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伊集加代子

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NEW REREASE!



プロフィール

伊集加代子(いしゅう・かよこ)

歌手。
1937年5月20日生。東京都世田谷区出身。東邦女子音楽短期大学声楽科卒。

短大ではクラシックを学んだが、ポピュラー音楽が好きで、卒業後、水島早苗(※)のもとでジャズを学び始める。水島早苗ボーカル研究所で代稽古をする傍ら、先生のステージでコーラスをつとめた。この頃から、スタジオミュージシャンとして活動を始め、CMソングなどを歌うようになる。
'65年から岡崎宏志らのジャズ・コーラスグループ「フォー・シンガーズ」に参加。進駐軍やテレビなどで歌いアルバムも発表。'67年まで活動を続けた。
解散後、コーラスグループ「シンガーズ・スリー」を結成する。バックコーラスとして、数々の歌手のレコーディングやステージに参加し、いしだあゆみや南沙織、郷ひろみなど、'70年代歌謡曲の数々をバックで支えた。また、グループやソロで、CMソングやテレビ番組のテーマ曲などを多数歌っている。
伊集加代子の名は知らなくとも、彼女の声は誰もが聞いたことがあるという大ベテラン。

いっしょに仕事をしたアーチストは、山下達郎、さだまさし、大滝詠一、アリス、矢沢永吉ら。最近では、ピカート・ファイブやオリジナル・ラヴとも共演してファンを増やしているとか。
声楽科出身で水島早苗門下という実力派だけに、その豊かな声量、音域の広さ、そして表現力の確かさで、ミュージシャンに絶大の信頼を置かれている人である。

CMソング歌手としては、一時は月に100本近くを吹き込んだという売れっ子で、歌ったCMソングは6000曲を超す(というのは20年前の数字だから、もう7000〜8000曲は超えているかもしれない)。有名なところでは、「違いのわかる男の…」のフレーズが流行語になったネスカフェ・ゴールドブレンドの「ダバダ〜」というスキャットが彼女。
70年代テレビ世代には、あの忘れられぬ「シャバダバ シャバダバ」のスキャットの「11PM」のテーマといえばピンと来るはず。
もちろん、アニメファンなら「アルプスの少女ハイジ」の主題歌の歌手として知らぬ者はない。

'89年、ビクターから、大人向けのソロアルバムをリリース。ネスカフェのスキャットを収録したセカンド・アルバムも発売された。


水島早苗(1909-1978)
ジャズ歌手。日本のジャズボーカルの先駆者。教え子には、佐良直美、上條恒彦、金子晴美らがいる。山下毅雄「悪魔くん」('66)のオープニングタイトルを歌ってます。


その魅力

伊集加代子を語る場合、彼女のソロ歌手としての顔、スキャットの名手としての顔、シンガーズ・スリーとしての活動を含むバックコーラスとしての顔、の3つに触れなければなりません。

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ソロ歌手としては、アニメソング「バン・ボ・ボン」「おしえて」がすぐに浮かびます。
しかし実は、彼女の声は、子ども向けキャラクター番組の主題歌には、あまり向いていません。
無意味を承知で、歌手を大人声、子ども声に分類すると、伊集加代子は大人声の人。同じアニメソングでも、大杉久美子や堀江美都子が歌うと、キャラクターのうた、という感じに、また大人声でも、ペギー葉山や芹洋子なんかだとお母さんのうた、という感じになるのですが、伊集加代子の場合、(CMソングが多いためか)イメージソング的な印象になります。

伊集加代子は、大人の歌手。その歌は、媚びや過剰な情感を払い落とした、タイトでしかもナチュラル、ときにジャジー、アイドル的な華はありませんが、安定感のあるプロの歌です。70年代の子ども番組の歌には「うますぎ」。
(助け人注:なんだこの文章は。何を言ってるのかわからん!)
(すいません)
ソロでの主題歌がほとんどないのは、器用すぎるがゆえの無個性の個性が敬遠されたものかもしれません。あるいは、CMやコーラスの仕事が忙しすぎたのかも。
アニメでは、器用さを生かしてのコミカルな歌もあり、そちらの方が彼女の個性が出ています。

しかし実力派ゆえに、難しい歌がまわってくることがあり、「おしえて」も、キーの高さと、現地録音したヨーデルとのバランスも考慮して、彼女でなければ歌いこなせない、ということでの抜擢と思われます。

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次にスキャット。
これはもう、この人の右に出る者はないという名人。大人声の魅力が生かされます。大人の声といっても、甘い声や色っぽい声というのではなく、空気のように自然に演奏に溶け込むナチュラルな歌声、これが彼女の魅力です。

たとえば、有名なネスカフェ・ゴールドブレンドのスキャット。コーヒーの湯気が立ちのぼる映像そのままに、自然に部屋の中に漂って、生身の人の声であることを忘れてしまいます。この透明さが彼女の個性で、映像やオケと拮抗せず、まるで「気がつくと、そばにそっとよりそっている」恋人のよう(ステキ(^-^))。
(助け人注:またわけのわからん表現を…)
このネスカフェ・ゴールドブレンドの曲は、いまでも流れています。

