環境法典ツアー 〜ボトニア鉄道計画を巡って〜
環境法典が施行されたのは1999年。施行後、はじめての大規模プロジェクト計画として、ボトニア鉄道計画が許可審査を受けています。ウーメオ南部の路線計画が、野鳥たちの湿地保護区(EUの「ナチューラ2000」自然保護区)のすぐそばをを通ることから、地元の「野鳥の会」が異議を申し立てています。
13:00 路線計画地(湿地保護区)視察 案内者;アンダーシュ・エーネシェン(ボトニア鉄道鰍フ環境保護コンサルタント)
アンダーシュさんがバスに乗り込んできてくれて、説明開始。ボトニア鉄道計画申請に当たって、環境保護対策(事業による環境影響を最小限にとどめ、代償対策等を提案)を計画、提案したという方です。まず、ボトニア鉄道計画は、皆が鉄道を利用することにより、車の使用が減り環境によい影響を与えるだろう、と言っていました。鉄道が真ん中を通るという広大な畑の脇で停車して視察。所沢の三富新田がすっぽり入るような広大な穀物畑でしたが、これで、1戸の農家分だそう。穀物は既に収穫された後でした。春になるとたくさんの白鳥やヒシクイ、ガンなどが餌を求めてやってくるそうです。ちょうど、鳥の鳴き声がしてラテン語名(学名)シグナル・シグナル「歌う白鳥」と呼ばれる白鳥が上空を飛んできました。
この場所の特徴として重要なのが自然の水場(デルタ)と林、餌場となる畑が組み合わさっているところだそうです。この真ん中を鉄道が通ることによって、鳥たちにどのような影響が出るのでしょうか。。。アンダーシュさんは、この土地の代償として餌場の確保(鳥たちの餌場として農家から立ったままの穀物を買い上げるそうです)、新たな空き地、干潟の確保、等(空港近く)、様々な代償計画があることを説明してくれました。その計画規模は失われる予定の面積の3倍にも至るほどだ、ということでした。
その後、鉄道敷設予定地近くまでバスで移動し、林の中の道を歩いて予定地まで向かいました。林は、まさにくぬぎ山のような状態。広葉樹と針葉樹、低木、高木が程良く混合した林でした。林床には苔が生え、よい林です。この後、バスに乗って道行く景色を眺めていると、その殆どが植林で、針葉樹ばかりの林が続いていたことを考えると、この林はここでは、かなり希少な林なのではないかという気がしました。
ここで、下を見ながら歩いていたら、倒木に頭を痛打! 前を向いて歩かなければなりません。道を挟んだ隣は柵が立てられ、松林になっていて、松ぼっくりから種をとるための林となっているそうです。
現地で鉄道ラインがどこを通るかを説明
湿地環境のために伐採し再生をさせる?
その後、川と計画地を見晴らせる展望台に登りました。かなり急な階段、というか梯子、アンダーシェンさんの提案で作らせたそう。ただし、危険だ、と言っていました。展望台では、大きな三角州と川と計画地が見晴らすことができました。ここら辺から、私のデジカメは寒さに対応できず、凍り始め、写真を撮るのは断念しました。新しいデジカメを買って行くべきだったと後悔。。。
ここに鉄道が建設される
15:00 ボトニア鉄道梶@事業者の環境責任者マリー・ベリュルンドさんのお話
ボトニア鉄道計画 全長190km EUからの補助金も出る事業
環境法典施行以降審議される初めての大型インフラ事業
99年から計画を進めてきて2008年〜2010年に完成予定
これまでの予定総事業費は約132億クローネ
計画の流れ
鉄道庁→調査→立地原則(2章4条)に従いルート案選定→ルート案→実施許可申請(17章に基づく政府の許可) 環境影響評価書 幅300mの位置決定
↓
認可
↓ 不服申立(当事者、市民団体などが不服申立の権利を持つ)
県行政?環境裁判所?への許可申請 幅50m範囲に確定
告示、当事者意見
↓ ←不服申立
確定
許可審査には1年〜3年半かかる
環境裁判所にかかる許可案件は100件ほどある
1件 30〜40万クローネの経費がかかる(11章 水域に関わる事業の許可(環境裁判所で審理される)、12章採掘にかかる許可;土壌、岩盤を採掘する場合には許可が必要 9章 環境に有害な事業の許可 マストをたてる、小屋を造る、廃棄物の運搬、処分他)
配慮に関する一般規定(2章)=事業者の責務規定を遵守
事業者の責任:環境への損害の予防措置(3条)
環境を守るための知識を持つこと(2条)
立地原則(4条);事業を行う土地は損害が最小限となる場所を選ばなければならない
使用する原材料とエネルギーは再利用、リサイクル可能なものを活用しなければならない(5条)
立証責任は事業者側にある(1条)
(正しくやっていることの証明は事業者がしなければならない)
採掘した岩盤や土まで廃棄物とされ、その粉砕、埋立にも許可が必要。
(彼女はこれに不満のようだった。でも、日本では残土は廃棄物とされず、廃棄物が混入したり、残土と称して山積したりと、様々な問題を引き起こしている事を考えると、廃棄物とされている方がよいと思った)
工事中、汚染された地域が出てきたら、届出が必要。洗浄、等排水も許可が必要となる。
事業者の責務としてやっていること
ISO14000、9000 AFS(労働安全規格)を取得
建設前、中、後 魚、底生生物、植物、動物、川の化学的状況 PH、N他 調査
車両、化学物質、有害物質、騒音、振動、事故時緊急対策の整備
蛙の道を造っているスライド、環境によい施工の仕方を説明しているスライドなどがありました。
ユンボの運転手から、すべての人たちが、きちんと環境教育を受けます。彼女が強調していたのは、計画だけ優れていても、施工の段階で配慮がなされなければ、なにもならない、施工する人たちへの環境教育が重要なのだ、と言っていました。この視点は見習うべきだと思いました。日本では計画ばっかり立派にしたがるものね。それが実行されているか否かを監視するシステムには欠けているし!
