1998年3月

環境庁長官 大木浩様

ダイオキシン類に関わる総量規制及び土壌環境基準設定についての要望書

グリーンクラブ21 大河原豊
中富の環境を守る会 鈴木宗五
きれいな空気をとりもどす会 小谷栄子
環境保全条例研究会 平林美枝子
中新井の環境を考える会 前田俊宣

 昨年の大気汚染防止法施行令改正において、ダイオキシン類は「指定物質」に指定され、廃棄物焼却炉等各施設における排出基準値が設定されました。また、大気環境濃度指針値としては当面、0.8pgTEQ/G以下とすることが示され、ダイオキシン対策がようやくスタートすることとなりました。健康影響を未然に防止するという観点に立って今後とも着実に対策を実施していかれることを期待しております。

 埼玉県所沢周辺では、なんらダイオキシン対策をとらない焼却施設が50近くも密集して立地しており、これらの施設の焼却能力規模を合計すると1日約500t(大気汚染防止法届け出による)にのぼります。これまで行われた市や県の調査によると、所沢市のダイオキシン類大気環境濃度は全ての測定地点で大気環境濃度指針値0.8pgTEQ/Gを上回っています。この様な多くの施設の密集による汚染を改善していくためには個々の施設における排出基準を遵守させるだけでは不十分であり、特定地域におけるダイオキシン排出総量を抑えていかなければ周辺住民の健康と生活環境に対する影響を改善していくことはできません。現在大気汚染防止法においては窒素酸化物および硫黄酸化物についての総量規制が設定されていますが、ダイオキシン類についても、その毒性、や難分解性を考えますと、特定地域における排出ガス総量、各施設のダイオキシン排出濃度をふまえた上で、環境指針値を達成するためのダイオキシン排出総量はどの程度に抑えられるべきかといった、総量規制の導入が求められます。
 また、大気中に放出されたダイオキシン類はやがて、土壌表面に降下し蓄積していきます。所沢市周辺においても摂南大学宮田教授の表層土におけるダイオキシン類調査結果(65〜448pgTEQ/g)等によって、高濃度のダイオキシン類による土壌汚染が明らかになっています。当地域周辺の子供の土壌からのダイオキシン摂取量は、環境庁の示された健康リスク評価指針値5pgTEQ/kg/dayを超える値となる恐れがあると、宮田教授によって指摘されています。土壌調査が行われ、高濃度の汚染が明らかとなっても、土壌環境基準値の設定がなく、原状回復措置はもとより、明確な評価さえできない現状です。特に、ダイオキシン類への感受性が高く土壌摂取量が多い子供を対象とした、健康リスク評価指針値を下回るためのダイオキシン類の土壌環境基準値の早期の設定が求められます。

 以上のことをふまえ、次のことを要望いたします。

1 ダイオキシン類を大気汚染防止法に基く総量規制の「指定ばい煙」とし、工場又は事業所が集合している地域で、排出基準のみによっては大気環境指針値の確保が困難であると認められる地域を「指定地域」とし、緊急対策をとる必要性を明示した、政令の改正を要望いたします。

2 ダイオキシン類に関わる大気環境指針値を大気環境基準値とすることを要望いたします。

3 ダイオキシン類の土壌環境基準値の設定をお願いいたします。特に子供が立ち入ることの多い地域に対する(公園、児童施設等)、土壌摂取量が多い子供を対象とした土壌環境基準値の早期の設定をお願いいたします。

4 汚染の進んでいる地域では、乳幼児期や児童期におけるダイオキシン類摂取量が特に高いことが予想されます。ダイオキシン類に対する感受性が高いと危惧される乳幼児や児童を対象とした、短期間といえども健康リスク評価指針値を上回らないための、ダイオキシン類に関わる環境基準の設定と施策をお願いいたします。


#98年3月12日に要望書を手渡してきました。大気規制課の飯島課長さん以下5名ほどの方が対応して下さいました。向こうの答えは、総量規制は必要ない、土壌基準は今研究段階、乳児期や児童期におけるリスク削減はその通りで、努力したい、という回答でした。今すぐに、というのは全て無理のようです。飯島さんは、今度の規制でダイオキシンは9割削減できる、と豪語していましたが、産廃の排出実態すら把握していないのに、そんなことを言っても、信用できません。それに、9割削減できてもまだ足りないくらい、産廃の排出実態はすごいんじゃないかと心配。


厚生大臣 小泉純一郎様

厚生省生活衛生局長 小野昭雄様

廃棄物処理法に基く関係基準の設定や改正についての要望書

グリーンクラブ21 大河原豊
中富の環境を守る会 鈴木宗五
きれいな空気をとりもどす会 小谷栄子
環境保全条例研究会 平林美枝子
中新井の環境を考える会 前田俊宣

  埼玉県所沢周辺では、なんらダイオキシン対策をとらない産業廃棄物焼却施設が50近くも密集して立地しており、これらの施設の焼却能力規模を合計すると1日約500t(大気汚染防止法届け出による)にのぼります。これまで行われた市や県の調査による所沢市のダイオキシン類大気環境濃度は全ての測定地点で環境庁が示した大気環境濃度指針値0.8pgTEQ/Gを上回っています。また、高濃度のダイオキシン類による土壌汚染 (表層土で65〜448pg/TEQ/g:摂南大宮田先生98年調査結果より)も明らかになっています。これらは当地域の深刻な汚染状況を示しており、抜本的な緊急対策が求められます。

