[わ]
渡辺 岳夫(わたなべ・たけお)
作曲家。
1933年4月16日生。
東京都出身。武蔵大学経済学部卒。仏スコラカントルム音楽院卒。
1989年6月2日没。
父は、作曲家・渡辺浦人('94年没)。劇演出家・渡辺浩子は妹('98年没)。
父が音楽家であったことから幼少時から音楽に親しむ。しかし、作曲家になろうとは思わず、大学も経済学部へ。学生時代は「親孝行のつもりで」父の仕事の手伝いをするかたわら、ジャズバンドでドラムを叩いたり、学生演劇に熱中したりしていた。学生時代より芝居が好きで、卒業したらドラマの演出家になりたいと考えるようになる。
その一方、在学中に世界民族音楽会議の代表のひとりとして渡欧を経験。また、丁度日本に入ってきたデイブ・ブルーベックのジャズに衝撃を受け、音楽の仕事にも興味を持ち始める。
家族は音楽の道に進むことを希望していたが、卒業後TBS(当時KRT)に入社。演出部でプロデュース、演出を経験するうちに、ドラマを音楽で支える劇伴にひかれるようになった。しだいに劇音楽をやりたいという思いが大きくなり、「劇伴に一生を捧げよう」と決意してTBSを退社。音楽家に転身する。
退社後、音楽を本格的に勉強し直すため、パリ・スコラカントルム音楽院に2年間留学。クラシックを本格的に学ぶ。
帰国後、父・渡辺浦人の手伝いをしながら劇伴音楽の勉強をし、映画やラジオ、テレビドラマの劇伴を書くようになる。デビュー作については諸説あるが、ニッポン放送のラジオドラマが「初めてギャラをもらった仕事」という。
以後、民放のテレビドラマを中心に数々の劇音楽を作曲。映画音楽とも微妙に違うテレビドラマ独自のスタイルを作り出し、以降の劇伴音楽に大きな影響を与えた。もともと芝居の演出家を志していただけあって、その音楽は、単なる情景描写や情感描写の音楽ではなく、人間ドラマにぴったり寄り添った「音で綴ったドラマ演出」。渡辺岳夫の音楽が、「テレビドラマの劇伴音楽のひとつの典型を作った」といわれている。
作品のジャンル、作風は幅広く、「大奥('68)」「新選組血風録('65)」のような時代劇から「巨人の星('68)」のようなスポ根もの、「アルプスの少女ハイジ('74)」「キャンディ・キャンディ('76)」に代表される少女向けアニメ、「非情のライセンス('74)」「白い巨塔('78)」などの大人向けドラマ、大ブームを引き起こしたSFアニメ「機動戦士ガンダム('77)」など、ひとりの作曲家の作品であるとは信じられないほど。
しかし、渡辺岳夫の音楽には、一聴して渡辺岳夫と気づかされる特徴がある。小編成でも楽器の音を最大限に生かした音作り、チェンバロ、マンドリン、マリンバなどのお気に入りの楽器の音色、そしてなにより、「岳夫節」「なべたけ節」と呼ばれ愛されている、独特のメロディラインである。
美しい音楽、やさしい音楽を書く作曲家はいるが、渡辺岳夫の音楽は、そういう形容では表現しきれない魅力にあふれている。
たとえば「大いなる旅路('72)」主題歌冒頭のえもいわれぬ音運び。「家なき子('77)」主題歌「さあ歩きはじめよう」サビの切ないまでの願いに満ちた調べ。
疲れた心を浄化してくれるような胸に迫る音楽は、劇中人物を「そばにいて支えてあげたい」という人間への熱い想いから生まれたもの。
音楽を表現する言葉としては不適当だと思いつつも、「ヒューマニズムあふれる」という形容を使わずにはいられない。
渡辺岳夫の作品の中には、いくつか転機になった作品がある。
まずは、脚本・結束信二、音楽・渡辺岳夫の「新選組血風録('65)」。以後コンビで、「用心棒シリーズ('66-68)」「大奥('68)」「あゝ忠臣蔵('69)」「燃えよ剣('70)」など、数々の時代劇の名作を作り出す。
テレビアニメに本格的に取り組むきっかけになったのが、「巨人の星('68)」。大人向けのドラマ音楽と変わらぬアプローチで、「テレビまんが」を「テレビアニメ」に発展させる手助けをした。
そして、最大の転機となったのが「アルプスの少女ハイジ('74)」である。
当時、渡辺岳夫は、「1週間に渡辺岳夫の曲がテレビから流れない日はない」とまで言われる売れっ子だったが、一方で、作品が荒れていくことに不安を感じていた。テレビアニメ初の海外録音を行ったこの作品は、渡辺岳夫が自費で2度にわたるヨーロッパ取材を敢行、音楽への情熱を注ぎ込んだ渾身の1作である。
