笑】)) 大竹が、東野をひじで突きのけるしぐさ。 東 野:「痛い痛い痛い」 大 竹:「いーじゃねーかよ!「やろう」って言ってんだから(笑)」 東 野:「とりあえず、よみうりテレビの、すごい、今までの人気番組 ね(板尾:「そうそう」)、(※聞き取り不能)全部見れる 訳ですか」 大 竹:「まあ、それだけじゃなしに、「今有名なあのタレントさんが こんなことを!」(東野:(笑))、「あんなことを!」」 東 野:「うわあ、もう、見たい見たい!(笑)」 大 竹:「じゃあ、どんなのがあるか分かりませんけどね、見てみまし ょうね(東野:「はい」)。まずは、こちらです」 字 幕:“よみうりテレビ秘蔵/1996年、日本中に/一大ブームを巻き 起こした/アノ人気者の隠された秘密!” 大竹が、モニタ画面のアオり文句の字幕を読み上げる。 東 野:「'96年、去年ですね。“日本中に一大ブームを”…」 大 竹:「“巻き起こした”。それでは、どんなんでしょう(東野: 「どんなんでしょうか、見てみましょう!」)。それでは、 VTR、どうぞ」
字 幕:“1993年3月2日放送/EXテレビ/〜公開弟子審査会〜”
以下、『EXテレビ』の映像。但し、《》内は“BLT”のスタジオの反
応。
レギュラー:上岡龍太郎、島田紳助
アシスタント:ジミー大西
ゲスト:オール巨人、西川のりお
一人目 〈イラスト“希望者3人”左端〉
上 岡:「さて、えー、公開弟子面接。今度は、オール巨人さんの弟子 希望(紳助:「多いですねー」)。これが23通ありました。 (巨人に)基準は?」 巨 人:「僕は、あのー、条件はね、大阪に住めるコでないといかんと。 ほんでまあ、悪いんですが、年齢38歳とかくらいの方がおら れましたけども、やっぱり、それはちょっと、ね、えー、今 からでは遅いんじゃないかということで(上岡:「なるほ ど」)、はぶかしていただきまして」 大西が、スタジオ脇の扉を開けて、一人目の希望者を迎える。 大 西:「どうぞ! お入りください」 一人目の希望者が小走りで登場。レギュラーとゲストが並んで座る机 の前、向き合って置かれたパイプ椅子の横に立つ。 巨 人:(走って入って来たのを見て)(苦笑) 希望者:「あ、大阪から来ました、ホリノウチユウジ。(深く頭を下げ て)よろしくお願いします」 上 岡:「こんばんは」 巨 人:「ま、座ってください」 希望者:「(座りながら)あ、はい」 巨 人:「僕は、もう、来る人拒まずなんで、どっちか言うたら(希望 者:「はい」)。「OK、OK」言うて取るんですけどね。その 代わり、入ってもうたら厳しいですけどね」 希望者:「あ、もう、もう弟子になるって決めたんで」 上 岡:「時間が来ました。控室の方でお待ちください」 希望者:「あ。(立ち上がり、深く頭を下げて)よろしくお願いします」 一人目の希望者が小走りで退場。二人目 〈イラスト“希望者3人”中央〉
上 岡:「では、ジミーちゃん。続いての人をお願いします。いかにも (紳助:「大阪っぽいね」)、弟子希望っていう感じでね」 巨 人:「大阪っぽいね」 大西が、スタジオ脇の扉を開けて、二人目の希望者を迎える。 大 西:「続いての方、どうぞ!」 《東野:(真剣な大西を見て)(笑)》 巨 人:「でも…先読めそうな感じがしましたね、彼は」 上 岡:「次、来ました(紳助:「来たで来たで、来たで」)」 二人目の希望者が登場。パイプ椅子の前に立ち、小さく頭を下げる。 《大竹:「猿岩石…」》 有 吉:「お願いします。有吉弘行です。広島から来ました。よろしく お願いします」 字 幕:“猿岩石・有吉が/デビュー前、こんな/番組に出演してい た!!” 《観客がどよめく。東野:「ああっ!」》 巨 人:「よろしくお願いします。はい。ま、あの、座ってください」 有吉が、パイプ椅子に座る。 字 幕:“広島県安芸郡/(2)有吉弘行/18歳・高3” 巨 人:「有吉くんは(有吉:「はい」)、広島で。ま、電話でしゃべ った時に、その、広島のなまりというのはあんまり出なかっ たんですけどね(有吉:「はい」)、僕の感じではね」 《大竹:「(有吉の顔について)これ、ずいぶん、耳が下に付いてな いか?」、東野:「ねえ」【笑】、大竹:「え? ずいぶん下、(自分 の耳のすぐ下を示して)この辺に付いてるよ」》 巨 人:「どうですか? 友達なんか、「大阪に行って、君だったらや れる」とか言うてくれる?」 有 吉:「はい。(照れ笑いを浮かべながら)一応…」 巨 人:「みんな言うた?(有吉:「はい」)お父さんお母さんにも? (有吉:「はい」)お父さんお母さんは、どう言うてた?」 