国においては、廃棄物処理基準専門委員会より昨年の10月に報告が出され、その報告に基づいて現在法改正に伴う省令改正の細かいところを調整中であると聞いております。遅れてきた産業廃棄物処理施設に対する規制の強化を期待するとともに、これまでダイオキシン汚染問題に関わってきました市民団体として、今回の改正にぜひ、施設周辺住民としての意見を反映していただき、産業廃棄物処理行政が住民にとって真に信頼できるものとなることを願っております。

 特に、昨年6月の法改正により焼却処理施設及び最終処分場の設置基準に「周辺地域の生活環境の保全について適正な配慮がなされたものであること」が追加されました。生活環境影響調査が取り入れられ、周辺住民及び関係各市町村の意見を聞き、有識者による審査機関が設置の是非について勧告する等の施設設置の手続きが法により明確に示されることとなりました。今後の施設設置に関して、住民に対して真に生活環境保全を保証する仕組みとなることを大いに期待するところです。

 しかしながら、これまでの各県の施設設置に関する事前協議、立地規制等の要綱等による規制の取り組みからも分かるとおり、廃棄物処理行政は地域の実情に則したものでなければならず、自治体がそれぞれの地域の特性に対応できるようであることが必要です。また、法による全国画一の基準となることによって、低位画一となってしまう恐れも否定できず、各自治体が地域の状況に対応して、独自に基準等を付加、強化、選択などができるよう配慮することが求められます。
 所沢周辺の既存施設においても昨年12月施行の政省令にあわせ、焼却施設の改善等が図られることが見込まれます。これら施設の変更に際しては、複数の施設の密集による生活環境への影響を評価した上での慎重な対応が求められます。今回の省令制定において改善のみの変更に対して生活環境影響調査などを義務づけるかどうかの議論があると聞きますが、当地域のように既に多数の施設が密集している地域の住民の健康と生活環境を守るためには、改善のみの変更の際にも、生活環境に対する影響はどの様に変化し、限られた地域においてあるべき施設数、規模はどの様にあるべきかなどについての慎重な考察が必要です。

 以上をふまえ、次のことを要望いたします。

1 生活環境影響調査について

1) 生活環境影響調査及び施設設置基準について、地方自治体がそれぞれの地域の特性に応じて対応できるよう、政省令において、自治体条例もしくは要綱等による独自の基準及び調査項目等の付加ができるよう配慮したものとして下さい。

2) 生活環境影響調査等による許可申請審査を、昨年12月施行の政省令改正に伴う改善のみの変更であったとしても義務づけることとして下さい。もしくは、各自治体が義務づけることを妨げないものとして下さい。

3) 調査項目に土壌調査を追加して下さい。大気由来のダイオキシン類は土壌表層に蓄積するとされており、土壌中ダイオキシン濃度はこれまでその地域が受けてきた汚染の指標となるものと考えられます。

2 情報公開のあり方について

1) 廃棄物処理施設設置許可判断の基準を示す審査機関については、そこに提出される資料等を含め、全て公開で審査を行うこととして下さい。

2) 施設設置後の事業運営及び維持管理に関する情報公開について

 施設において処理する産業廃棄物の排出事業者名、搬入量、廃棄物種類、物性、焼却量、焼却灰・飛灰発生量、その処理方法、委託先、焼却施設についての煤煙測定結果、ダイオキシン濃度測定結果、燃焼温度、co濃度、排ガス処理設備の管理状況、他維持管理データ全ての公開を義務づけて下さい。 

3 廃棄物処理施設から排出されるばいじん、燃え殻について

  ダイオキシン類を高濃度に含むと指摘されているばいじんについては産業廃棄物処理施設から出るものを含め全てを特別管理産業廃棄物として下さい。また、特定有害産業廃棄物に関わる特定有害物質にダイオキシン類を指定し、ダイオキシン類を基準以上に含む燃え殻について特定有害産業廃棄物とし、無害化もしくは浸出しないための処理をするなどの処理基準を明確に示して下さい。

4 排出事業者による委託処理の適正化及び排出事業者の責任の明確化について

1) 廃棄物の内容と、適正な処理方法を明らかにした上で処理業者へ委託すること、最終処分までの処理体制、業者の維持管理データ等により、適正処理が行われた事を確認することを排出事業者に義務づけ、処理業者が違法な処理行為を行った場合、廃棄物を委託した排出事業者についても過失等の責任を問い、原状回復についての応分の責任を負うこととして下さい。

2) 建設業界において、元請け業者が排出事業者であると法において明確に整理し、建設現場で生じる廃棄物の適正処理に関する責任をもつこととして下さい。建設業界においては、重層下請け構造によって、排出事業者が不明確になりがちであり、元請け業者から解体等の処理を請け負った解体業者等が「自社処理」と称して野焼きや不法投棄等の不法行為を行う例が多いことが指摘されています。


#98年3月12日に直接厚生省生活衛生局長室にて要望書を手渡しました。廃棄物対策室長の仁井さんが対応して下さいましたが、ていねいな官僚答弁を聞き入ってしまい(よく聞いていないと何をいっているのかよく分からなかった)、時間が足りませんでした。結局の所、ほとんど、今の所受け入れられる点はない、という答えでした。全く、自分に腹立たしい気がした時間でした。でも、これ以降、官僚にしゃべらせるのはよくない、という事を学び、発言中でも口を挟むべきだ、と以降の交渉に役立つこととなりました。