● 子どもたちにきれいな水と土と空気を手渡し、いのちとくらしを守るために

第2号 1999年9月9日発行

◆編集・発行所
さいたま西部・ダイオキシン公害調停をすすめる会
発行人:事務局代表・前田 俊宣
〒359-0041 所沢市中新井5-1-3-201 Tel 042-943-0295
E-mail HZE03164@nifty.ne.jp
URL http://www3.airnet.ne.jp/dioxin/


●第1回ダイオキシン公害調停期日報告

 1998年12月21日の第一次申請から約7ヶ月、待ちに待ったダイオキシン公害調停が7月17日午後1時半より埼玉県庁隣の埼玉県県民健康センターで開催されました。
 この日まで、この公害調停の申請人となった方は4024人。当日は申請人代理人である4人の弁護士(釜井英法氏、佐竹俊之氏、鍛冶伸明氏、秋山 勉氏)をはじめ、申請人105名が出席。これに対し、被申請人側は、埼玉県から環境関係課長・職員等9名と代理人弁護士、及び、被申請人企業25社の関係者や代理人弁護士が出席しました。

 3名の調停委員は、埼玉県の公害審査会から選ばれ、委員長に埼玉県公害審査会会長・弁護士の新井毅俊氏、委員として弁護士の苦田文一氏、埼玉工業大学工学部教授の内山俊一氏があたります。

 調停手続きは非公開であるため、残念ながら、インターネット上では内容について詳しい報告はできません。しかし、調停という、当事者が一堂に会して話し合う場ができたことについて、確かな手応えを感じた第1回でした。今後の調停がどのように進んでいくのか、期待していきたいと思います。

 

●調停への私たちの期待

 所沢市周辺の新生児死亡率の増加、土壌のダイオキシン濃度の増加、喘息・アトピー性皮膚炎の増加、ばいじん、悪臭による被害、と産廃焼却施設の増加とは明らかな相関があり、NOx,HCl,SOx等の数値からも、健康被害・環境被害の原因は明らかに産廃焼却施設の増加にあること、また、ダイオキシン汚染は氷山の一角であり、産廃焼却は光化学オキシダント、酸性雨などの原因ともなり、この地域の環境悪化を招いている。
 さらに、埼玉県が数多くの焼却施設を認可してきたこと、監督が不十分だったことから、「くぬぎ山・所沢インター周辺」の健康・環境被害について、県と焼却施設設置者等の「共同不法行為」と位置付け(この場合の『共同不法行為』というのは、ある特定の者が単独で不法行為を行ったということではなく、このような環境汚染を引き起こしている多数の施設による焼却行為とそれを許してきた県が共同で、市民の健康で安全な生活を送るための人格権を侵害していることを指して使われる)、責任を追及していきたい。


●くぬぎ山が美しく広大な平地林であった20年前の様子から、1991年頃に野焼きが始まって以来、あっと言う間に環境が汚染されていった経緯

 野焼きのひどい煤塵と悪臭に反対運動が始まり、94年には県の指導で焼却炉が建ちはじめた。業者も県も「これで臭いも煙もなくなる」と言ったが、事態は全く逆で、汚染は益々進んでいった。呼吸もままならない汚染に耐えかね、空気清浄機を買ったが、フィルターには油煙がこびりつく。95年には摂南大学の宮田教授が現地の土壌を調べ高濃度のダイオキシン汚染が明らかになった。焼却灰が野積みされ、春先の砂埃も怖い。96年の県の環境調査では、アスベスト濃度も高いことがわかった。子供たちが屋外でのびのびと遊べるきれいな空気と土を取り戻したい。

●所沢インター周辺では
 
所沢で暮らし初めて16年。湿疹、皮膚炎、アレルギー性鼻炎、目の炎症、喘息に苦しめられている。こうした健康被害はインター周辺の産廃焼却施設からの煙が原因と考えざるを得ない。インター周辺の東川沿いは周囲より低くなっているために焼却の煙がたまりやすく、この東川沿いに小中学校や老人センターが建っており、健康被害が心配される。焼却の煙がまともに学校を襲う。所沢市教育委員会の調査でも、この地域の子供たちの喘息やアレルギーの発症率が高いことを示しており、こうした状態に子供を放っておくことは絶対にできない。「こんな状態の学校には行かなくていい」とまで、子供には言っている状況。

●くぬぎ山風下地域である中新井地区では
 
宮田教授のデータによれば、中新井地域の児童公園の土壌がドイツの基準なら立入禁止になるような数値を示している。埼玉県がダイオキシン削減検討委員会を設置したり、県外のゴミ流入に対する事前協議制を設けることにした点等、県のダイオキシン対策は評価できるが、これまで認可してしまった業者に対して指導も監督も不十分である。また、類例を見ない焼却施設の密集とその問題性をなぜ予測できなかったのか、また野焼き業者に対して、「彩の国環境創造資金」による低利融資を斡旋し、焼却炉を建てるよう指導し、結果的に現在の焼却施設密集状態を招いたことは厳しく批判されるべきだ。