「ハイジ」以後、テレビアニメにおける渡辺岳夫の仕事は、質的にも量的にも絶頂期を迎える。
'79年の「機動戦士ガンダム」は、それまでのロボットアクションもの音楽のイメージを大きく変える作品で、「ガンダム」のヒットとともに、渡辺岳夫の名がアニメ誌をにぎわすことになる。しかし、名前が売れることは氏の本意でなく、「もはやガンダムの音楽はファンのもの」との言葉を残して、「ガンダム」からは離れていく。
100万枚売った「キャンディ・キャンディ」や海外でも愛唱されている「ハイジ」など、ポピュラリティーあふれる曲想は、いまも新しいファンを生んでいる。アニメソングでは小林亜星やいずみたくと並ぶメロディメーカーで、歌謡曲の分野でもヒットメーカーとして通用したに違いないと思わせるが、芸能界の生臭さを嫌い、あくまで劇伴音楽にこだわった。
80年代後半は、テレビの単発ドラマを中心に活躍する一方、初心に還るかのように、舞台音楽に情熱を燃やし、いくつかの舞台では音楽監督を務める。
「劇伴は一生の仕事」と語り、いつかシンフォニーを書くことを夢見ながら、劇音楽を書き続け、生涯、劇伴音楽家であることを貫いた。
享年56歳。 '99/1/19
主な作品
(ほんの一部)
●テレビドラマ
- 1960「風の武士」
- 1960「ゼロの焦点」
- 1960「血汐笛」
- 1964「夕日と拳銃」
- 1965「徳川家康」
- 1965「新選組血風録」
- 1965「沙羅の門」
- 1965「青空に落書きしよう」
- 1966「俺は用心棒」
- 1967「残菊物語」
- 1968「大奥」
- 1968「待っていた用心棒」
- 1968「帰ってきた用心棒」
- 1968「黒い編笠」
- 1969「五瓣の椿」
- 1969「アーラ我が君」
- 1969「ながい坂」
- 1969「わが母は聖母なりき」
- 1969「検事霧島三郎」
- 1969「花のお江戸のすごい奴」
- 1969「花と狼」
- 1969「天を斬る」
- 1969「あゝ忠臣蔵」
- 1970「大坂城の女」
- 1970「燃えよ剣」
- 1970「女の顔」(平岩弓枝ドラマシリーズ)
- 1970「がめつい奴」
- 1971「ザ・ガードマン(劇伴)」
- 1971「めだかの歌」
- 1971「軍兵衛目安箱」
- 1971「清水次郎長」
- 1971「太陽の恋人」
- 1971「半七捕物帖」(平幹二郎)
- 1972「大いなる旅路」
- 1972「忍法かげろう斬り」
- 1972「シークレット部隊」
- 1972「眠狂四郎」(田村正和)
- 1972「乳房よ永遠に」
- 1973「子連れ狼」
- 1973「旅人異三郎」
- 1973「非情のライセンス」
- 1973「ぶらり信兵衛道場破り」
- 1974「右門捕物帖」(杉良太郎)
- 1974「子連れ狼(第2部)」
- 1974「編笠十兵衛」
- 1974「非情のライセンス」
- 1975「影同心」
- 1975「十手無用−九丁堀事件帳−」
- 1975「影同心II」
- 1975「虹のエアポート」
- 1976「子連れ狼(第3部)」
- 1976「嫁だいこん」
- 1976「怪人二十面相」
- 1977「志都という女」
- 1977「いとしのエルザ」
- 1977「人形佐七捕物帖」(松方弘樹)
- 1977「新幹線公安官」
- 1978「白い巨塔」(田宮二郎)
- 1978「炎の河」
- 1978「風をみた女」
- 1979「刑事鉄平」
- 1979「騎馬奉行」
- 1980「ミラクルガール」
- 1980「徳川の女たち」
- 1980「江戸の朝焼け」
- 1981「斬り捨て御免!」
- 1980-86「赤かぶ検事奮戦記」
- 1981「同心暁蘭之介」
- 1981「斬り捨て御免!(第2部)」
- 1981-86「わが子よ」(花王愛の劇場)
- 1982-83「妻たちは」(金曜劇場)
- 1983「花祭」(平岩弓枝ドラマシリーズ)
- 1983「雨の慕情」
- 1981「斬り捨て御免!(第3部)」
- 1983「花ホテル」(平岩弓枝ドラマシリーズ)
- 1983「雨の慕情」
- 1983「大奥(新)」
- 1986「ふたりはひとり」(木曜ゴールデンドラマ)
- 1986「花姉妹」
- 1987「見上げればいつも青空」
- 1987「ふたりはひとりII」(木曜ゴールデンドラマ)
