2000年1月25日
北田商事行政訴訟に関する記者会見資料

1,行政訴訟に至った経過と理由
 80年頃から、首都圏で発生する産業廃棄物が所沢インター周辺の積み替え保管施設や資材置き場に集まりはじめ、あふれたゴミは野焼きかゴミの山となり、悪臭と大気汚染が周辺住民を苦しめるようになった。
 90年代に入ると、通称「くぬぎ山」周辺でも同様に資材置き場や積み替え保管施設で野焼きが始まり、周辺の住民や農家の苦情対策として、行政指導で小型焼却炉が乱立、深刻な環境汚染が進行するようになった。
 95年に同地を訪れた摂南大学の宮田秀明教授の土壌調査により、ダイオキシン汚染が発覚、事態を心配した市民による広範な住民運動が広がり、98年12月には4000名をこえる申請人による公害調停が起こされた。
 公害調停や市民運動の広がりと国や県、所沢市など行政の取り組み等により、ダイオキシン対策は始まったが、所沢周辺に関しては、あまり改善は進んでいない。
 とりわけ、焼却施設の密集状況と、密集故に生じる監督指導の不十分さは、周辺住民の生活不安と健康不安をいっそう募らせる状況をもたらしつつある。
 98年12月に始まった公害調停だけでは当面は、これらの施設に対する焼却停止による密集状況解消を期待することが無理とわかり、ここに個別事業に対しては更新手続きの更新取り消しを求める行政訴訟により、所沢周辺の環境改善を目指すことになったもの。

2,当事者と請求の趣旨
 原告・・・北田商事株式会社(所沢市中富の産業廃棄物処理施設)周辺に居住する住民及び農業者計24名
 被告・・・埼玉県知事
 請求の趣旨・・・埼玉県が平成11年10月27付けでだした、北田商事株式会社に対する産業廃棄物処分業と特別管理産業廃棄物処分業の更新許可処分の取り消しを求めるもの。 
2,訴えの柱
(1)、北田商事の焼却施設は処理能力が1日5t以上の許可を必要とする施設であるにもかかわらず、その処理能力を5t以下と偽り、許可を受けずに建設されたものである。違法な施設を利用する処分業に対する許可は間違いであり、取り消すべきである。
(2)、北田商事は、過去に施設管理のミスにより、環境基準を越える猛烈な悪臭を周囲に発したことがあり、現在もその悪臭は基本的には解消されていない施設である。また、施設内には建築基準法違反と思われる構築物を建て、施設内を横切る公道(市の道路)を長年にわたって不法に占有するなど、「業務に関し不正または不誠実な行い」をする恐れがあり、許可をだしてはならない施設である。
(3)、所沢市のように焼却炉が密集する地域でさらなる焼却炉の稼働を認めることは、周辺の生活環境を著しく害するものであり、廃棄物処理法14条の法規に反し、違法であり処分は取り消されるべきである。

4,北田商事とのこれまでの経過
(1)96年10〜11月の県の環境調査により、近接する調整池より、鉛740mg/kg、カドミウム1,4mg/kg、砒素4,4mg/kg、総水銀0,38mg/kg、ダイオキシン類110pg/gを検出。
(2)97年4月頃より、半径1kmを越える範囲に及ぶ猛烈な悪臭を発生、住民による施設見学の折り、公道(市道)の占有状態を発見。
(3)97年4月18日、市議と住民が県廃棄物対策課に抗議行動。
(4)97年4月21日、所沢市が道路に関する改善勧告
(5)97年5月21日、所沢市にて、北田商事問題住民説明会(埼玉県主体、所沢市同席、住民80余名参加)
(6)97年6月14日、3地区合同住民説明会(県、市、北田商事同席、住民120余名参加)
(7)97年7月8日、公害防止条例に基づき3地区の環境調査と周辺住民の健康調査請求。
(8)98年7月10日、住民説明会(県、北田商事、住民200余名参加)明確な説明なし。
(9)99年10月15日、北田商事に関して住民説明会と許可を出さないよう要望書提出。
(10)99年10月27日、県、北田商事に産廃処分業と特管処分業の更新許可。
(11)99年11月8日、北田商事の許可処分取り消しの要望書提出。
(12)99年12月1日、北田商事に関する要望書への回答あり、同処分を取り消す意志ないことが判明。北田商事の件につき、操業阻止のための司法的手続きの検討開始。

5,北田商事(株)の概要 (資料添付)
場所・・・埼玉県所沢市大字中富字月夜野980番及び981番
事業の範囲・・・中間処分、汚泥と廃油を焼却し、発生した熱を利用、(燃え殻、汚泥、動植物残さ、鉱滓、ばいじん)による肥料製造。焼却施設と乾燥施設。他に安定型の保管積み替え施設と汚泥処理施設あり。