● 子どもたちにきれいな水と土と空気を手渡し、いのちとくらしを守るために

第1号 1999年7月3日発行

◆編集・発行所
さいたま西部・ダイオキシン公害調停をすすめる会
発行人:事務局代表・前田 俊宣
〒359-0041 所沢市中新井5-1-3-201 Tel 042-943-0295
E-mail HZE03164@nifty.ne.jp
URL http://www3.airnet.ne.jp/dioxin/


●ついに第1回調停開始!!
7
17日(土)午後1時集合
(調停開始は1時30分より)

●場所/埼玉県県民健康センター
浦和市仲町3丁目5番1号  TEL 048-824-4801(代表)

*浦和駅から徒歩15分。中浦和駅から徒歩20分。お車での来館はご遠慮下さい。

申請人はだれでも参加できます!多数ご参加ください。
 ◆調停は午後1時30分から開始されますが、集合は1時とします。

*申請人であるかどうかの確認(名簿と照らし合わせ)に時間がかかることが予想されるためお早めにお越し下さい。


◆ぜひ、参加しましょう!
 去年の12月21日に公害調停を申請して以来、7カ月近くが経ちました。本当に長い 間、待たされましたが、6月1日の県に対する要請行動が功を奏したのか、第1回目の日程が決まりました。ついに調停が始まります。
 会場にあふれる程の申請人が参加することによってこれまでの私たちの思いを伝えましょう。1人でも多くの申請人参加をお願いします。


◆待ちに待った調停日…長かった7カ月

今までの経過
 
昨年1998年12月21日、私たちは3415名の申請人の名前を連ねたずっしりと重たい申請書を埼玉県公害審査会に提出しました。
「安全な環境は自ら守ろう」をスローガンに何度も説明会を重ねて準備を進め、多くの住民の賛同を得て、予想以上の大規模な公害調停がスタートしました。当日の報道では、県産業廃棄物協会の鈴木勇吉氏も、業者に対して誠実な対応を指導していきたいと述べ、県の環境部も『誠実な対応をしていきたい』と答えて、問題解決に向けての前進が期待されました

◆2月
 
ところが年が明けても、一向に調停が開かれる様子もなく、審査会の動きもわかりません。
「県はこれまでにない規模の重要な案件なので慎重に対応している」というばかりです。そんな中、全国的な問題となった「野菜騒動」が起こってしまいました。農家は大きな被害を受け、「もう、焼却炉と共存できない」と怒りの声をあげました。

◆4月
 
4月に入って、すすめる会事務局から審査会に対し、早期開催への要望書と調停弁護団から上申書を提出しましたが進展は見られません。ただ、審査会では被申請人である業者47社に調停参加に関する書類を送り、その答弁書を待っているということがわかりました。しかし、その締め切りであるという3月末日をとっくに過ぎているにもかかわらず、「遅れていると思っていない」という答えでした。

◆6月
 
もう、待てない。6月1日、しびれを切らした申請人団数十名が代理人弁護士とともに浦和を訪れ、『埼玉県公害審査会はただちに第1回調停期日を開催せよ』との申入書を手渡しました。当日は、各自思い思いの抗議のアピールやプラカードを持ち、マスコミ各社の取材のカメラのなかで、7月中の開催を強く求めました。しかし対応したのは、審査会の窓口である環境政策課のみ。そこでの野辺課長の話からわかったことは、なんとこの半年間に調停委員会が開かれたのは2回だけだった、という事実でした。現在、公害審査会で取り扱っているのはこの1件だけのはずです。
 去年の「誠実な対応をしていきたい」という言葉はいったい何だったのでしょうか。

◆申請人ついに4千人を突破!!
 
