「装甲騎兵ボトムズ TV版総音楽集」構成メモ
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装甲騎兵ボトムズ
TV版総音楽集

構成メモ


 本企画のスタート時には、キングレコードから発売された『ボトムズ』の音楽をすべて収録しようという案がありました。
 すなわち、
 ・TVシリーズ
 ・オリジナル・アルバム「The Music of VOTOMS」
 ・OVA『野望のルーツ』
以上の音楽を1パッケージにまとめようという案です。

 しかし、CD3枚に収めたいという要望がありましたので、すべては無理でした。では、TVシリーズをぎゅっと2枚に詰め込んで、「The Music of VOTOMS」か「野望のルーツ」のどちらかを3枚目に収録できるのではないか? お買い得感からすれば、それもありかもしれません。
 しかし、音楽アルバムとしてはどうでしょう?

 『ボトムズ』の音楽は3回録音されています。それは単に「曲が足りなくなってきたので録り足した」というものではなく、もっと作品の密接に関わる形で作曲されたものです。『ボトムズ』では1クールごとに物語の舞台と作品のトーンを変えていくという構想が、放映前から高橋良輔監督の頭にありました。乾裕樹氏との音楽の打ち合わせの場でもそのことが伝えられ、3回それぞれに、異なるコンセプトで作曲・録音が行われています。たとえば1回目はジャズ・テイストの「ブレードランナー」風、2回目では厚いオケを使った戦争映画風という感じです。
 実際の作品では、2クール、3クールめに入っても前のクールの音楽が使用されていますので、音楽内容がクールごとに異なるわけではありません。そのため、本編使用場面に沿って楽曲を構成すると、録音順が前後して曲並ぶことになることが予想されました。それでは、作曲家・乾裕樹の意図がぼやけてしまう、とわれわれは考えました。
 乾氏は、惜しくも2003年に他界されています。その追悼の意図も込め、このアルバムを単に『ボトムズ』という作品の背景音楽としてではなく、「乾裕樹の音楽」として聴いてもらえるアルバムにしたいと思いました。そのためには、いわゆるサントラ盤風のストーリィを追う構成ではなく、乾さんの作曲意図を生かした、音楽性優先の構成にしたいと考えたのです。

 そんな風に考えて、あらためて放映当時リリースされたアルバムを見ると、曲タイトルも英文だし、物語を再現するよりも音楽アルバムとして聴くことを意識して構成されていることに気付きます。当時のキングレコードの担当ディレクター・大場龍男氏も物故されており、直接アルバムコンセプトを聞くことはできませんでしたが、ライターとして当時構成にあたった中島紳介氏から話をうかがうことができました。中島さんによれば、アルバム構成には乾さんや大場ディレクターの意志も入っているとのこと。それならば、この1stリリースの構成とコンセプトを最大限に生かし、音だけは最新のデジタル技術でブラッシュアップした形で世に出そう、というのが最終的に出た結論でした。

 ですから、今回のアルバムのねらいは「装甲騎兵ボトムズ サントラ盤」というより「乾裕樹作品集」なのです。『ボトムズ』の世界をイメージしつつ、乾裕樹の繰り出すピアノ、シンセ、オーケストラの響きをじっくり味わってほしいと思います。

2005.2.17 腹巻猫)

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