また、ジャズ・ボーカル出身の実力が発揮されたのは、山下毅雄作品でのスキャットの数々で、「旧ルパン」での「♪ルンルンルン ルパン…」などのアドリブっぽい歌唱や、一転、フランス映画のような大人のムードを演出する「ダ、ダバダ ダバダ ダバダ〜」というスキャットが、それまでのアニメ作品にない、しゃれた雰囲気を作り上げました。

そして、いまや日本のモンド・ミュージックの元祖として、渋谷系のファンにまで人気が出た「プレイガール」。「プレイガール」といっても、いまの若いモンは見たことあるまいが、ま、あえて見るほどの番組じゃないけど、山下毅雄の音楽はめちゃくちゃおしゃれ!
この「プレイガール」では、山下毅雄お得意のジャズタッチの曲やラテンっぽい曲がふんだん使われ、伊集加代子のジャジーなボーカルがたっぷり楽しめます。山下サウンドの特徴である即興演奏の劇伴では、スキャットも変幻自在。ときにエキゾチック、ときにセクシー、それでいて下品にならないところが彼女のステキなところ。VAPさん、「黄金の七人」みたいに、アナログ盤でもサントラ出してください!(やっぱりこういう曲はアナログ盤で聞かないとね)

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そして、バックコーラス。
あまり評価されることのないパートですが、ロックから演歌までこなすオールラウンド・プレイヤー。並みの歌手よりよほど歌がうまいだけに、へたな歌手でも彼女のバックコーラスで聞きやすくなってしまうという(歌手にとっては)反則技の人でもあります。

伊集さんのことばによれば、シンガーズ・スリーの個性は、きっちりまとまったハーモニーではなく、3人がそれぞれ歌っているようなところ、なのだそうです。そう言われてみると、シンガーズ・スリーのコーラスは、おとなしくまとまったコーラスではなく、いい意味でアバウト、ブラック系ボーカルグループのようなドゥビドゥビ感がありますね。
譜面がない即興演奏のステージやレコーディングを数多くこなしたグループだからこその持ち味でしょう。

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器用な人だけに、じっくり聞かせる録音が少ないのが残念ですが、初のソロアルバム「MY TRIBUTE」('89)では、モダン・ゴスペルの旗主アンドレア・クロウチの作品をみごとに歌いきっています。まだまだ活躍してほしい人です。


主な映像音楽作品

主題歌、副主題歌を歌った作品としては、「アタックNo.1('69-'71)」「アルプスの少女ハイジ('74)」、シンガーズ・スリーとして、「魔法使いチャッピー('72)」「ワンサくん('73)」「水もれ甲介('74)」など。
バラエティ番組のテーマ曲で「11PM('65-'90)」「クイズ・タイムショック('69-'86)」なども。
主題歌のバックコーラスをつとめた作品は多数(ディスコグラフィ参照)。

「大岡越前('70-)」「(旧)ルパン三世('71)」「プレイガール('69-'74)」「時間ですよ('70-'73)」「ガンバの冒険('75)」など、70年代の山下毅雄サウンドのスキャットは、ほとんど彼女。先生の水島早苗が「悪魔くん」など山下毅雄とよく仕事をしていたことからの縁です。
'85年に公演された「山下毅雄・作曲家生活30周年記念コンサート」でも、シンガーズ・スリーとしてコーラスをつとめていました(と書いてから、当時放送されたコンサートの録画を探したんですが、見つかりません。確認できた方は教えてください)。

山下毅雄に代わって大野雄二が登板した「(新)ルパン三世」にも、旧シリーズに引き続いて参加。テーマ曲の「ルパン・ザ・サ〜〜ド」というコーラスをはじめ、音の面からルパンの雰囲気を引き継ぐ橋渡し役となりました。

また、クレジットはされていませんが、「大空魔竜ガイキング('76)」のエンディング「星空のガイキング」で聞かれるスキャット(ア〜♪という)も伊集加代子です。

「銀河鉄道999」の劇伴(テレビ('78-'81)、劇場版('79)とも)でもスキャットを担当。特に劇場版クライマックスでの「シェルブールの雨傘」を思わせる美しい歌声は、滅びのはかなさ、哀感を伝える全編の白眉で、強烈な印象を残しました。

アニメファンには、70年代後半のアニメ音楽に見事な色彩を与えた、川島和子(上叢子)と並ぶスキャットの2大女王として知られています。


ディスコグラフィ

名前の出ないことが多いので、正確な作品リストを作るのは困難ですが、レコード化された作品で、伊集加代子、または、シンガーズスリーの名が確認できるものを上げてみました。

(リスト作成協力:助け人やまとあきら)
テレビ・映画のうた
CM・カバー・オリジナル
劇伴
オリジナルアルバム


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