- 1987「おさと」
- 1988「御宿かわせみ」(スペシャル)
- 1988「夏の埋み火」(東芝日曜劇場)
- 1989「結婚行進曲」(スペシャル)
●こども向けドラマ
- 1960「小天狗小太郎」
- 1961「三太物語」
- 1970「金メダルへのターン!」
- 1970「紅い稲妻」
- 1971「好き!すき!!魔女先生」
- 1972「サンダーマスク(主題歌)」
- 1972「緊急指令10-4・10-10」
- 1972「マドモアゼル通り」
- 1972「諸国物語 笛吹童子」
- 1974「家なき子(実写)」
- 1974「純愛山河 愛と誠」
- 1976「ザ・カゲスター」
- 1979「花嫁は16歳」
- 1980「男!あばれはっちゃく」
- 1980「天を走れ!!愛馬マックス」(スペシャル)
- 1982「熱血あばれはっちゃく」
- 1983「痛快あばれはっちゃく」
- 1983「くたばれかあちゃん!」
- 1983「怪人二十面相と少年探偵団」(劇伴)
- 1984「怪人二十面相と少年探偵団 II」(劇伴)
- 1983「逆転あばれはっちゃく」
●テレビアニメ
- 1964「ゼロ戦はやと」
- 1968-71「巨人の星」
- 1969-71「アタックNo.1 」
- 1970「魔法のマコちゃん」
- 1971「天才バカボン」
- 1971「原始少年リュウ」
- 1972「赤胴鈴之助」
- 1972「ミュンヘンへの道」
- 1973「キューティーハニー」
- 1973「荒野の少年イサム」
- 1974「アルプスの少女ハイジ」
- 1974「魔女っ子メグちゃん」
- 1975「フランダースの犬」
- 1975「元祖天才バカボン」
- 1975「少年徳川家康」
- 1976-79「キャンディ・キャンディ」
- 1977「あらいぐまラスカル」
- 1977「新・巨人の星」
- 1977「家なき子」
- 1977「無敵超人ザンボット3」
- 1978「ペリーヌ物語」
- 1978「魔女っ子チックル」
- 1978「無敵鋼人ダイターン3」
- 1979「機動戦士ガンダム」
- 1977「新・巨人の星II」
- 1980「森の陽気な仲間たち ベルフィーとリルビット」
- 1980「坊っちゃん」(スペシャル)
- 1980「二十四の瞳」(スペシャル)
- 1981「若草の四姉妹」
- 1981「荒野の呼び声…吠えろバック」(スペシャル)
- 1981「ミスタージャイアンツ 栄光の背番号3」(スペシャル)
- 1981「こども名作劇場」
- 1983「ミームいろいろ夢の旅」
- 1983「レディ・ジョージィ」
- 1983「ピュア島の仲間たち」
- 1984「オヨネコぶーにゃん」
- 1984「森のトントたち」
- 1985「三国志(スペシャル)」
- 1986「三国志II 天翔ける英雄たち」(スペシャル)
●劇場用映画
- 1957「池田大助捕物帖 血染の白矢」
- 1958「陽気な仲間」
- 1958「流れ星十字打ち」
- 1958「白蛇小町」
- 1959「青蛇風呂」
- 1959「からくり雛人形」
- 1960「虹之介乱れ刃」
- 1960「東洋の旅」
- 1960「甲賀の密使」
- 1960「競艶八剣殿」
- 1960「わんぱく公子」
- 1961「うっちゃり姫君」
- 1966「新・事件記者 大都会の罠」
- 1966「新・事件記者 殺意の丘」
- 1966「土方歳三 燃えよ剣」
- 1966「海に生きる」
- 1966「新書 忍びの者」
- 1967「若親分を消せ」
- 1967「花札渡世」
- 1967「砂糖菓子が壊れるとき」
- 1967「男涙の波門状」
- 1967「眠狂四郎無頼控 魔性の肌」
- 1967「兄弟仁義 関東命知らず」
- 1967「監獄への招待」
- 1967「脱獄者」
- 1967「懲役十八年 仮出獄」
- 1967「残侠の盃」
- 1967「若親分千両肌」
- 1968「眠狂四郎女地獄」
- 1968「秘録おんな牢」
- 1968「ひとり狼」
- 1968「サラブレッド」
- 1968「講道館破門状」
- 1968「続やくざ坊主」
- 1968「関東女やくざ」
- 1968「緋牡丹博徒」
- 1968「尼くずれ」
- 1968「女めくら 花と牙」
- 1968「ごろつき」