6月29日、第2次申請分として609名の参加申立書を審査会に提出しました。
 これで、今回の調停の申請者は4024名となりました。このような多くの申請人がいるのにもかかわらず、県は調停に関する情報は原則全て非公開として進めようとしていますが、すすめる会では、なるべく多くの方に情報を伝えるためにも、非公開の幅をせばめるよう、審査会に要請していきたいと考えています。
 そしてこの日、今回の調停に際して、あまりにも納得のいかない県の対応についての質問状を知事あてに提出しました。

◆県に対する質問状の内容
質問状の内容は以下の5点について知事の見解を聞くものです。

 すべて、県への信頼性を根本から揺るがす、とても重大で残念な事実です。


●公害調停申請者4024名にいたる!!
さいたま西部・ダイオキシン公害調停のあらまし

●申請人
埼玉県西部地域(所沢・狭山・川越・大井町・三芳町・朝霞・新座・入間など)に居住もしくは通勤・通学していて焼却施設により生活や健康の被害が生じ、またそのおそれがある人


●被申請人
1 くぬぎ山から半径約3km内と所沢インター周辺半径約3km内で廃棄物焼却施設を操業する(していた)47社
2 上記施設の許可権限と監督指導権限を持つ行政当局である埼玉県

●申請人代理人
 実際の調停の場で、今後、私達4000人の申請人の代弁者として業者や県と話し合いを進めてくださる弁護団です。

●調停委員
 埼玉県の公害審査会から3名が選ばれています。審査会の会長でもある弁護士の新井毅俊氏、同じく弁護士の苦田(にがた)文一氏、そして埼玉工業大学工学部教授の内山俊一氏です。


公害調停ってどういうもの?●



私たちが申請した公害調停はどんな仕組みになっていて、今後はどう進んでいくのでしょうか。
 今回の公害調停は、公害紛争処理法に基づいて設けられている「公害紛争処理制度」に則り申請されました。裁判などの司法的解決とは異なり、行政の分野において解決を図る制度です。

・公害紛争処理制度とは
 公害紛争処理制度は、公害紛争を裁判で争った場合、解決までに多くの時間と費用がかかることで被害者に大きな負担がかかり、その救済に問題があったことから生まれた制度です。
 当事者の経済的負担の軽減が図られ、費用も少なくてすみます。ちなみに今回の申請手数料は、印紙代の3800円のみです。
 また、事件を処理する過程で、職権による調査、資料の収集などが積極的に行われることが期待できます。

 公害紛争を処理する機関としては、国に「公害等調整委員会」が総理府の外局として設置され、都道府県には「公害審査会等」があります。
 私たちは埼玉県の公害審査会に調停を申請しました。埼玉県の公害審査会は、10名の委員で構成され、その中の3名が今回のダイオキシン調停の調停委員として決まっています。現在、埼玉県の公害審査会で取り扱っている調停は、この1件だけです。
 今回のような申請人と被申請者の数が非常に多い大規模な調停は、今までに例がありません。
 しかし、調停がスムーズに行われれば、公害紛争について専門的知識を持つ委員により、迅速で適正な解決を図る事が可能なはずです。
 これまで市民が、国や県や市に何回も陳情や要望活動をしても効果の現れなかった問題ですが、実際の当事者(県・焼却業者・住民)が一堂に会して、公の場で話し合いを持つことができるわけです。


焼却炉は今…●

●何も変わっていない
 野菜騒動の後、行政による野菜調査の結果を受けた安全宣言が何度もなされ、「もう、ダイオキシンはいい」、「もうよくなったの?」という声が聞かれます。けれど、実際のところ周辺にある焼却施設の状況は、どうなっているのでしょうか。
 県に提出された、被申請人企業の答弁書を見てみます。被申請人企業47社のうち、8社は答弁書未提出(うち1社は廃炉)です。答弁書を提出した39社のうち、既に廃炉が2社、5社が焼却停止に同意(そのうち2社は既に廃炉)、4社が「わからない」、そして、残り28社は全て、焼却停止には同意できない、としています。このままでいくと、30社以上が、焼却を続ける可能性があるようです。これでは、私たちの地域の焼却炉の集中状況は、殆ど改善されません。
 この春に行われた所沢市の大気中ダイオキシン類濃度調査結果でも、平均0.88TEQpgと、大気環境指針値を超えるところが殆どでした。小学校や保育園で大気環境指針値を超える値が出ていました。事態は何も変わっていないのです。
 ゴミは、受け入れるところへ流れ込みます。相変わらず、ゴミを満載したたくさんのトラックが行き来するのを目にする度、問題が全く解決されていないことに気づかされます。

