産業廃棄物処理施設周辺土壌の高濃度ダイオキシン汚染について


(照会先)さいたま西部・ダイオキシン公害調停をすすめる会
                 事務局代表 前田俊宣 

要点1
入間郡三芳町大字上富で操業する産廃業者(株)クマクラ周辺の土壌を自主測定した
ところ、土壌の環境基準1000pgTEQを大幅に越える5100pgTEQのダイオキ
シンが検出されたこと。

要点2
この事態を深刻に受け止め、埼玉県知事に対して、当該施設の操業停止、従業員等の
健康調査、汚染の原因究明、汚染の原状回復、同様の産廃処理施設の実態調査などを
求める緊急要望書を提出したこと。

産廃施設の汚染は施設内と周辺地域が問題
産業廃棄物処理施設は、それぞれは小規模施設が多く、広域汚染の原因施設としての
影響は少ないかもしれないが、狭い範囲の局地的な汚染では、煙突が低く施設の管理
が不十分で操業が劣悪なものが多く、施設周辺での同社のような高濃度汚染の可能性
が高いこと。これまでのような広域的な一般環境調査では、局地的な汚染を見逃しが
ちなため、よりきめ細かな汚染調査が必要と思われます。

現行の調査方法では見逃してしまう重大汚染
この施設のダイオキシン測定値はいずれも基準値をクリアしており、これまで問題の
ない施設と評価されてきました。にもかかわらず実際には、周辺環境を高濃度に汚染
していることが確認されました。現行のダイオキシン対策である構造基準や維持管理
基準、ダイオキシン測定方法(年1回の業者による自主測定)では、重大な汚染を見
逃してしまうことが分かりました。これまでのダイオキシン対策の調査方法に重大な
抜け道があります。

野菜暴落問題が見過ごしにしてきた重大問題
現在、浦和地裁で係争中の野菜暴落事件の問題については、所沢市周辺の農作物の広
域的な汚染の問題として扱われてしまい、行政機関の安全宣言によって収束していま
す。もっとも警戒すべき施設周辺の狭い地域での高濃度汚染問題が見過ごされたまま
です。野菜問題では安全ではない可能性のあるものまで安全宣言され、安全なものま
でが危険視されたことが問題点です。

公害調停との関連
調停期日も第10回を経過、既に焼却を止めたり止めようとしたりしている業者が全
体の3割近くになっているにもかかわらず、調停がなかなか進まないのは、施設内と
その周辺の汚染実態調査の話が進展しないためです。汚染がないことが確認されれ
ば、焼却を既に止めた業者とは調停を成立させたいと望んでいます。汚染の調査につ
いての認識がかみ合わず困っています。今回の調査結果を、論点整理の重要な根拠と
して、調停進展に役立て、調停を早く進めたいと考えています。

今回のデータの検討をお願いしている専門家
我が国のダイオキシン問題の第1人者とされ、所沢周辺のダイオキシン汚染問題に当
初から関わりのある摂南大学薬学部教授宮田秀明先生に、データをお送りして検討し
ていただいています。必要なら摂南大学薬学部の宮田秀明教授にコメントをお願いし
ます。

優良業者の実態はダイオキシンの汚染の発生源
隣接する産廃業者は、通称「くぬぎ山」に密集する焼却施設のなかでも、優良企業と
みなされ、これまで多くの政府高官が視察に訪れた施設です。業者も行政も優良業者
と評価する施設ですら、環境汚染対策がいかに杜撰であるかはっきりしました。他の
施設も早急に調査すべきです。
<同施設を視察した主な高官の例>@97年7月土屋埼玉県知事 A97年7月鳩山
由紀夫民主党代表 B97年8月当時の小泉厚生大臣 D97年8月当時の石井道子
環境庁長官 E99年3月当時の真鍋環境庁長官 F99年3月菅直人民主党

今後の方向性
(1)当該施設だけによる原状回復が資金的に難しい場合には、同社に廃棄物処理を
委託した排出事業者の責任も検討しています。改正廃棄物処理法では、排出事業者責
任が新しく追加されたので社会的責任を含めて追求しようと考えています。
(2)県に要望した調査が実施されない場合には、市民サイドで調査の実行委員会を
立ち上げ、市民の手による自主調査で汚染が予想される他の地点の調査を進めるしか
ないと考えています。