- 1968「ある女子高校医の記録 初体験」
- 1968「横紙破りの前科者」
- 1968「続・秘録おんな牢」
- 1968「緋牡丹博徒 一宿一飯」
- 1968「博徒列伝」
- 1969「眠狂四郎悪女狩り」
- 1969「緋牡丹博徒 花札勝負」
- 1969「妾二十一人 ど助平一代」
- 1969「殺し屋をバラせ」
- 1969「用心棒兇状旅」
- 1969「秘剣破り」
- 1969「女親分 喧嘩渡世」
- 1969「めくらのお市 みだれ笠」
- 1969「関東おんなド根性」
- 1969「眠狂四郎卍斬り」
- 1970「極道釜ケ崎に帰る」
- 1970「透明剣士」
- 1970「おんな極悪帖」
- 1970「めくらのお市 命貰います」
- 1970「博奕打ち 流れ者」
- 1970「(喜)あゝ独身」
- 1970「遊侠列伝」
- 1970「海底3万マイル」(アニメーション)
- 1970「あしたのジョー」(実写)
- 1970「ママいつまでも生きてね」
- 1970「喧嘩屋一代 でっかい奴」
- 1971「女渡世人」
- 1971「日本女侠伝 血斗乱れ花」
- 1971「暁の挑戦」
- 1971「ごろつき無宿」
- 1971「女渡世人 おたの申します」
- 1971「遊び」
- 1971「片足のエース」
- 1971「海兵四号生徒」
- 1972「望郷子守唄」
- 1972「無宿人御子神の丈吉 牙は引き裂いた」
- 1972「無宿人御子神の丈吉 川風に過去は流れた」
- 1973「反逆の報酬」
- 1973「コキブリ刑事」
- 1973「無宿人御子神の丈吉 黄昏に閃光が飛んだ」
- 1973「ザ・ゴキブリ」
- 1973「グァム島珍道中」
- 1974「きかんしゃやえもん」(アニメーション)
- 1974「ザ・カラテ」
- 1975「雪夫人繪圖」
- 1975「玉割り人ゆき」
- 1975「五月みどりのかまきり夫人の告白」
- 1976「玉割り人ゆき 西の廓夕月楼」
- 1976「戦後猟奇犯罪史」
- 1976「徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑」
- 1976「広島仁義 人質奪回作戦」
- 1976「俺の選んだ女」
- 1977「毒婦お伝と首切り浅」
- 1977「ピラニア軍団 ダボシャツの天」
- 1977「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」
- 1977「らしゃめん」
- 1978「愛の嵐の中で」
- 1979「激突!格闘技 四角いジャングル」
- 1980「最強最後のカラテ」
- 1980「パンダの世界 ホアンホアンと仲間たち」
- 1980「機動戦士ガンダム」
- 1980「機動戦士ガンダムII 哀・戦士」
- 1981「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)」
- 1985「あっこちゃんの日記」
- 1988「ぼくと仔犬のわんぱく大事件」
- 1988「死線を越えて 賀川豊彦物語」
●その他の作品
- 1971-1975「ママとあそぼうピンポンパン」(挿入歌)
- 1973「とべとべパンポロリン」(挿入歌)
- 1975「ロンパールーム」(挿入歌)
- 1986「かばのポトマス」(OVA)
関連サイト:
コメント:
渡辺岳夫の音楽に魅せられたのは1977年。「家なき子」と「ザンボット3」の音楽がきっかけでした。
以後、岳夫節を追いかけているのですが、渡辺岳夫の曲もさることながら、渡辺岳夫という人物自体にも魅力を感じているのですね。
氏の仕事の全貌を紹介する記念館を作ることが夢。 (猫)'99/1/19
渡辺 俊幸(わたなべ・としゆき)
作曲家。
1955年生。愛知県名古屋市出身。青山学院大学卒。米バークレー音楽院卒。
父は、作曲家・渡辺宙明。
大学入学と同時に、フォーク・グループ「赤い鳥」のドラマーとしてプロ活動を始める。
さだまさしのいたフォーク・グループ「グレープ」のサポート・ミュージシャンを経て、さだまさしのアレンジャー及び、音楽プロデューサーとして活躍。さだ作品の編曲者として氏の名前を記憶する人も多い。
