大生商事(10G/day焼却炉 保管積み替え許可品目廃プラ、ゴムくず、金属くず、ガラス・陶磁器屑、建設廃材)

 混合廃棄物の巨大なごみの山。最近特に増え、焼却炉脇に廃プラスチック、ゴム屑などのごみの山が押し寄せる状態だった(高さ10m弱)。99年10月4日、この山が燃え、鎮火まで約6時間、新聞報道によれば、廃プラゴム屑など約500tが燃えた。周辺ではひどい臭いの大量の煙が出続けた。県によれば、焼却炉操業中、電気系統機器からの発火が起こり、すぐ近くまで積み上げていたごみの山に火が燃え移ったという。大生商事に対しては、99年3月の時点で、積み上がったごみの山を片づけるよう、県から改善勧告が出ている。しかしその後改善されるどころか、逆にごみは増え続けた。が、県は、改善命令を出すこともなく、「業者が片づけると言っている、片づけるよう指導をしている」と住民に対して答えている。住民が9月21日に施設の維持管理記録閲覧に行ったときには、温度記録計の蓋が開けられない状態だった。
 あの状態で焼却炉を操業すれば火事が起こることは当然予見できた筈であり、効果のない「指導」しかしてこなかった県にも大きな責任がある。
火事の状況を見ても大量の廃プラ類がくすぶり、不完全燃焼を起こしており、ダイオキシンをはじめとする多くの有害物質を含むであろう大量の煙が周辺に飛散した。また、燃えかすはそのまま山となって放置されている。県はようやく、11月2日に遅すぎる「改善命令」を出した。現在も全く改善は見られず、改善命令違反。即刻許可の取り消しをするべきである。
アーバンリサイクル(保管積み替え許可品目 廃プラ、ゴム屑、金属くず、ガラス・陶磁器屑、建設廃材) 98.8月には、保管について、飛散流出、悪臭が発散していることについて改善命令が出ている。これに対し、一時期片づけたらしいが、すぐに元の状態に戻り、現在さらに、ひどい悪臭。生ゴミ臭があるが、許可品目外。カラスが大量発生。囲いは所々落ち、周囲にごみを散乱させ、ひどい状況。県は再び、99年11月2日に遅すぎる「改善命令」を出したが、即時許可取り消し及び撤去をするべきである。現在も全く改善は見られていない。

北田商事(10.27更新許可取得  保積み 燃え殻、汚泥、廃油、廃プラ、動植物残さ、ゴム金属、ガ陶、鉱さい、建設廃材、ばいじん)
 地下ピットに廃棄物を積み上げ、ひどい悪臭を放つ。下方のゴミは、長い間積まれたままであり、性状に変化が出ていると見られる。住民から苦情が多く出ている。

3) くぬぎ山内公道への不法投棄
 くぬぎ山内の公道は、もともと、林の中の散策に用いられるような、幅1.8〜最大で4m程の市道である。ところが、現在、幅は大型トラックが通れるほどに広げられ、頻繁に大型トラックが行き来する搬入路として使われている。地権者に無断で、木を伐採した例もある。さらに、その搬入路には、地固めとして、コンクリート殻や、瓦屑などの廃棄物が不法投棄され、積み上げられ、中には林地と道との高さの差が1m近くにも及ぶところもあり、地権者が林内に軽トラックで立ち入れない、といった状況にさえ至っている。現在もこの不法投棄は頻繁に行われ、青や赤、黒(焼却灰の場合もあるとの疑念がある)と様々な色の道ができることがある。これらは不法投棄として厳重に処罰するべき事例である。

3,ダイオキシン自主測定の信頼性
各焼却炉設置業者は、ダイオキシン自主測定値が基準値を下回っていることを以て、各炉の操業による被害はないとする。しかし、もし、そのダイオキシン測定が正しかったとしても、多くの炉が集中して立地する事によって総量的に被害を引き起こしていることが危惧される。 さらに、残念なことには、そのダイオキシン測定値が通常の実態を反映していない恐れがあり、住民がそれらが信頼できる数値であるかどうかをチェックすることすらできない。

1)廃棄物焼却施設の排ガス測定における問題点
 年一度、理想的な燃焼状態で測定したデータの信頼性
ダイオキシンの発生量は、燃焼物、燃焼条件、維持管理状況によって大きく変わる。年1度測定時のみ理想的な燃焼状態を整えて測定したデータでは、通常の実態を把握できない。
*1 燃焼物
塩化ビニル等塩素を含む物質を燃やすことにより、ダイオキシン発生量は極端に多くなることが指摘されている。特に塩化ビニルの主要用途は建材であり、当地域の焼却炉の大半はこれら建材を含む解体廃棄物を燃やす炉であることから、測定時のみ塩化ビニルなどを含む建材を除外する措置をとることにより、ダイオキシン測定値を大きく低下させることができる。測定時に通常の燃焼物を燃やす事とする管理体制はない。住民が見学の際に見る焼却炉の前に積み上げられた燃焼物には合成建材や廃プラが多く混ざっている。また、所沢市が行った平成10年度ダイオキシン類緊急排出実態調査結果においても、自主測定と異なる値がみられた(東明興業 自主:69ng→市:96ng,大空リサイクル 自主:150,36,72ng→市170ng 新明 自主:3.3ng→市92ng)。

