● 子どもたちにきれいな水と土と空気を手渡し、いのちとくらしを守るために

Internet版第17号 2002年7月27日発行

◆編集・発行所
さいたま西部・ダイオキシン公害調停をすすめる会
発行人:事務局代表・前田 俊宣
〒359-0041 所沢市中新井5-1-3-201 Tel 042-943-0295
E-mail HZE03164@nifty.ne.jp
URL http://www3.airnet.ne.jp/dioxin/

郵便振替00530-0-40224「公害調停をすすめる会」


◆次回 ダイオキシン公害調停 ◆

8月7日(水)午前10時〜

於:●埼玉共済会館401〜402会議室

 

次回調停では、第2グループ(焼却をやめた産業廃棄物処理業者)との調停と平行し、現在も焼却を続けている第3グループとの調停、および埼玉県との調停をどう進めるかという核心部分が議論となりそうです。申請人の皆様、ぜひ調停の席にご参加ください。


●5月31日調停期日報告●

 さる5月31日(金)午後3時よりさいたま会館で第23回調停が開催されました。すでに焼却をやめた産業廃棄物処理業者(第2グループ)との3回目の調停です。調停事項を詰める段階になってきていますが、双方の意見に隔たりがあり厳しい状況です。

さらに難航が予想されます。申請人の皆さん、ぜひ調停にご参加ください。


◆くぬぎ山の最大手である石坂産業が焼却炉を撤去しました◆

 石坂産業が焼却炉3炉について廃止届を5/15に県に提出したことが判明しました。廃棄物処分業も、中和・焼却を廃業。特別管理産業廃棄物処分業は全て廃業。以降は、がれき破砕(320t/日)、木屑破砕(112t/日)、ガラス陶磁器屑・金属屑・がれき類破砕(320t/日)、廃プラ溶融(12t/日)、廃プラ破砕(4.8t/日)を続行することになります。くぬぎ山最大の焼却炉3炉が焼却をついに廃業したことは、これまでの住民の運動の大きな成果であり喜びでもあります。

裁判の報告
 6月5日にさいたま地裁にて
石坂産業許可取消訴訟の5回目の公判が行われました。
 埼玉県は、石坂産業の廃炉届・廃業届等を示して「石坂は焼却炉を廃止した。原告らの許可処分の取消請求の原因は、焼却施設が無許可であること、処理能力に偽りがあること、おそれ条項に該当することなどである。廃炉になったことで、原告らの取消を求める主張の理由、法律上の利益は消滅した。よって裁判の請求の取り下げを要求する」と言ってきました。 しかし、県のずさんな許可は破砕についてもあてはまります。大量の様々な廃棄物の破砕による粉塵、騒音、様々な化学物質の発生等、私たちの環境に影響を与えることには変わりありません。その被害を明らかにし、よりよい環境を求めるために、焼却停止のみでは全面的な解決ではないと判断し、破砕業の許可についてのずさんさ、被害影響などについての主張を今後追加していくことになりました。
 そして、煙が止まったからといって、操業が続く限り、首都圏から石坂産業に持ち込まれる大量の廃棄物がなくなるわけではないのです。これから、破砕についての対応をどうすべきか、残された汚染の問題、そして県の責任について、今後の課題に向けて心新たに取り組んでいきたいと考えています。

北田商事許可取消訴訟の方は、前回原告側が提出した焼却炉処理能力専門家意見書に対して、県から、「意見書に対する書面の準備ができなかった。次回になる。次回でも出来るか……」とのこと。こちらの主張に対する反論に苦慮している様子が伺えました。
原告側からは、秋山弁護士から許可時における所沢周辺の汚染状況全般についての書面とこれまでの被害実態を示した書証等を提出しました。次回公判は8月7日午後4時からとなりました。

●くぬぎ山は今……
 石坂産業の炉が撤去された現在、くぬぎ山の中で稼働している焼却炉は、佐藤建設工業の2炉と埼建の1炉となりました。この2社についても年内には焼却を止めるであろうと言われています。日榮興産は、炉を撤去し、焼却から破砕へと業を移行しています。すでに焼却を止めたアーバンリサイクル、常磐土木、協和産業は、それぞれ廃プラと木屑とコンクリートガラのゴミ山を積み上げています。焼却を止めても業を続ける業者は、破砕へ移行するかゴミ山を積み上げるかがパターンのようになっていますが、その2つが今後の大きな課題になっていくと思われます。

●破砕の問題
 現在、破砕の対象として石坂産業に運び込まれ、木屑・がれき類・金属くず・陶磁器くずを合わせると日量752トン。この膨大な廃棄物の破砕の際に、大小の塵や細かいSPM(浮遊粒子状物質=大気中に漂う目に見えないほどの細かなふんじん)などが環境中にばらまかれます。断熱材などに使用されるアスベスト(石綿繊維)は、体内に蓄積して発ガン物質となるため、欧米ではほとんど使用禁止となり厳しく管理されていますが、日本では非常にいいかげんに建築現場で扱われていることもわかってきました。
 また、最終処分場の確保がますます難しくなるなか、窮地をしのぐ手段として焼却灰でつくったセメントが「エコセメント」として市場に出回ることが予想されます。
 今後は、このような多くの危険性を持つ建築廃材の破砕について学習し、現状を調査して訴えていかなくてはなりません。