'79年より渡米し、米バークリー音楽院にてクラシック、ジャズの作編曲技法と指揮法を学ぶ。また、アルバート・ハリスに師事し、ハリウッドスタイルのオーケストレーションと映画音楽の作曲技法を学ぶ。
帰国後、テレビドラマ、アニメーション、映画の音楽を多数担当。現在、売れっ子の劇伴作曲家のひとり。
アニメーション作品は「銀河漂流バイファム('83)」から。父・渡辺宙明が得意にしたロボットアニメのジャンルもいくつか手がけているが、作風はまったく違う。
どちらかというと、弦や木管を使った美しいオーケストレーションが氏の持ち味。ドラマでも、ファミリーものやラブストーリィでしっとりした曲を聞かせてくれることが多い。「北の国から」の近作では、さだまさしとともに劇伴を担当している。
かと思うと、「モスラ('96)」では本格特撮映画らしい重厚な響きを聞かせてくれた。映画音楽の技法を本式に学んだだけあって、映画音楽らしい音楽を書ける貴重な作曲家である。 '99/1/17
主な作品
基本的に劇伴のみ。●テレビドラマ
- 1984「オレゴンから愛」
- 1985「たけしくんハイ!」
- 1986「あいつと私」
- 1986「続・たけしくんハイ!」
- 1988「ノン姉ちゃんの夢」
- 1990「家族の値段」
- 1991「七人の女弁護士」
- 1991「のんのんばあとオレ」
- 1993「コラ!なんばしよっとII」
- 1994「かりん」
- 1994「禁断の果実」
- 1994「なんだか人が恋しくて」
- 1995「君を想うより君に逢いたい」
- 1996「大地の子」
- 1996「忠臣蔵」
- 1997「毛利元就」
- 1997「失楽園」
- 1998「隠密奉行朝比奈」
- 1998「あした天気に」
- 1999「いちご同盟」
- 1999「リング 〜最終章」
●テレビアニメ
- 1983「銀河漂流バイファム」
- 1986「生徒諸君!」(スペシャル)
- 1985「昭和アホ草紙 あかぬけ一番」
- 1987「機甲戦記ドラグナー」(前期)
- 1989「アイドル伝説えり子」
- 1989「ピーターパンの冒険」
- 1986「ボスコアドベンチャー」
- 1986「青い海のエルフィ」
- 1990「三つ目がとおる」 (スペシャル)
- 1991「太陽の勇者ファイバード」
- 1997「銀河漂流バイファム13」
- 1998「デビルマンレディー」
●劇場用映画
- 1979「関白宣言」
- 1981「長江」
- 1983「ふしぎな國 日本」
- 1983「細雪」
- 1985[菩提樹の丘」
- 1987「次郎物語」
- 1987「ゴルフ夜明け前」
- 1988「妖女伝説'88」
- 1989「マイフェニックス」
- 1991「本気!」
- 1992「一杯のかけそば」
- 1992「勝利者たち」
- 1992「私を抱いてそしてキスして」
- 1993「紅蓮花」
- 1994「レッスン」
- 1996「モスラ(新)」
- 1997「栄光へのシュプール -猪谷千春物語-
- 1997「モスラ2 海底の大決戦」
- 1998「モスラ3 キングギドラ来襲」
●オリジナルビデオ作品ほか
- 1990「ふくやま劇場」(OVA)
- 1990「修羅之介斬魔剣」(OVA)
- 1993「マグマ大使」(OVA)
- 1994「交響詩 美少女戦士セーラームーンR」(企画盤)
- 19??「スパイラルゾーン」(イメージアルバム )
- 19??「銀河戦国群雄伝ライ」(イメージアルバム)
渡辺 宙明(わたなべ・みちあき)
作曲家。
愛知県名古屋市出身。東京大学文学部心理学科卒。
(生年月日は企業秘密とのこと)
本名は「みちあき」だが、「ちゅうめい」の愛称で親しまれ、自らも筆名として「ちゅうめい」を名乗っている。
同じく、特撮ヒーロー番組、ロボットアニメで多くの名曲を書いた菊池俊輔とともに、ヒーローソングの2大巨匠と称されるひとり。ロボットアニメと等身大特撮ヒーローものの音楽イメージは、渡辺宙明と菊池俊輔が作り上げた。
中学生時代ハーモニカを吹き始めたのがきっかけで音楽に目覚め、映画が好きだったことから、映画音楽の作曲家をめざすようになる。
大学で音楽を学びたかったが、家族の反対で断念、心理学科に進む。しかし、在学中から独学で音楽を学び始め、團伊玖麿、諸井三郎に師事。
卒業後、CBC(中部日本放送)のラジオドラマの劇伴でプロ作曲家としてデビュー。1956年「人形佐七捕物帳 妖艶六死美人」ではじめて念願の映画音楽を手がける。以後、新東宝の映画作品の多くに曲を提供。
