感動ドラマスペシャル「川の見える病院から」
1997年3月18日(火) 20:00〜21:48 テレビ朝日系
出演:片岡鶴太郎(細川亮介),野村宏伸(永島),田中律子(ゆかり),
小林恵(幸恵),松本恵(はる香),篠原ともえ(弘子),
有吉弘行(玉岡),森脇和成(岩井),渡哲也,他(敬称略)
主人公の細川(片岡)は小児がん治療の専門医。15歳で亡くなった患者弘子(篠原)の供養の席で幸恵(小林)と再会した。幸恵も以前は細川の患者だったが、今は短大に通っている。保母を目指すためである。
うどんすきの店で、細川と幸恵が食事をしている。
- 細川
- そうかあ、幸恵ちゃん、保母さんになんのか。
- 幸恵
- 来月試験なんです。自信は半々ってとこかな?
細川と幸恵を後ろからとらえるシーン。二人の後ろの席では玉岡(森脇)が他の客相手に配膳をしている。玉岡は細川に気づいた様子で、奥に下がっていく。
- 細川
- 大丈夫。幸恵ちゃんのような、苦しい闘病生活を終え、健康を勝ち取った人間が、本当の意味で優しくなれるんだ。幸恵ちゃん向いてると思うよ、保母さんに。
- 幸恵
- (黙ってうつむく)
- 細川
- 今なんか変なこと言った?
- 幸恵
- あたし、病気のこと隠して就職試験受けようと思ってるんです。先生、小児がんだった人間と、健康だった人間と、同じ成績だったら、雇う側はどっちを選ぶと思。います?
- 細川
- うん、分かってる。(豆腐を一口食べる)
- 幸恵
- (強い調子で) 私のやろうとしていることはいけないことですか?
- 細川
- いけないとは言い切れない。俺が君でもそうするかも知れないし、ただ何というか、寂しいというか、そういう世の中が…。
- 幸恵
- 世の中ってみんな興味本位だわ。『えっ?白血病って治るわけ?』『何年再発しなかったら無事だって言えるわけ?』曖昧な知識でいい加減に喋ってる。こんなんじゃあたし結婚だってできないかも知れない。骨髄バンクだってそうでしょう?もっと多くの人が登録すれば、たくさんの子供達が助かるっていうのに、なかなか進んでやろうとしない。日本人の白血球の型は似ているのに。
- 細川
- そうだねえ。
- 幸恵
- そりゃあ、ちょっとは大変かも知れないけど、それで一人の子供が助かるのよ。生きていけるのよ。そういうことの大切さを、どうして分かってくれないの?
- 細川
- そうだよなあ。分かるよその気持ち。
- 幸恵
- 私、保母さんになりたいんです。子供が好きなんです。
今度は先ほどと逆のアングル。二人を正面にとらえ、画面奥に仕事をしている岩井をうつしている。岩井は客の鍋にうどんを入れている。
- 幸恵
- それに言えないけど、自分の経験を生かせる一番いい仕事だと思ってるし、保母としての実績を積んだら、病院内での保母さんにゆくゆくはなりたいなあって。
- 細川
- そうか、わかった。がんばれよ。俺にできることがあったら、何でも応援するから。
二人が話している座敷から少し離れた場所。玉岡が両手にビール瓶を持っている。
- 岩井
- どこ持ってくの?
- 玉岡
- 先生んとこ。
- 岩井
- (細川と幸恵のほうを何度か見て、小指を立てて"コレ"の仕草)
- 玉岡
- (ためらう)
- 岩井
- (玉岡の背中を押して) いいっていいって。大丈夫。いいからいいから。
玉岡と岩井、座敷へ向かう。
- 玉岡
- (座敷に上がりながら) 失礼します!
- 細川
- おーう。
- 玉岡
- (細川の横に座り、ビールを置く。岩井も玉岡の側に座る) はい先生、これ、俺からの気持ち。
- 細川
- いいよこんなことしなくたって。お前まだ修行の身なんだから。
- 岩井
- そう言わずに召し上がって下さい。こいつ、先生がお見えになるの、ずっと待ってたんです。
- 玉岡
- (照れくさそうにうつむく)
- 細川
- そうかあ?じゃあ、悪いな。(ビールを自分の側に寄せる)
- 玉岡
- (幸恵に) 俺ね、白血病だったんです。でも、先生が治してくれて、お祝いにここに連れてきてもらったら、すっかりここの味に魅せられちゃって。
- 細川
- そうだよなあ。
- 玉岡
- (うなずく)
- 細川
- それで、その日のうちに勤め始めちゃったんだもんなあ。
- 玉岡
- はい。
細川・玉岡・岩井の3人、笑い合う。
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