◆美山クリーン焼却炉撤去へ◆

 前号に載せた新座の「美山クリーン(有)」「(株)金龍土木工業」という二つの産業廃棄物処理業者について、その後の状況を報告します。6月4日、野火止公民館に約40名の住民が集まり、弁護士さんより「焼却を停止させるには、どのような法的手段があるのか。」という説明を受けた後、今後のすすめ方について論議を行いました。塩化水素の基準超過などずさんな操業実態が明らかとなっており、操業続行を阻むためのより直接的な法的手段を視野に入れながら、被害実態の調査、運動に参加する住民を増やすこと、行政への働きかけを続ける事、等に取り組んでいくことを確認しました。

 6月20日、「塩化水素の数値は下がったものの、煙の状況は変らない。」として、新座市、清瀬市民が焼却炉の撤去指導を求める要望書と3490人の署名を埼玉県環境防災部に提出しました。

6月25日、住民20名近くが集まって両社の見学と、被害の訴え、焼却の停止の申し入れを行いました。
 7月4日、これらの要請を踏まえ、「美山クリーン(有)」は今秋までに焼却炉を撤去し、その後は廃プラスチックや木屑の破砕を行う予定である事を新座市に伝え、市は撤去費用の一部を助成することを決めました。

 7月6日、農工大の久野先生と2人の学生さん、住民達合計12名で周辺の土壌の採取と、ポリビンを設置する場所の選定を行いました。
4月に住民が立ち上がって4ヶ月、運動が急展開する中、美山クリーンが自ら焼却炉を撤去する方向を示し、全体は良い方向へ動き始めています。しかし、「(株)金龍土木工業」は問題の多い炉で依然焼却を続けようとしているし、残された汚染の問題、破砕についても様々な被害の可能性があり、今後も粘り強い運動を続けていく必要があります。


◆ごみ山対策続報◆

 2002年4月3日、南永井にある廃棄物処理業者「新明」が積み上げた高さ15mに及ぶ廃プラスチックのごみ山が大火災を起こして以来、行政に対して、ごみ山対策を要望し続けてきました。2週間に1回、県庁廃棄物指導課、ダイオキシン対策室の担当者と交渉を行い、まず、新明の火災後に残るごみ山の撤去、また、このような被害を繰り返させないための行政の施策、県内各地に残るその他のごみ山の撤去対策について要望し、行政の動きを聞いてきました。その間、県は新明周辺の火災影響調査、として、周辺数カ所の土壌・水質調査を実施(しかし、汚染の恐れのある直近土壌を調査対象から外す等問題を残すものでした)。7月16日には第6回目の交渉を行いましたが、その席で、埼玉県が、「ごみ山対策について」の緊急対策をとることとなった報告がありましたので、簡単に紹介します。

県は、県内各地の不法投棄や保管と称する悪質な廃棄物の山積み(3000m3以上に上るごみ山は69箇所)を絶対に許さないという決意の下に、未然防止と今ある山の撤去・環境保全のための緊急対策を講じる。

●合同監視班(環境、農林、県警、市町村)を編成し、早朝、夜間を含めた監視体制の整備。
●火災や崩落の危険性など県民生活に重大な支障を来すような緊急性のあるごみ山については、措置命令、告発を行うとともに、やむを得ない場合には、県と市町村などが協力して撤去することも視野に入れながら対応を図る。
●撤去指導対象として、行為者、排出者、土地所有者への強力な指導、告発、措置命令などを行う、としています。

県内69箇所あるごみ山は所沢周辺から県北地域の関越道周辺に集中しています。これまで、公害調停や行政交渉の場で繰り返し県の指導体制の不備を指摘し、より効果のある対策を要請してきました。ごみ山に対して効果のない口頭指導に終始してきた県が、今回、明らかに方針を変え、法的措置をとる方向を明確に打ち出しました。流れ込む大量の廃棄物の不法放置を阻止するための対策が本格化されるよう、今後も引き続き訴え続けていきたいと思っています。
新明対策は……
同時に、7月5日には、新明の廃棄物収集運搬業の許可取消、現在、廃棄物の山の撤去のための措置命令を出す準備中だということです。排出者に対しても撤去指導を続けており、数社が撤去に前向きな姿勢を示しているといいます。今後、暑い夏を迎え、再火災の危険さえあります。1日も早い早急な撤去が待たれます。


◆最近多くありませんか?光化学スモッグ注意報◆

 毎年夏の日差しの暑い午後、「光化学スモッグ注意報が発令されました」との地域放送を聞かされる日が多くなります。ここ数年その頻度が異常に多いことが気になっています。

 埼玉県がまとめた「県における光化学スモッグの発生状況」によれば、県内の光化学スモッグ注意報の発令日数は全国一で多く平成13年度は30日、平成12年度は40日でした。(2位は東京都の23日(H12、13共))
中でも所沢周辺県南西部地域では、19日(H13)、30日(H12)を占め県内でも随一であり、大気汚染が深刻なことが伺えます。
 光化学スモッグは車の排ガス、工場のばい煙などに含まれる窒素酸化物や炭化水素などが太陽からの紫外線を受けて光化学反応を起こして発生するものですが、息苦しさや頭痛、目の痛みなどの被害を及ぼします。

 最近、そのメカニズムがテレビで放映されていましたが、埼玉南部でこれだけ高濃度になる理由は、東京で発生した排ガスが海風で北に流され滞留すること、さらに上昇気流と下降気流の間に挟まれ、かつ海側と山側の圧力が異なることにより、濃縮効果も伴っているそうです。その上に、焼却によるばい煙や廃棄物処理による破砕の粉塵などの影響も重なれば、環境悪化は避けられません。
 東京からやってくる排ガス、そしてゴミ。どちらも厄介な問題ですが、少しでも多くの人が問題を知り、対策を求めていくことが必要です。