新東宝時代の作品では、中川信夫、石井輝夫とのコンビが特撮ファンには馴染み深いところ。中川信夫の代表作「東海道四谷怪談('59)」「地獄('60)」や石井輝夫の「鋼鉄の巨人(スーパージャイアンツ)('57)」が氏の作である。
新東宝以降は、日活、東映、大映などの映画作品を担当。大映の「忍びの者」シリーズは代表作のひとつ。声明を取り入れた音楽で注目された。
60年代からテレビ映画の音楽にも手を染め、'64年「忍者部隊月光」で子ども向けヒーローものをはじめて作曲。「シャドウマン('65)」「ある勇気の記録('66)」「五番目の刑事('69)」などのテレビドラマを手がけたあと、'72年「人造人間キカイダー」に登板。同年の「マジンガーZ」とともに、いよいよ宙明サウンドの炸裂が始まる。
以降、「グレートマジンガー('74)」「鋼鉄ジーグ('75)」などのロボットアクション・アニメや「キカイダー01('73)」「イナズマン('74)」「秘密戦隊ゴレンジャー('75)」などの特撮ヒーローもので、数々の名曲を書き、ファンの熱烈な支持を得る。
ほかに代表作は、「アクマイザー3('75)」「マグネロボ ガ・キーン('76)」「秘密戦隊ゴレンジャー('75)」〜「大戦隊ゴーグルV('82)」の初期戦隊シリーズ、宇宙刑事シリーズ('82〜'84)など。
氏の作品は、宙明節・宙明サウンドと呼ばれ、燃えるヒーローソングの王道として熱狂的なファンを生んでいる。
その作風は、パワフルかつワイルドでありながらソウルフル。ロックやジャズのリズムにブルージーなコード進行で、曲の印象以上に音楽的には難しい要素が詰まっている。一説には、実家が資産家であったために、お金の心配をすることなく、低予算の作品で音楽的な実験を続けていたのだとか。
影響を受けた作曲家は、クインシー・ジョーンズ、ラロ・シフリン、フランシス・レイ(意外)ら。しかし洋楽志向ではなく、日本人の心の琴線に触れるサウンドが魅力。
アクション番組の音楽を書く作曲家は数多いが、宙明作品の、力強い中に哀愁ただようメロディ、情感の高まりを誘う独特の溜め、歌手の声までをも楽器のように使いこなし、伴奏とメロが一体となって突き進むアレンジメントは、余人には真似のできない技である。
しかし、アクション路線ばかりが渡辺宙明の魅力ではない。「好きな楽器はハーモニカ」との言葉に象徴されるように、イタリア映画音楽のような哀愁を帯びた曲調も氏の持ち味のひとつ。「猛と舞のうた(マグネロボ ガ・キーン)」「誓いのバラード(スパイダーマン)」「強さは愛だ(宇宙刑事シャリバン)」など、番組のクロージングを飾った数々の名曲にその魅力があふれている。劇伴にハーモニカをフィーチャーした「野球狂の詩」は自らも好きな作品だとか。
オーディオマニアを自認し、70年代初期から電子楽器を取り入れた音作りを始めている。「大鉄人17('77)」、「バトルフィーバーJ('79)」などは、当時の新しいサウンドを積極的に取り入れて、新境地を示した。80年代には、米バークレー大学留学から返ってきた息子・俊幸氏の持ち帰ったコード進行をさっそく劇伴に応用してみたり、「宇宙刑事シャイダー」の「不思議ソング」では教会音楽の音階を使ってみたりと、常に新しい音を模索している。
シンセサイザーがはじめて日本に入ってきたとき、2台しかなかったうちの1台を買ったのが冨田勲で、もう1台を買ったのが渡辺宙明であったという。「キカイダー」のプロフェッサー・ギルの笛の音は、その日本初のシンセサイザーで作られたもの。
長いキャリアの持ち主だが、その若々しい実験精神が、氏の曲をワンパターンにせず、いつまでもファンに元気を与え続けている理由だろう。
ちなみに、氏はUFO研究家としても(一部で)著名である(オカルト否定派)。
80年代以降は、テレビシリーズの劇伴の仕事が減り、代わって挿入歌作曲、OVA、イメージアルバムなどの仕事が増え始めた。
最近も、「マジンカイザー」「スーパーヒーロー作戦」などで、変わらぬ宙明節を聞かせてくれて、ファンを喜ばせている。'99/1/15 ('00/1/29)
主な作品:
(ほんの一部)●テレビドラマ
- 1959「恋人」
- 1961「東京物語」
- 1962「うず潮」
- 1965「海は満つることなし」