●県はなぜ許可するのか
 4月の終わり、これまで休止していたくぬぎ山内の解体業者の焼却炉が操業を始めました。休止していた間に積み上げた、たくさんのゴミを盛大に燃やし始める光景が見られました。
 休止していた炉が、法規制に合わせて改善工事を終え、再び操業を始めた一例です。   
 県が許可を下ろせば、すぐにも操業を開始しようと待っている炉もいくつかあります。県は、相変わらず、書類上問題がなければ許可は与えざるを得ない、としており、今後、改善の変更許可や、業の更新許可が下ろされ、これまで休止していた炉が操業を開始する、といったケースが出てくることが予想されます。
 しかし、所沢周辺では、炉の集中立地が問題なのであって、個々の施設を改善すればよい、という問題ではありません。また、これまで、灰を山積みにする、黒煙を出す、等、再三の住民の苦情にも、改善が見られなかった業者に対して、書類上の審査だけで許可を出すことは、住民としてどうしても納得ができません。
 
●多額の融資まで
 さらに、バグフィルター等を取り付け、改善して今後も操業を続けようとする業者に、県が工事費を融資する「彩の国環境創造資金」等の制度もあります。集中立地の改善、という、抜本的対策のないまま、県が改善を指導し、多額の資金を投入して、野焼き同然であった炉を生き残らせる施策に、疑問を抱かざるを得ません。
 県の出す許可が、本当に、正しいのか、私たちの環境を汚染する元凶となっているのではないか、検証する必要があります。

●調停に応じない業者に対して

 すすめる会では答弁書を提出していない8社が調停に応じる気があるのかないのか、の確認をいそぐよう、県に申し入れています。特に、その中でも悪質な業者に対しては、今後、調停以外の差し止め等の法的手段がとれないか、の検討を始めています。


◆所沢に新規の産業廃棄物処理施設「RDF」の計画が!

 所沢の新郷地区に、新たな産廃処理施設の計画があることが明らかになった。5月12日の新聞報道によれば、この業者は所沢インターから約1キロ離れた所に保管積み替え施設を持っていたが、新たに中間処分業を取得する計画で、破砕機(4.8t/day)と減容機(24t/day)を設置したいとしている。昨年5月に県に計画書を提出し、事前協議をすすめてきた。

 ここで云う減容機というのが、RDF施設。廃プラを圧縮・減容し、固形燃料とする。減容段階で、ダイオキシンや環境ホルモンが発生する恐れがあると指摘されている。現に所沢の西部清掃事業所で稼働中のRDF製造機周辺では、頭がくらくらするような化学物質系の悪臭が発生している現状がある。
 また、計画地は市街化調整区域であり、建築物は建てられないため、屋外に設置され、悪臭や騒音、振動などの生活環境に対する影響が懸念される。計画地の南側は閑静な住宅地であり、施設の目の前にはマンションも建設中。
詳しくは「東所沢いのちを守る会」のサイトをご覧下さい。(http://village.infoweb.or.jp/~fwht3701/index.htm)
 
 県の指導要綱によれば、今後、周辺住民に対し説明会を開いた上で住民と公害防止協定を結ぶ形で、住民同意をとりつける必要がある。しかし、破砕機は施設許可対象外のスソ切り施設(許可対象は5t/day以上)、減容機は、廃棄物処理施設に指定されていない。施設許可の際に行われることとなった、生活環境影響調査や許可審査をまぬがれる。ただ、業の許可については、県は、住民同意を大前提としており、住民が同意しない限り、簡単には処分業許可は出ないだろう。
 最近、所沢では、焼却に変わる手段として、RDF施設を作る、という動きが広がりつつある。 RDF施設が、現在、廃棄物処理施設に指定されていない、というのは、大きな問題だ。悪臭や、騒音、化学物質の発生など、環境負荷が高いことが懸念される。焼却銀座からRDF銀座へ、だけは、やめてほしい。


れんさい◆ゴミは、なくせるか◆
山田久美子

たとえ埼玉県から産廃を追い出しても根本的な解決にはなりません。
出口で止める事ばかりが言われていますが、
どうすれば入口でゴミを減らせるのか、市民も本気で考えています。


