ボられ記 in TORONTO



 トロント市内初日、とにかく現金をおろそうとCITIBANKを探した。べつにまわしものじゃないが、CITIBANKは旅行者には至極便利なものである。日本で使ってるカードがそのまま海外のCITIBANK(とその提携行)で使えて預金がおろせる。あらかじめ電話で聞いておいたら、Front St.にあるという。場所を地図で探すのもよいのだが、それほど広い市内でもなし散歩がてら歩いて探すことにした。
 歩いていて目に付いたのが、「物乞い」。治安は良い街だそうだが、物乞いが結構いる。1ブロックに一人ぐらい。当然目を合わせないように歩く。何人かは話し掛けてくる。話し掛けられても英語わかんねーんだよ。
 銀行探しも疲れてきた。そろそろ誰かに聞こう、と思っていると、正面から明らかに物乞い風のじいさんが朗らかにやってきた。しまった、目が合った、と思う隙にもう握手をされていた。
「聞いてくれよ、ブラザー。」(英語が再現できないので以下意訳)
「財布盗まれちゃってさあ、家まで帰らないといけないんでちょっと小銭くれないか?」
誰がオマエの財布盗むんだよ!
とりあえず英語が通じないふりで逃げようと思い、思いっきりカタカナ英語で
「ア、アイ、キャント、アンダースタンド!」
と言ったが、じいさんは丁寧に丁寧に、こちらのコンセンサスを取りながら噛んで含んで再度説明してくれた。しょうがないなぁ、タダでやるのもシャクなので、銀行の場所を聞くことにした。
「CITIBANKの場所を知ってる?」(もちろん英語で)
「ああ、CITIBANKならこの角曲がってすぐだ。」
え?この角はFront St.じゃないぞ?
「Front St.にあるって聞いてきたんだけれど。」
「いいや、こっちだ。」
あまりにも自信タップリ。半信半疑だがもうしょうがない。とりあえず1ドルめぐんであげた。
"No."
なに?
「1ドルじゃ足りない。小銭全部くれ。」
あつかましすぎ。まあ、つかまった私が悪うござんした。小銭入れの中から順次小銭を取り出すとクソジジイは「もっともっと」と手振りをしながら、ほとんど残りがなくなったところで、
「もういい、ありがとう」
と歩き出した。
"Good luck, brother!"
と言いながらジジイは満面の笑みで「グー」(親指を立てる)のサインを出し、去っていった。あまりにも自然なその振る舞いについつられてこっちも同じサインを出してしまったが、後で良く考えるとメチャアホなカモじゃんか。

 角を曲がっていくと、当然のようにCITIBANKはなく、さんざん歩き回ったあげく実際にはジジイと会ったその通りがFront St.だった。今回の被害額は3ドルと数十セント。カナダドルは$1=80円くらいなので、日本円にして300円くらいか?
 おかげでいい市内観光をしたよ。もう一生会わないけどお礼がしたい。。。