有 吉:「あのー、「自分のやりたいことをやらないと後悔するんで」、 まあ…」 巨 人:「理解あるねー」 紳 助:「いい親やなー(巨人:「えぇ親やねー」)。えぇ親やわー。 でもね、オール巨人師匠は厳しいよ(上岡:(笑))」 巨 人:「もう、えぇて! なんべんも言うな(苦笑)」 紳 助:「君な、1回とちって坊主、2回で歯ぁ抜いて、わややで」 巨 人:「体力は自信あんねんな?」 有 吉:「はい、あります。(巨人:「ね?」)はい」 巨 人:「スポーツやってたんですか?(有吉:「はい」、紳助:「な、 なに?」、有吉:「野球をやってました」)。僕は、あの、 どっちか言うたら体育会系の教え方ですから」 有 吉:「はい」二人暮らし
巨 人:「大阪に住めるんですね?」 有 吉:「はい。もう、家、決めてます」 巨 人:「え、大阪で?(有吉:「はい」)探したん?(有吉:「は い」、上岡:「ほー」)いつ? こないだ電話した時、そん なこと言うてなかったでしょ?」 有 吉:「はい。あのー、今日、決めて来ました」 巨 人:「どこで?」 有 吉:「え? 不動産で(笑)」 巨 人:「(苦笑)「不動産」ちゃう。「どこへ決めたか?」って、場 所(紳助:「場所」)」 有 吉:「あのー、西成の、花園の」 巨 人:「家賃なんぼ?」 有 吉:「5万1千円」 巨 人:「高いがなー! それ、5万1千円、やっていかれへんで」 有 吉:「(慌てて)あのー、あの、二人で、もう一人大阪来て、あの ー(「巨人:「まさか、女の子ちゃうやろな」)、「格闘家 になりたい」いうヤツが…」 巨 人:「え!?」 《東野:(爆笑)【笑】》 有 吉:「「格闘家になりたい」いうんで「正道会館入る」言うていう ヤツがおるんですよ。ほいで、そいつと一緒に住んで、ワリ カンで」 《東野:「広島訛り(※聞き取り不能)」》 紳 助:「ほー。ほな、まあ、2万…」 巨 人:「それは、えぇ考えやけどね(有吉:「はい」)、うん。あ、 そう」二股疑惑
巨 人:「漫才師か(有吉:「はい」)。「トミーズが好き」?」 有 吉:「はい。好きです」 巨 人:「トミーズのどういうとこが好きですか?」 有 吉:「そうですね。あのー、雅さんのボケと…」 巨 人:「ほな、雅とこ行ったらどうや?」 有 吉:「いや、でも、僕は、巨人さんが好きなんで…」 巨 人:「そこ、分からんなー。雅が好きやったら、雅とこ行ったらえ ぇねん」 有 吉:「いや、でも、巨人さんはもっと好きなんで」 巨人が、笑って首をひねる。 紳 助:「ファンなんか?(有吉:「はい」)」 のりお:「いや、これね、僕、(※聞き取り不能)。芸人って、皆、各 々プライドあると思うのよ。やっぱり、「自分が一番や」と 思ってやってるからね(有吉:「はい」)。「巨人さん!」、 しがみついて「弟子にしてください!」って言うのと、その 前になんか「雅が好き」って聞いたらね、やっぱり、なんか、 これ、あるのは事実や思うわ、気持ちに(有吉:「(小さく) はい」)。うん」 《東野:(大真面目に語るのりおを見て)(爆笑)【笑】》 巨 人:「まあ、でも、こういう企画があって、それに応募したってい うのが、ほんで、ここ選ばれたっていうのが、君が、やっぱ り、チャンスと運があって(紳助:「うん」)、ね、ここま で来たんだと思うし(有吉:「はい」)」 紳 助:「あの、NSCって学校があるのは知らなかったの?」 有 吉:「いや、知ってます」 紳 助:「行かなかったの?」 有 吉:「あ、行きました」 紳 助:「どうしたの?(有吉:「え?」)行ってんの?」 有 吉:「いえ、行ってませんよ」 巨 人:「NSCに、受けに行ったん?」 有 吉:「はい」 巨 人:「行ったの? ほな、どうしてん。落ちたんかいな?」 有 吉:「いや、落ちてません。いや、まだ、決まってないんですけど、 でも…それは、まあ…」 巨 人:「合格通知が来たらどうすんの?」 有 吉:「いや、それは行きません」 巨 人:「向こうは断わる訳?(有吉:「はい」)それやったら、もう、 最初に断わっとかなあかんな」 有 吉:「はい。そうですね」 巨 人:「そういう、二股かけたみたいになるからな(有吉:「は い」)。まあ、あすこの方が厳しいですよ、言えば。弟子に なったら、ま、ガンバったらなんとか出れますから。そら、 もう、実力の世界ですしね、後はね。NSCやったら、もう、 残らへんかったら、「はい、サヨナラ」で終わりやからね」 上 岡:「はい。ご苦労さんでした(有吉:「ありがとうございまし た」)。時間が来ましたので、控室でお待ちください」 有吉が、立ち上がって頭を下げ、退場。 上 岡:「えー、広島からということですが」 紳 助:「これ、みんな真面目にやってますねー」 上 岡:「例えば、さっき埼玉でしたよね(巨人:「はい」)。言葉の 問題はどうです?」 紳 助:「B&Bの洋七さん、広島ですよ(上岡:「はいはい」)。あの 人、うまぁくごまかしてますよ(巨人:「そうそう」)」 のりお:「逆になまりを利用できることも」 上 岡:「あるけども、ねー」合格 〈イラスト“希望者3人”〉