- 1965「シャドウマン」
- 1965「続・アッちゃん」
- 1965「新・アッちゃん」
- 1966「恋人たち」
- 1966「ある勇気の記録」
- 1966「赤い殺意」
- 1967「時間の影」
- 1967「挑戦者 続・ある勇気の記録」
- 1967「すりかえ」
- 1967「さらば夏の光よ」
- 1967「悪妻なれど」
- 1968「裂けた眠り」
- 1968「やどかりの詩」
- 1969「ふたつの花」
- 1969「五番目の刑事」
- 1969「女殺し屋・花笠お竜」
- 1970「竹千代と母」
- 1970「素足の女」
- 1970「ガードドッグ」
- 1970「星から来た女(ひと)」
- 1970「吾が命あり」
- 1971「女の断崖」
- 1972「真昼の月」
- 1973「どっこい大作」
- 1973「おーい太陽っ子」
- 1974「ザ・ボディガード」
- 1976「大非常線」
●特撮テレビ映画
- 1964「忍者部隊月光」
- 1966「新・忍者部隊月光」
- 1972「人造人間キカイダー」
- 1973「キカイダー01」
- 1973「イナズマン」
- 1974「イナズマンF」
- 1975「秘密戦隊ゴレンジャー」
- 1975「アクマイザー3」
- 1976「超神ビビューン」
- 1977「大鉄人17」
- 1977「ジャッカー電撃隊」
- 1978「透明ドリちゃん」
- 1978「スパイダーマン」
- 1979「バトルフィーバーJ」
- 1980「電子戦隊デンジマン」
- 1981「太陽戦隊サンバルカン」
- 1982「大戦隊ゴーグルV」
- 1982「宇宙刑事ギャバン」
- 1983「宇宙刑事シャリバン」
- 1984「宇宙刑事シャイダー」
- 1985「巨獣特捜ジャスピオン」
- 1986「時空戦士スピルバン」
- 1987「仮面ライダーBLACK」(挿入歌)
- 1988「仮面ライダーBLACK RX」(挿入歌)
- 1989「機動刑事ジバン」(劇伴)
- 1992「特捜エクシードラフト」(挿入歌)
- 1993「特捜ロボ ジャンパーソン」(挿入歌)
- 1994「ブルースワット」(挿入歌)
- 1995「重甲ビーファイター」(挿入歌)
- 1995「超力戦隊オーレンジャー」(挿入歌)
- 1997「ビーロボ カブタック」(挿入歌)
●テレビアニメ
- 1972-74「マジンガーZ」
- 1974「グレードマジンガー」
- 1974「昆虫物語 新みなしごハッチ」(主題歌)
- 1975「鋼鉄ジーグ」
- 1976「マグネロボ ガ・キーン」
- 1976「妖怪伝 猫目小僧」
- 1977「合身戦隊メカンダーロボ」
- 1977「おれは鉄兵」
- 1977-79「野球狂の詩」
- 1980「とんでも戦士ムテキング」(主題歌・挿入歌)
- 1981「最強ロボ ダイオージャ」
- 1983「光速電神アルベガス」
- 1984「ビデオ戦士レザリオン」
- 1989「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマーV」(主題歌)
- 1991「ゲッターロボ號」
●劇場用映画
- 1956「人形佐七捕物帖「妖艶六死美人」
- 1957「角帽と女子大三人娘」
- 1957「人形佐七捕物帖 大江戸の丑満時」
- 1957「怪談累が淵」
- 1957「鋼鉄の巨人」(全4作)
- 1957「美男剣競録」
- 1957「ひばりが丘の対決」
- 1957「将軍家光と天下の彦左」
- 1957「人形佐七捕物帖 花嫁殺人魔」
- 1958「毒婦高橋お伝」
- 1958「女体棧橋」
- 1958「天下の副将軍 水戸漫遊記」
- 1958「スター毒殺事件」
- 1958「新日本珍道中西日本の巻」
- 1958「亡霊怪猫屋敷」
- 1958「人喰海女」
- 1958「隠密将軍と喧嘩大名」
- 1958「続隠密将軍と喧嘩大名」
- 1958「白線秘密地帯」
- 1958「続新日本珍道中東日本の巻」
- 1958「ヌードモデル殺人事件」
- 1958「汚れた肉体聖女」
- 1958「女王蜂の怒り」
- 1959「戦場のなでしこ」
- 1959「猛吹雪の死闘」
- 1959「坊ちゃんとワンマン親爺」
- 1959「双竜あばれ雲」
- 1959「闘争の広場」
