劇伴コラム

必殺必中・版権稼業

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金に生きるは下品にすぎる…

とはいうものの、版権ビジネスは当たれば一攫千金の魅惑の商売である。

版権とは著作権法にいう「出版権」から出たことばと思うのだが、一般には、アニメやマンガのキャラクターを使用して商品を発売する際にクリアしなければならない、著作権などの権利の総称として使われているようである。商品化権と呼ばれることもある。

版権のしくみはこうである。

キャラクター商品の分野は、出版物、レコード、玩具から、食品、衣類、文房具、家具、自転車など多岐にわたる。
版権を取得していないキャラクター商品は、無版権商品、俗にいう「パチモン」だ。(C)表示がないのでそれとわかる。
もちろん違法なもので、名のあるメーカーが「パチモン」を作るようなことはない(あると社会的信用を失う)。
多くは縁日や駄菓子屋で売られる商品で、キャラクターの名前がなく、よく見るとちょっとデザインが違う、というようなものが多い(問題になったとき、オリジナルだと言い逃れするためであろう)。
しかし、昔のパチモンの中には正規品より出来のよいものもあり、世の中には「パチモン」ばかり集めるという変わったコレクターも存在するらしい。

マニアが無版権で作って売るキャラクターのフィギュアやイラスト本も、本来は当然著作権侵害である(趣味で作る分には問題になりません)。これらは「パチモン」とは呼ばれないようである(流通してないからでしょう)。

日本で版権ビジネスが一般化してきたのは、1970年代ごろからで、それ以前は、版権商品を許可しても、その売り上げが著作権者の収入に結びつくというしくみは確立されていなかった。

版権ビジネスのお手本はアメリカである。
テレビアニメ創世期から、「アトム」「鉄人」「エイトマン」などのキャラクターを使ったお菓子が爆発的に売れており、「ウルトラマン」で火がついた怪獣ブームでも、怪獣のキャラクターを使った商品が社会現象になるほど売れたことから、マンガ・映画業界が、アメリカではすでに一般的だった版権ビジネスに着目したのが始まり、といわれている。

現在の版権契約は、ほとんどが1商品1業者という独占契約になっている。
1商品1業者とは、「ひとつの商品ジャンルについては、1業者(メーカー)にしか版権を承認しない」ということで、たとえば、エヴァンゲリオンのプラモデルの商品化権を○ンダイが取得すると、他社はエヴァのプラモデルを発売することはできない。しかし、完成品フィギュアなら発売できる。これが、版権の「排他的設定」である。
この排他的設定を無視して他社が同種の商品を発売すると、「版権の独占契約に違反した」とクレームをつけられることになる。

この独占契約は永続的なものではなく、契約もしくは法律で定められた期間が有効期間である。そこで、契約が切れたあと、他のメーカーが版権を獲得してしまうこともある。LDやビデオなどが、廃盤になって何年かすると他のメーカーから発売されたりするのがその例。
このとき、うっかりした権利者が、まだ独占期間が残っているにもかかわらず、他社に版権を許可したりすると、上記のようなトラブルが発生してしまうわけである。

テレビマンガのレコードについては、レコード化権ということばが使われるようだが、その内実は版権と同じと思われる。
ただし、レコード化された楽曲は本編で使われたり、放送やイベントで使われたりするため、おもちゃなどの商品と比べて、市場は広い。
また、レコード製作者には、著作権者に準じる権利が生じるため、キャラクターの使用権が喪失しても、記録された楽曲の権利はレコード会社に帰属することになる。

テレビマンガ・レコードの独占契約は、70年頃からで、それまでは、複数のメーカーから、同じ番組のレコードが同時に発売されることも珍しくなかった。
いわゆる、「各社競作」というやつである。
現在では考えられないことだが、レコード会社が音源を独占していなくて、同じ音源で複数メーカーからレコードが発売されることもあったのである。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「巨人の星」「アタックNo.1」「タイガーマスク」などが確認されている。
(このあたりのことは、原盤権の話題として別に取り上げるつもりです。)

ちなみに、レコードとソノシートは別の区分の商品で、'80年代ごろまで別々の会社から同時に発売されていたり、雑誌のおまけについてきたりするのはそのため(ソノシートは出版物の一種らしい)。

版権ビジネスは版権を取得するところから始まる。

日本で版権の承認に厳しいのが有名なのは「サ○エさん」などの長谷川町子作品(もはや名前を載せることもできないほど厳しい…うそ)、外国では、ミッキーマウスのディズニーである。
むやみに版権を許可しないという方針らしい。

余談であるが、テレビやラジオでの放送は版権とは別の権利になる。インターネットにおける公開も放送の一種と解釈されているため、同じ原則が採用されると考えられる。なにかというと、公開し続ける限り、使用料を支払い続けなければならないということなのです。

人気キャラターの版権を取得することができれば、メーカーは次々と商品を開発して、莫大な利益を得ることも夢ではない。セーラームーンやエヴァンゲリオンの例を思い起こせば、その価値がわかるでしょ。 そのため、メーカー各社は、当たりそうなキャラクターの版権取得のためにしのぎを削っている。
しかし、キャラクターものが当たるか当たらないか、これは、ほんとーに神様でもなければわからないこと。大金を投じて版権を取得した商品が売れなくて大損したり、ぜんぜんマークしてなかったキャラクターが大ブレイクしたりと、キャラクタービジネスというのは先が読めない世界なのだ。

とかくこの世は一天地六…。

いや、サイコロをひと押しするのは、われわれなんですけど。

'98/4/2

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