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【お詫び】
2006年2月15日にコロムビアミュージックエンタテインメントより発売されたデジタルリマスター版『機動警察パトレイバー イメージサウンドトラック』Vol.1,Vol.2の解説に誤りがありました。
◎機動警察パトレイバー イメージサウンドトラック Vol.1 INTERFACE (COCX-33527)
◎機動警察パトレイバー イメージサウンドトラック Vol.2 INTERCEPT (COCX-33528)
私の校正を経ずに発売されてしまったため訂正できなかったものです。買っていただいた方にはお詫びいたします。申し訳ありません。以下に訂正を掲載しておきます。
[Vol.1]訂正
(p.7) ■第3話 4億5千万年の罠 【誤】 (Aパート) 射撃訓練をする太田 幻影の果てに-1 1 松井刑事が語る奇妙な事件 4億5千万年の罠-1 1 ノーチラス9800で海底を調べるシゲたち 幻影の果てに-2 1 「東京湾に未知の海中生物」の新聞記事 黒い鼓動-1 1 ↓ 【正】 (Aパート) 射撃訓練をする太田 幻影の果てに-1 1 松井刑事が語る奇妙な事件 4億5千万年の罠-3 1 ノーチラス9800で海底を調べるシゲたち 黒い鼓動-3 1 怪しい影を捉えるシゲたち 幻影の果てに-2 1 「東京湾に未知の海中生物」の新聞記事 黒い鼓動-1 1[Vol.2]訂正
(p.7) ■第6話 二課の一番長い日(後編) (下の解説部分) 【誤】 …この前後編は劇場版第1作のプロトタイプのような作品で、… ↓ 【正】 …この前後編は劇場版第2作のプロトタイプのような作品で、…
また、オリジナルCDの解説書に掲載されていた とまとあき氏による楽曲解説の代わりに新たな解説を付け加える予定でしたが、それも間に合いませんでしたので、以下に掲載しておきます。鑑賞の参考になれば幸いです。
[Vol.1]追加解説
【楽曲解説】
『機動警察パトレイバー』初期OVAの音楽は、いわゆる<溜め録り>ではなく、各話ごとに絵に合わせて作曲する方式が採用された。アルバムではそれらの曲を使用順に並べるのではなく、作品イメージをふくらませるように独自の切り口で再構成している。オリジナルの構成はとまとあき。Vol.1は、OVA1話〜3話の曲を中心にまとめられた。
●序章 Night Stalker
各話アバン・タイトルのナレーションバックに流れる曲。パトレイバーを象徴する曲である。「夜を忍ぶもの」の緊迫と予兆に満ちた曲想は、のちのシリーズでもアレンジを変えて引き継がれている。
●未来派Lovers
笠原弘子が歌う主題歌。作曲・編曲を田中公平が担当している。原作者ゆうきまさみがプロデュースし、リズムパターン案から、歌手選出、歌入れまで意見を出した。ゆうきはオープニングの構成も自ら行い、第1話に関しては、押井守の絵コンテをもとにほぼ全カットにわたってラフスケッチによるレイアウトを起こしている。
●アルフォンス
<アルフォンス>は野明が自分の乗り込むパトレイバーにつけた愛称である。もともとは野明の愛犬の名であることがのちに明かされる。
1曲目は野明のアルフォンスへのあこがれを表現するおだやかな曲。劇中では使用されていない。静かに盛り上がる2曲目は第1話でイングラムがはじめて起動する場面に使用された音楽。3曲目の軽快な曲は、第2話冒頭の野明の夢の中で、新型パトレイバーAV-2が格納庫から飛び立つ場面で使われた。途中から曲調が変化するのは、AV-2が不調でコントロールを失い墜落してしまうためである。
●第2小隊
羽田空港に近い臨海部埋立地に、特車二課の拠点はある。その特車二課のお騒がせチーム第2小隊をイメージしたフュージョン曲。ちょっとさわやかすぎる感もあるが、野明や遊馬、太田ら個性的な面々が寄り集まったチームの、おおらかな雰囲気が感じられる。ピアノの響きが心地よい。
●バビロンの影
メガロシティ東京を覆う犯罪の影とパトレイバー隊の出動をイメージしたブロック。1曲目は第2話で進士がバビロン・プロジェクトの説明をする場面に流れる、いかにも川井憲次らしいミステリー曲。バビロン・プロジェクトとは東京湾入り口に堤防を築き、内部に広大な埋立地を作って新しい都市を建設しようという大プロジェクトである。2曲目は第1話で後藤隊長が野明たちに初出動を命ずるシーンの曲。3曲目も同じく第1話、鶯谷で暴走レイバー“ぴっけるくん”を待ち受けた太田が銃を構える場面で使われた。
●出動〜PATOLABOR
パトレイバーの活躍をイメージして作曲されたアップテンポのナンバー。1曲目は第2話の予告、2曲目は第3話以降の予告に使用された。2曲目は第2話で、野明の乗るアルフォンスが飛行船につかまって空を飛ぶシーンにも使われている。身長8mのパトレイバーが東京のビル街で活躍するアクションは新鮮だった。