- 1959「日本ロマンス旅行」
- 1959「東海道四谷怪談」
- 1959「静かなり暁の戦場」
- 1959「素っ裸の年令」
- 1959「偽りの情事」
- 1959「海豹の王」
- 1960「女奴隷船」
- 1960「0線の女狼群」
- 1960「黒線地帯」
- 1960「爆弾を抱く女怪盗」
- 1960「女体渦巻島」
- 1960「香港秘令0号」
- 1960「男が血を見たとき」
- 1960「黄線地帯」
- 1960「怪猫お玉が池」
- 1960「太陽と血と砂」
- 1960「地獄」
- 1960「小女妻 恐るべき十六才」
- 1960「殴り込み艦隊」
- 1960「怒号する巨弾」
- 1961「女王蜂の逆襲」
- 1961「俺が地獄の手品師だ」
- 1961「恋愛ズバリ講座(全3話)」
- 1961「契約結婚」
- 1961「東京のお転婆娘」
- 1961「南郷次郎探偵帳 影なき殺人者」
- 1961「八百万石に挑む男」
- 1961「真昼の誘拐」
- 1962「喜劇 にっぽんのお婆あちゃん」
- 1962「次郎長社長と石松社員 威風堂々」
- 1962「俺が裁くんだ」
- 1962「花の才月」
- 1962「何もかも狂ってやがる」
- 1962「太陽のように明るく」
- 1962「泣くんじゃないぜ」
- 1962「若いふたり」
- 1962「カレーライス」
- 1962「忍びの者」
- 1963「続・忍びの者」
- 1963「美しい暦」
- 1963「新・忍びの者」
- 1964「こんにちは、20歳」
- 1964「二匹の牝犬」
- 1964「忍者部隊月光」
- 1964「あゝ青春の胸の血は」
- 1965「忍びの者 伊賀屋敷」
- 1965「ぼくはどうして涙がでるの」
- 1965「拳銃無宿 脱獄のブルース」
- 1966「太陽が大好き」
- 1966「悪童」
- 1966「五泊六日」
- 1967「博奕打ち 不死身の勝負」
- 1968「妖怪百物語」
- 1968「眠狂四郎 人肌蜘蛛」
- 1968「砂の香り」
- 1969「前科者 縄張荒し」
- 1969「東海道お化け道中」
- 1969「女左膳 濡れ燕片手斬り」
- 1969「笹笛お紋」
- 1969「秘録怪猫伝」
- 1970「沖縄」
- 1971「喜劇 大泥棒」
- 1971「傷だらけの人生」
- 1972「傷だらけの人生 古い奴でござんす」
- 1972「極道罷り通る」
- 1972「黒の奔流」
- 1972「日蔭者」
- 1973「三池監獄 兇悪犯」
- 1974「三代目襲名」
- 1974「ザ・カラテ2」
- 1975「ザ・カラテ3 電光石火」
- 1976「ひとごろし」
●オリジナルビデオほか
- 1985-87「戦え! イクサー1」(OVA:シリーズ全3作)
- 1987「烈空! 学園特捜ヒカルオン!」
- 1987-89「破邪大星 弾劾凰」(OVA:シリーズ全3作)
- 1988-89「レイナ剣狼伝説」(OVA:シリーズ全3作)
- 1991「学園特警デュカリオン」(イメージアルバム)
- 1992「流星機ガクセイバー」(イメージアルバム)
- 1994「吉岡平ワールド」(イメージアルバム)
- 1994「宇宙英雄物語 燃えるマイスタージンガー!」(イメージアルバム)
- 1995「特務戦隊シャインズマン」(イメージアルバム)
- 1997「岸和田博士の科学的愛情」(ドラマCD)
- 1998「マジンカイザー」(ラジオドラマ)
関連サイト:
コメント:
渡辺宙明といえば、無敵のアクション・ヒーロー音楽の王者。
一般には、「宇宙刑事シリーズ」以降、渡辺宙明の名が広く知られるようになりましたが、私・腹巻猫の宙明サウンドへの目覚めは「ジャッカー電撃隊」。そして「バトルフィーバーJ」で完全にノックアウト。
氏のファンは業界やプロ作家の中にも多く、渡辺宙明ご指名で作曲を担当した仕事も数多いのですが、中には過去の作品の焼き直しを依頼したような仕事もあり、その手のものには、一部のロートルファンは食傷気味。新時代の宙明サウンド(劇伴も)が聴けることをファンは待ち望んでいます。
ところで、'98年夏に発売されるはずだった宙明研究本「渡辺宙明の世界」はどうなったのか? (猫)'99/1/15
Copyright (c) haramaki-neko 1998-2014 |