くぬぎ山最大手の産業廃棄物処理業者
石坂産業産業廃棄物処分業変更許可等取消訴訟について
 石坂産業裁判を考える会

くぬぎ山で侵食を続ける石坂産業
2007.5.18
  三芳町上富にある石坂産業はくぬぎ山最大手の産業廃棄物処理業者であり、昨年11月に廃プラスチック類破砕施設他3施設の設置許可及び、産業廃棄物処分業変更許可をうけました。総量で約955t/日に上る破砕等を認める許可になります。この事業者に対する平成14年に出された産業廃棄物処分業許可については、今年2月にさいたま地裁にて、一部違法との判断が示されていました。
 くぬぎ山では、焼却炉廃炉後、破砕などの許可を得て規模を拡大するところが多く、大量の廃棄物が大型トラックによって大量に持ち込まれ、粉塵、騒音、悪臭等による被害が続いています。廃プラスチック類の破砕・圧縮による、化学物質の飛散なども心配です。くぬぎ山を本来の武蔵野の美しい林に再生させることを目的とした、くぬぎ山自然再生事業が進む中、当地域に廃棄物処理の増大を招く許可を出し続ける埼玉県に対して、周辺住民22名が許可取消の裁判を起こすこととしました。周辺住民は自らの生活環境を守り、美しいくぬぎ山を次世代に手渡していくために、本件許可取消を求める訴えを起こしました。

1, 提訴期日 5月18日(金)  さいたま地裁
2,当事者と請求の趣旨
原告・・・石坂産業株式会社(三芳町上富字緑1588−4外の産業廃棄物処理施設設置者)周辺に居住する住民及び農業者計22名
被告・・・埼玉県
請求の趣旨・・・埼玉県が平成18年11月21日付けでだした、石坂産業株式会社に対する以下の産業廃棄物処理施設の設置許可及び、産業廃棄物処分業の変更許可処分の取り消しを求めるもの。
(1)木くずの破砕施設設置許可
施設の種類  施行令第7条第8号の2の木くずの破砕施設
処理する産業廃棄物の種類 木くず 以上1種類
処理能力 157.08t/日(8時間稼動)
(2)がれき類の破砕施設設置許可
施設の種類  施行令第7条第8号の2のがれき類の破砕施設
処理する産業廃棄物の種類 金属くず、ガラスくず・コンクリートくず(がれき類を除く。)及び陶磁器くず、がれき類 以上3種類
処理能力 339.05t/日(8時間稼動)
(3)廃プラスチック類類の破砕施設設置許可
施設の種類  施行令第7条第7号の廃プラスチック類の破砕施設
処理する産業廃棄物の種類 廃プラスチック類(フィルム状のものに限る。)、紙くず、繊維くず 以上3種類
処理能力 6.0t/日(8時間稼動)
(4) 産業廃棄物処分業変更許可
 事業の範囲
中間処分業
破砕:廃プラスチック類、木くず、繊維くず(畳に限る。)、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず(がれき類を除く。)及び陶磁器くず、 がれき類、 以上6種類
破砕減容:廃プラスチック類(フィルム状のものに限る。)、紙くず、繊維くず 以上3種類
圧縮梱包:廃プラスチック類(再生利用可能なものに限る)、紙くず(再生利用可能なものに限る)、繊維くず(再生利用可能なものに限る)以上3種類
(2)事業の用に供する施設
施設の種類 産業廃棄物の種類
破砕施設(A) 木くず 以上1種類
破砕施設(B) がれき類 以上1種類
破砕施設(C) 金属くず、ガラスくず・コンクリートくず(がれき類を除く。)及び陶磁器屑、がれき類 以上3種類
破砕施設(D) 廃プラスチック類、繊維くず(畳に限る) 
破砕施設(E) 廃プラスチック類 以上1種類
破砕・減容施設 廃プラスチック類(フィルム状のものに限る。)、紙くず、繊維くず 以上3種類
圧縮梱包施設 廃プラスチック類 紙くず繊維くず(再生利用可能なものに限る)
2,訴えの理由
(1)、石坂産業(株)が施設設置許可を受けた破砕施設はいずれも、処理能力を過小評価した、虚偽の申告をしており、実際の処理能力は、申請の能力をはるかに上回るものであり、そのような虚偽の申請をそのままにした許可は重大な瑕疵があり、違法なものとなる。
(2) (1)の通りであるから、本件破砕施設等は違法なものとなり、そのような違法な施設を「事業の用に供する施設」とすることを前提として出された、産業廃棄物処分業変更許可は、違法なものとなる。
(3)石坂産業は操業開始以来、周辺に灰・粉塵を飛散させ、周辺の生活環境に支障を生じさせてきた。さらに無許可の施設設置、届出の虚偽、無許可埋立に関わる等、法を遵守する姿勢がなく、「業務に関し不正または不誠実な行い」をする恐れがあり、違法な許可である。
3.訴訟にいたるまでの経緯
 くぬぎ山は、所沢市、狭山市、川越市、三芳町の3市1町にまたがる武蔵野の面影を残す雑木林であり、周辺は、首都圏にあって、短冊状に美しく整然と並んだ広々とした畑が今尚残り、農業を営む家が多い。くぬぎ山の雑木林は、周辺の農家がその落ち葉を堆肥として利用するために守り育ててきた、豊かで美しい林である。ところが、平成2年ころから、くぬぎ山の雑木林の中で、産業廃棄物処理施設が無計画に集中して作られたため、悪臭、粉じん、ばいじんが大量に周辺地域に撒き散らされるようになり、くぬぎ山の豊かな自然が大きく損なわれてしまった。
 特に、石坂産業株式会社(以下「石坂産業」という。)は、くぬぎ山の中に存在する産業廃棄物処理業者の中でも最大規模を有する業者であり、石坂産業が排出する煙、粉じん、ばいじん等の量は群を抜いており、石坂産業がその周辺の住民の生命・身体に与える悪影響は計り知れないものがあった。
そのような中で、くぬぎ山の周辺住民は、自らの生命・身体の安全と良好な生活環境を守るために、平成13年6月8日、埼玉県知事を被告として、石坂産業に対する平成13年3月11日付産業廃棄物処分業の更新許可処分の取消を求めてさいたま地裁に提訴した(同庁平成13年(行ウ)第24号)。
 石坂産業は、平成14年5月、焼却炉を停止し、焼却による産業廃棄物処理を断念したが、石坂産業は、焼却処分から破砕処分にシフトし、大規模な破砕施設による産業廃棄物処理を継続し、さらに、平成14年9月に、産業廃棄物処分業の拡張を図り、産業廃棄物処分業変更許可を受けたため、周辺住民は、自らの生命・身体の安全を守るために、この変更許可処分についてもその取消を求めてさいたま地裁に提訴した(同庁平成14年(行ウ)第52号)。
 ところが、石坂産業は、上記2件の訴訟の係属中である平成17年4月18日、さらに、処理能力をこれまでの、総量約830t/日から1215t/日とほぼ1.5倍に増大させる本件産業廃棄物処分業変更計画書及びがれき類の破砕施設2施設・廃プラスチック類の破砕・減容施設、木屑の破砕施設を新たに設置するという計画書を提出した。
 これに対し、周辺住民は、被告、所沢市などに対して1268名の計画の撤回を求める反対署名を提出した。
 すると、石坂産業は、平成18年5月18日、埼玉県知事に対し、今度は、処理能力を総量で約955.5t/日と若干減少させた形での産業廃棄物処分業変更許可申請及びがれき類の破砕施設1施設、廃プラスチック類の破砕・減容施設、木屑の破砕施設の設置許可申請書を提出し、 埼玉県知事は、平成18年11月21日、この申請すべてに対し、許可処分を行った。
 周辺住民らが提起していた2件の訴訟事件については、平成19年2月7日、判決が言渡された。そして、平成14年事件において、石坂産業の産業廃棄物処理施設のうち、埼玉県知事のずさんな審査を理由としてプラスチックの破砕減容施設を無許可の違法な施設と認定し、その部分についての産業廃棄物の変更許可処分の取消を命じた(同事件は、埼玉県知事が控訴し、第1回口頭弁論期日が本年7月4日午後1時30分と指定されている。東京高裁平成19年(行コ)第85号、第15民事部)。
 本訴は、上記のような経緯で、埼玉県知事が石坂産業に対して平成18年11月21日になした産業廃棄物処分業の変更許可処分等の取消を求めるものである。
 埼玉県知事は、石坂産業らの産業廃棄物処理業者の監督権者でありながら、度重なるずさんな審査や監督権の不行使により、この地域への産業廃棄物処理施設の集中を招き、地域住民の生命・身体の安全を脅かすとともに、生活環境の汚染を招来したのであるが、本件各許可処分においても同様に、なんらの反省もなく上記判決で指摘されているずさんな審査を繰り返したものである。
 要するに、本訴は、埼玉県知事による度重なるずさんな審査や監督権の不行使によって生命・身体の安全を脅かされている地域住民が、人間として生きていくための生活環境を守るために提起した訴訟である。

