ばびんの柩の部屋


「漆黒の海を往く」  エピローグ2


登場人物  Curter  Tania  Elizabeth  Harry  Jeff  Megumi 


ElizabethからCarterに当てた、最後の手紙(エピローグ)

 Dear Carter.
 これは、きっとあなたへの最後の手紙となるでしょう。
 私は今、これを救難信号を捕らえて私達のシャトルまでわざわざ助けに来てくださった、「Wish号」の中で記しています。これから、私はあのシャトル内で起こった出来事について、詳細漏らさず話さなくてはなりません。きっと彼らは信じようとしないでしょう。最後に生き残った私が、全ての殺人における犯人だと勝手に決め付けるかもしれません。しかし、それでも私はあの絶望の空間から生還できただけでも、嬉しいのです。何かから解放されたような、一種の感情の安息を私は得ることができました。
 私は結局あの事件のとき、思いあまってTaniaを殺してしまいました。それは過剰防衛と言えるものなのかもしれません。しかし私は、あなたが望むと望むまいとに関わらず、それを後悔してはいません。きっと、あなたは「そんなことをして欲しくはなかった」とでも言うのでしょうね。それでも良いのです。
 この手紙はあなたのことを吹っ切るために記していると言えるのでしょうか。それは私にもわかりません。なぜなら、私はあなたのために他の人の命を奪ってしまうほどに、あなたを好きだったからです。もう少しで、結婚という時期だったのに、とても残念です。きっと、私はあなたからは解放されていないのですね。傷跡をなめる気はないのですけど、傷跡を眺めて、生きていくことになりそうです。
 窓から、外を覗いてみました。救出されるのを待っていた数年間(私の主観では数日間ですけど)は宇宙はとても暗くて、悲しくなりました。今は、星々の光が良く目に付きます。わたしたちの故郷まではあと数日で到着するそうです。驚くべき早さですね。たった二十数年で、科学は非常に進歩したようです。
 この船で、私はこれからの数日をどう過ごそうか考えています。
 あと数日間は、この船は星々の光に内包された漆黒の海を往くのです。
 この手紙はあなたが逝った宇宙に流そうと思っています。

                           Elizabeth




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