「産業廃棄物処理におけるダイオキシン対策についてのアンケート」について

中新井の環境を考える会事務局代表 前田俊宣
  所沢市中新井5-1-3-201  tel 0429-43-0295

                                    

 現在大きな問題となっている所沢周辺地域での産廃焼却処理施設におけるダイオキシン問題について、問題となっている業者へ委託する排出企業はほとんど明らかになっていません。その責任はどう問われるべきなのでしょうか。

 本来、産業廃棄物は排出者自らの責任で処理すべきであるという原則があり、処理委託した時点で排出者の処理責任が完結するとは考えられません。ところが、現状では安易に適正処理が行えない業者への処理委託がなされ、そのために、所沢のような産廃処理における深刻なダイオキシン汚染が引き起こされていると考えられます。

 所沢のような深刻な汚染が起こっている地域では、特に、排出企業自らがダイオキシン対策を積極的に推進することが新たな社会的責任として求められます。具体的には、自ら排出した廃棄物がダイオキシンを発生させることなく最後まで適正に処理されたことを確認すること、自社処理においてもダイオキシン対策をとること、適正処理が困難な廃棄物の排出を抑制するよう努めること、適正処理が可能な製品を製造すること、などが必要です。ところが、企業の産業廃棄物処理におけるダイオキシン対策は今の所、全くとられていない、というのが現状の様です。

 この現状をふまえ、「産業廃棄物処理におけるダイオキシン対策についてのアンケート」を企画いたしました。

(1) アンケートの目的を以下の4つとしています。
1. 企業の廃棄物処理におけるダイオキシン対策を促す
2. ダイオキシン対策に積極的に取り組んでいるか(取り組もうとしているか)について調査する
3. 当地域の産廃処理施設に委託している企業を確認する
4. 排出企業との対話の糸口とする

(2) 送付先
1. 産業廃棄物の排出量が全体の2割と最多の建設業界
  大手建設企業・地元建設企業・住宅建設企業 (52社)
2. 当地域周辺に工場をおく製造企業 (72社)

(3) 質問内容
・産業廃棄物排出量と種類の概要
・委託先の処理業者がダイオキシン対策をとっているか確認する方針の有無
・当地域の産廃処理施設への委託の有無
・今後のダイオキシン対策方針

(4) 回答が返ってきてからの公表のあり方
 個別企業名をあきらかにしない形で企業の産業廃棄物処理におけるダイオキシン対策の現状と方針について結果をまとめて発表したい。

 ダイオキシンの削減は、行政、市民、企業が一体となって取り組まなければ解決できない問題です。この問題は、大量消費、大量投棄社会を作ってきた私たち自身の問題でもあります。このことを十分に自覚した上で、大量消費社会を支える企業にも働きかけていきたいと考えています。このアンケートの目的は決して企業を責めるためのものではなく、市民と排出企業との対話の糸口とする事を目的として考えています。そのために少しでも多くの企業がアンケートに答えていただけることを願っているのですが、産業廃棄物処理の情報を積極的に開示しようという企業はまだ少ないというのが現状のようです。


    「産業廃棄物処理におけるダイオキシン対策についてのアンケート」結果

1.アンケート実施日 1997.7.23発送 8.20回収

2.回収率(表1) 建設企業 18/52社 35% 製造企業 30/72社 42% 

                          合計48/124社 38.7%

 予想以上の回収率でこの問題に対する各企業の関心の高さを伺わせる。

3.結果についてのまとめ

(1)当地域中間処理施設への委託状況

*建設企業からの廃棄物が当地域委託の大半を占めるー
              90%(16/18社)が委託あり・12社分で約3万t/年                         うち混合廃棄物約1万t/年

 建設企業では16/18社が当地域への委託ありとの回答(表2)。そのうち3業者以上へ委託している企業が8社。量では具体的数値を記入してくれた企業12社分で約3万t/年(表3)という結果だった。これに対し、製造企業では70%(21/30社)が委託ありとの回答で、量を記入した18社分で約4千t/年だった。建設企業委託量は製造企業の7倍以上という結果で、当地域委託は建設企業からの物が大半を占めるとの見方を裏付ける物となった。そのうち混合廃棄物が約1万t/年と最も多かった。混合廃棄物は各建設現場で出る木クズ、廃プラ、ガラス陶磁器クズ、金属クズ、建設廃材などが未分別のまま、混合した状態で持ち込まれるもの。処理方法は選別・破砕となっているところがほとんどだが、焼却炉設置業者へ委託するところも多い。選別がきちんとなされているか、選別後の処理はどうなっているか、等の確認が必要だろう。

*ダイオキシンを発生させる恐れのある廃プラの処理は?