石坂産業鰍ノ対する産業廃棄物処分業許可取消請求訴訟の記録
2001/ 3/11 埼玉県、石坂産業に対し、産業廃棄物処分業更新許可(焼却含む)
6/ 8 産業廃棄物処分業更新許可取消請求の行政訴訟(1次訴訟)提起
       (さいたま地裁)  原告:周辺住民152名
2002 5/15 石坂産業が焼却業と焼却施設の廃止届提出
  8/12 石坂産業、産業廃棄物処理業変更許可申請提出
9/ 6 埼玉県、石坂産業に対し、破砕を主とした産業廃棄物処理業変更許可
12/ 2 産業廃棄物処分業変更許可取消請求の行政訴訟(2次訴訟)提起 
       原告:73名
2005年5月 石坂産業産業廃棄物処分業変更許可及び施設設置許可申請書提出
2006  4〜6月 周辺住民が石坂産業拡張計画反対申入れ(埼玉県:署名1268名)
  11/21 石坂産業産業廃棄物処分業変更許可及び施設設置許可処分
2007 2/7 1次・2次行政訴訟第1審判決言渡し(さいたま地裁) 原告側一部勝訴。
    石坂産業の破砕減容施設を違法と認め、この施設を用いた産業廃棄物処分業変更許可取り消すよう命じた。
    2月 埼玉県が被告敗訴部分について東京高裁へ控訴
2007 5・18 石坂産業産業廃棄物処分業変更許可及び施設設置許可取消請求訴訟提起