●そして,夜明け
第1話のエンディングに使用されたさわやかなナンバー。事件の解決と、平和な夜明けを描写する曲だ。透明感のある明るい曲調にほっとする。
●冷たいくらいが好き
冨永みーなが歌う野明のテーマ。冨永みーなは子役として『それゆけカッチン』や『ウルトラマンレオ』、映画『鯉のいる村』などに出演した経験があり、声優としては『あらいぐまラスカル』のアリス役や『魔法の妖精ペルシャ』のペルシャ役で人気を博していた。泉野明は、ペルシャと並ぶ冨永みーなの当たり役となった。
●Diamond Flight
香貫花クランシーのイメージで書かれたフュージョン曲。第2話で香貫花が横田基地の飛行場に降り立つ初登場シーンに使われた。ラテンパーカッションの疾走感に引き込まれる。フルートの響きが風のようだ。
●4億5千万年の罠
特撮怪獣映画のパロディいっぱいの第3話『4億5千万年の罠』をイメージしたブロック
1曲目は第2話で使用された曲で、野明の夢の中で新型パトレイバーAV-2が秘密兵器よろしく登場する場面で派手に流れた。2曲目は第3話、松井刑事が東京湾で起きる謎の事件について語る場面の曲。鐘を叩くような不思議な音はガムランの響きである。3曲目は第3話に登場するマッドサイエンティスト平田博士が、自らの研究<パンスペルミア説>を紹介するシーンに流れた中近東風の音楽。
●特車隊マーチ
特車隊の活躍を盛り立てる正統派マーチ曲。第3話で謎の生物迎撃のため第2小隊が出動する場面に、本曲をテンポアップしたヴァージョンが使用されている。
●黒い鼓動
第3話使用曲で構成。
1曲目は「東京湾に未知の海中生物」と新聞の見出しがバーンと出る場面の曲。2曲目は謎の生物が東京湾の海底を接近してくる場面のサスペンス曲。3曲目は本編未使用。4曲目は、平田博士の実験室で隕石から取り出されたウィルスが生命へと進化していく場面に使われた。
●幻影の果てに
引き続き第3話で使用された曲。
シャープな1曲目は、冒頭、太田がバルタン星人型の標的を使って射撃訓練をする場面の曲。2曲目はシバと松井が海中探査艇ノーチラス9800に乗り込んで東京湾の海底を調査する場面。激しいアクションから荘重な悲哀曲へと展開する3曲目は、本編のクライマックスから謎の生物が朝日の海の中へと去っていくエンディングに使用された。
●メガロシティ・ポリス
もう1つの香貫花のテーマ。第2話、香貫花が第2小隊に研修隊員として加わるラストシーンからエンディングにかけて使用された。知的でクールな香貫花を演じたのは『機動戦士ガンダム』のセイラ役でファンを魅了した井上瑤。『パトレイバー』も彼女の代表作の1本と言えるだろう。
●INTERFACE
笠原弘子が歌うアイドル・ロック風の1曲。アルバム・プロデューサーのとまとあきは、<『パトレイバー』の夜の部分の主題歌>と記している。野明とアルフォンスのサイバーなつながりを象徴する歌である。作詩・作曲の松宮恭子は、ゆうきまさみ原作のOVA『アッセンブル・インサート』の主題歌でも笠原と組んでいる。笠原と松宮の出会いは、イメージアルバム『優&魅衣』(1987)からで、『パトレイバー』以降、松宮は笠原の5枚のソロ・アルバムをプロデュースした。
[Vol.2]追加解説
【楽曲解説】
イメージサントラVol.2は、OVA第4話から第6話のために書かれた曲を中心に構成されている。構成者はVol.1と同じとまとあき。ジャケット写真のヘッドギアは、怪獣映画の着ぐるみ造型などで活躍する品田冬樹がこのアルバムのために造型した。
●栄光の特車隊
特撮映画好きのスタッフが「本物の日本の特撮マーチを」と希望して作られた曲。作・編曲は『ウルトラセブン』をはじめとするウルトラシリーズや『太陽の牙ダグラム』などのアニメ作品で重厚な音楽を書いた冬木透。4本のホルンが奏でる勇壮なテーマは、まさに「現代の<ウルトラ警備隊の歌>」だ。もちろんアルバムのみの収録で、本編には使われていない。こうした遊びがあるのもイメージ・サウンドトラックならではの楽しみと言える。録音は冬木自身の指揮により、オーケストラの一発録り(楽器ごとに録音するのではなく、すべての楽器が一斉に音を出して録音する方式)で行われたそうである。
●予兆
事件発生をイメージしたブロック。ピアノとギターが怪しいフレーズを刻む1曲目は、第6話で後藤たちが不審なフェリーの写真を調べるシーンに使われた曲。2曲目は第2話、テロに備えて警察が都内を警戒する場面に使用された。終盤のギターがしびれる。
●ゆけよ!イングラム
1曲目と同じく冬木透作・編曲によるイングラムのテーマ。ウルトラシリーズの主題歌風に、明るくヒロイックな曲に仕上がっている。歌う難波克弘は『銀河漂流バイファム』の主役ロディを演じた声優(現在は引退)。『パトレイバー』のもう1人の歌手といえるタイトルの“イングラム”は、警察用レイバー<AV-98>の通称である。