 所沢周辺のダイオキシン問題に関心を持って海外からやってきた研究者の言葉から、印象に残ったものとして

「所沢市民はなぜこのような状態で子供を通学させているのか」(ドイツの教育関係者)、

「所沢市民は何故地下水の汚染について言及しないのか、重大な問題だ」(「奪われし未来」野共同著者の一人、J.Pマイヤーズ氏)など。


●第2回調停委員現地視察報告

 8月6日午後2時から6時まで、猛暑の中、調停委員3名がやっと、所沢周辺の現地視察を行いました。県事務局と協議の結果、住民の被害状況を見てもらいたいという主旨で、インター周辺及びくぬぎ山周辺を車で見て回るコースが設定されました。当日は、被申請人企業数社も参加し、数台の車を連ねて出発。調停委員が乗る車中にはそれぞれの地元住民が同乗し、施設と地元の被害状況を説明しました。要所要所では、調停委員に車を降りてもらい、臭いや、ゴミの散乱する様子、ゴミの山のひどさなどを実感してもらい、被害を受ける現地の住民の生の声を聞いてもらいました。予定を1時間も過ぎ、暑い中の長丁場でしたが、調停委員が真剣に現地の方々の声に耳を傾ける様子が見られました。

やはり、圧倒的だったのが、この狭い地域にたくさんの焼却炉群が密集している点です。ここにも、あそこにも、民家や病院、幼稚園のすぐそばにも、焼却施設があるという異常さ、そして、その煙や灰がすぐそばの住民の生活を脅かしている現状を実感してもらえたと思います。

 中富小学校の屋上では、農家の方が、短冊状に並んだ美しい畑を見せながら、この地の農業を、次の世代の子供たちにバトンタッチしたい、焼却炉があることによって苦悩している、と切々と訴えました。

要所要所には、現地の住民の方々が多数駆けつけて下さいました。地元の方々の被害の大きさと、関心の強さが十分に伝わったことと思います。

 この視察が、今後の調停に十二分に活かされることを期待したいと思います。


れんさい◆ゴミは、なくせるか◆第2回
山田久美子

たとえ埼玉県から産廃を追い出しても根本的な解決にはなりません。
出口で止める事ばかりが言われていますが、
どうすれば入口でゴミを減らせるのか、市民も本気で考えています。


 ■家を壊せば有害ゴミ!?■
 現在排出されてきている建設系廃棄物には、リサイクルのしやすさや処理の段階を念頭において製造されたものではありません。そのため、たとえば廃材なども塩ビの被覆シートが接着されていたり、分別が極めて困難なものが多く、安易に焼却されています。
 また家屋自体も、分別しながら丁寧に解体するよりは、ミンチ解体といって重機で潰すほうがはるかに安く短時間ですむため、業者はこの方法を選びがちになります。少なくとも施工主になった場合、家屋の解体の際には、建設廃棄物がどこでどのように処理されるかしっかり確認するべきでしょう。また、適正処理に必要な経費は負担する覚悟も必要です。
 現在、建設省は建設系廃棄物のリサイクルと減量を促進するための法案を考えているといわれます。しかし、バブル期に建てられた多量の建築物が廃棄される10〜20年後には、これまで製造された分別やリサイクルしにくいものが大量に排出される可能性があり、問題の根本的な解決はかなり先になりそうです。(つづく)


多量排出者best100社を割り出し公表!!
廃棄物処理についての公開質問状も送付

「埼玉西部・ダイオキシン公害調停をすすめる会」では、所沢周辺で安易に燃やされる大量の廃棄物廃棄物を排出する企業を調べる作業を2年前から始めました。排出者企業名非公開の処分取消を求める裁判を起こすなど粘り強い運動の結果、99年3月、埼玉県は、ついに排出者情報を開示すると発表しました。
 公開された各施設が行政に提出した排出者の載っている処分実績報告書は膨大な量で、そこに載っている排出者は2000社以上。私たちは、それを集計し、多量排出者best100社を99年7月に発表し、あわせて廃棄物処理についての公開質問状を送付しました。
 
その結果は広報に載せるには膨大過ぎるので、当会のホームページに掲載しています。多量排出企業第1位の鹿島建設(48100.97t/year)や第4位の竹中工務店(28569.87t/year)などが、焼却の停止や情報開示に協力する姿勢を表明するなど、排出者企業から一応の前向きな姿勢を引き出す効果があったようです。


◆いまお読みいただいている広報紙『きれいな土と空気』は、公害調停の経過と結果を、ダイオキシン公害調停に関心のある方々に広くお伝えすることを目的に、調停の日程や進行にあわせて、発行していく予定です。現在の限られた予算では、郵送による配布を行うことは不可能ですので、申請人による手渡しネットワークの「POST BOX」をできるだけ活用して広報を配布したいと考えています。

◆『きれいな土と空気』は、「すすめる会」のホームページ(http://www3.airnet.ne.jp/dioxin/)にも掲載されています。印刷による広報では間に合わない臨時ニュースや、調停のスケジュールなどを、号外として掲載することも考えていますので、インターネットに加入している方、また身近にインターネットの環境がある方は、ぜひ、ご覧ください。