音符



MiYOU
(99.4.21)XYCA-00037



「Impression」
作詞:池田貴族 作曲:松岡モトキ

「オープン・ユア・ハート」というセリフが、浅田次郎さんの小説(『天国までの百マイル』)の中にも出てきます。「神の手」を持つといわれる医師の口癖で、手術執刀の前などにも呪文のように唱えられる言葉。
信頼して心をゆだねるとき、生まれる何かがあるのでしょうか。
貴族氏は、音楽が神だとわかったとおっしゃっていました。神である音楽に対して心をひらいたときに、魂を伝えるすべがわかって、奇跡のようなアルバムを作ることができたのだろうかと思います。
そんな境地に少しでも近づけたらと思っています。



「MiYOU」
作詞:池田貴族 作曲:日比野信午

「去年(98年)6月、肝臓から肺にガンが転移したことを電話で聞いた日に、娘の寝顔を見て思った曲」とのこと。(週刊SPA!のインタビューより)

美夕ちゃんが誕生して、貴族氏はとてもうれしそうで、ご自身のホームページの掲示板などにも喜びにあふれた書き込みをたくさんされていました。これで流れが変わるかもしれない、そんな期待もされたんじゃないかと思います。
たった3ヶ月後の非情な告知。心中察するに余りあります。

この歌も本来なら微笑ましい光景のはずなのに、そこに笑みの差す余地などなかったことでしょう。幼子のあどけない寝顔と父親の直面した現実とは、明暗というには対照的すぎます。息をのむような、神々しさすら感じさせる一枚の絵のような、厳粛なシーンを思い浮かべながらいつも聴いています。




「プラーナ 〜呼吸〜」
作詞:池田貴族 作曲:桜井秀俊

「死んだらどうなるのだろう」「魂とは」「無ってどんな状態?」
私は十代の頃からキリスト教の信仰を持っていたこともあって、死の問題については自分の中で既に答えを見つけて、解決済みのつもりになっていたと思います。でも貴族氏のように生きている人の前に、私の死生観なんて薄っぺらいものでしかないとつくづく思い知らされました。
それからいろいろな本を読みました。仏教系、精神世界系、死後の世界のようなものなど、それまで手に取ったことのなかったような本も読みあさりました。もちろんそんな付け焼き刃のような学びで真実が理解できるとは思いません。でも、私の知らなかった世界は確かに存在している気がしました。

この歌を聴いたとき、自分が宇宙の中に溶けていくような心地よさを覚えました。私は、こんなふうに生きているのだし、こんなふうに存在して行くんだなと、それでいいナと思えて心が軽くなりました。何ヶ月もかかって本から学んできた世界に一瞬にして導き入れてくれる、音楽の力ってすごいなと思いました。

アルバムの中である意味唯一、死をも内在的に受け入れているというか、いたたまれなさから解放される境地を示してくれている歌だと思います。ものすごく慰められます。




「Confusion」
作詞:池田貴族 作曲:ROLLY

くるくると変わる曲調が、衝撃の告知に揺れ動く心のよう。
でもサビの部分の力強さには生のエネルギーがほとばしっていて、特にブリッツのライブでは鳥肌が立ったほど感動しました。

「好きなことをしておいた方がいい」
患者さんに厳しい告知をしなくてはならない場面は多いことでしょう。でも、医師として、友人にこう告げるドクター・ウエストはとりわけ辛かっただろうなと思いました。笑みまで浮かべて歌ってみせるこの歌は、そんなドクターを逆に励まそうとしているようにも思えてなりません。

難しい詞に救われる曲をつけてくれて ROLLYさんありがとう! と、聴くたび感謝したくなります。




「Your song」
作詞:池田貴族 作曲:愛川弘樹

詞/池田貴族、曲/愛川弘樹。
この組み合わせは私にとって特別な響きがあります。remoteのナンバーの中で、貴族氏の「本心をゆだねた」という感じで鍵となる歌を作曲しているのが、偶然なのか意図的になのか、いつも愛川氏であるように思えていたからです。

思い込みなのかどうかわかりませんでした。でも今回の、本音ばかりが散りばめられたアルバムの中で、愛川氏にゆだねられたタイトルは『Your song』。
絆のようなものを感じました。お二人の巡りあわせなのでしょうか。

そして、ブリッツでこの曲を歌いながら、言葉に詰まって涙をこらえていた貴族氏を見て、あーやっぱりって勝手に納得してうれしくなりました。




「Are you happy?」
作詞:池田貴族 作曲:西山文明

この曲を聴くとき一番寂しい気持ちになります。どんなに思いを巡らせてみても、理解できますとは言えない境地。死と向き合っている人の孤独と本音が、そのままの姿で綴られていると思いました。想像や創作では絶対に作れない言葉だと感じました。

