茂雄の「金満補強への言い訳」を斬る!

これは1月3日にテレビ東京にて放映された特番「ONスーパートーク」において、巨人の金満補強に対するファンの非難の声に
茂雄が見苦しい言い訳をかました部分を抜粋したものである。

茂雄「よくそういう(金満補強に対する不満の)声を聞きますが、我々は合法的な事をやっている訳ですから…。
   負けた原因はどこにあるか、そういう教訓を生かす為に戦力を補強するのであって…。
   トレードと言う制度がありますよね。一方では、ドラフトと言う制度も合法の中でありますよ。
   もう一つはFA制度と言う…、合法の中でそれを用いているのであって…。
   決して、金権体質とか言うのは一切と僕はないと思いますよ、エヘヘヘ〜」

確かに、今となっては合法的な事をやっているかもしれないが、それを合法とする為に、セ・リーグ脱退やら1リーグ制を示唆して、他球団に圧力をかけたと言う背景は全く無視している。全うに12球団合意の下に導入された制度だと、誰が思っていようか。また、所詮、FAと言うのは経済力のある球団しか活用出来ない制度であり、表面的には対等に平等に補強出来ると言っても、実際には資金のある球団のみが得をするばかりなのだ。これでは「FAフル活用=金権体質」と言われても、全く反論の余地はない。茂雄の言い分は表面的な事にしか触れていない綺麗事でしかないのだ。

茂雄「あのヤンキースがそうだから、ジャイアンツも真似する…、そういう事じゃない。
   政治経済文化全ての中心となっているニューヨークと言う独特の環境が
   ジャイアンツと非常に似ているんですよ。しかも、ウチはマスコミチームでしょう?
   勝たなければいけないと言う…、勝つ使命があるんですよ。たまたま昨年は4年ぶりに勝たせて戴きましたが
  
 (=正しくは、「ヘッポコ采配のおかげで、4年も優勝が遠のいた」)
   毎年勝って欲しいと言うファンの要望…、その要望に応えるにはどうしてもやっぱり戦力を強化しなければいけません」

巨人が勝たなければいけない使命を背負っていると言うのは理解出来うるが、勝つ為の手段として戦力補強以外、なす術がないと言う理論は納得しうるものではない。結局の所、育成,采配によっては勝ちえない事を認めている訳だ。采配は茂雄をクビにすれば済む問題だが、茂雄が采配を奮う事を前提に話しているのだから、これについての論拠は無意味だろう。しかし、育成をないがしろにする事により、育成能力は低下する一方で、ドラフト下位選手のモチベーションもやはり低下する一方。逆指名,FA組しか活躍の場を与えられないと言う歪んだ体質による勝利が、果たして、茂雄の言う「ファンの要望」と言えるのだろうか?

茂雄「特に、ドラフトと言うのは非常にままなりません。これは運否天賦と言うね、そういう面があります。
  
 
(ここで聞き手に「しかし、逆指名がありますよね」とふられるが…)
   逆指名と言う制度が生まれました。同時にまた、トレードと言う手もある。
   
(…と逆指名についてつっこまれるのを避ける為、すかさず受け流す卑劣な手に打って出る)
   しかし、12球団の中でトレードと言うのはなかなかお互いのチームが戦力均衡化と言うか
   バランスがなかなか取れない環境に追い込まれた。だからどうしても手っ取り早いFA制…。
   FAがままならないと外国人の選手を強化せざるをえないと言う…。
   そういう戦力整備をする為に、ややもすると、ウチは矢面に立ってますけど、これはウチばかりでなく
   どこのチームもそういう傾向にあります。たまたまマスコミチームだから矢面に立っているだけで…」

