● 子どもたちにきれいな水と土と空気を手渡し、いのちとくらしを守るために

Internet版第20号 2003年1月13日発行

◆編集・発行所
さいたま西部・ダイオキシン公害調停をすすめる会
発行人:事務局代表・前田 俊宣
〒359-0041 所沢市中新井5-1-3-201 Tel 042-943-0295
E-mail HZE03164@nifty.ne.jp
URL http://www3.airnet.ne.jp/dioxin/

郵便振替00530-0-40224「公害調停をすすめる会」


◆次回 ダイオキシン公害調停 ◆

【第28回】1月22日(水)午後2時〜3時

 於:●場所:浦和商工会議所会館 地下第2会議室

 いよいよ調停も最終段階へ。次回期日にぜひ申請人の皆様の多数のご出席をお願いします。

対象:東洋インキ製造(株)、(株)ビーエフ、(株)不二家、安西建設工業(有)、加藤商事(株)、美山クリーン(有)


◆調停の最終段階の申請人側弁護団と事務局方針を報告する
「申請人会」のお知らせ ◆

1月18日(土)8時から 場所:新所沢東公民館 和室

 調停最終段階に向けての申請人側の方針を報告、討議します。ぜひ多数のご参加をお願いいたします。討議内容は以下の事務局前田からの報告をご一読下さい。


●調停の最終段階の詰めの報告●

すすめる会事務局 前田俊宣

 ついに公害調停が、最終段階を迎えました。12月18日の第27回調停期日で、1月22日の調停期日をもって、公害調停の懸案事項をまとめて処理することになりました。調停が成立可能なところとは調停成立の調印をし、主張に大きな隔たりがあるところとは、調停不成立を確認するということになります。被申請人企業数社と埼玉県とは、若干の微調整で課題を残すかもしれませんが、98年12月から始まった公害調停が、4年間の粘り強い取り組みを経て、ほぼ当初の目的を達成し終了する見通しとなってきました。

 22日の第28回調停期日で詰めの段階を迎えようとしている被申請人各社との調停内容と課題について、弁護団と事務局の基本方針をお知らせします。1月18日の申請人会議の場で、調停案について申請人の皆さんのご意向を最終確認します。以下は現在調整中の調停案の要点です。ご検討のうえ、問題があれば18日にご指摘ください。

1、すでに焼却を止めている自社処分の業者……これらの業者は産廃業を営んでいないので、今後の課題も少なく以下のことが確認できれば、調停成立となります。
調停案の内容……1.焼却廃止の確認、2.焼却炉関連の保管資料の開示、3.焼却施設周辺の見学と土壌調査の許可、4.調査結果への誠実な対応

2、焼却を続けている自社処分業者……ここは焼却炉稼動中なので一日も早く焼却を止めてもらうことが焦点となります。
調停案の内容……1.期限内の焼却停止の約束と焼却時の法令順守、2.焼却炉関連の保管資料の開示、3.焼却廃止の確認

3、すでに焼却を止めている産廃業者……産廃の処分業を続けているので、チェック体制の担保が焦点になります。
調停案の内容……1.焼却廃止の確認、2.焼却施設周辺の見学と土壌調査の許可、3.調査結果への誠実な対応、4.産廃業の法令順守と違反時の是正措置。
【継続している処分業が、周辺環境を汚染しないことが重要、法令順守と違反時の是正措置の約束がポイント】

4、大きなゴミ山を放置している業者((有)長島総業、大生商事M、(有)協和産業、(有)アーバンリサイクル、常盤土木工業(株)、(株)武蔵野、建進工業(株))……積み上げた膨大なゴミ山の期限内の撤去が調停成立のポイント。
調停案の内容……1.焼却廃止の確認、2.焼却施設周辺の見学と土壌調査の許可、3.調査結果への誠実な対応、4.産廃業の法令順守と違反時の是正措置、5.半年以内のゴミ山完全撤去。
【調停に出席することもなく、ごみ山を積み上げたまま放置している業者であり調停成立の見込みはほとんどない】

5、焼却施設の許可・監督権限をもつ埼玉県との調停案……1.謝罪、2.焼却施設の停止と今後の新設更新停止、3.汚染の実態調査の実施、4.汚染土壌の原状回復、5.ゴミ山撤去、6.ゴミ山の汚染調査、7.産業廃棄物の流入規制。
前回期日において申請人側からの調停案に対する県意見として、調停成立に応じることはできない、と返答があった】