黙って歌声に耳を傾けることしかできません。作曲者の西山氏の言葉ですが、「本人のおかれる状況をリアルにとらえつつも、 かっこよく見えたらいいな」、そんな思いで作られたそうです。せめてそのような形で寄り添い、花を持たすことができるとすれば救われるのですが。




「死にたくない」
作詞:池田貴族 作曲:大槻ケンヂ・宮崎末飛登・三宅裕之

死にたくないと叫ぶことがこんなにかっこいいことだったとは。
真に生きているからこそ死にたくないと素直に言えるんじゃないかと、この歌を聴いて気付かされました。自分が生きていることを本当の意味で知っているから。そのくらい価値のある「生」だから。そんなふうに生きている人の言葉はなんといさぎよいことかと思いました。

詞を渡された大槻さんは絶句したらしいですが、こんなにインパクトのある粋な歌になって、音楽ってやはり素敵だなと思います。どんな説得の言葉を聞くよりもストレートに、命の尊さを思い知らされる歌だと思います。




「Hard luck singer」
作詞:池田貴族 作曲:前崎史郎

1998年8月17日 渋谷Egg-man。友人のライブにゲスト出演した貴族氏が、 「Hard luck woman」(KISS)と「Purple rain」(Prince)を歌ってくれました。貴族氏が歌い始めると場がキリリと張りつめ、観客が吸い込まれるように聴き入っていた、あの空気が忘れられません。

後に改めてこの2曲を聴き直して歌詞を読んだときに、ちょっと愕然としました。・・・詫びたかったんだな、と思いました。ゲスト出演の打診があったのは、3度目の手術を終えてまだ入院中の頃だったろうと思いますが、この時期に選んで歌われた曲として特筆する価値があると思ったのです。

娘さんの頬にkissする写真を見ながらその歌を思い浮かべます。
hard luck singer それでもいいと歌われるのは、覚悟や諦めというだけのものじゃなく、自分ばかりが辛いわけではないという思いの表れのようにも感じました。優しさが秘められた歌だと思っています。せつなさも。




「遺言」
作詞:池田貴族 作曲:和嶋慎治

『プラーナ 〜呼吸〜』が暗在系の世界の歌ならば、この曲は明在系。この中に貴族氏がいる! と思います。大きな傷を抱えながらも、自分の仕事を成していく。貴族氏の生きる様を見せられているようで好きです。

いかにも和嶋さんぽい響きのかっこいい曲。和嶋さんが参加されたE.ギター以外のパートは、すべてremoteのメンバーが担当しているというのが、おちかにとっては大サービスでもあります。格別にテンションが上がって、この歌を聴きつつ頑張らなきゃと思わされる。人生を導いてくれる言葉というのがありますが、私の中では間違いなくこの歌もそれに入ります。聴いてて心が軽くなるし、勇気がわいてきます。なんて素敵な「遺言」でしょう。




「天国なんか」
作詞:池田貴族 作曲:みうらじゅん

かわいらしくてせつないラブソング。常に真ん中でボーカル張ってないと気の済まないタチの貴族氏が、メインの座を明け渡した?画期的な曲でもあります。ツインボーカルと言って過言ではないみうらさんのギターは、こんなに「熱唱」するギター聴いたことがないと思える演奏で、聴くたび感動させられます。
そしてノーギャラで集まったという25名の豪華コーラス隊。ワイドショーなどで、「当然のことをしたまで」とでも言いたげな、みなさんのすがすがしい表情がとても印象的でした。一度でピタッとコーラス決まったらしいです。なんだか神懸かり的。

車の中でこの曲を聴くのが好きです。初めてカーステでかけたとき驚きました。左のスピーカーから流れるボーカルが、まるで助手席で歌われているかのような感覚で鮮やかに聞こえてきたからです。つい何度も横を確認してしまったほどでした。レコーディング風景を再現する演出としての録音だと思うのですが、おもしろい音響効果も生み出されていて。

ブリッツでオーケンの『あのさぁ』を聴いたとき、歌というのは生き物で、ときに作者の手を離れて自らを主張したりもするのかな、と思いました。そんな不思議な力をこの歌にも感じます。 実は私の中でまだすっきりと筋の通った解釈ができてないのがこの曲なのです。最初に聴いたときから違和感の消えない言葉の流れがあったり(貴族氏の詞で「違和感」を感じたというのは他に思い当たらないので)、インストアライブでちょっと歌詞を変えてた箇所にも あれ?と思ったり。
でも、わからない深さがあるなら、何回でも聴くだけです。ずっとずっと聴きます。




ボーナストラック「ロンリネス」
作詞/作曲:池田貴 歌/演奏 シーモンキーズ with イカ天ビジュアルズ

オープニングのこの曲で度肝を抜かれ、みうらさんたちとのトークにお腹がよじれるほど笑った、ラフォーレでの夜を思い出します。ほんとに楽しい時間でした。思い出すとほんのり心があたたまってきます。ボーナストラックでの収録うれしかったです。

(1999.12.24記)



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