*2 定常状態での測定
間欠炉(一日8時間操業などの炉)においては、厚生省の廃棄物処理におけるダイオキシン類標準測定分析マニュアルでは「定常な燃焼状態下で4時間吸引する」とするのみ。これでは実態が把握できない。所沢周辺に最も多く存在する小型バッチ炉(1日約8時間、間欠運転炉)においては、立ち上げ、立ち下げ時のダイオキシン発生量が発生総量の半分以上を占めることが測定データなどから推察される。埼玉県では、運転状況、立ち上げ立ち下げ時、停止時など、いくつかの条件で排ガス中ダイオキシン類濃度を測定。値は、0.99(定常時)〜58ngTEQ(停止時)と大きな変動があった(「ごみ焼却施設などにおけるダイオキシン削減対策のための発生状況調査の結果について」埼玉県廃棄物対策課、平成11年8月10日)。また、これまで見てきた温度記録からも明らかなように、一日2回以上投入したり、800度以上の定常状態が殆どないような実態がある。

3 測定データの信頼性
 埼玉県で業者のダイオキシン報告に関する書類を98年に情報公開請求したところ、測定会社(黒塗り)と濃度結果が記入された紙1枚の簡単なもので、計量証明書さえ添付されていないものが殆どだった。測定結果は、通常、「計量証明書」という計量法で認可された環境計量事業所が測定方法と結果データを記載した紙によって、ねつ造されたものではないことが示される。しかし、このシステムでは複雑で高度な技術を必要とするダイオキシン測定においては、結果データの正確性を保証するには不十分である、と専門家から指摘され始めている。このような状況ではデータが信頼できるものであるかどうかを判定することさえ不可能である。埼玉県では、立入調査でダイオキシン測定を実施しているようだが、数多くある施設に対して、年間、数業者のみしか実施できない状況であり、不十分であるといわざるを得ない。

4,大気環境中ダイオキシン類濃度について
県及び市町村が行ってきた大気中ダイオキシン類環境濃度については、96年から所沢市内外の公民館や学校施設などで行われている。これらの結果については、0.062〜3.1pg(Co-PCB含まず)の値が報告されている。しかし、これらの調査では、発生源を特定せず、発生源からの影響の有無も全く検討されずに行われている。また、大気中のダイオキシン類濃度は気象条件、発生源の状況によって値が大きく変動するが、年4回ほど、各1日間の調査しか行われていない。このような現在の調査手法では真の汚染の実態がつかめない。それでも、廃棄物焼却施設が密集するくぬぎ山地域及び東所沢地域では、今後大気環境基準値として設定される方向であると発表された0.6pg/m3を平成10年度平均値で超えている。これは、発生源から直接影響を受けない(煙が直撃しない)地点の環境でさえも、かなり汚染されていることを示している。
発生源から直接影響を受ける地点の調査として、国内で初めて長期にわたって発生源を特定して調査した厚木基地の日米共同モニタリング調査の結果が最近発表された。この調査は7月7日から9月1日までの56日間にわたって行われ、3地点の大気環境濃度を測定。特に発生源からの煙が直撃する主風向の北側地点(siteB)の濃度の高さは顕著で、0.1〜53pg-TEQ/m3(平均7.4pg)が記録された。主風向から西にずれたsiteAでは0.085〜3.3pg(平均0.64pg), 南南東のsiteCでは0.037〜1.5pg(平均0.29pg)と、距離的にはどちらの地点も施設から半径1km以内であるが、煙の流れる地点と大きな値の違いが見られた。また、発生源の状況や、日によって値に変動がみられた。53pgの汚染を受ける地点でも、最小値は0.1pgであった。
ちなみに、この発生源施設は、通常、主に紙、木、繊維、廃プラなどを燃やす焼却炉30t/日3基。これまで業者が報告した排煙中ダイオキシン類濃度は最高で22pg/Nm3であったという。
このような発生源を特定した長期にわたる調査が所沢でも行われていない以上、焼却施設による真の汚染を評価することはできない.

5,まとめ
以上のように、各施設の操業実態については、新たに強化された処理基準が守られていない疑念が多々あり、所沢周辺の環境は依然深刻であると言わざるを得ない。また、県の監視指導は全く行き届いていない。これだけの処理基準違反を見逃していることについての責任は重大である。住民はこれらの疑念が生じた場合、すぐに当地域の県の業者指導担当である西部環境管理事務所に対して確認、指導を求めているが、これまで有効な指導が行われたためしはない。日常的に処理基準が遵守されているかをチェックする機構さえ整えられていない。このことが、不適正処理を助長し、周辺住民の不信を生む大きな要因となっている。


このような不適正処理の疑念が多々みられる焼却炉を一刻も早く停止することを望みたい。
また、維持管理記録閲覧については、「周辺住民の求めに応じて閲覧させなければならない」と法律で定められたものであり、いつ行っても閲覧に応じる体制を整えておくべきである。記録の写真撮影については、閲覧者が持ち込んだカメラを使用する場合、認められている。

県に対しては特に以下のことが早急に望まれる。

* 1 温度記録、焼却灰の熱しゃく減量、燃やすものの種類、量、等を正確に把握し、処理基準違反を厳しくチェックするための管理体制を整えること、及びその公開
* 2 処理基準違反に対しては許可取り消し
* 3 保管基準違反に対する許可取り消し、告発、措置命令などを含めた厳しい対応をとる
* 4 構造上、「完全燃焼」が担保されない炉については、施設許可の取り消しを含めた厳しい対応をとる

*5 施設内土壌、湿式排ガス処理設備の汚水、汚泥、灰、ばいじん、立ち上げ立ち下げ、停止時の排ガスに含まれる、ダイオキシン他汚染物質の調査
* 6 当地域に立地する焼却炉から発生するダイオキシンをはじめとする汚染物質の実態に即した発生総量の把握する
* 7 当地域の焼却炉からの影響を判断するために、発生源を特定した上で、最も影響を受ける地点の環境調査。
*8 極端に当地域に集中する県外からの廃棄物搬入集中状況の是正(搬入の禁止)
*9 くぬぎ山内不法投棄への処罰
*10 原状回復措置