 廃棄物を効率よく減らすには、減量(リデュース)・再使用(リユース)・再生利用(リサイクル)のいわるゆる3Rに取り組みやすい社会システムをつくることが必要ですが、処理システムだけでなく、製品の製造段階からの取り組みが重要ですし、排出者(排出企業)自身の自覚が不可欠です。
 一口に廃棄物と言ってもいろいろあって、大きく分けると、

 今、私たちを悩ませているのは、産業廃棄物の焼却ですが、特に埼玉県西部のダイオキシン公害の主な原因である建設系廃棄物どのようにして減らせるのか考えてみたいと思います。
 現在、主な排出業者として大手ゼネコンが考えられます。しかし、処理委託の構造が、処理業者の系列会社などへの子受けや孫受けが慣習となっていることが多く、なかなか排出者自身が表面に出てきません。このため排出者として廃棄物の最終処理の責任を問うことが難しくなっています。
 まず、このゴミの流れを透明化することが必須です。たとえば委託された所沢周辺の中間処理業者が不適切な処理をしていることがわかった場合、ただちに排出企業の責任を問えるようなシステムが必要です。また、適正処理の困難な製品については製造業者までさかのぼって責任を問えるような、つまり、リサイクルや処理が容易で最後まで環境に負荷をかけない製品をメーカーが作らねばならない、という法律がないと根本的な解決にはなりません。(つづく)


リレートーク●市民運動の“ひと”●

「きれいな空気をとりもどす会」
小谷栄子さん

 ■美しい平地林に野焼きの火の手が上がり、産廃焼却に反対の声をあげ始めてから約9年、93年10月に「(所沢に)きれいな空気をとりもどす会」を設立してから約6年が経ちました。
 設立時に行政に配った『空気汚染に関する要望書』で訴えた焼却炉の削減とはうらはらに、行政は低利の融資で炉の増加を促していたことも判明しています。全国的、いや世界的にも類例のない焼却炉集中地域を所沢周辺につくりだしたのは行政にほかならないのです。
 今までの歩みを振り返りますと、行政に対しては数の力が大きいと痛感しています。当初、わずか7軒で訴えていた時には、行政は住民でなく完全に業者寄りでした。94年末、全県組織の『ごみ問題さいたまの会』が一緒に県に抗議したとたん、「住民の生の声を聞きましょう」という提案が県からなされました。ついで、95年1月、宮田先生によるダイオキシン調査がなされ、同年末、高濃度ダイオキシン汚染が明らかになり、翌96年初め、『止めよう!ダイオキシン汚染さいたま実行委員会』が発足し、所沢のダイオキシン問題は全国的な広がりをみせるようになったのです。所沢市民も続々と立ち上がり、市・県・国も重い腰を上げるようになったわけですが、実態の根本的な解決には至っていません。4000人の申請人による公害調停こそ、所沢周辺の産廃(主に東京都からのゴミ)焼却を止め、きれいな空気をとりもどすための切り札になるべきでしょう。
 きれいな環境がゴミ焼却でずたずたになり、安心して呼吸もできないような環境に激変するのを体験してきました。子どもたちの未来を思うと、現状を見過ごすわけにはいきません。諦めるわけにもいきません。“継続は力”を信じてつづけていくつもりです。


◆いまお読みいただいている広報紙『きれいな土と空気』は、公害調停の経過と結果を、ダイオキシン公害調停に関心のある方々に広くお伝えすることを目的に、調停の日程や進行にあわせて、発行していく予定です。現在の限られた予算では、郵送による配布を行うことは不可能ですので、申請人による手渡しネットワークの「POST BOX」をできるだけ活用して広報を配布したいと考えています。

◆『きれいな土と空気』は、「すすめる会」のホームページ(http://www3.airnet.ne.jp/dioxin/)にも掲載されています。印刷による広報では間に合わない臨時ニュースや、調停のスケジュールなどを、号外として掲載することも考えていますので、インターネットに加入している方、また身近にインターネットの環境がある方は、ぜひ、ご覧ください。