 処理方法によってはダイオキシンを発生させる恐れのある廃プラを委託する企業は建設9社・製造11社だった(表4)。また、廃プラが混入している混合廃棄物を委託する建設企業5社。廃プラの処理方法として焼却委託を挙げた企業は20社中2社のみだった。他は破砕、圧縮、埋め立て、リサイクル、と回答している。しかし、県の産業廃棄物実態調査(平成5年度)によれば県内の委託中間処理施設における廃プラの処理方法は9割近くが焼却となっており、破砕処理他は1割程。企業が委託した処理方法の通りに、委託業者が処理を行っているかの確認が必要だ。

(2)企業におけるダイオキシン対策の現状と今後の方針

*委託業者がダイオキシン対策をとっているかの確認ー
   建設83%、製造50%で確認あり。しかし、確認内容は業者報告のみが殆ど

 排出企業として、委託業者がダイオキシンを発生させない適正処理を行っているかどうかの確認が求められる。設備内容を確認する企業は13社と多かったが、現地確認は5社のみ(表5)。しかも契約時のみの物であるようだ。委託業者が排出企業の委託通りの処理方法で、分別、施設管理をきちんと行い、ダイオキシンを発生させない適正処理を行っているかどうかは業者報告のみでは確認できないはず。日常の業務状態の監視が求められる。(抜き打ち的な現地確認・頻繁な現地視察、常に業者の処理状態を見ている周辺住民の話を聞く等)

 ダイオキシン濃度測定を確認したという企業は製造企業で2社、建設企業ではゼロ。

 製造企業で特に未確認のところが多かったがその理由としては、塩ビ等の焼却がないから、許可業者だからといった回答があった(表6)。中には運搬業者しか把握していないからという排出者責任の自覚が足りないのではと思われる回答もあった。また、県の許可は書類上の審査で許可が出されており、業者処理の実態を把握しているわけではなく、許可業者といっても、許可事項通りに適正処理に努める業者とはいえないのが現状である。また、ダイオキシンについては行政の対応の遅れから、許可自体に全く盛り込まれてこなかったという経緯がある。今回の政省令改正で設備面などで一応の対策はとられる事となったが、5年の猶予期間がある事、業者処理実態把握の対応がなされていないこと等、いまだ問題は多い。廃掃法において事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないという原則があり、処理を委託した時点でその責任が完結するとは考えられない。排出企業自らが排出した廃棄物がダイオキシンを発生させることなく最後まで適正処理されたことを確認することが求められる。

*委託業者がダイオキシンを相当量発生させているとの指摘を受けたときー

        建設78%・製造67%が 委託先を変更(検討・出荷の停止含む)

 殆どの企業が改善要求を含め、何らかの対応をすると答え(表7)、今後の対応が期待される。しかし、委託業者のダイオキシン濃度測定の結果が日常のもの通りであることが必要であり、所沢市のダイオキシン濃度操作からも見られるように測定時のみ発生量が抑えられるといった業者が出る事が当然考えられ、やはり日常の業者処理の実態を把握することが必要だろう。また、行政の指導に合わせると答えた企業も建設企業で3社あり、今度の政令における5年間の猶予期間中の各企業の対応が問われる。排出企業としては5年の猶予を待たずに速やかにダイオキシン対策をとる業者に処理の委託の移行を求めたい。

*自社焼却処理におけるダイオキシン対策は
               製造21/30社、建設3/18社が自社焼却あり                      DX対策あり17社 DX濃度測定1社

 多くの製造企業が紙くず・木くず等の自社処理を行っている(表8)。そのダイオキシン対策としては分別を挙げる企業が多く、設備面での対策をとるのは自社処理を積極的に進める企業(紙くず、木くず以外も焼却)で見られるのみだった。燃え殻発生量が10t/年以上である企業が建設で2社、製造で8社あり、焼却量が多い事業所ではダイオキシン濃度測定を行ってもらいたい。安易な焼却は控え、紙などはリサイクルへ。特に建設企業での作業場での焼却は速やかに停止してもらいたい。

 県のデータによれば県内自社焼却量は年間75万t/年にのぼる。その焼却方法が問われる。

*現状でダイオキシン対策を積極的にとっていると評価できた企業は建設1社のみ。

 焼却炉をもたないリサイクルを目的とした中間処理施設へ東京埼玉で発生する全ての産廃を委託しており、最終埋め立て処分率は11%、その他は再資源化されるとのこと。焼却をやめリサイクルへを実践している企業と評価できる。この動きが他の企業へ広がることを期待する。

*今後の方針はー建設8/18社、製造9/30社が評価できる内容

 前向きな姿勢を示し、リサイクルと焼却量減量、適正業者の選定等が挙げられていた場合、評価できる内容とした。リサイクルの促進を挙げた企業が多かった(表9)。焼却からリサイクルへの転換が求められている。

建設企業では適正業者の選定を7社が挙げた。業者の処理方法の具体的確認を挙げた企業も1社あった。また、製造業では素材の変更を3社が挙げた。製造から廃棄までのライフサイクルアセスメント、製品アセスメント導入の動きを広げてもらいたい。評価できる内容の一方、業者に対する行政の指導審査を求める、法律に基づく対応、特になしといった消極的な回答もいくつか見られた。

(3)今後の各企業への要望事項

a.適正業者選定・業者処理方法の具体的確認
b.適正処理料金の設定
c.今回の廃掃法政令改正の設備基準達成の5年の猶予期間中の速やかな対応(5年を待たずに速やかにダイオキシン対策をとる業者に委託を変更してほしい)
d.焼却からリサイクルへ
e.素材変更 適正処理が困難な物の製造・使用の見直し      
消費者が廃棄時のことを考えて製品を選べるよう包装材を含めての原材料表示、使用化学物質の廃棄時のリスクについての情報開示
f.自社処理の適正化

4.今後の予定

1)今回のアンケート結果のまとめを各企業に発送

2)結果発送に伴い、以下の項目について参加の呼びかけを行う

 a当地域周辺中間処理施設の見学ツアーに参加
 b周辺住民との意見交換の場に参加    
 c工場施設見学の受け入れ

表1〜9