 焼却を続けている産廃業者5社(新明建設(株)、(株)山一商事、(有)共進産業、ヤマ商物産(株)、ミヨシ産業(株)、(株)金龍土木工業)との間では、前回期日において、焼却停止が調停成立の必須条件であることを伝え、調停は不成立の見込みです。また、焼却を停止したが、その他の中間処分業を続けている業者の中で、立入を認めないなど、チェック体制が担保されないことが明らかであるところ((株)クマクラ、(株)大空リサイクルセンター、(株)木下フレンド、(株)サニテック等)や、既に調停に応じないことを相手側から表明しているところ、調停案を送っても返事のないところ等と(東明興業(株)、クリーンサービス(株)、(株)大進興業、(株)新明、(株)中澤工務店、(有)マイセル、(有)村山工務店、佐藤建設工業(株)、日栄興産(株)、(有)埼建、大徳技研工業(株)、(有)ナガワ、カザト(株))は、調停は不成立の見込みとなっています。さらに、調停外で、行政訴訟や民事訴訟が継続ししている業者(石坂産業(株)、北田商事(株))についても、焼却以外の処分業による環境影響が著しいことが既に明らかになっていることから、調停は不成立となる見込みです。

98年の時点では47社64炉もあった焼却施設が、わずか7社8炉にまで激減した現状から判断すると、公害調停に取り組んだことの意義は大きいといえます。残された課題である中間処理施設と首都圏由来の産業廃棄物の集中は、運動を再構築した上で、取り組み続ける必要のある課題です。申請人の皆様、長い間のご支援ありがとうございました。
 公害調停を進める会の今後ですが、産業廃棄物中間処理施設の集中や増え続けるゴミ山問題、産業廃棄物の過剰な流入問題など、多くの課題は残されたままです。公害調停と並行して進めてきた2件の行政訴訟と1件の民事訴訟など、重要な事件も係争中です。そこで、発展的に会の活動を引き継いでゆく新しい組織を立ち上げる準備を始めています。今後の取り組みについてもご理解とご協力をよろしくお願いします。


◆裁判報告◆

−石坂産業(株)=くぬぎ山  

 くぬぎ山再生事業指定地域内に、新たに破砕・圧縮梱包・破砕減容の変更許可がおりた事に対し、12月2日に変更許可取り消しを求める第2次行政訴訟を起こし、12月25日に第1回公判が行われました。ここで、原告代表の井草さんが、陳述を行いました。これまでの石坂の酷い操業、行政の許可のひどさ、住民に何も知らされないままの許可に対する不信、などについて、切々と訴え、埼玉県の二枚舌の施策が浮き彫りになりました。また、訴状について、原告側代理人の小林弁護士から、処理施設が無許可であること。破砕については粉塵、アスベスト、騒音等による被害が出ること。圧縮梱包・減容については杉並病が発生した一般廃棄物処理施設と同じような設備であり、化学物質による被害の可能性があること。廃棄物の処理能力は約900t/日と大規模になること。許可内容についても、規制から逃れるために5t/日を超えないように能力を少なく見積もって申請している可能性があることなどを指摘しました。
 これから始まる裁判は、破砕などによる粉塵、化学物質被害という、未だ行政の規制対策がなんらとられていない被害を主張していく、厳しいけれど重要な裁判です。ぜひご支援をお願いします。

−北田商事(株)=くぬぎ山南

 同日に行われた北田商事許可に対する訴訟の方は、双方の主張が出揃ったため、間もなく証人喚問が始まると思われます。前回公判に於いて原告側が指摘した、北田商事の処理能力を大幅に超過する処分実績等について、埼玉県は「提出させた書類を調査中であり、違反が見つかれば処分が必要。」と回答。この調査のため、石坂、北田とも、次回期日は3月26日と少し間が空きました。
原告側も、今後、破砕施設による粉塵、化学物質被害等の影響調査に取り組んでいきたいと考えています。ぜひご協力をお願いいたします。


●くぬぎ山再生検討委員会への要望書提出●

 くぬぎ山から煙突が消え、「くぬぎ山再生事業」も始まり、これからくぬぎ山は真に美しい林に再生できるでしょうか。わたしたちが危惧するのは、残された土壌汚染、ごみ山、破砕等中間処理施設設置許可、今なお残る最終処分場計画など様々な負の面が行政の「美談!?」に隠され、なんら対策がとられないままとなる、という事態です。年末12月25日、くぬぎ山再生検討委員会と埼玉県知事宛に、以下の内容の要望書を写真資料と共に提出してきました。

