「母をたずねて三千里」構成メモ
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世界名作劇場メモリアル音楽館 母をたずねて三千里

構成メモ

2004.12.22 腹巻猫


○膨大な曲数
 通常1年間のシリーズですと、音楽録音はせいぜい2回、多くても3回ぐらいしか行われないのが普通です。ところが『母をたずねて三千里』の場合、4回の録音が行われています。マルコの旅に合わせて、舞台に応じた音楽が必要だったのでしょう。全部で180曲余り、演奏時間にして3時間40分以上(主題歌・挿入歌を除く)の音楽が残されていました。とうていCD2枚に収めることは不可能で、頭を悩ませた結果、次のような方針を決めました。

  • 未使用曲は原則として省く(それでもCD2枚には収まらない)。
  • 同じ曲の微妙なテンポ違い・楽器編成違いなどは劇中印象的なテイクを採用する。
  • 現在発売中の「ANIMEX1200シリーズ アニメサウンドメモリアル 母をたずねて三千里」(COCC-72089)とは重複しないように選曲する。
  • 「FOREVERシリーズ 母をたずねて三千里」(COCC-10541)と「名作アニメ ミュージックサンプラー」(COCX-30521〜22)収録分については、すでに入手困難になっているので、重複を意識せずに選曲する。

 結果、本アルバムと「アニメサウンドメモリアル」を合わせることで、劇中使用された曲の大部分はカバーできるようになっています。

○劇中歌のマスター
 劇中キャラクターが歌っている「踊り靴の唄」「ケーナを吹く少年(パブロの歌)」などは、アフレコとは別に録音が行われているはずですが、音楽マスターが発見できませんでした。
 これらについてはMEテープに残っているものはMEから、MEにもないものは本編音声から音録りして収録することにしました。音質的には劣りますが、デジタルマスタリングにより可能な限り音質向上を図りましたので、テレビ音声よりは聴き易くなっていると思います。

○収録できなかった曲
 劇中印象的な曲にもかかわらず、マスターにもMEにも音源が残っていない音楽があります。
 たとえば、第21話「ラプラタ川は銀の川」でマルコが川面を眺めている場面の寂しい曲や、第26話「草原へ」の夜明けの場面に流れるダイナミックなオーケストラ曲、第29話「雪が降る」のラストで老ガウチョ・カルロスが弾いているギター曲などです。
 これらは『三千里』のために録音された音楽ではないと思われ、音源と権利上の問題から収録を断念しました。

○聴きどころその1
 なんといっても、初商品化となるBGMの数々です。
 第1話ラストで流れたチェレスタによる「陽気なマルコ」のアレンジ曲や、フォルゴーレ号の水夫ロッキーの吹くハーモニカ、バイアブランカでのマルコとフィオリーナの別れの場面に流れたオーボエの曲、アンデス編のフォルクローレ風音楽のヴァリエーションなどなど。これまで1ファンとして「あの曲が聴きたい」と思っていた曲がフォローできたのは幸せでした。意外にも、ジェノバ編で使われた第1回録音分の曲は大半が初CD化。DISC1にたっぷり収録しました。

○聴きどころその2
 本編で使われた劇中歌が収録できたことですね。
 高畑勲作品の中でもとりわけ歌とドラマとが密接に結びついている『三千里』。劇中歌なしには「三千里音楽集」を名乗ることはできません。  ペッピーノ一座の出し物の歌としてもっともよく使われた「踊り靴の唄」は歌詞の異なる2タイプと、フィオリーナが歌うタイプの計3種類を収録。ほかにもトニオのギターの弾き語りをはじめ、アンドレア・ドリア号の船員マリオ(富山敬)が歌う歌や、アンナ(二階堂有希子)が歌う「かあさんの子守唄」、パブロ(東美江)とマルコ(松尾佳子)の「ケーナを吹く少年」などを収録しました。収録時間の関係で泣く泣く見送った歌もありますが(たとえば移民たちが歌う「サンタルチア」やイタリア料理店〈イタリアの星〉で歌われる歌など)、代表的な歌は収録できました。

○マルコの旅に沿って
 これまでの『三千里』BGM集は、収録時間の関係もあり、マルコの長い旅を思い切り単純化した構成になっています。また、「これはその場面の曲ではないのに」と気になる選曲もあり、疑問が残るものでした。
 今回はCD2枚をたっぷり使い、1枚目はジェノバの日々とマルコの旅立ち〜大西洋へ、2枚目はフォルゴーレ号の赤道越えからアルゼンチンの旅、と大きく色分けをして、数々の名場面を音楽で振り返る構成にしています。『三千里』の熱心なファンの方はそれぞれの場面を思い出しながら、昔見たけれど忘れてしまったという方は「こんな話だったのか」と本編を見直すつもりで、聴いていただければと思います。


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