結果発表。 有吉を中央に、三人の希望者が並んで立っている。 上 岡:「では、オール巨人師匠への弟子入り希望者三人の中から、合 格者発表です」 巨 人:「僕、弟子、大好きですから、取るの。どっちか言いますと。 で、まあ、あのー、大阪にね、せっかくアパートも借りたと いうことで、ま。その代わり、ほんま厳しいよ、入ったら。 大変よ。だから、二人、ホリノウチくんか、と、有吉くん。 その代わり、「やめ」言うたらやめてくださいね」 上 岡:「では、ホリノウチくんと有吉くん、ガンバってください」
三人目 〈イラスト“希望者3人”左端〉
再び、“BLT”のスタジオ。 東 野:「ほー」 セットのすべてのモニタ画面に、当時の有吉のアップ。 全 員:(笑) 板 尾:「良かったですね。決まってね、なんか、ね」【笑】 東 野:「いやいや(笑)。せやけども、実際には、結局、あの、なん ですか? その、弟子をやめて東京に行ったんでしょ?」 板 尾:「(スタッフに)その、やめた時の映像はない?」【笑】 東 野:「そら、ないですよ(笑)。ないですないです。はー。それが、 今、有吉くんです、猿岩石の(板尾:「へー」)。すごいで すねー」 板 尾:「あの、一人落ちたコはなんであかんかったか、ごっつ気にな るねんけどね」【笑】 東 野:「借りて帰りぃな、もう(苦笑)。あるから」 板 尾:「(スタッフに)かめへん? めっちゃ聞きたいわ、理由」 セットのすべてのモニタ画面に、並んで立っている希望者三人の映像。 向かって左から、ホリノウチ、有吉、不合格者。 板 尾:「(不合格者を指差して)こいつ(笑)」【笑】 東 野:「この、右側の方ね。なんかあったんでしょう(板尾:「なに があったんやろう」)。面接中に、なんか」弟子制度
大 竹:「大阪で弟子って、どういうことすんの?」 東 野:「いや、だから、あれですよ、だから、師匠と、ね、一緒に、 なんですか、師匠が漫才やってる横、舞台の袖でおしぼりと お茶を持って待ってたりとか」 板 尾:「あのねえ、やっぱ、ちゃいますよ、弟子やってたコって、な んか。なんか、やっぱりねえ、(東野に)立ち方とかもちゃ うもんな」 東 野:「ちゃんとしてます」 板 尾:「ちゃんと、やっぱり、してますよ」 大 竹:「ちゃんとしてるから、でも、ちゃんと出て来るとは限んない んだろ?」 東 野:「そう…。(西川)きよし師匠のお弟子さんはちゃんとし過ぎ て国会議員の秘書やってますからね」【爆笑】 大 竹:「(東野に)君は、弟子取らないの?(東野:「はい?」)弟 子、取らないの?」 東 野:「来ないですよ!」【笑】 大 竹:「来りゃ、取るの?」 東 野:「いや、一回、でも、来たんですよ、僕じゃないんですけどね。 「東野さん、山崎(邦正)さんの弟子になりたいんですけど」 って言って、山崎邦正の!」【笑】 大 竹:「(東野に)弟子取るのは、好きなの嫌いなの? 結局」 東 野:「僕は取らないです、弟子なんて」 大 竹:「取ってるヤツはどう思うんだよ、だから。それを、ちゃんと 言っとこうか(笑)」 東 野:「(苦笑)あ、僕ですか? …三枝師匠とかですか?(大竹: 「うん」)それは、素晴しいでっせ!」 大 竹:「あー、(板尾に)なんか批判的だよね(東野:「なんで(苦 笑)」)。つば飛ばしながらしゃべってたもん、今」【笑】 板 尾:「そうですね(笑)」 大 竹:「じゃあ、賛成なんだな、そういうことに。な」 東 野:「はい。賛成ですよ、弟子制度。ただ僕は、そういう、教える ような芸なんか僕にはないから、僕は取らないですけど」 大 竹:「(強く)確かにない! お前には、教えるような芸は(笑)」 【笑】 東 野:「一切ない。僕の教えるのは、「イタタタタタ」の言い方とか ね?」【爆笑】 大 竹:(爆笑) 東 野:「そんなんだけやから、教えることないけれども。弟子制度は 素晴しいと、僕も思いますよ。ね、ホントに。有吉くんもね、 えー、ホントに…良かった(笑)」【笑】