逆指名もまた巨人が恐喝まがいの圧力をかけた外道な制度である。結局、契約金は勿論、裏金に至るまで人件費の高騰を呼んでしまう最悪の展開に陥った。プロで1球も投げていない、1球も打っていない人間にあれだけの巨額を投資しなければいけない事態はイカれているとしか言い様がない。入団時に球団選択の余地がなかったからこそ好きな球団に移る為のFA制の筈が、この2つが同時に存在していると言う矛盾を少しは問いただして貰いたいものだ。逆指名導入後、福留(現中日)の外れ1位だった原俊介以外、全ての枠を逆指名で使いきり、他球団と比べ、逆指名組が確実に戦力と化している巨人において、この制度は無視出来ない。…にも拘わらず、やはり、「平等の権利である合法的手段だから、金満体質じゃない」とFAに関する言い訳とまるっきり同様の形でしか弁明出来ないとあって、茂雄は巧みに回避した様だ。「ドラフトがままならない」と言うのはFA制を活用する為の大義名分に過ぎないのではなかろうか? 聞き手には「あれだけフル活用しながら、どこが『ままならない』んですか!?」と、ツッコんで欲しかった所で、この辺りは非常に悔やまれる。「手っ取り早いFA制」などとほたえている辺り、やはり新人を育成しようなどと言う気は毛頭ないのは間違いない。そもそも、FAを「手っ取り早い」と称せるのは、資金力が豊富だからであって、例えば、広島からこんな発言が出る事は考えられない。結局、茂雄は巨人の資金力に甘えているだけで、やりたくても出来る球団と出来ない球団がある事を全く前提にしていないこの発言にどれ程の説得力があると言えようか?

茂雄「じゃ、2年3年、勝たなくてもいいよと…、もし万が一、そういう形でウチのチームが
   これだけの全国数千万のファンの支持者があるチームが、21世紀を迎えて、毎年毎年負けていくならば
   野球界の存亡的なね、これは決していわゆる高飛車なそういう発言ではなくて
   野球人として、ジャイアンツが弱体化した場合、日本の野球界がどうあるべきかと言う
   一方では我々もそういう体験,勉強も随分させて戴いている。
   常に強くあれ、とするにはFA制度ね…、つまり、アメリカの組織の導入したものを
   合法的に使っていると、そういう気持ちがあるんですよ、エヘヘヘ〜」

巨人が日本の野球界をリードしているのは確かに事実である。しかし、これは第三者に許される発言であって、当事者が言ってはいけない事だろう。「高飛車な発言ではない」などとほたえているが、当事者が言ってしまえば「高飛車」以外の何物でもない。また、再三再四「合法的」と言う言葉を連発しているが、後ろめたくて「合法的」と言う言葉を盾にせずにはいられないのではなかろうか? 合法ならば何をやっても許される…とも受け取れるが、いずれにせよ、巨人の圧力によって成り立った制度を巨人がフル活用している現状で「合法的」と言われても、どうしても釈然としないものを感じてしまう。

茂雄「ウチのオーナーも「俺はヤンキースのオーナーと同様に強化していく」と…。
   それがひいては、やっぱり昨年の優勝の様に勝てばこれだけのジャイアンツのファンの皆さんが
   正に日本列島を震撼する様に…、ON対決と言う環境にも恵まれにせよ、そういう喜ぶあの顔を見て
   恐らく、オーナーはね、いわゆる選手の獲り方そのものについて「俺は間違いでなかった」と…
   そういう気持ちがあったんじゃないでしょうか。このやり方は良しとか悪しとかそういう議論じゃないんですよ。
   ファンあってのプロ野球、そういうファンの皆さんの感情を返す、あるいはそういう支援に対して逆説的な行動に走る
   と言うのはいい事じゃないのは重々分かりますけど、ただ、勝負の世界と言うのは、やっぱり強いチームでなければいけない。
   基本的にこの前提と言う枠が、これから将来崩れる事はないと思うんですよ、エヘヘヘ〜」