●鋼(くろがね)の矢
レイバーのアクションをイメージしたブロック。1曲目は第6話のクライマックス、野明と山崎が甲斐の船に向けてパトレイバーで出動する場面に使われた決意の音楽。激しいアクションを描写する2曲目は本編では未使用。荒れ狂うギターに血が騒ぐ。
●迫りくる者
押井監督の好みという不気味なミステリー曲で構成。1曲目は第4話、再教育を命じられた第2小隊のメンバーが<レイバーの穴>に向かうシーンに少しだけ使われている。ホラー映画を思わせる2曲目は、同じく第4話、太田が夜の校舎で謎の少女の姿を見るショッキングなシーン。3曲目は第5話で、特車二課を監視するなぞの男たちのようすを後藤隊長がそっとうかがう場面に使用された。
●Lの悲劇
第4話『Lの悲劇』をタイトルに、しっとりした美しい曲を集めたブロック。1曲目は第5話の冒頭、ニ課棟で後藤と南雲が語らう場面に流れたピアノ曲。2曲目は第4話、遊馬が隊員たちに謎の少女の謎解きを語る場面で使用。3曲目は、第4話のエンディング曲として使われたフルートとピアノの曲。
●がんばれ,後藤隊長
オリジナル盤ライナーによれば、川井憲次が「まぬけな曲が書きたい」と言って書き上げた曲だとか。当然、本編では使われていない。
●N・O・A
野明をイメージして作られた、夏の風のような明るい雰囲気の曲である。アルバム用に作られた曲で、本編では使用されなかった。
●暁(あかつき)のマーチ
第1話のエンディングのために作られた曲。エンディング用には2つの異なるタイプの曲が作られ、本編で実際に使われたのは、Vol.1に収録した「そして、夜明け」だった。こちらは、使われなかったもう1つの曲。スネアのリズムにシンセが希望的な旋律を奏でる軽快なマーチである。
●疾走
第5話で反乱軍のレイバーを積んだトレーラーが検問を突破するシーンに使われた曲の別ヴァージョン。フルートのソロが実際に使われたヴァージョンとは異なっている。
●栄光の特車隊〜特車隊のうた
1曲目の「栄光の特車隊」に歌詞をつけた歌。歌うは、難波克弘と素人合唱団<特車隊>の面々。<特車隊>のメンバーは、原作者の伊藤和典、出渕裕と、イラストレーターの開田裕司、造型師の品田冬樹、雑誌編集者・野々口嘉孝と田中一人、そしてアルバムプロデューサーのとまとあきの7人だった。
●冬
第5話、ひそかに会った後藤と南雲が車の中で密談する場面に流れた曲。不安なピアノから、弦のもの哀しいメロディへと展開する。暗い夜空には雪が舞っている。
●あっ軽い人びと
『パトレイバー』の明るい面を象徴するコミカルな曲を集めたブロック。
1曲目は第4話の雑貨屋“なかよし”のシーンのために書かれたが、没になった。2曲目は第6話で、太田たちが警察学校からレイバーを奪っていく場面に使われた大立ち回りの曲である。
●INGRAM
川井憲次が本アルバム用に、漫画版のパトレイバーをイメージして書き下ろしたナンバー。本編には使用されなかった。アニメ版よりもシャープでハイテク感のある近未来のマシンというイメージだ。
●推理
第4話のクライマックス、香貫花がすべての謎を快刀乱麻を断つごとくに解き明かしてみせる場面の曲。ちょっと神秘的な香りがするシリアスな曲だが、本編では脱力のオチが待っている。
●レヴォリューション
第5話と6話の前後編で使用された2曲。
1曲目は第5話で反乱軍のレイバー隊が決起する場面の緊迫感たっぷりの曲。2曲目は第6話のエンディングに使用された。不敵に笑う革命家・甲斐が印象深い。
●二課の一番長い日
平和な年末を過ごしていた第2小隊の隊員たちは、首都の異変を知り、それぞれの思いを胸に東京に向かっていく。第5話のエンディングに流れた曲で、ストリングスの悲壮な旋律が胸に迫る。『パトレイバー』初期OVAの中でも白眉といえる1曲。
●Believe yourself Again
主題歌「未来派Lovers」の歌手・笠原弘子が歌うイメージソング。野明のキャラクターにインスパイアされた、ちょっと大人の雰囲気の曲だ。本曲はアルバムに先駆けてシングル盤が発売され、笠原のファーストシングルとなった。笠原は幼い頃より子役として活動、声優としては『銀河漂流バイファム』のヒロイン・カチュア役で注目された。歌手としても『究極超人あ〜る』イメージアルバムなどに参加。世界名作劇場『ロミオの青い空』の主題歌「空へ…」は多くのファンに支持された。『機動警察パトレイバー』では、劇場版第1作のイメージソング「約束の土地へ」や、TVシリーズのオープニング「コンディション・グリーン〜緊急発進〜』も歌っている。まさに『パトレイバー』の歌姫である。
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