彼女の感じている環境法典の改良すべき点
長期的=×生物的な安定
計画プロセスにあわせていく必要 締め切りが必要(審査に時間がかかりすぎるのが不満なよう)
環境影響の大小の判断を速く(第6章の環境影響評価書が必要か否かを判断する(4条)ことかな)
審査能力が必要
対等な審査(チェックリストが必要)=審査の状況にばらつきがあるようだった
間違った不服申立に対する迅速な対応?
彼女の言い分 審査に時間がかかる←お金が余計に係る!
申請者としては、環境法典の趣旨は理解できるが、とにかく、審査に時間がかかるし、見通しが立ちにくいし、計画は遅れて行くし、お金が余計に係る、こんなにお金がかかっては、かえって、市民に負担がかかるのではないか、という視点で批判をしていました。環境と目先の経済は、いつも対立しがちです。
Pm4:30 Scandic Plazaホテルへチェックイン
Pm5:10 ウーメオの町 エーサム社事務所へ歩いて行く
Pm5:30 クリスティーナ・ハーンベリュ=リンドグレーンさん、とパー・ハンソンさん ボトニア鉄道計画に異議申し立てをしている市民団体からの話
「野鳥の会」〜ボトニア鉄道プロジェクトに対する活動と役割
野鳥の会の主張
立地原則 最適なところに計画しなければならない。
今回の計画地はこの立地原則にのっとっていない。
計画地はEuのナチューラ2000指令により保護されている区域である。
ウーメオ川河口部の湿地約750haがEU指令により保護されている区域である。
(しかし、EUのナチューラ2000に関する委員会で今回の計画は承認されてしまった。反対をする少数意見もあったようだが)
ウーメオ川下流域河口の三角州は自然保護区に指定されている。
環境法典第7章 29条で、上記のような特別に保護される地域に計画がある場合に事業が許可される場合の規定がある。
以下の要件を満たすことが必要とされる。●代替案がないこと
●十分な代償策がとられること
●公益に必要なものであること
野鳥の会では、
代替案→西ルート案を提示している。この評価が不十分であり、
代替案なし、ではない→許可の要件を満たしていない、と主張している。。。
また、市民参加不十分
2003年6月に政府に許可されたため、環境裁判所に対して異議申し立てを行っている。
環境裁判所では、10月中旬に初めての審理結果が出される予定
環境裁判所について、政府が許可した案件について、異議を出す決定を出すかどうかはあまり期待できない、というような評価をクリスティーナさんがしていたのが印象的でした。また、野鳥の会の活動については、交渉経過のなかで、政府に様々な圧力をかけることができたが、許可の裁決に対して、影響を与えることはできなかった、としていた。
パー・ハンソンさん(野鳥の会ウーメオ代表)
計画申請事業者とそれに異議申し立てをしている市民団体の話を聞いて、計画の問題点をようやく理解。双方が環境法典を使い、一方は計画を進め、一方は異議を申し立て、という構図です。日本と違う点は、計画を進める側の代償計画もかなり配慮されているなあ、と思われる点です。環境への影響をできるだけ小さく、という理念は進める側もかなりきちんと持っていると思われました。日本のおざなりの代替地とは違うように思いましたが、どうかな。。それにしても、市民団体として環境法典を武器にしつつ、活動しているクリスティーナさんは、環境法典の要点をてきぱきと説明してくれて、さすが、と思いました。エーサム社のオフィスは一人一人個室!。でも、以降、役所もどこも、みんな個室だった。それが当たり前なわけね。日本のざこ部屋は彼らにはどう映るのかな?
個室だと、責任感が形成される、資料が貯められる、などの利点がありそうです。ざこ部屋の利点は? 経費削減?
帰り道、たくさんの材木を積んだトレーラーが町を走っていた。林業が盛ん。
19:00〜 ホテルで夕食
お肉料理。何のお肉か忘れた。ポテトが一杯出た。どこのレストランも照明がとても暗くて、ろうそくを使っている。日本の電気をたくさん使った明るさは必要ないことがわかります。食事するにはこのくらいの灯りで十分、と思いました。