優勝でなければ2位も最下位も同じ…と言う考えの巨人ファンが多いのは確かだろうが、いかな手段を用いても「優勝」と言う結果のみを巨人ファンは望んでいるのだろうか? どういう選手を集め、どういう野球をやって、どういう勝ち方をするかと言う事は全くないがしろにしていいものなのだろうか? 結果のみを期待するファンは巨人ファンであったとしても、果たして、プロ野球ファンと言えるのだろうか? まぁ、結果のみを期待するファンの比率の方が高いのだから、それを優先しなければならないのは企業の方針としては間違ってはいないのだろうが…。こういう発言はナベツネに任せておけばいいのであって、まがりなりにも「ミスタージャイアンツ」「ミスタープロ野球」と呼ばれた茂雄に言われてしまうとプロ野球に対する夢も希望もなくなってしまう。金満補強に関して「いい事じゃないのは重々分かりますけど」などと言いながら、その前には「良しとか悪しとかそういう議論じゃない」と言っている。お茶を濁した言い回しは大概にして貰いたいものだ。「強いチームでなければいけない」と言うのは、金満補強をかます為の大義名分としては申し分ないのだろう。先にも触れた通り、補強以外の手段で茂雄に勝つ術は何一つないのだから…。結局、茂雄は巨人の事しか考えておらず、他球団がどうなろうと知った事ではないいのだ。

ここで聞き手は王さんに対しても、この話題を振ってみる。その答えは正に、茂雄とは対照的なものだった。

王さん「巨人軍が選手を獲っている、と言う事もあるけど、選手達が望んで行っていると言う事もある訳ですね。
   だから一方的に巨人軍うんぬんと言う事じゃないんですが…。ただ、アメリカではFAの選手を獲った場合は
   (ドラフトの)ウェーバーの権利を譲らにゃいかん訳ですよ。そういうものが日本はないんですよ。
   そういう点で公平感と言うのは日本の場合はない、と言えると思うんですね。ただ、FAそのものは
   選手達が望んで出来た事だって事は理解しなければいけなぃ。やっぱり、オーナー会議なり実行委員会なり
   野球機構がそういう不公平感があるなら、それを是正するべく努力すべきですよ。
   どこのチームも勝とうと思ってやっている訳ですが、不公平感があるって事は、どうしても偏ってしまう事があるから
   偏っていると言う事が感じられない様なルールに戻すと言う意識は持つべきですよ」

流石に、王さんは茂雄とは違う。12球団の均衡化,平等化について、表層的でしかない現状を正当化するばかりの茂雄に対して、実質的には不公平である事を指摘し、それに対する是正を強く、しかも具体的に主張しているのだ。ダイエーがかつての様な弱小球団ならば、僻みとも取られかねないが、今や堂々パ・リーグ連覇を果たした球団であり、こういう発言にも説得力が感じられる。もっともFA,逆指名をフル活用しえないと言う苦しい経営事情にあるのは確かだが…。王さんがダイエーに移らず、巨人一筋の人間だったならば、果たして、こういう発言が出たか定かではないが、そんな仮定は無意味だろう。

将来、ONを両リーグのコミッショナーに…と言った案も持ち上がっているが、日本ばかりか世界へ野球を広めるべく底辺の拡大に執心し、それをなしうるだけの世界的ビッグネームである王さんはともかく、茂雄の様な巨人至上主義の男にプロ野球の将来を託す事が間違っていると言う事が、ここで改めて明らかになったのは言うまでもない。茂雄のカリスマ性に騙されて、茂雄の主義主張まで正しいと誤解してはいけないのだ。日本国で言えば、茂雄は象徴たる「天皇」にまつりあげるのはいいとしても、「首相」だけはやらせてはいけないと言った所だろうか。因みに、私見ではドラフトは逆指名を完全撤廃し、完全ウェーバー制を導入,FA権の取得年数を短縮し、移籍金も縮小化…として欲しい所だが、ナベツネ&茂雄の極悪コンビが健在でいる限り、実現する事はありえないだろう。