1,くぬぎ山区域の選定について
 自然再生事業の対象とされたくぬぎ山区域の範囲は中心部に限られ、これまで焼却を行ってきた事業所などが指定からもれました。産廃施設の操業により荒廃した地域を自然再生するという目的でなされる事業であるならば、指定地域からもれた産廃施設周辺を含めた汚染調査原状回復の対策をとられること
2,破砕・圧縮施設増大について
 自然事業発足以降、くぬぎ山周辺3事業者10施設について、破砕・圧縮等の新たな許可が出されました。再生事業の主旨に全く逆行するこの許可により、周辺の中間処理施設は18施設、1850t/日の能力に及びます。これら施設から発生する粉塵、化学物質、搬入車輌増大による、被害調査把握と施設撤去、許可を今後出さないこと。
3,三芳町最終処分場計画撤回について
 再生事業計画地内に、三芳町が今なお最終処分場の設置を計画中。撤回を申し入れること。
4,くぬぎ山内に残されたごみ山・残土山を早急に撤去すること
5,焼却炉廃炉跡地や撤退跡地周辺の汚染土壌調査実施
6,いまなお野焼きを行っている事業者に対する告発、撤去対策

 くぬぎ山自然再生計画が進み市民税が投入される中、再生計画地域内での廃棄物処理施設の新規(増設含む)許可、計画等があり、矛盾した行政の姿勢は正されなければなりません。
 子供が安心して立入、遊べる林に再生するためには、これまでのずさんな廃棄物焼却による環境汚染調査、現存施設の環境影響調査、撤去対策ごみ山・残土山撤去などが必要です。
 そして、当地域に依然として集中する首都圏産廃の流入規制及び、産廃処理施設集中立地の対策という、抜本的な対策こそが必要です。


◆ごみ山から高濃度の硫化水素!◆

 三芳町上富に高さ20mに及ぶ長島総業、大生商事という2業者が積み上げたごみ山(通称三芳富士)が放置されています。長年放置されたごみ山には、草や木まで生え、再三に渡り、撤去とごみ山による環境影響調査を要望してきましたが、埼玉県は「環境影響はない」と、全くこの問題に取り組む気配がありませんでした。

 しかし、ごみ山の数カ所から煙が立ち昇っているのを何回も確認しており、周辺にひどい臭気が漂っています。これで「環境影響がないはずはない」と考え、昨年11月22日にすすめる会で簡易測定による調査をしたところ、煙の発生地点で300〜500ppmの硫化水素が測定されました。これは、致死量に近い量です。又、地下20cmの温度が60゜Cになっており、周辺のプラスチックが変形したり、溶けかかっていました。更に、ごみ山の頂上付近には亀裂が走っており、崩落の危険もあります。埼玉県内には3000Gのごみ山は69箇所、それ以下の大きさのごみ山は所沢周辺だけでも50箇所以上あります。私達は、硫化水素による中毒、ごみ山火災、ごみ山の崩落等の危険性がある事を指摘し、環境省と埼玉県に対して下記のような要望書を提出しました。

1. 埼玉県西部地域にあるごみ山について直ちに綿密な調査を行うこと。
2. 環境大臣・埼玉県知事の現地視察を早急に行うこと。
3. それぞれのごみ山の原因となった産業廃棄物処理業者、排出事業者に対する撤去の指導、措置命令、代執行、廃棄物処理業の許可取り消し、及び刑事責任の追及等あらゆる法的手段を用い、速やかな撤去に向け最大限の方策を講じること。
4. 調査、撤去等の作業においては、周辺住民の生活環境を2次的に悪化させることのないよう、又、作業員の中毒事故を回避するべく、充分に安全措置を講じること。
5. 業者による不法投棄、及び、違法な最終処分場としてごみ山を認識し、適切かつ必要な対策を講じること。
6. ゴミ山がこれほど多数生成した根本原因である首都圏からの産業廃棄物の流入規制を行うこと。

 環境省に対しては更に次の点も要望しました。
7. 環境省が来年度提出する方針の「産業廃棄物不法投棄原状回復特別措置法(仮称)」の成立を早急に実現すること。
8. 全国のごみ山に対する実態調査を行うこと。

埼玉県は以上の要望に応え、長島総業の「周辺環境調査」を実施、発生源では、硫化水素簡易モニターによる調査しか行わず、150ppm以上であったため正確な数値は把握せず。発生源地上1.5m地点で硫化水素を採取測定しましたが、最高で0.15ppmという結果。「周辺環境への影響は認められない」とし、今後も継続して調査する、としています。さらに、当面の措置として、硫化水素発生地点に覆土を行い!、合わせてごみ山への立入が出来ない措置を講ずることを地主にお願いした、そうです。
 覆土を行ったとして、では次にごみ山のどの部分から硫化水素が噴き出すかは全く予想できません。事故が起きてからでは遅いのです。「予防原則」が全くないことに愕然としてしまいますが、粘り強く取り組みを続けていこうと考えています。