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私たちの県に対する要望事項の法的根拠

要望事項の法的根拠
ダイオキシン措置法関連
<環境基準>
  土壌の環境基準は1000p-TEQ/g以下であること(7条)、環境基準が達成されて
いない地域にあっては、可及的速やかに達成されるように努めることとされていま
す。また、環境基準が早期に達成されることが見込まれない場合にあっては、必要な
措置を講じ、土壌の汚染に起因する環境影響を防止することが求められています。
<調査実施>
  今回、調査地点における汚染が明らかになりましたが、この汚染の範囲がどの程
度であるかの調査、汚染原因の徹底した調査が必要です。これらの調査については、
都道府県知事による常時監視が義務付けられ(26条)、また、汚染状況の調査のた
めに、立ち入り、土壌の無償集取の権限が与えられています(27条)。
<対策計画>
  汚染された土壌に係る措置として、対策地域の指定及び対策計画の制定などの措
置をとることができることが定められています。対策計画の制定については、住民の
意見を聴くことも規定されています(30条)。また、汚染を防止するための事業の
実施についても計画を定めることができるとされています。
<費用負担>
  費用負担については、事業者によるダイオキシン類の排出とダイオキシン類による土壌の汚
染との因果関係が科学的知見に基づいて明確な場合に、公害防止事業者負担法に基づ
いて、事業者による負担を求めることができるとされています。また、土壌汚染対策
事業に対しての、国の負担補助割合は、100分の55とされています。 

廃棄物処理法関連
<事業者の許可取消などの措置について->
  廃棄物処理法において、様々な維持管理基準が定められており、今回のような著
しい土壌汚染を引き起こした場合、これらの維持管理基準に明らかに違反しています
(施行規則第12条の6)。また、このような異常な事態が生じた場合、直ちに運転
を停止し、流出した産業廃棄物の回収その他の生活環境の保全上必要な措置を講ずる
こと、とされています。(施行規則12条の6(3))また、維持管理基準に違反し
た場合、都道府県知事は、事業者の施設許可及び業の許可を取り消すことができると
されています。
<環境基準>
第7条 政府は、ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁(水底の底質の汚染を含
む)及び土壌の汚染に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護する上
で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。
 環境庁告示第68号
   土壌 1000pg-TEQ/g以下
  第2 達成期間等
   環境基準が達成されていない地域または水域にあっては、可及的速やかに達成
されるように努めることとする。
   土壌の汚染に係る環境基準が早期に達成されることが見込まれない場合にあっ
ては、必要な措置を講じ、土壌の汚染に起因する環境影響を防止することとする。
(都道府県知事等による調査測定)
第26条
都道府県知事は、当該都道府県の区域に係る大気、水質(水底の底質を含む)及び土
壌のダイオキシン類による汚染の状況を常時監視しなければならない。
第27条4項
国の行政機関の長又は都道府県知事は、土壌のダイオキシン類による汚染の状況を調査測
定するため、必要があるときは、その必要の限度において、その職員に土地に立ち入
り、土壌その他の物につき調査測定させ、または調査測定のため必要な最小量に限り
土壌その他の物を無償で集取させることができる。

ダイオキシン類により汚染された土壌に係る措置
(対策地域の指定)
第29条 都道府県知事は、都道府県の区域内においてダイオキシン類による土壌の汚染の
状況が第7条の基準のうち土壌の汚染に関する基準を満たさない地域であって、当該
地域内の土壌のダイオキシン類による汚染の除去等をする必要があるものとして政令で定
める要件に該当するものをダイオキシン類土壌汚染対策地域として指定することができ
る。
(ダイオキシン類土壌汚染対策計画)
第30条 都道府県知事は、対策地域を指定したときは、遅滞なく、ダイオキシン類土壌汚
染対策計画を定めなければならない。
2   対策計画においては、次に掲げる事項のうち必要なものを定めるものとす
る。
 イ ダイオキシン類による土壌の汚染の除去に関する事業の実施に関する事項
ロ その他ダイオキシン類により汚染されている土壌に係る土地の利用などにより人の健
康に係る被害が生ずることを防止するため必要な事業の実施その他必要な措置に関す
る事項
 二、ダイオキシン類による土壌の汚染を防止するための事業の実施に関する事項
3,都道府県知事は、対策計画を定めようとするときは、関係市町村長の意見を聴く
とともに、公聴会を開き、対策地域の住民の意見を聴かなければならない。

 7,対策計画に基づく事業については、公害防止事業費事業者負担法の規定は、事
業者によるダイオキシン類の排出とダイオキシン類による土壌の汚染との因果関係が科学的知見
に基づいて明確な場合に、適用するものとする。
  
<公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律施行令>
ダイオキシン類に係る土壌汚染対策事業に対する国の負担補助割合を、100分の55とする。

廃棄物処理法
維持管理基準(施行規則12条の6)
(3)産業廃棄物が施設から流出する等の異常な事態が生じたときは、直ちに施設の
運転を停止し、流出した産業廃棄物の回収その他の生活環境の保全上必要な措置を講
ずること
(5)産業廃棄物の飛散及び流出並びに悪臭の発散を防止するために必要な措置を講
ずること
(8)施設から排水を放流する場合は、その水質を生活環境保全上の支障が生じない
ものとするとともに、定期的に放流水の水質検査を行うこと
都道府県知事は、許可に係る設置者が、維持管理基準に違反した場合、施設の許可の
取消(第15条の3)、又は業の許可の取消(第14条の3)をすることができると
される